第37話 捕獲


 「おまえは・・・わたし・・?」
 自分の目の前に現れた予想外の顔にリューナは完全に動揺してしまう。フードを脱ぎその下から現れた敵の素顔はまさにリューナそのものであった。自分に双子の姉妹がいたなどという話は聞いた事がない。しかし、他人の空似というにはあまりに自分にそっくりである。
 「アラ、この顔がそんなに珍しいかしら・・・」
 敵はクスクスと笑いながら嘲りを含んだ口調で話しかけてくる。その口調にリューナは少しむっとするが、無闇に突っかかろうとはしなかった。下手に手を出すことは自滅に繋がりかねない。それがわかっているからこそ敵も自分を挑発しているのだ。
 「・・・さすがに冷静、といったところか。まあ、そうでなければお前をコピーした意味がないからな」
 「コピーだと?・・・まさか、お前は・・・」
 「そうだよ。私はこの地に住まうドッペルゲンガー」
 ドッペルゲンガーはニッと笑いながら答える。自分と同じ顔、能力を持った敵。そん時点でリューナの頭の片隅にはその正体が思い描かれていた。しかし、物語でしか聞いたことのない怪物がまさか自分の眼の前にはいないという考えがその予想を否定していた。
 「わたしの姿を真似て何をするつもり?」
 「簡単なこと。貴方を倒してわたしが貴方になるの・・・ただそれだけ・・・」
 伝説ともいえる敵の登場に気を引き締めなおしながらリューナは何故自分の姿を真似たのかを問い詰める。するとドッペルゲンガーは悠然と自分との入れ替わりを宣言する。その宣言を聞いたリューナは驚くとともに、ここで負ければ己という存在自体が否定されるような気がしてきた。
 「絶対に負けるわけには・・・いかない!!」
 ギュッと拳を握り締めるとリューナは腰を落とし構えを取る。それに答えるようにドッペルゲンガーもまた腰を落とし、同じ構えを取る。完全に自分の動きをコピーされていると悟ったリューナは大きく息を吸う。同じ技を使う相手ならば精神的に負けたほうが負ける。
 (負けるわけにはいかない!!)
 もう一度心の中でそう誓うと、大きく跳躍する。二人のリューナが空中で激突する。肘と肘が、膝と膝が、脚と脚が、何度もぶつかり合う。力、スピード、どちらもお互いに拮抗していた。単純な基本能力だけでは勝負はつかないと察したリューナは拳をギュッと握り締める。
 「双天武拳”烈”!!」
 「双天舞脚”裂”!!」
 リューナの放った拳をもう一人のリューナの蹴りが迎え撃つ。拳と蹴りがぶつかり合い、大きくはじける。拳に痛みを感じながらリューナは一度距離を取ると、もう一度飛び込んでゆく。それはもう一人のリューナも同じで、距離を取って飛び込んでくる。再び二人のリューナが空中で激突する。
 「双天舞脚”嵐”!!」
 「双天武拳”連”!!」
 連続して繰り出される蹴りと拳、それがぶつかり合い、その際発生した衝撃波が周囲の岩にぶつかり、砕いてゆく。それでも二人のリューナは蹴りを、拳を止めようとはしない。何度も何度も繰り出してお互いの技を打ち消してゆく。そして渾身の力を込めた一撃がぶつかり合う。
 「はぐぅぅぅつっっ!!」
 「ぐはぁぁっっっ!!」
 渾身の一撃はお互いの顔面を捉え、吹き飛ばす。土煙を巻き上げて二人は地面に倒れこむ。ダメージ自体はさして受けずに済んだのですぐさま二人とも立ち上がり、またお互いに相手に向かって飛び込んで、空中で激突する。ぶつかり合った肘と肘が二人の動きを止める。
 「うくっ!せやっ!!」
 「なんの!!」
 すぐさま身を引き、蹴りを、拳を相手に叩き込んでゆく。お互いの攻撃が相手の肌をかすり、身を削ってゆく。何発、何十発も攻撃を繰り出し、お互いの肉体を傷付けてゆく。しかし、お互いに、お互いの技を読んでいるためか致命的なダメージにまでは到っていない。ただお互いの体を傷付け、お互いのみを削ってゆくだけだった。
 (このままじゃ、まずい・・・)
 リューナは顔をしかめながら自分の不利を感じていた。攻撃面では互角の状況だが、防御面ではこちらの方が不利のようである。正確には防御力はリューナのほうが上だが、その防御力を突き破る攻撃力を相手は持っている。その攻撃を受けた上ではどう見ても自分のほうが不利であった。おそらく一手か二手分、相手の方が生き残る可能性が高い。
 (どうする、どうやってこの状況を脱する・・・)
 リューナは相手の攻撃をかわしながら次の一手を思案する。しかし、どう考えてもいいアイデアは浮かばない。それが焦りになり、いつしか一発、ニ発と相手の攻撃がリューナの体にかすり始める。このままではまずいと察したリューナは相手の攻撃に乗って大きく跳び退り、距離を置く。
 (何か決定的攻撃力の差を出さないと・・・)
 しかし、どう考えてもそれは不可能であった。双天武拳、双天舞脚、自分の攻撃手段である技は相手にコピーされてしまっている。コピーされていないのは生命力などの自分の肉体の性能面だけである。姿形はコピーできているようだが、そこまではコピーできなかったらしい。
 (相手との肉体的違い・・・)
 スピード、パワーともに互角。打たれ強さ、生命力は相手に軍配が上がっている。この状況を脱するには相手を上回る攻撃力を発揮するしかない。しかし、それを成し遂げる業をリューナは思いつかなかった。悔しそうに自分の拳を見つめる。この拳に更なる力を得ることが出来れば・・・それが出来ない自分が情けなかった。
 (・・・・・まてよ???)
