第1話 魔法剣聖、華麗に爆誕!!!


 「ふにぃぃ〜〜〜〜ん!!」
 『何を逃げている、この軟弱モノ』
 「だってだって怖いんだもん!!」
 涙交じりの顔を引きつらせながら少女は全力で大通りを駆け抜ける。まだ幼い顔立ちは恐怖に歪み、目からは大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちる。真っ赤なランドセルをゆらゆら揺らしながら必死になって走るそんな少女を叱咤する声が少女の耳に響き渡る。今すぐ引き返せと続けるその声に少女は激しく頭を振って嫌がる。怖いものは怖いのだから仕方がない。第一弱虫の自分にこんな仕事最初から無理だったのだ。
 「こんな怖い目にあうならもうしたくな〜〜〜い!!!」
 『何を世迷言を・・・そなたにしか出来ぬことなのだぞ?』
 「それでも怖いのはいや〜〜〜!!」
 自分にしか出来ないこと、そんなこと少女にもよく分かっていた。分かっていてもいざその場に立つと足が竦んでしまって、回れ右してその場から逃げ出すのが精一杯であった。わき目も振らず、後ろも振り返らないでただひたすらここまで駆け抜けてきた。そんな少女を声はさらに叱咤する。
 『まったく情けない・・・そんなことでわれの・・・』
 「だから!わたしには出来ないって・・・」
 『そのようなこと言ってはおられぬぞ?ほれ、後ろに・・・』
 「え???みぎゃぁぁぁぁっっっ!!!」
 声に促されて後ろを振り向いた少女は自分のすぐ後ろに黒い影を見つけて悲鳴を上げる。その影は人であった。いや、かつて人と呼ばれたものだった。お腹を上にして四つん這いになって追いかけてくるものを人と呼びたくはない。目は白目を向き、だらしなく開いた口からは涎が止め処なく溢れてきている。
 「何で、何でこいつがここにいるの???」
 『それはそなたを標的にしたからであろう?』
 「うそ〜〜〜〜!!!」
 信じられない言葉に少女はこの世のものとは思えない悲鳴を上げる。まさか自分が狙われるとは思いもしなかったからだ。こんなに弱い、幼い自分をあんな化け物が狙うのかわからない。しかし、四つん這いになって自分を追いかけてくるその不気味な化け物にその理由を問うても答えてくれるはずがなく、説得して止めてくれるはずがなかった。
 「ふえ〜〜〜ん、なんでこんなことになったのよ〜〜」
 少女は大きな声で泣き叫びながら短い脚を懸命に回転させて追っ手から逃れようとする。その距離は徐々に徐々に狭まってきているが、少女がその事実を知ることはない。ただ前だけを見て必死になって逃げるだけだった。自分のみに降りかかる不幸に涙しながら・・・



 不幸の始まりは数時間前・・・



 私立穂都留学園初等部3年3組遊部りのん、それが少女の名前である。今日も今日とてりのんは苦手の体育の授業の補習、逆あがりに悪戦苦闘していた。いくら蹴り足を上に上げてもお尻から落下してしまう。たった一回回るだけでいいはずなのにいつまでたっても終わらずに困り果てていた。
 「もう少しだよ、りのんちゃん」
 「まあやちゃん・・・うん、がんばる!!」
 教師にも見捨てられるほどのウンチ振りにも嫌な顔一つせずに付き合ってくれる親友、郷妙寺まあやのやさしい励ましにりのんはガッツポーズを取って再度逆上がりに挑戦する。両目を閉じて思い切り足を蹴り上げる。が、後一息というところでその勢いは弱まってしまい、またしてもお尻から落下する羽目になりそうだった。そんな勢いを失ったりのんの足を誰かが軽く圧して勢いを取り戻してくれる。勢いを取り戻した足は大きな円を足掻き、りのんの体も円を描いて地面に着陸する。悪戦苦闘しての達成にりのんは喜びを爆発させる。
