第4話 巫女姫
「さて、”巫女姫”とは何か。それを話す前に・・・」
アリスとレオナに"巫女姫"について語りだしたエリウスだったが、その話が始まったと同時に通路の奥から誰かが大声を上げてこちらに駆け寄ってくる。キールであった。目には大粒の涙まで浮べている。
「エリウス様!!ここにいらっしゃったんですね!?」
「どうしたんだい、キール?目に涙まで浮べて・・・」
キールのあわてた様子にエリウスは驚いた表情を浮べる。アリスとレオナも少しびっくりした様子だった。何事か起こったのかと思った。しかし、キールがないていた理由は他にあった。
「エリナ様とヒルデ様がお怒りですぅ!エリウス様がいつまで経ってもこないと二人そろってお怒りだそうです!」
よほどその怒り方が怖かったのだろう。そのためにないているのであった。
「しまった、忘れていた・・・まあ、ちょうどいいか・・・母上たちを交えて"巫女姫"の話はするとしよう」
「何故”巫女姫”の話にエリウス様のお母様が関わってくるのでしょう?」
エリウスの言葉に疑問を持ったアリスが率直に疑問を口にする。だがエリウスは笑うばかりで何も答えなかった。そして呪文を唱えダーク・ハーケン城へと転移する。
「レオナ姉様!アリス姉様!」
転移した先で待っていたステラが二人の姉に飛び込んでくる。久方ぶりにあう姉二人にすりすりと頬づりをする。そんな妹の頭を撫でながらアリスは愛しそうに抱きしめる。
「ステラ。いい子にしていましたか?」
「はい。もちろん!」
満面の笑みを浮べて即答する。もっともどこまで本当か分からない。この元気なお姫さまに城の者がどれだけ振り回されているか、レオナもアリスもよく分かっていた。しかし、ステラ自信は元気に振舞うことこそいい子なのだと思っているので怒る気はしなかった。怒るべきところだけ怒ればいい。二人はそう判断していた。
「ステラ姫。貴方もご一緒なさいますか?」
「?どこか行くのですか、エリウスさま?」
エリウスに声をかけられたステラは不思議そうな顔をする。
「僕の母上に会いに行くんですよ。お菓子などもご用意させますけど・・・」
「じゃあ、行く!!」
お菓子と聞いたステラは満面の笑みを浮べる。そんなステラを抱き上げたエリウスは、彼女を肩車するとアリスとレオナについてくるように促す。ステラを肩車したまま先を歩くエリウスを見つめながら、アリスとレオナは少し緊張した面持ちであとに続く。
「アリス。エリウス様の母上ってどのような方か知っていますか?」
「いいえ。私もお会いしたことがございません」
姉の質問にアリスは首を振って答える。確かにこの城に来てからかなり経つというのに一度もエリウスの母親にも魔神の王にも会ったことがなかった。不思議な話である。それに"巫女姫"の話とエリウスの母親がどう結びつくのかも分からなかった。
「お会いすればすべて分かりますわ」
首をかしげるレオナにアリスは静かにそう囁く。確かにここで首をかしげていても答えが見つかるとは思えなかった。ならばお会いしたときにすべて尋ねればいい。そう思うことにした。
「さあ、ここだよ。」
エリウスがようやく歩みを止める。すると眼の前の扉が左右に開きエリウスたちをなかに誘う。平然と中に入っていくエリウスに従ってアリスとレオナもあとに続く。室内には二人の女性がエリウスたちを待っていた。
「ただいま参りました、母上方」
エリウスはステラを肩から降ろすと恭しくお辞儀をする。アリスとレオナもそれに倣ってお辞儀する。自分たちを待っていた女セは目も冷めるほどの美女だった。さすがに一国の女王たちである。美しさも威厳も際立っていた。だがそれ以上に際立ったものがあった。
「わぁ、でっかいへびさんとくもさんだぁ!!」
二人の姿を見たステラが驚いた顔をして大声でそんなことを言う。あわててレオナが彼女の口をふさぐが遅かった。ともすると機嫌を損ねてしまったかもしれない。妹をここに連れてきたのは間違いだったのではないだろうか。後悔の念が浮かぶ。
「ほう、憂い子じゃのう。近こう寄れ」
巨大な蜘蛛の下半身をした美女が嬉しそうな顔をしてステラを手招きする。とてとてと近寄ったステラを抱き上げるとギュッと抱きしめ頬づりを始める。
「うーん、本当に憂い子じゃ。これ、名をなんと申す?」
「ステラ=ヴァン=ストラヴァイドです」
「おお、そなたがステラ姫か?うーむ、本当に憂い子じゃ」
ステラの自己紹介を聞いた女性はさらにステラを抱きしめ頬づりをする。するともう片側の女性から抗議の声を上げる。