 拳を見つめていたリューナが自分の肩口に手をやる。そこには巨大なリボルバーが納められていた。腿にも同じものが存在する。初めて変身して以来使う事のなかったものがそこには存在した。ほとんどの戦いで使う必要のなかった存在である。それを使えば一瞬だけ爆発的に攻撃力を上げることができる。
 (でも・・・奴も同じことが出来るかも・・・)
 その恐れが頭の中をよぎる。しかし、その考えはすぐに否定される。もし奴がこのことに気付いていれば、すでにその攻撃を繰り出して自分を倒していたはずである。そして冷静に相手の攻撃を観察してみれば、攻撃の際そこに魔力を上乗せしているのがわかる。
 (魔力を上乗せすることで攻撃力の底上げをしていたのか・・・)
 それならば自分の防御力を上回る攻撃力を得ていたことも納得がいく。しかしそれは同時に相手が自分と同じ攻撃手段を持っていないことを意味していた。ドッペルゲンガーは記憶や能力をまねることはできても装備までは真似することはできない。無から有をつく出だすことは出来ないのだ。
 (ならばこの攻撃を奴は真似できない!!)
 そう確信したリューナはぐっと拳を握り締め構えを取る。キッとドッペルゲンガーを睨みつけると、大きく跳躍する。自分の攻撃力に自信を持っていたドッペルゲンガーはニタリと笑うと迎撃してくる。二人のこぶしと拳がぶつかり合う。砕けたのはリューナの拳であった。
 「残念だったな、わたしの攻撃の方が・・・」
 「残念なのは・・・おまえのほうだ!!」
 勝ち誇った表情を浮べたドッペルゲンガーにリューナは大声で叫び、リボルバーを回転させ、中の魔弾を撃つ。魔力が爆発的に解放され、リューナの攻撃力に上乗せされる。その攻撃力は砕けたリューナの拳に力を与え、ドッペルゲンガーの拳を粉々に打ち砕き、肘を肩までも破壊してしまう。
 「ぐはぁぁぁっっ!!」
 打ち砕いたはずの相手の攻撃に逆に自分の腕を砕かれたドッペルゲンガーは大きく吹き飛ばされる。すぐに体勢を整えるが、破壊された右腕はもはや使い物にはならなかった。それ以上に破壊されたのはドッペルゲンガーの自信の方であった。自分の方が強い、そう思って放った攻撃が逆に自分の腕を破壊したのだから。
 「やはり・・・これは真似できないか・・・」
 「なんだ・・・貴様、一体何をしたぁぁっっっ!!」
 砕かれた拳の痛みに顔をしかめながらリューナは自分の仮説が正しかったことにほくそえむ。対するドッペルゲンガーはなにが起こったのかまるでわからず、完全に混乱していた。混乱したままリューナに飛び込み、蹴りを見舞ってゆく。その蹴りをリューナもまた蹴りで返してゆく。ぶつかり合ったリューナの脚が鈍い音を立てる。
 「ほら、わたしの攻撃の方が・・・」
 「ここだぁぁっっ!!」
 リューナの足が砕ける感触にドッペルゲンガーは喜びの笑みを浮べる。先ほどの攻撃は何かの間違いだ、自分の方が強いはずだ。そう思い直させる攻撃であった。しかし、その瞬間、リューナが魔弾を解放する。魔力が爆発し、リューナの蹴りに新たな力を与える。その蹴りはドッペルゲンガーの脚を、膝を砕く一撃だった。
 「ぐはぁぁぁっっっ!!」
 吹き飛ばされたドッペルゲンガーは砕かれた脚を抑えたまま蹲り、動くことが出来なかった。砕かれたのは脚だけではない。自分の自信までも打ち砕かれたのである。魔力を帯びた自分の攻撃をリューナが上回ることはできない。そう確信していた。事実二度もリューナの手足を砕いている。
 「なのに・・・なのにぃぃっっ!!」
 その直後にリューナの攻撃力が爆発的に上昇し、自分の手足を粉々に砕いてきたのである。信じられない状況にドッペルゲンガーが絶叫するしかなかった。そして冷静さを失ったドッペルゲンガーはリューナの動きを見ていることはなく、その動きについてゆくことも出来なかった。
 「所詮お前はわたしにはなれない!!」
 リューナは双天舞脚”瞬”を使って一気にドッペルゲンガーに近付くと、その胸元に肩を叩き込む。冷静さを失ったドッペルゲンガーはその攻撃をまともに喰らう。一度攻撃に入ってしまえばリューナのものである。吹き飛ばされたドッペルゲンガーの背後に回りこむとその背中に蹴りを見舞い、大空高くへと吹き飛ばす。
 「わたしはぁぁぁっっ!!おまえにぃぃぃっっ!!」
 「お前はお前だ!!」
 リューナの連続蹴りを浴び、血を吐きながらもドッペルゲンガーはリューナを睨みつけて叫ぶ。しかし、どんなにリューナを真似ても彼女になることは出来ない。そんな悲しい運命のモンスターにリューナは攻撃を加えてゆく。そして空中で反転すると、とどめの一撃を叩き込む。
 「双天舞脚”星”!!!!!いやぁぁぁぁっっっ!!」
 渾身の一撃がドッペルゲンガーの顔面を捉える。さらにリボルバーの魔弾をニ連続で解放し、その攻撃を増強する。流星のようなリューナの一撃にドッペルゲンガーの顔面を捉えたまま地面に激突する。さらに勢いは止まらず、ドッペルゲンガーを数十メートル地面を引きずってようやく止まる。
 「それが・・・お前だ・・・」
 ぜいぜいと肩で息をしながらリューナはリューナの顔が崩れ、事切れたドッペルゲンガーに冷たく言い放つ。最後までた他人になろうとした悲しいモンスターに厳しい視線を送りながら、リューナは大きく息を吐くと、その場にへたり込んでしまう。もう動くことすら出来ない状況であった。
 「はやく・・・探さ・・・ないと・・・」