 「やった〜〜〜できた〜〜〜!!!」
 「おめでとう、りのんちゃん!!」
 「まあやちゃんが助けてくれたからだよ!!」
 「わたしじゃありませんよ。ほら後ろの方が・・・」
 「ほへ??」
 にっこりと笑うまあやはりおんの背後を指差す。その指の先を追うようにりおんは自分の視線をそちらに向ける。そしてりおんはそこに自分を見つめる優しい笑顔を見つける。満面の笑みを湛えた見慣れた顔、その顔がりおんはとても好きだった。だからりおんも満面の笑みを湛えてその笑みの主の名前を呼ぶ。
 「りさお姉ちゃん!!!」
 「りのんちゃん、またお残りですか?」
 りのんに名前を呼ばれた少女遊部りさは満面の笑みを湛えたまま尋ねてくる。その問いかけにりのんは恥ずかしそうに頷く。もちろんりさはそのことを問いただしているわけでも、咎めているわけでもない。いつものように屈託のない、悪気のない問いかけであった。だからりのんが悲しそうに頷くと、りさも悲しそうな顔をする。
 「まぁ・・・そんな逆上がりくらい出来なくても何の問題もないのに・・・」
 「でも、できないもわたしだけだから・・・」
 「そうなのですか?でも、りのんちゃんならすぐ出来るようになりますよ。ね、まあやちゃん?」
 「はい!りのんちゃん、頑張り屋さんですから!!」
 何の根拠もなくりさとまあやはりのんの成功を承認してしまう。中学三年生で成績優秀、スポーツ万能のりさと同じくスポーツ万能なまあやに出来るなどといわれてりのんは恥ずかしくなって来てしまう。顔を赤く染めてモジモジとしていると、その頭をりさは優しく撫でてくれる。
 「頑張ってね、りのんちゃん」
 「うん!頑張るね!!」
 大好きなおねえちゃんの励ましにりのんはガッツポーズを取って答える。そしてその姉の姿が消えるまで何時までも手を振り続けているのだった。が、姉とまあやのお墨付きを得たが、それには何の根拠もなく、結局りのんが自力で逆上がりが出来るようになったのはとっぷりと日が暮れてからのことだった。ようやく逆上がりから解放されたりのんはまあやとともにランドセルを背負って運動場を横切っていた。疲れ切った顔からは溜息しか漏れてこない。
 「ごめんね、まあやちゃん。こんな遅くまで・・・」
 「いいですよ。りのんちゃんの頑張るお姿が見れただけでもあたしは幸せですから!」
 りのんは疲れ切った顔をしながらも最後まで付き合ってくれたまあやに感謝の言葉を述べる。するとまあやはにっこりと笑って逆に嬉しそうな顔でりのんの手を握り返してくる。その温かさとやさしさが手の平を伝ってりのんに伝わってくる。それがりのんにはとても嬉しかった。
 「さ、早く帰ろう?」
 「はい・・・って、あら???」
 「どうしたの、まあやちゃん??」
 「お空が急に真っ暗に・・・」
 まあやの言葉どおり、いつの間にか真っ赤な夕焼けは真っ黒な雲に隠れその姿を隠してしまっていた。薄気味悪いその黒い雲にりのんは震えが来るのを感じた。何かよくないことが起こるかもしれない、そう感じたりのんはまあやを連れてその場から逃げ出そうとする。そんな二人の頭上を覆い尽くした黒い雲はゴロゴロと音を立てて稲光を纏い始める。
 「!!りのんちゃん、危ない!!!」
 「へ??きゃあああああぁぁぁっっっ!!!」
 大きな稲光はやがて大地に降り立つ。光の閃光が黒い雲と大地を繋ぎ、辺りを閃光が走る。黒い込むから落ちた雷はりのんとまあやに襲い掛かるように堕ちてくる。それを察したまあやは慌ててりのんに声を掛ける。しかし、落雷から逃げられる人間などいるはずもなく、りのんに出来たことはまあやの手を離すことくらいだった。
 「うぎゅぅぅぅっっ・・・」