「お姉様、独り占めは卑怯ですわ。私にも抱かせてくださいませ。」
横から下半身が蛇の女性がステラを奪い取ると抱きしめる。二人の魔族の間でかわいがられるステラは怯えた様子もなく逆に喜んでいた。その光景を見たレオナとアリスはホッと胸をなでおろす。と同時に予想に反したエリウスの母親の性格にそちらの方を驚いていた。
「母上方、ステラ姫がかわいいのは分かりますが、こちらには何のお言葉もないのですか?」
「ふん!呼んでもすぐに来ない親不孝な息子に用などないわ」
「まったくですわ。いつからこのような情の薄い子に育ってしまったのか」
エリウスの言葉に二人の魔族は泣いた振りをする。ステラがそれを慰めたりするものだから二人は更にステラをかわいがり始める。そんな二人を見ながらエリウスは、はぁとわざとらしくため息をつく。
「会いたいと仰るから前線より急ぎ戻りましたものを・・・御用がないのでしたら僕はこの辺で」
「ま、またぬか。冗談じゃ、冗談」
「そ、そうです。それとも本当にこの母たちがお前を情の薄い子と思っているとでも?」
そういって部屋を退出しようとしたエリウスをあわてて呼び止めると、二人の魔族は言い訳を始める。なんのかんのいいながら完全にエリウスにもてあそばれている。
「まあ、いいでしょう。アリス、レオナ。こちらがエレナ様。僕の産みの母だ」
そう言ってエリウスは蛇の女性を紹介する。
「そしてこちらが育ての母、ヒルデ様」
もう一人の蜘蛛の女性をそう紹介する。アリスとレオナも頭を下げ、二人に名乗りを上げる。するとエレナは嬉しそうな顔をして二人の顔を覗き込む。
「ふむ。ステラ姫も似ていましたが、貴方方もエリス姉様の面影が色濃く残っておられる」
まさか魔族から自分たちの母親の名前が出てくるとは思わなかったレオナとアリスは驚きを隠せなかった。喜んだのはステラだった。何せエリス女王はステラを生んですぐ亡くなっている為、彼女は母親の顔すら知らないのだ。
「ね、ね。小母ちゃまは母様のこと知っているの?」
「ええ、知っていますよ。何せエリス姉様とジーン王を結びつけたのはこの私なのですから」
更に驚愕の事実にレオナとアリスの混乱は極みに達した。何せ自分たちの母親が魔族と知り合いであり、更に姉様などと呼ばれる存在であったこと。更に父と母を結びつけたのがその魔族というのだから驚くなという方が無理がある。そんな混乱する二人を見てエレナはコロコロと喉を鳴らして笑う。
「混乱させてしまったようですね。私が貴方方の母上と知り合いと聞いて驚かれましたか?」
エレナの質問にレオナもアリスも首を振って肯定する。するとエレナは更に喉を鳴らして笑う。
「まあ、仕方がないですね。でも事実ですよ。もっとも私が魔族に転身する前の話ですが」
魔族への転身、それはレオナたちも眼の前で見てきた光景である。目の前の女性が前は人間であったといわれても本当かどうかなど分からない。だがここで自分たちをだましても何の得もないのだから事実なのだろう。
「ではどこからお話しましょうか・・・」
エレナはしばし考え込むと自分の昔話を始める。
「そう、あれは私がまだストラヴァイド光国の光の宮にいた頃のことです」
「光の宮?では貴方様は・・・」
「人であった頃の名はエレナ=レステーナと言いました」
レステーナと言う苗字には聞き覚えがあった。母エリスの実家の苗字である。そして母からエレナと言う妹がいた話も。ならば自分たちの眼の前にいるのが叔母に当たる人物である。そしてその叔母はアリスの前の"光の巫女"であったと言う。レオナはそのことを思い出しながらエレナの話に耳を傾ける。
「当時の私は”光の巫女”として不自由なく暮らしていました。ですが、何をするにも誰かがついてくる生活。それが息苦しく感じていました。そんなときでした」
エレナは懐かしむようにじっとアリスたちを見つめる。
「姉様が私の元を訪れてこう仰ったんです。好きな人が出来た。でもそれはかなわぬ恋だと」
その話を聞いたエレナは言葉巧みになねの好きな人を聞きだすのだった。そしてそれがジーン王であると分かると、今度は二人の間を取り持つようになった。取り立ててすることもない巫女の仕事を考えればなんとも楽しいことであった。程なくして二人は結ばれ結婚した。そんなふたりをエレナは心から祝福した。
「でも、それがすべての始まりだったのです」
そこまで話したエレナの表情が曇る。そしてしばらく沈黙が部屋の中に漂う。それをかき消すかのようにエレナは重い口を開いた。
