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第２話 共鳴！迷惑！公害！ジジィと肉が来た！
漆黒の闇に包まれた大宇宙、その中を漂う一隻の宇宙船。そこかしことつぎはぎがされたその年代物の船はのっそりのっそりと進んでゆく。すでに廃艦になって現物など残っていないはずのこの船がこうやって宇宙を進んでゆくのが不思議なくらいであった。その宇宙船の艦長室、というか唯一の部屋で・・・
「なんじゃと？姫様が砂の星シスルに現れたじゃと？」
『・・・は・・・い・・・現地の・・・兵を・・・して・・・』
「もっとしっかり話さぬか！！よく聞こえぬぞ！！」
通信機の向こう側から聞こえてくる声は雑音まみれでまともに話が聞くことさえ叶わない。通信機も旧式すぎて長距離通信に対応し切れていないのである。正直言って新しい物と変えればそれで済む話だが、この船の持ち主はいつまでたってもこの旧式を手放そうとはしなかった。かろうじて目的の人物が砂の星シスルに降り立ったということだけは聞き取ることが出来た。それを聞いた老人は喜色満面に拳を握り締める。
「そうか、姫様は砂の星におるのだな？」
『です・・・姫・・・なの星へ・・・』
「もういい！居場所さえ分かればそれでいいのじゃ！！！」
聞き取りにくい通信機を叩きつけるようにして切ると、老人は自分の足元にある扉を開ける。そこは階下に繋がっており、老人は顔を突っ込む。と同時に激しい悪臭が老人の鼻をつく。一瞬意識が吹き飛びそうになりながらも老人はグッと堪えて階下へ向けてあらん限り声をあげて命令する。
「こりゃ、皇女陛下親衛隊の兵ども！姫様は砂の星シスルにおられるとのことじゃ！」
「そいつは本当ですかい、ロハン様？？（クイクイ）」
「そりゃ、一刻も早く向かって差し上げなければ！！（むきむき）」
「でも、兄貴？砂の星シスルってどこにあるんだ？（ピクピク）」
「それは・・・筋肉が導いてくださる！（きゅっきゅっ）」
階下には４人の男達が待ち構えていた。四人が四人とも鍛えに鍛え上げた筋肉を誇るように戦慄かせ、その筋肉を誇るかのようにポーズを決めている。その肌はこんがりと焼けて小麦色をしているが、その肌いっぱいに汗が浮かび上がり異臭を放っている。それが部屋中に充満し、常人なら意識を失うような匂いを放っているのだ。そんな部屋にはプロテインやら、鉄アレイやらが転がり、筋肉を引き締めて葉を煌めかせる青年の雑誌も転がっている。
「お前らの筋肉談義に付き合っている暇はない！さっさとシスルに向かわぬか！！」
「ですからロハン様！シスルってどっちですか？」
「それは・・・ちょっと待っておれ！！」
あくまでポーズを決めるのを止めようとはしない男たちの問いにロハンは慌てて顔を引っ込める。どっちに向かえばいいかなどロハンにもわからなかった。大慌てで自分の荷物を引っ掻き回し地図を引っ張り出す。それも最新式の自動と上意識のものではない。遥か昔に書かれた手書きの地図である。それを開いたロハンはしばしそれを見つめたまま押し黙ってしまう。地図を出したまではよかったのだが、まず肝心なことが分からなかった。今自分たちがどこにいるかが分からなければこんな地図、何の役にも立たないのである。
「ええと、本星を出て・・・あの星を出てから・・・」
星の名前を挙げては指折り数えて出発点から自分たちがいるはずの位置を割り出してゆく。もちろんそれだってかなり大雑把な割り出し方である。これで砂の星シスルに迎えるかどうかも怪しい話である。しかしロハンはかたくなにこの地図を信じ込んでいた。そしてついにシスルの方角を割り出すと、鼻を摘んだままもう一度階下を覗き込む。
「ここから三時の方角、０．２光年くらいの距離じゃ！急げ！！」
「了解しました！！」
ロハンの命令に四人は敬礼して答えると、すぐさま自分の持ち場に着く。そして自分の席から延びたオールを掴むと、おもむろにそれをこぎ始める。力強く、歌を謡いながら。
「ふんがっとっと、ふんがっとっと！！」
「筋肉に勝る美はなし〜〜♪」
「ふんがっとっと、ふんがっとっと！！」
「鍛え込まれた筋肉こそ、この世の美の極みなり〜〜♪」
「ふんがっとっと、ふんがっとっと！！」