 そうは思っても体がまともに動かない。リューナはもう一度大きく息を吐くと目を閉じる。疲れ切った体が眠りを欲していた。その眠りに抗うことができないまま、リューナは眠りに就く。深い、深い眠りに・・・


 シュバルト山。ヴェイスにあって霊峰とたたえられる高山である。ここを訪れたセツナにとってここはこの地で父と共に武術の腕を磨き、己を高めて育ってきた故郷のようなものであった。そこを出てクリフトの元で働くようになってからは戻ってくることもまれであった。
 「確かにここならば人一人隠れるのに何の問題もないな・・・」
 シュバルト山のふもとから山頂を見つめながらセツナはアゴに手をやって頷く。この高山を訪れる人は少なく、来る者はそのほとんどがここに住むブシンに武術を習うためにやって来る者たちばかりである。もっともそのほとんどがすぐに山を降りてしまうが・・・
 「父上なら何かご存知かも知れぬな・・・」
 山のことは山の主に聞くのが一番と考えたセツナは父・ブシンのいるところまで進んでゆく。険しい山道を超え、ブシンの住む庵を目指す。常人では通るのも難しそうな道もセツナには普通の道とかわらない。すいすいと進んでゆく。やがて川沿いの道に出てそこを上流へと上ってゆく。
 「この時間だと庵に戻っておられるかどうか・・・」
 その日、その日ごとに気ままにいる場所を帰るブシンの居場所を探すならば、庵にいるのが最適である。しかし、日がまだ高く戻ってきているかどうか微妙である。ならばこの周囲を散策してから行こうとセツナが思った瞬間だった。セツナは大きく跳び退る。先ほどまでセツナがいたところに三本のくないが突き刺さる。
 「だれだ!?」
 セツナは鋭い声をあげてくないの飛んできた方角を睨みつけるが、すでにそこからは気配を感じることができない。周囲の気配をうかがうが完全に周囲に同化しているのか、まるでその気配を感じることができない。セツナは腰の太刀に手を伸ばすとその鯉口を切り、次の攻撃に備えて身構える。
 (どこだ、どこにいる・・・?)
 目を瞑り周囲のわずかな気配や相手の動きを読み取ろうとする。ピーンと張りつめた感覚が辺りを覆いつくす。小鳥の囀り、小川のせせらぎ、林の木々を撫でる風の音、それらの音もセツナの耳には届かなくなる。ただ、わずかな違和感を読み取ろうと神経を集中させてゆく。
 (・・・・・・・・)
 自分の心臓の鼓動が一番うるさく聞こえてくる。それほど神経を集中させる。そのセツナの背後から新たなくないが放たれる。その気配を感じ取ったセツナは背後に大きく跳躍してくないをやり過ごす。なびく髪をくないが撫でるのも気にしないで、セツナは一直線にそれを放った相手目掛けて飛び込んでゆく。
 「何者か知らぬが・・・そこっ!!」
 気合一閃、セツナの太刀がくないを投げた相手の切り裂く・・・はずだった。しかし太刀が凪いだのは空のみだった。完全に捕らえた、逃げる暇さえ与えなかった自身があったセツナは驚きを隠せなかった。いつ、どうやってそこから逃げたのかわからない。呆然とするセツナに新たなくないが放たれる。
 「なかなかの・・・強敵っっ!!」
 相手の実力を認識したセツナは放たれたくないを避けると、再び気配を読み始める。相手が先ほどの攻撃をかわしたのはくないを投げたのと同時に移動したに違いない。それならばその動きを、わずかな気配を読み切ってその移動先を狙えばいい。セツナはそのために完璧に相手の動きを読みきろうとする。
 (わずかな木々の動き、葉の流れ、自然とは違った動きを読み取れれば・・・)
 心を静め相手の気配を読み取ろうとする。しかし、いくら心を澄ませてみても相手の気配を読むことが出来ない。完璧なまでに気配を断ち、その動きを悟らせていないのだ。ここにいたってセツナは今自分に攻撃をしてきている相手の正体に気づく。この山でここまで自分を翻弄できる相手はただ一人しかいない。
 「父上、御ふざけが過ぎますぞ!?」
 凛とした口調でくないを投げてきた相手を咎める。この山で自分を翻弄できる相手、それはセツナの父ブシンしかいない、それがセツナの答えだった。しかし、相手はセツナの問いかけに姿を現そうとはせず、さらに新たなくないを投げつけてくる。そのくないを太刀で払いのけると、セツナは大きく息を吸い込む。
 「お姿を現しませんか。ならば!!」
 セツナは腰をぐっと落とす。目を閉じて太刀に全神経を集中させ大きく息を吸い込む。
 「閃夢舞刀・枝垂桜!!!」
 カッと目を見開いたセツナは太刀を抜き放つとつま先を軸に一回転する。気合と共に放たれた斬撃がセツナの周囲の木々を切り裂く。切り裂かれた木々は砕け散り、桜の花びらのように舞い落ちながら消滅してゆく。セツナは太刀を鞘に収めると大きく息を吐いて自分の背後にちらりと視線を送る。
 「どういうおつもりですか、父上・・・」
 「簡単なこと。お前の足止めだよ」
 切り裂かれた木の断面に腰掛けたブシンはセツナの問いにニカッと笑って答える。その言葉の意味がセツナのはわからなかった。何故父が自分の足止めをしなければならないのか、その意味が理解できない。自分に手向かうことはエリウスに、皇国に歯向かうことになる。いくら父とはいえそんなことをするとは思えない。
 「正気ですか、父上。エリウス様には向かうと・・・」
 「ワシはお前の実力を試そうと思って動いているだけだ。エリウス様云々は関係ない」
 平然と言い返すブシンだったが、それは屁理屈でしかない。フェイトを探す自分への妨害行為はエリウスに対する反逆ととられてもいいわけの使用がない。しかし、ブシンをみる限り、まるでそんな事を気にしている様子はない。何か理由があってのこととは思うがその理由を着てもこの父が答えるとは思えない。