「幸せそうな姉を見つめる私を見つめる嫌な視線があったのです。当時の私はそれに気づきませんでした。そしてその者の邪な想いはジーン王と姉様が他国へ会議のために出かけられたときに爆発したのです」
話すのもつらそうな表情を浮べながらもエレナは話を続ける。そしてその頬に涙が伝う。
20年前、光の宮・祈りの部屋。光の巫女のみが入室することを許された神聖なる部屋。そこで惨劇は起こった。
「んんっ!んんんっ!!」
両手を封じられ、猿轡をかまされながらもエレナは懸命に抵抗していた。光の巫女として神にその身を捧げてきた。いかなるものであろうとも彼女に触れることは許されなかった。たとえ国王であっても。だが男は今その巫女を組み敷いている。逃げるこの出来ない巫女を自分の好きなように出来るのだ。
「待ちましたよ、この日が来るのを・・・」
男がエレナに目をつけたのはもう5年も前のことだった。一目見たそのときから彼女に恋焦がれてきた。この男の異様な恋はいつしか支配欲に変わり、エレナを蹂躙したいと言う欲望へと変化していった。その欲望をかなえる機会を男は待ち続けた。そして王が国を離れた隙をつき祈りの部屋に侵入したのだ。
「ついに来たのだ、貴方を思う様蹂躙できる日が・・・」
男の目は血走り、口からはよだれが垂れている。欲望の二文字が男から先を見る力を奪っていた。いや、最初からこの男はそんなものを持ち合わせてなどいない。行き当たりばったりで己の欲望の赴くままに生きる男。それがこの男、ルード=ジナ=ストラヴァイドであった。王の弟として生まれて以来、好き放題に生きてきた。望めばなんでも手に入る。そう勘違いして生きてきた。その彼が唯一手に入れられなかった存在。それが光の巫女であった。
「苦しかったですよ。貴方を思わない日はなかったくらいですからね」
この男の異様な欲望は拒絶されればされるほど、光の巫女を求め、蹂躙したいと大きくなっていった。そして今それをかなえようとしているのだ。
「ああ・・・なんて綺麗な肌なんだ・・・この肌を犯したくて私は・・・」
組み敷いた少女の肌を撫で回す。エレナの背筋にゾクゾクと悪寒が走る。エレナはこの男を心のそこから嫌っていた。謁見を求められても拒絶し自分から遠ざけるようにしていた。もしかするとこの男の欲望に無意識のうちに気づいていたのかも知れない。だが国王が国を離れた隙をつかれ、今こうしてルードに組み敷かれている。助けてくれるものなど誰もいなかった。
「おしゃべりはこれくらいにしましょう。もう私は我慢できない!!」
ルードはそう言うとエレナの神衣を力任せに引き裂く。程よい大きさを持った乳房が露になる。エレナの体が震えると、それに合わせるように乳房もフルフルと震える。それがルードを更に興奮させる。
「なんて綺麗な肌なんだ・・・それに胸も大きい・・・」
ルードは力任せにエレナの両乳房を掴む。そして力の加減も関係なく揉み回す。おぞましい感覚がエレナの体を駆け巡る。それはとてもではないが耐え難いものだった。
「んんっ!!っんんんんっっ!!」
身をよじり、ルードを跳ね除けようとするが、どうすることも出来なかった。男と女ということを差し引いても、エレナとルードでは力の差がありすぎた。
「すべてわたしのものだ。わたしのものなのだ。この胸も、唇も、そしてこの桜色の乳首も!」
ルードはそういいながらエレナの乳首に舌を這わせる。生暖かいおぞましい感触にエレナは体を震わせる。背筋に悪寒が走る。あまりの気持ち悪さに体をよじり逃れようとする。が、ルーだからは逃れられない。何度も何度も乳首を嘗め回される。その度におぞましい悪寒が体中を駆け巡る。
「気持ちいいだろう?ほら、もっと感じておくれ」
ルードは調子に乗ってエレナの乳首を口に含み力いっぱい啜り上げる。そのまま舌先で乳首を舐め上げてくる。瞬間、エレナの体が大きき反り返る。そして全身から力が抜けてゆく。荒い息の中、エレナは自分になにが起こったのかわからず脱力したまま、呆然としていた。
「いった、いったんだね・・・うれしいなぁ・・・」
ルードは脱力するエレナを見下ろしながらいやらしそうな顔を近づけてくる。なにを言っているのかエレナにはわからなかったが、視線をそらし、そっぽを向く。そんなエレナを無視してルードはいそいそと自分の服を脱ぎ始める。服を脱ぐのがもどかしいようにもつれながらも急いで脱いでゆく。
「ほら、見てごらん。私のはこんなに興奮しきってしまっているんだよ。君を汚したくて、犯したくて」