オールを漕ぐたびに男たちの筋肉がピクピクと戦慄き、全身から汗が噴出してくる。嗅いだだけで卒倒しそうな香り漂う部屋の中で男たちは一心不乱に歌を歌いながらオールをこぎ続ける。その漕ぐスピード、回数にあわせるように男たちの乗った船もそのスピードを上げてゆく。
「ふんがっとっと、ふんがっとっと！！」
「筋肉は空間さえも越える〜〜♪」
「そ〜〜れ、ワープ！！！」
男たちのテンションが最高潮にまで達すると、オールを漕ぐ速度もまた最高潮に達する。それと同時に船は異空間に突入し、ワープを開始する。そこには常識など欠片も存在していなかった。普通の人間ならここで突っ込みを入れていそうなところであったが、当のロハンは興奮しきっていてそんな突込みなど入れている余裕はなかった。
「今、今この爺が参りますぞ、シルヴァ姫様！！！」
今にも興奮によって血管が切れそうなくらい興奮したロハンはそう絶叫する。船は異空間を進む、ただ浸すた砂の星を目指して。しかし、その進行方向は大きく砂の星からはずれていた。そうとは知らず、ロハンと４人の筋肉馬鹿はひたすら進んでゆく。砂の星で皇女シルヴァと再会出来ると信じて・・・
砂の星シスルから遠く離れた商業惑星ラーザス。皇国領土内のあらゆる星の特産品が集まり、貿易が盛んなこの星に精子朗たちは到着していた。もちろんこの星の利権を狙って、ラモール教団過激派が侵攻してきていたが、駐留軍の活躍によってその被害は最小に抑えられていた。
「まあ、ここでなら食料を多めに調達できそうですね」
「そうじゃな。とはいえラピスをつれての旅、いつあれが狙われるか分からぬからな」
「そうですよねぇ・・・もっともセイシローさんが動くとそれに着いて行ってしまいますけど・・・」
ラーザスの港に入ったシルヴァとアルは自分たちの後ろに立つ少年とその足元にしがみ付いて離れようとしない少女の方をちらちら振り返りながらそんな話をしていた。ラピスは精子朗たちのもとに来て以来、片時も精子朗の側を離れようとはしなくなっていた。御付きのカーラ呼んでも離れないくらいだから相当精子朗が気に入ってしまったようだった。そのためここの所シルヴァと倫のご機嫌はかなり斜めであった。とはいえ、幼いラピスに面と向かって文句を言うこともできず（最初この頃は言っていたが、泣き出されたうえに精子朗に冷ややかな目で見られたためそれ以降していない）、グッと堪えることしかできずにいた。
「まあ、いい。今日はその分の息抜きをさせてもらおう！！」
「そうそう。ま、少しは羽目を外さないと・・・」
「その前に姫様、買出しを・・・あの船ああ見えても大所帯なんですよ？」
ここ最近溜まったストレスを発散させようとするシルヴァと倫をアルが呼び止める。確かにこの星に寄った主な目的は補給である。シスルでは予想以上に補給が滞ってしまったため、この星で補給をせざるを得なくなってしまったのである。その話を聞いていたカーラは首を傾げながらアルに尋ねる。
「アル殿。あの船には我々６人しか乗っていないのでは？」
「へっ？ああ、カーラさんは知りませんでしたっけ？」
「何をです？」
「あの船の中層階層にはセイシローさんの奴隷さんたちが住んでいるんですよ、それも４９人も！！」
「セイシローさんの・・・奴隷？？」
予想もしなかったアルの答えにカーラは眉を顰める。１人２人ならまだ分かるが、４９人というのがカーラには如何わしく思えてならなかった。これではどこぞの国のハーレムと同じである。カーラの精子朗を見る目が変わったのに気付いた精子朗は身の危険を感じて慌てて説明を始める。
「いや、俺が集めたわけじゃないですよ？ただ副賞で付いて来たんです」
「副賞？ああ、婚約者決定戦の・・・」
精子朗の説明にカーラは精子朗がつい最近までシルヴァの婚約者決定戦に参加していた話を思い出す。確かその戦いに勝つと相手が保持していたパートナーを奴隷として接収することが出来たはずである。元々地球人でない彼女たちを置いて本星に戻ることも出来ず、精子朗たちはやむなく彼女たちを連れて宇宙へと上がった来たのである。
「なるほど、よく分かりました・・・」
「おほほほっ、でも奴隷が４９人いることには違いなくってよ〜〜」
自分に誤解するような情報を流してきたアルを睨みつけながらカーラは納得した顔をする。その視線を、シルヴァたちからの視線も平然と受け流しながらアルは面白おかしそうにけらけらと笑う。この底意地の悪さはもって生まれたものなのかもしれないと精子朗は諦めにも似た溜息を漏らす。