 「どうあってもわたしの邪魔をしますか?」
 「うむ!」
 「ならば・・・推して参るまで!!」
 父がどうあっても引かないと悟ったセツナは全力を解放する。体が蟷螂の体に変わり両手に短めの刀が握られる。それを構えるとブシンを睨みつける。その殺気に満ち溢れた視線もブシンは平然と受け流す。そのブシン目掛けてセツナは跳躍すると、一気に距離を詰める。
 「閃夢舞刀・紫陽花!!」
 両の刀から放たれた魔力が花びらのように宙を舞い、それを追うようにしてセツナの刀がブシンに襲い掛かる。二本の刀と魔力の花びらに囲まれたブシンは懐から一本の長いキセルを取り出す。それを握ると手首を柔らかくふるって自分の周りを取り巻く魔力の花びらを叩き落してゆく。
 「ほい、ほい、ほい、ほい、ほいっと!!」
 信じられないほどの速さで動く右腕はあっという間にブシンの廻りの魔力の花びらを叩き落す。さらにセツナの二本の太刀も楽々と叩き落とす。セツナは叩かれた手に痺れを覚えたが、すぐに腰の大太刀を抜き放ちながら、ブシンから遠退こうとする。しかしそれをブシンは許さなかった。
 「隙だらけだ!!」
 後ろへと跳躍したセツナを追ってきたブシンのキセルがセツナの胸板をつく。強烈な衝撃を受けたセツナは肺の中の空気が全て押し出されたような感覚に襲われる。苦しさに一瞬前のめりになったところ無防備な顎目掛けてブシンの鋭い一撃が放たれる。
 「うぐっっ!!」
 「おとなしくしておれ、双天舞脚”閃”!!」
 顎を叩かれたセツナの状態は無防備になる。その胸元にさらにブシンの蹴りが決まる。強烈な一撃を受けたセツナは吹き飛ばされ木の幹に叩きつけられ、その意識は一瞬消えかける。しかし、ここで諦めるわけにはいかない。何とか体勢を保ち、意識を保つ。
 「くっ、まだ・・・まだやられるわけには・・・」
 「いや、終わりだ・・・」
 刀を杖代わりにして何とか体勢を保つことができたセツナだったが、その眼前にブシンが現れる。セツナが動くよりも早くブシンの指がセツナの腹部に触れる。一拍置いて襲い掛かかってくる強烈な圧力にセツナは再度吹き飛ばされ、背中を木に強かに叩きつけられる。
 「がふっ!!あ・・・・」
 肉体を強化されたセツナといえどそこまでが限界であった。意識が闇に飲み込まれそこで途絶える。気絶しぐったりとなったセツナを抱きかかえるとブシンは大きく溜息をつく。
 「まったく、イナストラの娘だからといって無茶な願いをする・・・」
 愛娘を抱きしめながらブシンはもう一度大きく溜息をつく。今回の一件でエリウスを裏切った形にはなったが、彼自身後悔はしていない。これをエリウスが咎めるというならその罰を甘んじて受けるつもりでいた。自分が編み出した武術はしっかりとセツナたちに伝わっている。そのことを確かめることもできたので後悔はなかった。
 「まあ、あの方のことだ。笑って済ましてくださるだろう・・・」
 ブシンはそう言って笑みを浮べる。そして空を見上げ、イナストラの、フェイトの無事を心から祈るのだった。



 「セツナたちからの交信が途絶えた??・・・」
 フィラデラに上がってきた報告は信じがたいものであった。一騎当千ともいえる彼女たちがやられるとは考えにくい。無事である可能性は高いが、身動きを取ることができない可能性が高い。しかも彼女たちがいまいる場所は非常に危険な場所である。早急に救出しなければ彼女たちが危ないかもしれない。
 「ディ、シー、アール!お前達はセツナたちの元へ赴いて彼女たちを救出!頼むぞ!」
 「畏まりました、フィラデラ様!!」
 ヴェイスの中でも人が足を踏み入れないような危険な場所にいけるものは限られている。フィラデラは即座に自分の使い魔、三匹にそれを命じる。フィラデラからの命令にディ、シー、アールたちは嬉しそうにセツナたちの救出へと向かってゆく。転移魔法が使えるあの子達ならば、セツナたちをすぐにでも救出できると考え、フィラデラはフェイトのいる場所を絞り込もうと考え込む。
 「・・・・・やはりセツナたちが帰ってきてから出ないと、絞り込みきることは難しい・・・か・・・」
 いくら考え込んでみてもセツナたちが向かった場所に隠れている可能性が一番高い。そのどこかにその痕跡を見つけることができればフィラデラ自身が赴いてフェイト捕獲に動くつもりでいた。そのために使い魔たちには痕跡の調査も命じてある。ものの一時間もすればフェイトに場所は絞り込むことができるだろう。そう考えお茶を飲みながら使い魔たちの帰還を待つ。ディたちが戻ったのはフィラデラの予想通り一時間後のことだった。予想外だったのは彼女たちはぼろぼろに傷ついたセツナたちを連れて帰ってきたことである。
 「何てことだ・・・こいつらがここまでやられるとは・・・」
 「どうしましょう、フィラデラ様・・・」
 「決まっている、ドクターの元に運ぶんだ!!急げ!!」
 使い魔たちにセツナたちをドクターの元に運ぶように命じると、フィラデラは大きく溜息をつく。さらに使い魔たちからもたらされた報告はフェイトの行方を掴むものではなかった。ヴェイスの中でも人が立ち入らない四箇所にさえフェイトの姿が見つからなかった。そのことにフィラデラは完全に困惑してしまう。
 「一体どこに隠れたというのだ・・・ほかに隠れられる場所など・・・」