服を脱いだルードは自分のペニスをエレナの目の前に見せ付けるようにして差し出す。赤黒い血管の浮かび上がった物体がエレナの目の視界に飛び込んでくる。ビクビクと震えるその物体にエレナは恐怖した。
「すぐにでも入れたいけど、ここは我慢しなくちゃね・・・でも、一度出しておかないと・・・」
ルードはいやらしい目つきでエレナを見下ろす。そして何かを思いついたように彼女に馬乗りになる。そしてその大きめの両房でペニスを挟み込むと、そのまま擦り上げ始めるのだった。熱いペニスを乳房で包み込むようにしてルードは腰を動かす。包み込むような柔らかさがなんとも心地よかった。
「ああ、いい・・・いいよ・・・なんて気持ちいいんだ・・・」
激しく腰を動かしてペニスを乳房で扱き上げる。我慢していたそれは更に大きさを増し、エレナの乳房の中で激しく脈打っているのが分かる。目の前で出たり入ったりするペニスを目の当たりにして、エレナは恐怖し、震えるばかりであった。
「ああっ!もう、もうだめだ!!でるっ!!」
ルードが大きく震えた次の瞬間、エレナの視界に白い液体が降りかかってきた。それは熱く粘つき、そして臭かった。それが顔に大量に附着したのだ。嫌な顔もしたくなる。ルードはその液体を手に絡めとると、エレナの顔や胸などに塗りたくる。
「熱いだろう?これが私の思いだよ。でも一回じゃあ収まらないんだよ・・・」
ルードはそういいながら股間のものをエレナに見せ付ける。そこは精を放ったにもかかわらず、萎えることなく元気なままだった。
「今度はこれを君の中にはなってあげるからね。いっぱい、いっぱい・・・」
「んんんっっ!!んんっっ!!」
もはやこの男は正気ではない、いや最初から正気などではなかったのだろう。エレナの拒絶の声も、物事の分別ももはやつかなくなっていた。そのままエレナににじり寄ると、彼女の神衣をすべて剥ぎ取ってしまう。淡い黒色の恥毛が、白い太股が露になる。それだけでもルードは狂った。
「ああ、綺麗な足だ。何ものにも勝る綺麗さだ」
そんなことを口走りながらエレナの足を舐めまわす。足の指先から踵、脹脛、太股、左右余さず丹念に舐めてくる。それは気持ち悪さしかエレナには無かった。それでもルードはやめることは無かった。そしてついにルードの舌がエレナの秘密の花園に到達する。必死に閉じようとする足を無理やりに押し広げて、じっくりと観察する。
「なんて綺麗さだ・・・さすがにまだ男を知らないだけのことはある」
秘所をじっくりと観察され、エレナは顔から火が出そうなほど恥ずかしかった。だがそんな彼女の思いを無視してルードはそこをべろりと舐めあげる。おぞましい悪寒が体中を駆け巡る。更に陰唇を左右に割り開くと膣口に舌を差し込んでくる。先ほど以上の悪寒が走り抜ける。
「なんておいしい蜜なんだ・・・舐めても舐めても溢れてくる」
膣口に舌を差し込みながらルードはおいしそうに喉を鳴らしてエレナの蜜を舐め取ってゆく。恥ずかしさに震えながらも、エレナは心の中で必死に助けを求めた。だが、それに答えてくれるものはいなかった。”光の巫女”ともてはやされても、結局何も出来ない一人の少女でしか無かったのだ。悔しく、そして悲しかった。
「そろそろ・・・」
愛液を舐めるのに飽きたのかルードは股間から顔を上げる。口元を拭うと、ペニスを軽く扱き上げる。腰をエレナの股間に割り込ませてくる。秘所に何か熱いものが触れる。これだけは絶対に許してはならない。巫女として神にその身を捧げたのだ。こんな男に捧げるわけにはいかなかった。
「んんんっっ!!!んんんんんっ!!」
頭を振って懸命にルードから逃れようとする。だが両腿を抱え込まれ逃げることすらままならない。興奮しきったルードが自分の股間を何事か動かしている。それが終わるとニタリと笑う。準備が整ったのだ。エレナは懸命に逃れようとするが、無駄な足掻きだった。
「いくよ〜〜〜・・・」
ルードはへらへら笑いながら腰を押し進める。穢れを知らないエレナの膣道を引き裂いてルードのペニスが侵入してくる。その激痛にエレナは全身を震わせるだけだった。悲鳴すら声に出ない。更にルードのペニスは奥に進み、エレナの処女膜に到達する。しかし、ルードは何のかんがいも無く力任せにそれをこじ開ける。
「・・・!!!!!!!っっっっ!!!!」
全身を引き裂くような激痛。声にならない悲鳴。治まらない痙攣。すべてを失った痛みはエレナの心壊してゆく。そんな彼女を無視するかのようにルードは腰を振り、ペニスを血まみれの膣道で扱き上げる。己の欲望を満たすがためだけに。