「それはそれとしてさっさと買い物を済ましてしまいましょう」
「そうですね。いつ懲罰隊に見つかるかわかったものではありませんから」
精子朗が促すとカーラはこくりと頷く。ここでアルの悪戯に付き合っていて懲罰隊に見つかるような愚は犯したくない。それはシルヴァと倫も同様であった。いらぬ騒ぎを起こしてこの星から早々に退去などしたくはない。せめて息抜きをするぐらいの滞在時間は欲しいのが彼女たちの思いであった。食料など調達品を多数買い込むと、それは船へと届けさせることにして、このまま行きぬくの遊興に更けようとした精子朗たちにその店の店主が声をかけてくる。
「お前さんたち、旅のお人かい？」
「ええ、そうですけど？」
「それなら早いとこここから出て行ったほうがいい。特にあんたらみたいに美人は早々にな」
「美人といってくださるのは嬉しいですけど、どうしてです？」
「・・・大きな声じゃいえないがこの星の実権を握っている男が異常なほどの女好きでな」
店主の話に興味を示したアルが問い返すと、店主は声を潜めて話を聞かせてくれる。それによると、この星の実権を握るもの、商業手委員会の委員長を務めるバッハル＝ジームという男の話を教えてくれる。バッハル=ジームと言う名前にはアルも聞き覚えがあった。ネジからロボットまで手広く商売にしている男でこの星の出身者、皇国内でも屈指の財閥の総帥であったはずである。もちろん騎士でも貴族でもないので今回の婚約者選抜大会に自分の子供を出場させることはかなわなかったが、貴族の地位を狙っているといううわさも聞いている。
「色好きという話しは聞いたことありましたけど、そこまでひどいんですか？」
「あ。旅人だろうが何だろうがお構いなし。美人と見れば屋敷に連れ帰って慰み者にするらしい」
「ほう、それは怪しからん輩じゃのぉ・・・」
アルの後ろで話を聞いていたシルヴァは眉を吊り上げて怒りを噛み殺す。後ろでは倫とカーラも頷いている。店主の話しではこれまでも何人もの旅人が餌食にあい、悲惨な目にあっているらしい。駐留軍に訴えかけても鼻薬を嗅がされた連中がそれを取り上げてくれるはずもなく、皆泣き寝入りするほかなかった。そう言う女の敵を放置されていることはシルヴァたちの怒りを火をつける。
「セイシロー！これからそのばか者のところへ参るぞ！！」
「参ってどうするんだ？」
「天誅を食らわしてくれる！」
「わかった。俺はラピスを連れて先に戻っているから・・・何かあったら呼べ」
「うむ！まあ、必要ないと思うがな」
ラピスを肩に担ぐと精子朗は大きな溜息を漏らしてやる気満々のシルヴァにそう答える。精子朗が付いて来ないことにシルヴァはやや不満を覚えたが、倫とカーラ、アルとエルがいれば問題なしと思い、それを許可する。そしてずかずかと大股で消えてゆくシルヴァの後ろ姿を見送りながら精子朗はまた大きな溜息を漏らす。
「あ〜〜あ・・・こりゃ、忙しくなりそうだ・・・」
「お兄ちゃん、こまったことあるの？」
溜息を漏らす精子朗の顔をその小さな手でペチペチと触って慰めてくれるラピスに大丈夫と笑って答えると、精子朗は母艦へと急いで戻ってゆく。この一件、シュテンカイザーの力が絶対に必要になる、そのときに自分がいなかったら目も当てられないからである。急いで戻る精子朗とは逆方向に進んだシルヴァたちはすぐにバッハルの館も前にまで来ていた。街の名士といわれるだけあって探す手間は殆ど掛からなかった。小高い丘の上に立てられたその屋敷はまるで町に住む人々を見下すように建てられていた。
「他人を見下ろすのが好きな奴のようじゃな・・・」
「いるのよねぇ。自分は選ばれた人間と思って人を見下す奴って・・・」
「そうですね、。フッ飛ばしちゃいましょうか、あんなの？」
「ダメですよ、姉さん！あそこのは一般の方々も・・・」
その屋敷を見たシルヴァは自分まで見下されているような気がして不平を口にする。同様に見下されているような気がして、気を悪くしていた倫もそれに同意する。ニコニコ笑ってはいたが、同じく気を悪くしていたアルは懐から爆弾を取り出して見せたりもしている。シルヴァと倫がその提案に同意しそうになったところでエルがアルを戒める。
「冗談よ、エル。被害は最小にでしょう？」
「姉さんは分かっていないときがありますから・・・」