 いくら考えてみてもフェイトが身を潜めている場所が思い当たらない。ならばこのヴェイス以外のところにいるのだろうか。それもゾフィスやオリビアの情報網にかからないようなところに。これだけ広大な大陸の中で少女一人、隠れていても見つからない場所など多くあるはずである。
 「だが、いくら隠れることができたとしても食べるものがなければ生きてはいけまい・・・」
 そうなればどこかで食料を調達するはずである。そうなればゾフィスたちの情報網に引っかかってもおかしくはない。それが引っかからないということは彼女たちの情報網を掻い潜れる場所ということになる。ならばこの大陸にいない可能性が出てくる。
 「もしそうならエリウス様の望みは断たれることになる・・・」
 フィラデラは大きな溜息をついて頭を抱え込んでしまう。完全に袋小路に行き当たってしまっている。もはや探していない場所などどこにもない。探していない場所はどこにもない?フィラデラはその自分が思い浮かべた言葉を自問し始める。確かにヴェイスの領内はくまなく探している。ほかに心当たりはまるでない。
 「いや、まだ探していないところがあるではないか・・・」
 そんなフィラデラの頭の中にふとある考えが浮かぶ。そこだけはまだ探していない。いや、最初から探そうともしていない。最初から捜索の対象から除外していた場所である。
 「そうだ・・・なんでこんな簡単なことに・・・」
 フィラデラは額に手を当てて自分の浅はかさに自嘲する。フェイトほどの策士ならば自分達がいつかはヴェイス本国を捜索し始めることくらいお見通しだろう。そのための準備を怠っていたとは思えない。その罠にセツナたちは見事はまってしまったのだろう。そして自分はもっとも安全なところに身を潜める。たいした策略家だとフィラデラは舌を巻く。
 「・・・・・となればいる場所は限られてくるな・・・」
 フィラデラはそう言うと、身を翻して城の奥へと進んでゆく。フェイトが身を潜めている場所はこのダーク・ハーケン城以外にはない。それがフィラデラが到った答えであった。確かにここに身を潜めていれば見つかる可能性は低い。何しろ自分達が捜索の対象外にしていたのだから。たとえ城内にいる者たちに見つかることがあってもそれをごまかしきるためにメイドか何かに扮している可能性が高い。そして彼女のことであるからもっとも大胆な場所に身を潜めているとフィラデラは推測した。
 「ヒルデ様、エレナ様!失礼します!!」
 フィラデラは部屋の中からの返事を待たずに部屋の中に入る。そこにはヒルデとエレナが一人の少女とお茶を酌み交わしていた。ちなみにステラはヒルデの方でお菓子を夢中になって食べている。その少女はフィラデラの姿に見つかったかと顔をしかめる。ヒルデたちのほうはくすくすと笑っている。
 「おおっ、ようやっと来おったか・・・」
 言葉の中に嘲りが含まれているようにも聞こえたが自身の戒めとぐっとこらえたフィラデラはその少女の前に歩み寄る。それまでおとなしくお茶を飲んでいた少女はカップを置くとすっくと立ち上がり、フィラデラと正面から対峙する。お互いに相手を威嚇するようににらみ合う。
 「フェイト=ファルビル、おとなしくエリウス様のもとまで来てもらおうか・・・」
 「お断りします!」
 言うが早いかフェイトは指を振う。無詠唱で放たれた光の矢がフィラデラに襲い掛かる。すでにそれを読んでいたフィラデラは前もって張ってあった魔法障壁でこれを受け止める。フェイトが放った光の矢が消滅すると同時に氷の矢をフェイと目掛けて発射する。フェイトはこれを炎の矢で迎撃する。二種類の魔法が空中で激突し、爆音とともに消滅する。
 「これ、二人とも!!やめぬか!!」
 「ここでの戦闘はご法度ですよ??」
 「お叱りはあとでお受けします!!」
 ヒルデとエレナに咎められてもフィラデラは退こうとはしなかった。ここで退いたらまたフェイトに逃げられる。それだけは避けなければならない。それはフェイトも同様で下手にここで戦闘をやめれば、一瞬にしてフィラデラに捕縛されてしまうことを心得ていた。お互いに退くに退くない状況になっていた。
 「さすがは”魔女”・・・ですが、これはどうです?”プラズマ・ストライク”!!」
 「あなたもやりますね・・・”サイクロン・エッジ”!!!」
 フェイトはフィラデラを賞賛しつつ、高電圧の雷球を自分の手元に召喚する。フィラデラもそれに答えるかのように暴風を召喚する。二人の全力の魔力をこめた魔法がお互いをけん制しあい、隙を窺う。
 「やめぬか、この小娘どもが!!!!」
 ヒルデの雷のような怒声が響き渡る。あまりに大きな声であったために肩にいたステラが涙目になってエレナのほうに逃げ出してしまう。さすがにヒルデの怒声にフィラデラもフェイトも動きを止めてしまう。彼女が本気で怒っていることがありありとわかったからである。
 「しかし、ヒルデ様・・・」
 「しかしもかかしもないわ!わらわの眼の前で喧嘩など許すと思うてか!!」
 あくまで反論するフィラデラだったが、ヒルデはそれを一喝して押さえつけてしまう。さすがのフィラデラもそれ以上は何もいえなくなってしまう。フェイトの方も言葉が出ず俯いてしまっている。しーんという静けさが部屋を支配する中、怯えたステラのすすり泣く声だけが聞こえていた。
 「フィラもフェイトも落ち着きなさい。エリウスに会う会わないでもめても仕方がないでしょう?」
 ようやくエレナがステラの髪を撫でてあやしながら言葉を失っているフィラデラとフェイトにやさしく語りかけてくる。確かにお互いに意地を張っている部分はあったが、フェイトがエリウスに会おうとしない以上、実力行使しかないとフィラデラは考えていた。すると、にっこりと笑ったエレナはフィラデラとフェイトに提案をしてくる。