「ああっ!なんて気持ちよさだ・・・天国に上るような気持ちとはこういうことをいうんだな、エレナ!!」
勝手なことを口走る。エレナからすれば地獄に叩き落されるような想いだったに違いない。そんな相手を思いやる心などこの男は持ち合わせていなかった。ただ己の思い通りに腰を振り、ペニスを扱き上げ、己を高みへと導いてゆく。それだけだった。
「ああ〜〜っ!もう、もう、もうっ!!」
激しく腰をエレナに叩き付けながらルードは己の限界が近いことを知らせてくる。毛¥もうエレナには抗う余裕すらなかった。ただルードのなすがままであった。その瞬間が近づいても抗おうとはしなかった。
「くおぉぉぉっ!!!もう・・・だめだ!!!」
ルードは大きく体を震わせて己の欲望をエレナの体内に吐き出す。先ほどの熱い粘液がエレナの子宮をたたく。それすらもエレナは何の思いも抱かずに受け流していた。すべての精をエレナの子宮に注ぎ込むと、ルードは体を起こす。それで彼の欲望が収まるはずが無かった。
「まだ、まだ、まだだからね・・・」
狂った瞳でエレナを見下ろす。まだ狂乱の宴からエレナは逃げることが出来なかったのである。
「ど、どうしよう・・・」
翌朝、ルードは祈りのまでオロオロとしていた。その足元にはエレナが死んだ魚のような目をしたまま、寝転がっていた。ピクリとも動こうとはしなかった。全身精液にまみれ、ヴァギナからもアナルからもとめどなく精液が溢れてくる。一晩中ルードが犯しつくした成果であった。
「どうしよう、このままじゃあ、このままじゃぁ・・・」
今になって事の重大さに気づいたルードであったがどうすることも出来ない。光の巫女を犯したなどとなれば、以下に王弟とはいえ、その罪は免れないだろう。頭を抱え込んで悩み始める。このままでは自分の命に関わることだ。
「こ、この女さえいなければ・・・そうだこの女のせいなんだ・・・」
己の罪に押しつぶされたルードはすべてをエレナになすりつける。そしてこの女さえいなくなれば、自分は助かると思い出していた。そう思うと行動は早かった。呆然とするエレナを袋詰めにすると誰にも気づかれないように光の宮を後にする。
そして自分の子飼いの傭兵にエレナをヴェイス国に捨ててくるように依頼する。そしてそのままこの国からいなくなることを言い含めて。一生遊んで暮らせるだけの金を渡すと、その傭兵とはそれまでだった。
数日後、光の宮から光の巫女が姿を消したことは国中に広まった。原因が分からずどよめく中、ある噂が人々の口の端に上がった。それはエレナが魔族にさらわれたというものだった。噂は噂を呼び、いつしか人々はそれを真実として受け止めるようになって来た。そしてある国への怒りも増大するのだった。それは魔族の国・ヴェイスであった。ヴァイス滅ぼすべし、そんな気運が国中に高まってゆくのであった。
そんな中、当のエレナは確かにヴェイスにいた。傭兵に連れられてヴェイスに渡った彼女は妖魔の森の奥深くに捨てられていた。意識を取り戻した彼女はぼろきれのような衣服を体に纏わせ、素足のまま森をさまよった。どちらに歩けばいいかなどまるでわからない。ふらふらと当て所も無く歩いてゆく。そんな彼女をいくつもの瞳が睨みつける。狩場に獲物が入ったのだ。その数はあっという間に増えてゆく。
「・・・・・・」
心の壊れたエレナはふらふらとしながらただそれを見つめるだけだった。光る目の正体、それはゴブリンたちであった。下級妖魔の彼らは雑食である。何でも喰らい、何でも啜る。彼らの狩場に入ってきたエレナはまさに絶好の獲物だった。彼らににらまれてもエレナには抗う気力も力も残っていなかった。近寄るゴブリンの姿、それがエレナが最後に見た光景だった。エレナの意識は完全に闇に飲み込まれる。
「これが二十年前に起こった光の巫女失踪の全容です」
衝撃的事実にレオナもアリスも言葉が無かった。またしても叔父がこのような非道なことをしていたのだ胸の痛む想いだった。もしここに来る前の自分だったならばこんな話し信じなかったかもしれない。だが今は違う。すべて信じることが出来る。こんな叔父だからこそ父王を殺して王位を簒奪したのだ。
「エレナ様、我が叔父のこととはいえ、まことに申し訳ありません・・・」
レオナもアリスもただ頭を下げるしか手は無かった。それでエレナの心が癒されるとは思わない。だが下げずにはいられなかった。そんな彼女体を制し、エレナは厳かに話し出す。