 落雷を直撃で受けたりのんはふらふらとその場にへたり込んでしまう。落雷という割には体へのダメージはなかったし、少し頭がふらふらする程度のものだった。ふらふらとする頭を押さえていると真っ青になったまあやが慌てて駆け寄ってくるのが見える。相当心配しているらしい。
 「りのんちゃん、大丈夫???」
 「うん、大丈夫だよ。平気、平気!!」
 『をい・・・』
 「だから平気だってば!」
 『をい、きさま!!』
 まあやの心配を解消しようとりのんはガッツポーズを取って見せる。実際少しくらくらする程度で体の痛みは感じられなかったのだから、過剰な心配は逆に悪い気がしてくる。だから自分が平気であることをアピールしようとするが、そんなりのんの耳元に誰かが低い声で語りかけてくる。最初はそれをまあやと勘違いしていたりのんだったが、怒りに満ちたその声はどう聞いてもまあやの声には聞こえなかった。ようやくそのことに気付いたりのんは慌てて辺りを見回す。しかし周囲には自分とまあやしかおらず、ほかに人影は見当たらなかった。
 「だれ??もしかして、お化け・・・・」
 『誰がお化けじゃ、失礼な娘だ・・・』
 誰もいないのに声が聞こえてきたのでりおんは怯えた表情を浮べる。お化けとかそういった類のものがりおんは大の苦手であった。だからお化けが出たのかと怯えていると、声の主はさらに怒った声を上げる。その声にりおんはさらに怯えてしまい、さらに辺りを見回す。そこでようやく宙に浮く小さな光の塊を見つけるのだった。
 「なに、これ・・・」
 『突付くな、無礼者が・・・』
 光の玉が宙にいういていることに驚きながらりおんはそれを指先で突付いてみる。すると先ほど聞こえてきた声がりおんを怒鳴りつけてくる。びっくりしたりおんはその声がその光の玉から聞こえてくることをようやく理解する。びっくりしながらその玉を覗き込むと、その中からりりしい顔立ちの小さな女の子がこちらを睨みつけてきていた。
 『貴様、何故このようなところに突っ立っておった!!?』
 「えっ?えっ?なに、これ・・・」
 『人の問に答えよ、この愚か者!』
 「いひゃい、いひゃい!!!」
 手の平サイズの人間が宙に浮いて自分を睨みつけてきていたのだからりのんが驚くのも無理はなかった。むしろ何故その小さな女の子が怒っているかの方が問題であった。首を傾げるりのんの鼻先をその小さな女の子は思い切り摘み上げてくる。その体からは想像も付かないような力で鼻先をつままれたりのんはあまりの痛さに悲鳴を上げる。
 『そなたが着陸地点に突っ立っておったから我の体と融合してしまったではないか!!』
 「へ?体と融合???」
 小さな女の子はさらに勢いを増して捲くし立ててくる。女の子に寄れば自分がここに降り立とうとしたところ、ちょうどそこにりのんが立っていたため、避けきれずに激突してしまったらしい。しかもその衝撃で女の子の体は分解、りのんの体の吸収、融合されてしまったというのだ。ようやく事の次第を理解したりのんは自分の体を確認する。
 「どこも変わった風には見えないけど・・・」
 『そなたの遺伝子レベルで融合しておるのだ。見えるわけなかろう!!』
 「あ、そうなんだ・・・じゃあ、早く取り出しちゃってよ、あなたの体・・・」
 『それが出来ぬから怒っておるのだ、この愚か者が!!!』
 能天気な答えを返してくるりのんの頭を女の子は思い切りはたき倒す。しばしど突き漫才が繰り返されていたが、それを納めたのは1人蚊帳の外にいたまあやであった。いきり立つ女の子を何とか宥め、その女の子が誰であるのか、どこから着たのか、どうしてここに来たのかなどを問いただす。
 『我が名はセツナ、セツナ=クズリュウイン・・・』
 「どうしてここにこられたのですか?」