 「では、こうしましょう。エリウスをここに呼びます。わたしとお姉様が立会いの元話し合いをしましょう」
 「ですが・・・」
 「もちろん、それでもフェイトが納得しないなら私たち二人が貴方の自由を保障します。それならばどう?」
 エレナはもう一度にっこりと笑う。その笑みには反論は許さないという意味が込められていた。さすがのフィラデラもフェイトもこの提案を呑むしか道はなかった。そして、エリウスがダーク・ハーケン城に戻ってきたのはそれから数時間後のことであった。



 「まあ、つまりはだ・・・お前は母親の病を治す術を求めて旅をしていたと・・・」
 ようやく話し合いに応じたフェイトと会ったエリウスは彼女がエリウスの元から逃げ出した理由を聞き、納得する。彼女の養母イナストラが原因不明の奇病にかかったのは数ヶ月前。体が硬化し、意識が戻らなくなってしまったのである。何とか直そうと様々な文献を調べつくしたが、どの文献を調べてみてもその病名も、直す方法も載ってはいなかった。ちょうどそこにエリウスが現れたため、イナストラの治療のために彼の元から逃げ出したのである。自分がエリウスの元に行けば、養母が死ぬしかないと思ったから・・・
 「で、その後はどうしたんだ?」
 「ゼルトランドに集まらない知識はこの世界に存在しません。ならば・・・」
 「異世界の知識を得ようと考えたわけだ・・・」
 エリウスの言葉にフェイトは素直に頷く。まず彼女が訪れたのは養母の妹弟子の夫であるブシンの元であった。彼が異世界から来たことは養母から聞いていたので、彼ならばこの奇病のことを知っているかもしれない。そう考えて相談に持ってもらおうと彼の元を訪れたのである。しかし、この奇病はブシンにもわからなかった。
 「そこでブシンに追っ手がかかっているかもしれないと注意されたんだな?」
 エリウスがそう言うとフェイトは頷く。そこでフェイトはブシンに協力してもらって、自分が身を潜めているだろうと予測される場所にモンスターを配し、足止めを狙ったのである。その間に彼女はもう一人の異界の住人ヒルデの元を訪れたのである。もちろん、指揮官であるフィラデラがいることは十分に承知していた。
 「でも、わたしがここに来るなど予想もしないだろうと思って・・・」
 確かに目標が自分達の手元に飛び込んでくるなど思いもしないことだろう。さすがのエリウスもそこまでは予測できなかった。ヒルデに会ったフェイトだったが、彼女もこの奇病についてはわからないとのことだった。
 「のう、エリウス。どうにかならぬのかえ?」
 「この世界に存在するウィルスであればイシュタルに治せない病は存在しません。しかし・・・」
 「しかし、なんじゃ?」
 「異界から来たウィルスとなればイシュタルでも完治は不可能でしょう。せいぜい進行を遅らせるくらいしか・・・」
 エリウスの言葉にフェイトは絶望的な表情で項垂れてしまう。残されたエリウスの力も及ばないのではどうすることもできない。絶望に打ちひしがれるフェイトだったが、エリウスはさらに言葉を続ける。
 「だけど、完全に力を取り戻した僕か、覚醒したアリスなら・・・」
 「治せるのですか??」
 「治すというより、なかったことにできる」
 エリウスの言葉の意味はよくわからなかったがわずかな巧妙が見出せたことにフェイトはホッとした表情を浮べる。だが、エリウスとアリスの覚醒のためには11人の巫女姫の存在が欠かせない。もはや自分のわがままで逃げ回ることは許されないことであった。フェイトはエリウスの元に行く事を承諾する。ようやくフェイトに身柄を確保できたエリウスはホッと安堵の表情を浮べる。
 「どころで、エリウス?このようなウィルスはどこから紛れ込んだのですか?」
 「確証はありませんが、おそらく異界に行った何者かが持ち帰ったと考える他ないとおもいます」
 「そのようなこと、ありうるのかえ?」
 「可能性としては低いですが・・・」
 エリウス、いやヴェイグサス神が作り出したこの世界は三つの世界から成り立っている。人が住む人間界、魔神の住まう魔界、そしてヴェイグサス神のいるはずだった神界。もっとも神界は今は魂が転生するための中継点に過ぎない。本来召喚といわれるのは魔界から悪魔達を呼ぶことを言う。
 「ですがまれにブシンのように別の神が作り出した世界から召喚されてしまうものもいます」
 普通こういった者は元の世界に戻れる可能性は窮めて低い。こちらの世界から別世界に行くなら戻る手段を用意していくことも可能だが、強制的に召喚されたものは戻る世界がどこにあるのかがわからず、戻ることができない。そのためブシンのように召喚された世界に住み着くものがほとんどである。
 「でも、何百万分の一くらいの確率で戻ってくることが出来るものもいるようです」
 それは本当にわずかな可能性ではあるが、できないことではない。そしてこのウィルスはそういった世界の召喚されたものがこの世界に戻ってきたときに持ち込んだウィルスと考えるのが妥当だろう。それがたまたま大気中を舞ってイナストラに附着、発病したのだろう。
 「しかし、そのような者、どこに・・・」
 「まあ、そのうちわかりますよ」
 エリウスには大体の想像がついていた。その答えはすぐに分かる気もしていた。しかし、いま重要なのはそんなことではない。エリウスはもう一度フェイトの顔を覗き込む。