「そのようなことをなさらないで、レオナ姫、アリス姫。あのようなことがありましたが、私は真に愛する方にお会いできたのですから」
嬉しそうな表情を浮べてエレナは話を続ける。妖魔の森で倒れた彼女が次に目を覚ましたのはベッドの上であった。大きなベッドの上に寝かしつけられ、誰かが看病してくれていた。それは美しい女性であった。がその下半身は蜘蛛であった。エレナの顔が恐怖に歪む。これがヒルデとの出逢いであった。
「そのとき姉様の姿に私は大いに怯えてな・・・」
「まったく、あのように怯えるとは思わなかったぞ?」
懐かしむように話し合いながら、エレナは話を続ける。魔族が自分を助けたことに驚きながらも人にされたことを思うと、純粋な彼女に好感を持つのだった。そして運命の出逢いが訪れる。
「その後わたしがお会いしたのがバーグライド様でした」
初めて会った魔族の王は気さくで、とても魔族とは思えない優しさに満ちた魔族だった。エレナの中ではルードとバーグライド、どちらが魔族でどちらが人からわからなくなるほどだった。そしていつしかバーグライドへの思いは恋に変わっていった。そしてその想いを妻であるヒルデは許すのだった。
「だってかわいい妹が出来るのですよ?何を反対する必要があるものですか」
当時を振り返ってヒルデは笑いながらそういった。そして二人は結ばれた。運命がそうなることを望んだかのように。そしてすべたが動き出したのだった。
「すべてが終わったと、バーグライド様は私にこう仰いました。”我がすべての力はそなたに注ぎ込んだ。我はしばしの眠りに就く”と。そしてそのお言葉どおり眠りにつかれました」
エレナは大いに取り乱した。自分のためにバーグライドが消えたと思ったからだ。だがヒルデはそれをなだめ、これが定めである事を語った。翌日その言葉の意味がエレナにはわかった。自分がバーグライドの子供を身ごもったのである。そして3日後、無事出産した。
「それがエリウスです」
愛しい我が子を見つめながらエレナはそういった。わずか一日で受胎し、3日で出産したというのだ。非常識にもほどがある。だが、エレナの話はそこで終わらなかった。
「エリウスを出産する際に私もその力のすべてを吸い取られる感覚でした。本来ならその場ですべての力を吸い尽くされて死んでいたところを、姉様に助けられたのです」
「当たり前じゃ。折角出来た大切な妹をむざむざ失ってたまるか」
ヒルダはエレナの頭を撫でながらそんなことをいっている。つまりそのときにエレナは人間から魔族に転身したのであろう。だがそれでも力のすべてを失ったのだ。十五年もの長きに渡って眠り続けていたという。その間ヒルデがエリウスを育ててきたのだ。
「エリウス様の生誕とエレナ様が魔族になられた経緯についてはよく分かりました。それと私たち"巫女姫”といかなる繋がりがあるのでしょう?」
話を聞いていたレオナは正直に自分の疑問を尋ねてみる。エリウスはもっともだという顔をしている。
「レオナ、君は創世神話を知っているかい?」
「創世神話、ですか?」
知らないはずがない。幼い頃からこの世界の人間ならば嫌でも聞いてきた話しである。素直に頷く。するとエリウスはそれを話す様に促す。レオナは素直に話し始める。
「創造と、平和を司りし光の神・ユーノスは世界を作り出した。人、エルフ、ドワーフなどの種族を作り、世界は繁栄した。だが、闇より破壊と殺戮を司りし暗黒神ザンガードが現れ世界は混乱と戦いの世界へと変貌していった。世を守るため、ユーナスはザンガードに戦いを挑む。人、エルフたちも光の神に仕えこれに立ち向かった。ザンガード、己が眷属として魔族と妖魔を生み出しこれに抵抗する。」
レオナは浪々と神話を朗読する。幼き日より聞かされてきた神話である。間違えるはずがなかった。
「ユーナスとザンガード、お互いに譲らず戦いは長きに渡った。ユーナス己が分身たる”光の勇者”と”光の巫女"を生み出し、ザンガードに対する。”光の勇者"、”光の巫女"の助力によりついにザンガードを討つ。されどユーナスも力尽きその肉体を失う。”人々よ、勇者と巫女を守りたまえ。魔族はかの者達をいけにえにザンガード復活をもくろんでいる。それを阻止し給え。”この言葉を残しユーナスは悠久の果てに消えん」
レオナは一切よどむことなく一気に創世神話を読み上げる。それを聞いたいたエリウスはクスクスと笑っている。まさか自分が間違えたのかと思い、レオナは心配になってきた。だが、どうもそれは違っているようだった。