 『わが国の兵器が1体逃げ出してな。それがこの地に逃げ込んだのだ』
 「なるほど、それを退治、もしくは捕獲が主任務ということですね?」
 『そうじゃ。なのにこんな体ではどうすることも出来ぬ!!』
 自分がこの地に降り立った理由を語り始めたセツナはそこまで話すともう一度りのんを睨みつける。睨みつけられたりのんは身を竦ませてモジモジとしているだけだった。もっともりのんにしてみればこんなところに落ちてきたセツナの方に問題があると返したいところであった。しかしそう返したらまた鼻の先をつままれそうなので黙っていることにする。
 「それで、これからどうなさるんですか??」
 『どうするも、こうするも、我が力は無力に近い。代理を立てるしかあるまい・・・』
 「代理ってまさか・・・」
 『そなたでも魔法が使えるようにならぬか、ドクターに相談してみるとしよう・・・』
 「そんな・・・絶対、無理、無理だよう〜〜〜〜」
 自分に魔物退治なんて出来るはずがない、そう断言するりのんだったが、セツナはその言葉に耳を傾けようとはしなかった。嫌がるりのんを他所にセツナはどこかに通信を開き、話し込み始める。しばし話し込んだセツナは準備が整うまで厄介になると言い放つと、りのんの制服の胸のポケットにもぐりこんでしまう。そんなセツナを追い出すことも出来ないまま、りのんはただただ呆然としているのだった。
 「どうしよう、まあやちゃん・・・」
 「これはどうしようもないのでは?しばらくこのまま様子見ということで・・・」
 「うう・・・私って本当に不幸だなぁ・・・」
 「何をいまさら言っていますか。りおんちゃんは前々からずっと不幸ですよ!」
 「・・・・・そう言うことを力説しないで・・・」
 自分の不幸さ加減に涙するりのんだったが、そんなりのんをまあやは不幸を力説して慰めてくれる。本人は慰めているつもりなのだが、それは逆にりのんを苛めているに過ぎなかった。傷ついたりのんは大きな溜息を漏らす。胸のポケットにもぐりこんだセツナは誰かと話しているようだったが、また怒鳴られるのが嫌で声を掛けないで置くことにする。このままでは自分がセツナが追ってきた魔物を退治しなければならなくなる。ならなくなるが自分と一体化してしまったセツナの体を追い出す手段などりのんには思いつきもしなかった。
 「これからどうなっちゃうんだろう・・・」
 これからのことを考えたりのんは大きな溜息を漏らす。このままいったら確実に自分がセツナの代わりに魔物退治をやらされることになる。運動神経のない自分にそんなことが出来るとは到底思えない。セツナのいう魔法という言葉には興味が惹かれるが、それ以上の恐怖が心を体を支配してゆく。先の見えない現状にりのんはまた大きな溜息を漏らすのだった。



 
 結局どうすることも出来ないままりのんはセツナをつれて帰ることになる。いくら捨てて逃げたとしてもすぐに追いつかれるのは目に見えていた。だから敢えてセツナから逃げようとはしないで、残された道の中から自分が助かる方法を見つけ出そうとそれを模索するのだった。
 「それでこの世界に逃げてきた魔物ってどんなやつなの??」
 『一言で言えば実験に失敗した動物の成れの果てだ』
 「動物の成れの果て??」
 肩にセツナを座らせたりのんは詳しい話をセツナから聞き始める。先ほどまで自分のポケットの中で何事か誰かと話していたセツナだったが、ようやく顔を覗かせると、道筋が立ったとホッとした顔をしていた。道筋がたったというのは自分とセツナの体を分けられることだと思ったりのんはほっと胸を撫で下ろす。ならばその間だけでもセツナを預かろうと思い、セツナをつれて家路についたのだ。まあやはすでに家の迎えが来て帰ってしまっている。乗っていかないかと誘われたが、詳しい話を聞きたいと思ったりのんはそれを断ってセツナと帰ることにした。あとになってまあやの申し出を断ったことをりのんは激しく後悔することになる。