 「でも、こういった病気については僕らの方が治せる可能性が高いのに、何故逃げたりしたんだい?」
 「えっ?あの・・・その・・・」
 エリウスの問いにフェイトは顔を真っ赤にして俯いてしまう。何事かモニョモニョと呟いているが、あまりに小声すぎて聞き取ることができない。エリウスが耳を近づけ、その声に耳を傾ける。直後、エリウスはぷっと吹き出してしまう。同時にフェイトは顔をさらに赤くしてしまう。
 「僕のところに来たら性奴隷にされるって?そんなこと、信じていたのかい?」
 まだ笑いながらエリウスはフェイトに問いかける。つまり、自分がエリウスの元に行ったら最期、養母と引き裂かれて、彼女がどうなったかさえも分からなくなると思っていたらしい。だからエリウスから逃げて、独自に養母の治療方法を模索していたというのだ。
 「そんなの噂に過ぎないよ・・・大丈夫、いつでも会えるようにしてあげるよ」
 エリウスがそう確約すると、フェイトは嬉しそうな顔で微笑む。エリウスもフェイトに微笑みかける。そんな二人を見ていたヒルデは隣のエレナに話しかける。
 「のう、エレナ。性奴隷にはせぬが、毎夜とっかえひっかえで夜伽をさせていると聞くが?」
 「その辺りの女好きはバーグライド様そっくりですわね・・・」
 「よくないところがほんによく似たものだ・・・」
 そんな会話をしながらヒルデとエレナは溜息をつく。もちろんその会話はエリウスの耳にも、フェイトの耳にも聞こえている。フェイトはまたしても顔を真っ赤にして俯いてしまっている。エリウスの方も拳を握り締めて震えているが、事実なのでそれ以上反論できない。仕方なく俯くフェイトにそっと手を差し伸べる。
 「じゃあ、いこうか・・・」
 やさしく微笑みかけるとフェイトは恥ずかしそうに顔を赤らめながら素直に頷く。そんなフェイトの手を引いてエリウスはヒルデ達の部屋から出て、自分の部屋へと戻って行くのだった。



 「ふんんっ・・・・んんんんっ・・・」
 全裸になったフェイトの唇をエリウスは優しく塞ぐ。その口の中に舌を差し込み、フェイトの舌に絡ませてゆく。その下の動きに合わせてフェイトの口から甘い息が漏れ始める。その声を聞きながらエリウスは舌先でフェイトの口の中を舐めてゆく。口内を、歯茎を、ゆっくり丹念に舐め上げてゆく。
 「あふっ、あああっ・・・・」
 フェイトはエリウスのなすがままに愛される。白く細い肢体を抱きしめたままエリウスはフェイトの唇を貪り、その緊張を解そうとする。やがてフェイトの緊張がほぐれると、エリウスはその背中に回していた手をゆっくりと胸の方へと動かしてゆく。
 「あっ・・・やだ・・・」
 エリウスの手の平がフェイトのふくらみに触れるとフェイトは顔を赤く染めて震え上がる。同じ年頃の娘よりも大きく育っているそこは柔らかさも、弾力も格別であった。その弾力と、柔らかさを確かめるようにエリウスは丹念にフェイトの胸を愛撫する。
 「あうっ・・・あああっっ!!」
 円を描くように胸を愛撫してやるだけでフェイトの口からは絶え間なく甘い声が漏れてくる。乳房の弾力を足し待てていた指が硬くしこり始めた乳首に触れると、その声はさらに大きく、艶を増してくる。その色っぽい声をもっと聞きたいと、エリウスは執拗に乳首を愛撫してゆく。
 「やっ・・・・ああああんっ!!ふあああっっ!!」
 コロコロと指先で転がしてやるだけでフェイトは切なそうに悶え、甘い声を漏らしてくる。さらにエリウスは指先で摘んだりしながら愛撫すると、ゆっくりとそこに口を近づけてゆく。硬くなって頭をもたげた乳首を舌先で転がしてやると、それだけでフェイトはさらに大きな甘い声を上げて喜ぶ。
 「ああっ、だめ・・・それ、だめ・・・」
 エリウスの愛撫にフェイトは小刻みに震えてはじめて感じる快楽に酔いしれていた。そんなフェイトの肌を伝ってエリウスの左腕が下へと伸びてゆく。太股を撫で上げると、今度はその付け根へと上がってゆく。淡い陰毛に隠れたフェイトの秘部に指先が触れると、フェイトの体が大きく震え上がる。エリウスは指先で陰毛を掻き分けながらうっすらと湿り気を帯びた貝をなぞりあげる。
 「ふあああああっっっ!!!」
 一際大きな声を上げてフェイトの体が震え上がる。太股は硬く閉じられ、エリウスの指の侵入をそれ以上許そうとはしなかった。仕方なくエリウスはその緊張を解そうと胸の愛撫を再開する。乳首を舌先で転がしながら、唇で軽く噛み、引っ張り、啜り上げる。その新たな胸からの快感にフェイトは徐々にその緊張を解いてゆく。緊張が解ければ、その硬く閉じられた太股も解放されてゆく。そこでエリウスは間髪いれずに指先をフェイトの膣内へと押し込んでゆく。
 「ひあああああっっっ!!!」
 初めて感じる膣内に入り込んだ異物の感触にフェイトは悲鳴を上げる。また腿を硬く閉じて抵抗しようとするが、すでにエリウスの指先はフェイトの中に入り込み、拒むことはできなくなっていた。フェイトの膣内に入り込んだ指先はゆっくりとフェイトの膣壁を撫で上げ、愛液をかき出すように動き出す。そのねっとりとした指の動きにフェイトの声は徐々に艶を帯び、太股にこもった力も解放されてゆく。フェイトの両脚の力が抜け、左右に開きだしたところでエリウスはフェイトの股の間に自身の体を滑り込ませ、その脚を左右に開かせる。
 「いやっいやっ!!見ないで・・・見ないで下さい!!」