「よく出来た逸話だね。よくそれだけの嘘を並び立てたものだ」
エリウスは笑いながらそんなことを言う。まさかそんなことを言われるとは思わなかったレオナは唖然とする。自分が幼き日より聞かされてきた神話が嘘偽りだというのだ。驚くと共に、何か汚されたくない何かを汚された気がして腹が立ってきた。
「レオナは今の話の矛盾にまだ気づいていないみたいだね。アリス、君はどうだい?」
「分かりました、エリウス様。この神話は人の世で作られた逸話なのですね・・・」
アリスはエリウスの言わんとしていることを理解していた。レオナももう一度冷静になって神話を思い返してみる。脳裏につらつらと話が思い浮かぶ。そしてある疑問が生じた。
「レオナも分かったみたいだね」
「はい。ザイガードは破壊と殺戮の神なのにどうやって己の眷属を創造したのでしょう・・・」
レオナはようやくアリスの言っていた矛盾に気づいた。破壊と殺戮の神が創造などできるはずがない。何故幼き頃より聞いていてそこに気づかなかったのだろうか。いや、もしかすると幼き頃より聞かされていたからこそ、それが当たり前と思っていたのかもしれない。
「その通りだよ、レオナ。いいことを教えてあげよう。闇の眷属といわれる我々の間ではユーナスもザイガードも存在しない神なんだよ。」
衝撃的事実であった。自分たちが信じ続けてきた神話がすべて嘘であったというようなものである。
「我々の間で神というのは創造と混沌の神・ヴェイグサスだけだよ」
エリウスのいう神の名前をレオナは聞いたことがなかった。つまり誰かが自分たちが信じてきた神話を作り上げ、エリウスのいうヴェイグサスを覆い隠してしまったことになる。それがどういうことなのかレオナには分からなかった。それでも、エリウスの言っていることに嘘偽りがないことだけはよく分かった。
「さて、そろそろ話をしてあげよう。太古の昔、この世界を創造したヴェイグサスはこの世界に生きる新しい生命を作り出した。強大な力を持った魔族、優秀な知力を持った人間、長寿を誇るエルフ、強靭な肉体を持ったドワーフ、様々な特徴を持った種族を生み出し、この世界にはなっていった」
初めて聞く話にレオナは息を呑んで聞き入っていた。それはまるで自分の知っている話と違っていたからだ。
「ヴェイグサスはこの世界に己の力を分け与えた十二人の代行者を降臨させ管理させることとした。その者たちのことを人々はこう呼んで敬い奉った、”巫女姫"と」
自分が聞きたがっていた言葉がこのようなところで出てくるとはレオナは予想していなかった。それはアリスも同様であった。”巫女姫"とは創世神の代行者、自分があれほどの力を得られたわけもよく分かった。そしてこの姿も。そんな二人をよそにエリウスの話は先に進む。
「更にヴェイグサスは”巫女姫"を補佐するものを九人生み出した。そのものたちには様々な知識を分け与え、”巫女姫"を補佐させた。人々はそのものたちを”九賢人"と呼んだ。世界は”巫女姫”に管理され繁栄を極めた。だが、”九賢人"は自分たちが支配する世界を思い描き始めていた。”巫女姫"がいる限り、ヴェイグサスの意のままであると。そこで様々な策を練り、”巫女姫"に転生の封印を施し、その力を封じ、ヴェイグサスの力を封じる策に出た。まさか"九賢人が"裏切るとは思わなかった”巫女姫”たちは次々に力を封じられ人として転生していった」
そこまで話すとエリウスは大きく息を吐く。想像を超える話であった。自分がつい先日まで人の姿をしていたのはそう言う意味があったのだ。そしてそのことが嘘にはレオナにもアリスにも思えなかった。おそらく自分の中に眠る”巫女姫"の力が今の話を肯定しているのだろう。エリウスは更に話を進める。
「"巫女姫"を封じた"九賢人"は今度はヴェイグサスに牙を向いた。力の半分を封じられていたヴェイグサスは抵抗したが、”九賢人"の作り出した力に屈し、ついにその神体を封じられそうになった。そこでヴェイグサスは己の肉体を二つに分け封印を回避した。1つは魔族の王に、1つは"巫女姫"の一人に。いつか二人がひとつになったとき復活するように」
衝撃的事実がレオナとアリスに告げられる。たった今エレナが話したことがこれに当たるのだ。もし今話したことが真実であるならば、エリウスとは・・・二人の視線が集中するなか、エリウスはそっと瞳を開く。そして厳かに告げる。
「そう、僕が創造神ヴェイグサスだよ」