 『うむ。我々の世界では肉体強化の為に別の生物との融合生物を生み出していたのだ』
 「へぇ〜〜。それって改造人間って事??」
 『まあ、簡単に言ってしまえばそう言うことだ。かく言う我もその融合人間の1人である』
 「え??どんな姿、どんな姿??」
 『我のことはどうでもよかろう?で、逃げた奴だが仲間うちでも評判の悪い奴でな・・・』
 セツナの説明にりのんは首を傾げる。仲間内でも評判の悪い奴、そうなると相当な悪で強い奴であったのではないかと想像してしまう。もしそうであるなら自分にどうにかできるものではない。他の誰か、警察か何かに頼む方が話が早いかもしれない。そう考えたりのんはセツナに声をかける。
 「あの・・・もしそんな奴がいたらわたしには・・・」
 『まて。この先に何かいる』
 怯えきったりのんが声を発すると、セツナは真剣な表情でそれを遮る。セツナの言葉にりのんはセツナの視線の方に自分も視線を送ってみる。すでにとっぷりと日は暮れ辺りは薄暗くなってきていた。この辺りには街灯が少ないが、セツナが睨みつけているあたりの街灯はついていない。が、その辺りから何かゴソゴソという音がするのだけは聞こえてくる。
 「な、何?この音・・・」
 『・・・・・魔力を感じる・・もしかすると・・・』
 「まさか、目標が出たの???」
 『かもしれん。もう少し近付いて確認を取るぞ!!』
 「ふえぇぇぇぇんん」
 何かを感じ取ったセツナはそちらの方を睨みつける。同じく何かいやなものを感じ取ったりのんは逃げ腰になるが、セツナはそれを許さなかった。そこにある何かを確認するべくりのんに近付くように命令する。拒否権のないセツナの命令にりのんは涙ながらに足音を忍ばせながら音のしたほうに近付いてゆく。近付くに散れそちらの方から声がしてくる。聞き取りにくいが間違いなく一組の男女の声であった。さらに近寄るとそこは高架橋の下であった。耳をすませとその高架橋のした辺りからその男女の声は聞こえてくる。りのんは気をつけてそこに近寄ってゆく。
 「なに、あれ・・・」
 声のするほうに歩み寄ったりのんはそこで異様な光景を目の当たりにする。そこでは一組の男女が体を絡み合わせていた。男に背後から抱き疲れた女は高校生くらいの年のころであった。その女子高生は半裸で胸を露にして背後から男にもまれている。りのんから見ても大きな部類に入る乳房を男の両手で潰れるくらいに揉みまわされ、そのツンと上を向いた乳首を指先で擦りあげられるたびに、女子高生の口からは甘ったるい声が漏れる。下半身はスカートが地面に落ち、かろうじて残っていた下着を押しのけるようにして長いものが女子高生のヴァギナに侵入していた。
 「ら、らめぇ・・・られかぁ・・・」
 体を震わせながら悶える女子高生の口からは甘ったるい喘ぎ請えとともに助けを求める声が漏れてくる。よくよく見ればその目からは大粒の涙が零れ、その両手は何か長いものが巻きついている。つまり同意の上でのセックスというわけではない。女子高生は男に無理やり犯されている、レイプされているのだ。
 「たしゅけて・・・んんんっっ!!」
 助けを求める女子高生の声が鬱陶しかったのか、男の体から新しい長いものが伸びてきて女子高生の口を塞ぐ。それはペニスの形をした触手であった。その触手が男の背後から何本も生えているのが見える。最初はウネウネと蠢いているだけだった触手だったが、女子高生の体を取り巻き、その体を犯し始める。体を這いずり回る触手の感触に女子高生は声にならない悲鳴を上げる。触手は口を塞ぎ、ヴァギナを埋め尽くし、アナルを犯してゆく。三つの穴を同時に置かされる女子高生は激しく頭を振って悶える。しかし触手はそれを押さえつけて女子高生の体を犯してゆく。