 フェイトは自分の秘部が露になったことを悟り、あわてて左右に広がった足の付け根にある秘部を何とか両手で覆い隠そうとするが、エリウスはその腰を高く浮かせて自分の眼前にその濡れそぼった秘部を持ってくる。そこはすでに愛液が溢れ出し、指を動かすたびにクチュクチュといやらしい音を奏でるのだった。
 「あふっ・・・あああっっ・・・」
 指を奥へ奥へと押し込み、膣壁を指先でなぞりあげる。そのエリウスの指の動きにあわせてフェイトの口から甘い声が漏れてくる。その声をさらに聞こうとエリウスは頭を覗かせたもっとも敏感な豆を舌先で舐めあげる。その瞬間、フェイトの体が大きく飛び跳ね、震え上がる。感じたことのない感覚が全身を駆け抜けたのである。
 「ひゃああっっ・・・あっ、あああっ・・・」
 フルフルと小刻みに震えるフェイトのクリトリスをエリウスはさらに舐め上げる。舐める度にフェイトの小さな体は大きく震え上がり、何度も何度も小さな絶頂の波にさらわれる。エリウスはさらに彼女を愛撫し、一番大きな波へと導いてゆく。舌先でクリトリスを転がし、舐めあげ、膣内に入り込んだ指先はフェイトの喜ぶ場所を激しく擦り上げ、彼女を絶頂へと導いてゆく。
 「ひあっ!!あああっ・・・く・・・る!!!」
 一際大きく震え上がったフェイトはガクガクと震えながら絶頂の白い闇に意識を追いやる。フェイトをイかせたエリウスは彼女の股間から顔を離すと、絶頂の余韻に浸る彼女を抱きしめ、体を起こす。そしてベッドの上に座り込むと、ちょうどフェイトが自分の上にくるように持ってくる。
 「さあ、フェイト・・・次だ・・・」
 エリウスはまだ絶頂の余韻に囚われていたフェイトの耳元でそう囁くと、彼女を自分の真上に来るように持ってくる。脱力したフェイトはエリウスのなすがままにされていた。ビショビショに濡れたフェイトの膣口に痛いほど膨れ上がったペニスを宛がうと、そっと彼女の髪を撫でてやる。
 「イくよ・・・」
 もう一度耳元で囁くとエリウスは一気にペニスをフェイトの膣内へと押し込んでゆく。まだ未通の膣道をペニスが押し広げて進む感触にフェイトは悲鳴を上げる。その感触は激痛でしかなかった。泣き叫びながらエリウスの背中に縋りつく。爪を立てた指先が赤い筋をエリウスの背中に幾本も刻んでゆく。
 「ひぐっ!!いっ!!あああっっっ!!」
 フェイトはその痛みから逃れようと大粒の涙を浮べて激しく頭を振る。そんなフェイトの痛みを少しでも和らげようと、エリウスは一気に彼女の全てを奪い去ろうとする。力強く彼女を押し込み、侵入を拒む最後の砦を一撃で散らす。その最大に激痛にフェイトは悲鳴を上げる。
 「いやぁぁっ!!いた・・・痛いぃぃぃっっ!!!」
 「大丈夫だよ、フェイト・・・大丈夫・・・」
 処女を失い泣き叫ぶフェイトの背中をそっと撫でながら、エリウスは彼女の痛みが収まるのを待つことにする。しかし、キュウキュウと締め付けてくるフェイトの膣内は少しでも気を抜けば、あっという間にイってしまいそうなくらいきつかった。それに耐えながらエリウスはフェイトの傷みが引くのを待つ。やがてフェイトの呼吸が落ち着きを取り戻し、背中に回した腕の力も弱まってくる。


 「・・・・・大丈夫??」
 エリウスがそっと尋ねるとフェイトは静かに、無言のままうなずく。まだ痛みは残っている。最初よりましになったというだけである。それでもこのままじっとしていることがフェイトには耐えられなかった。そんなフェイトの気持ちを汲んだエリウスはゆっくりと腰を動かしてフェイトの膣内を堪能し始める。激しく突いたりして傷ついた膣道を痛めつけるようなことはしない。ゆっくりと円を描くように動かしてゆく。そんなゆったりとしたエリウスの動きにフェイトはやがて甘い声を上げて、自ら腰をくねらせ始める。
 「あふっ・・・あああっ、んんんっっ!!」
 そのころになってエリウスはようやくフェイトを突き始める。まだ、腰をガンガン突きたてる様なことはしない。膣壁をペニスで優しく撫でるようにしながら動かしてゆく。その動きにあわせるようにフェイトの腰もゆっくりと動き始める。二人の腰が最初はペチペチと、やがてパンパンと音を立ててぶつかり合う。
 「あっ、あっ、あっ、エ、エリウス様、エリウス様!!」
 「大丈夫、僕はここにいるよ」
 エリウスの存在を確かめるようにすがり付いてくるフェイトにエリウスはそっと耳元で自分の存在を告げ、自分がここにいることを証明するように腰を叩きつけてゆく。二人は唇を重ねあい、お互いの存在を確かめ合う。そしてそれは二人が限界に近いことも示していた。エリウスは限界を目指して、フェイトを極みへと導くため、激しく攻め立てる。
 「あっあっっあっ!!も、もう・・・もうだめ・・・ああああっっっっ!!」
 「うくっ・・・イくよ、フェイト!!」
 限界を迎えたフェイトは大きく震え上がり、エリウスに縋りつく。その膣壁はペニスを激しく締め付けエリウスを絶頂へと導く。フェイトの子宮目掛けて力強く射精するエリウスの存在を感じながらフェイトはその意識を遠くへと飛ばしてしまう。ぐったりとした彼女を抱きしめながらエリウスはその首元を確かめる。そこには知識を示す紋章、本が浮かび上がっていた。”本の巫女姫”知識と魔術の天才、それが彼女の力であった。
 「フェイト・・・いまはゆっくりと休むといい・・・」
 ぐったりとしたフェイトを抱きしめながらエリウスは彼女の耳元でそう囁く。彼女の力が必要になるときは来る。そのときまでゆっくりと休むといい。今はそのときなのだから・・・


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