"巫女姫”の存在。エリウスの語った話、そしてエリウスの圧倒的存在感。どう考えても、偽物には思えなかった。それは自分の中の"巫女姫"が肯定している。おそらく自分の中の"巫女姫"の力がエリウスの中のヴェイグサスと呼応しているのだろう。
「”九賢人”は僕の復活を大いに恐れた。だから存在もしない神をでっち上げ、ありもしない神話で人々をだましたんだ。」
レオナはこれですべて納得がいった。自分たちの知る神話はエリウス復活を阻止するために、魔神の王と巫女が出会わないようにするため。出会ってしまえば暗黒神が復活するなどといわれれば誰でも懸命にそれを阻止するだろう。もっとも叔父のような愚か者のおかげでそれはなったのだが・・・
「そして私たち"巫女姫"もまた”九賢人”の管理下に置かれていた。そうなのですね、エリウス様」
厳かに尋ねるアリスの質問にエリウスは静かに頷く。その監視場所が光の宮だったのだろう。幼きときに巫女としての力を発揮したアリスはすぐにそこに入れられ不自由な暮らしを余儀なくされていた。行ける場所は宮と王宮の中だけ。街の中など決して行かせてもらえなかった。もしかしたら自分も”剣の巫女"の力が発現していたら同じような暮らしを強要されていたに違いない。そう思うと背筋が寒くなる。
「エリウス様、少しよろしいでしょうか」
アリスのことを考えていたレオナにふと疑問が生じた。それをエリウスに問いただしてみることにする。
「アリスはエレナ様と同じ”光の巫女"。確か巫女は魂でその力が引き継がれるのでは?」
「そうだよ。人である母上は死んだ。まだひとつになっていなかった"巫女姫"の魂は転生し、人である母上の魂はここで転生を果たした。そう言うことだよ」
「つまり・・・」
「転身をした君は完全な"巫女姫"だが、アリスはまだ転身をしていない。もし死んだらアリスの魂と"巫女姫"の魂に分離してしまうということさ」
納得がいった。これが"九賢人"が施した封印なのだろう。転身をしなければその力は人と変わらない。それはクライゼに挑み敗れた自分がよく分かっている。直後転身した自分はクライゼを圧倒した。つまりは"巫女姫"の力を人の魂で封印しているのだ。転身することでそれが解放される。
「でしたらアリスの早く・・・」
アリスも転身してしまった方がいい。そのほうがアリスのためだ。だがエリウスは静かに首を横に振る。
「アリスの転身は最も強固な封印によって阻止されている。この封印をとくには他の11の"巫女姫"の力が必要だろう」
つまりアリスは自分たちが11人そろわない限り真の姿も能力も取り戻せないのである。それがわかっていてもアリスは優しい笑みを浮べている。
(守ってみせる。何者が来ようとも、この愛しい妹たちとエリウス様は!!)
いつしかレオナの心の半分をエリウスが支配していた。奴隷になることを誓わせ、無理やり処女を散らせた憎いはずの男が愛しくてたまらなかった。偽らず自分に接してくれるこの人のために自分は全力で手助けしようと思うようになっていた。
「さて、これで"巫女姫"のことも、世界の偽りについてもよく分かっただろう?」
エリウスは静かにレオナたちに語りかける。自分たちが見聞きしてきた世界がいかに狭いものであるかよく分かった。そしてその世界を作り出した悪しき存在も。
「倒すべきは”九賢人”、助け出さねばならないのは残りの”巫女姫"ですね?」
「そうだ。そしてその一人が前議長リゲルグの愛娘・シェーナだ」
エリウスの言葉にレオナは頷く。エリウスがシェーナに固執していた理由はここにあったのだ。助け出し、解放しなければならない自分の分身、愛しき娘。その一人だからこそ固執したのである。
「では、母上方、僕は魔天宮に戻ります」
「気をつけるのじゃぞ?」
「無理はせぬようにね」
いつしか眠りについてしまったステラを抱きながらエレナとヒルデはエリウスたちを見送る。エリウスはもう一度母たちに一礼すると部屋を辞す。レオナとアリスもそれに習う。
「さあ、戻ろう。すべてはこれからだ」
「はい、エリウス様」
エリウスの言葉に二人な力強く頷く。まだ十人もの"巫女姫"が残されているのだ。それを見つけ出し、解放しなければならない。そしてそれを指を咥えてみているような”九賢人"たちではないだろう。この先どのような激戦が待ち構えているか分からない。だが、アリスもレオナも心は落ち着いていた。エリウスについてゆけば大丈夫。そう思えるからだった。
戦いはまだ幕を開けたばかりである。
→進む
→戻る
→ケイオティック・サーガのトップへ
|