 「ふっ、うううっっ・・・んんんっんっ!!」
 口を犯す触手が口内を弄り、かき回す。息苦しさに悶える女子高生の口の端からは唾液が滴り落ち、胸を濡らす。ビンビンに勃起した乳首は触手の先端に擦りあげられ、形のいいおっぱいは触手の動きにあわせてその形を変える。ヴァギナを犯す触手は奥へ奥へと押し入り、その膣壁をかき回し、擦りあげる。その送り出される快感にヴァギナからあふれ出した愛液は触手を伝って地面に水溜りを作ってゆく。異物の侵入を赦したことのないアナルは無理矢理押し広げられ、そこを太い触手が何度も行き交う。痛みを伴った快感に女子高生は涙をこぼして悶えるのだった。そんな涙ながらに悶える女子高生を他所に触手は女のこの体を這いずり回り、その体を蹂躙してゆく。
 「ふぐぅぅっっっ!!!うううぅぅっっっ!!」
 体を這いずり回る触手の感触に女子高生は悲鳴を上げる。が、口を覆い尽くす触手がその声を押し殺してしまう。嫌がる女子高生の体を蹂躙し続ける触手は何度も何度もその若々しい膣壁を擦りあげ、綺麗なアナルを犯しつくしてゆく。苦しみ悶える女子高生だったが、体は心ならずも触手の動きに反応してしまっていた。モゾモゾと動き回る触手にヴァギナは洪水と思えるほど濡れそぼり、アナルは触手の動きを心待ちにしているかのようにヒクヒクと戦慄いていた。そこを犯す触手も大きく膨らみ、その瞬間へとお互いに登りつめてゆく。
 「ふぅぅぅつっ!!うううううぅぅぅつっっっ!!!」
 女子高生が激しく頭を振り、悶えた瞬間、全身がビクンビクンと激しく震え上がる。同時に女子高生の口とアナル、ヴァギナを犯す触手も大きく膨らみ、激しく脈打っているのが端からでもよく分かった。がくがくと震えながら脱力する女子高生の体から触手が抜けてゆく。戒めを失った穴からは黒い液体がドロリとあふれ出してくる。
 「なに?あれ・・・」
 『卵だ、奴らの繁殖用・・・』
 「え?え?え?」
 『女性の腹で自分の仲間を繁殖させている。女性の腹は最高の栄養分が詰まってる』
 「そんな、ひどい・・・」
 『そんなこと、気にしている余裕、なし!!』
 「え??ひあぁぁぁっっっ!!!」
 繁殖のために犯されていたと分かったりのんは悲しそうな顔をする。が、そんなことを気にしている余裕はなかった。ことを終えた男がこちらを向いてきたのだ。ぎょろりと血走った目と合ってしまう。まずいと思った時にはすでに遅かった。背中をして四つん這いになった男がそのままの体勢のままりのんに迫る。
 「やだやだ、追ってくる!!」
 『逃げろ。今そなたにあれと戦う力はない』
 「言われるまでもなく逃げるよ〜〜〜!!」
 『捕まればあの女子と同じ目にあうぞ』
 「それは絶対にいや〜〜〜〜!!!」
 身を翻して逃げ出したりのんだったが、男は手足を回転させて追い立ててくる。その不気味さに泣きながらりのんは戦力で逃げ出す。捕まればどうなるかをセツナに教えてもらったので、いつも以上に早く逃げられる気がする。こうして始まった追いかけっこは今に至る。しかし、元々運動が苦手なりのんがいつまでも逃げられるはずがなかった。徐々にその距離を詰められ、後一歩のところまで追いたてられてしまう。もう捕まる、りのんがそう思った瞬間だった。激しい光の柱が天から地面に突き立つ。光の柱は男を弾き飛ばし、りのんを護ってくれる。
 「何、この光・・・」
 『待たせたの、セツナ!!』
 『その声はドクターか?』
 虚空の彼方から危機に瀕したりおんの耳にどこか尊大なしわがれた声が聞こえてくる。その声に自分の耳元にいたセツナが驚いたように虚空を見上げている。それに釣られるようにそちらを見たりおんはその空間に小さな穴が開いているのを発見する。声はその穴の向こう側から聞こえてくるのである。
 『これを使うといい。それを使えばその娘にもお前さんの力を使うことが出来るはずじゃ』
 その言葉に導かれるように光り輝くコンパクトがその虚空の穴から表れる。その光に怯んだかのようにりのんの目の前に迫った化け物の動きが止まる。光り輝くコンパクトはまるで導かれるように宙を舞い、りのんの手の中に納まる。りのんは自分の手の中に納まったコンパクトをじっと見つめる。
 『合言葉は”ソウル・コネクト”そして”マジカル・トランスフォーメーション”じゃ!!!』
 「じゃってそれを叫ばないとダメなの???」
 『魔女っ子に合言葉は必須!!叫ばんかい、小娘!!!』
 「は、はずかしいよ、そんなの叫ぶの・・・」
 『ではこのまま魔物に犯されるか??』
 「それはぜったいにいやぁぁぁっっっ!!」
 そんな合言葉を大きな声で叫ばない状況にりのんは抗議の声を上げる。すると尊大な声ははじめて会ったりのんにもまるで物怖じしないでそう返してくる。それを言わなければ何も始まらないし、この危機的な状況は脱せない。半ば脅し文句のような言葉を続けてくる。このままでは自分の身が危ない、そのことはりのんもよく分かっていた。りおんはコンパクトを握り締めると、もう一度辺りの様子を伺う。周囲には誰もおらず、自分の危機を助けてくれるものはいなかった。同時に今自分がこの恥ずかしい合言葉を叫んでも聞いているものもいなかった。
 「”ソウル・コネクト”!!!!!」
 コンパクトをかざしたりのんは声の限り大きな声で合言葉を叫ぶ。その声に答えるようにそれまでピッチリと口をとじていたコンパクトの口が開き、さらなる輝きを放ち始める。その光に導かれてコンパクトにセツナ(の魂)が吸い込まれてゆく。セツナを吸い込んだコンパクトは再びその口を閉じる。
 「”マジカル・トランスフォーメーション”!!!!」
 セツナを吸い込んだコンパクトをかざしてりのんはさらに声を上げて合言葉を叫ぶ。セツナを吸い込んだコンパクトはさらなる輝きを放ちながらりのんの左腕に吸い付くと、腕時計のようにその手首に巻きつく。と同時にりのんの衣服は全て弾け跳び、その膨らみのまるでない幼い肢体が外気に曝される。コンパクトに吸い込まれたセツナの魂魄がりのんとダブって見える。りのんはその姿に恥ずかしがるよりも早く、左腕から光のリボンが延びてりおんの体を包み込んで行く。りのんの体を包み込んだリボンは新たな服を構成してゆく。薄いピンク色をした膝丈までしかない和服をイメージした服、それを留める帯はお尻の下まで伸びている。ひらひらと揺れる袂には愛らしい竜が描かれている。白い靴にオーバーニーソー、肘まである長い手袋がりのんの体を覆い尽くす。最後に肩口で切りそろえられたりのんの髪がさらに伸び、ポニーテールに結い上げられる。手には手甲と肘当てが、足には脛当てと膝当てがそれぞれ装着される。全てを装着し終えたりのんは拳を振るい、蹴りを放つ。その一発一発が空を裂き、その一撃の重さを印象付ける。まるでその動きを知っているかのようにりのんは目を瞑ったまま演舞を繰り返し、やがてびしりと化け物を指差し目を開ける。
 「天を切り裂く乙女の危機に・・・」
 「虚空の彼方より魔法の力でそこ参上・・・」
 「いかなる悪も赦さない・・・」
 「悪い子は私の前に膝まづきなさい!!」
 「「魔法剣聖マジカルりのん、ここに爆誕!!!」


→進む

魔法剣聖マジカルりのんのトップへ