ニコニコ笑って爆弾を懐にしまうアルにエルは大きな溜息を漏らしてそう呟く。自分が面白ければアルは本気で爆弾を屋敷に仕掛けるに違いない。それが産まれてからずっとアルの側にいたエルが学んできたことだ。現にエルの呟きをアルは否定しなかった。否定せずにニコニコ笑っている。それがかえって怖い。
「で、そうします？このまま正面から乗り込みますか？」
「それも芸がないのう・・・何か面白い演出でもあれば・・・」
「ありますよ、演出なら・・・」
「どんな演出じゃ？」
悪の巣窟を正面から叩き潰すのも面白いかもしれないが、もっとこう何か、燃えるような展開をシルヴァは欲していた。するとアルに何か考えがあるのか、シルヴァに声をかけてくる。それがなんなのかとシルヴァが問いかけると、アルは答えず、自分の頭上を指差す。それに釣られるようにしてシルヴァは自分の頭上を見上げ、ぎょっとする。
「なんじゃ、あれは？？」
「宇宙船？でもまっすぐこっちに落ちてくるよ？」
「しかも落下先はあの屋敷ですね・・・」
シルヴァは自分の目の前に広がる光景に思わず大きな声を上げてしまう。同じく空を見上げた倫はそれが大型の宇宙船であると見抜いていた。カーラも冷静にそれを見つめ、それの落下先が今自分たちが向おうとしている屋敷であると理解する。そんなことを話しているうちに落ちてきた宇宙船は轟音と粉塵を巻き起こして地面に叩きつけられる。
「これで中は大混乱じゃな！」
「そうですね、これで私たちが中に入っても誰も気付きませんよ！」
混乱の極みにある屋敷を想像してシルヴァとアルに笑みがこぼれる。そんな二人をエルが窘めようとするが、それよりも早く二人は屋敷に向けて駆け出してしまっていた。その２人を呼び止めながらエルも屋敷に向けて駆け出してゆく。あとの取り残された倫とカーラはこれから起こるであろう騒動を想像して半分ワクワク、半分あきれ返っていた。ながらも２人もまたシルヴァたちのあとを追って駆け出してゆく。楽しいことを求めて・・・
宇宙船が落ちてくる数刻前・・・
「ぬふふっ、いい娘じゃ、いい娘じゃ！！」
脂ぎった顔をゆがめながらバッハルは自分の目の前に立つ三人の娘たちを穴が開きそうなそうなくらい見つめる。そのいやらしい視線に晒された少女達は恥ずかしそうに顔を顰め、顔を背ける。そんな少女たちの態度がバッハルをさらに喜ばせ、もっと恥ずかしがらせたいと思わせる。
「次は、そうじゃな・・・スカートを捲りあげろ！！」
「！！！そ、それは・・・」
「どうした、捲りあげるのじゃ！！」
バッハルの命令に少女達の表情が青くなる。それをすればどうなるか少女達もバッハルも十分に承知していた。だからバッハルは悠然と命令してきたのである。そしてその口調は一切の拒絶を受け付けないという現われでもあった。それが分かっている少女達は不承不承、メイド服のスカートの裾を摘んで捲りあげてゆく。スカートが捲りあがり、白い太股が露になる。そしてその付け根の部分にはそこを追うはずの布地が存在していなかった。
「ふむ、まだ濃さはそうでもないな・・・匂いは・・・まだ青臭いな・・・」
「やだ・・・恥ずかしい・・・」
「お父さん、お母さん・・・」
「うううっっ、何で、こんな目に・・・」
露になった少女達の股座に顔を近づけると、バッハルはしげしげと様子を伺い、さらにはそこの匂いまで嗅ぎ始める。その拒否できない恥ずかしさに、少女達はさめざめと泣いて耐えることしか出来なかった。バッハルに逆らうこと、それはすなわちこの星で生きてゆくことが出来なることを意味していた。裕福な家柄ならばこの星を捨てて他所の星に移るという選択肢も残されているが、彼女たちの家のように貧困に喘ぐ家庭ではそれは叶わない。つまり、バッハルに逆らうというのは死ぬことを意味している。その怒りの逆鱗に触れるのが自分だけならばいいが、この性格の捻じ曲がった男は家族にまでその嫌がらせの手を延ばしてくるに違いない。だからどんな屈辱を味あわされようとも抗うことが出来なかった。家族を守るためにはこの男の言いなりになるほかに道はないのだから。ひとしきり少女達の下半身を堪能したバッハルは今度は壁に手を付かせ、足を広げさせる。バッハルの眼の前に三輪の処女花が咲き乱れる。
「青臭いがこれを刈り取るのが楽しいんじゃ」
「ひっ！！やっ！！」
「ほ〜〜れ、ご主人様からのご褒美じゃ！！」
「ひぎぃぃっっ！！痛い〜〜！！」
まだ濡れてもいないヴァギナにバッハルは自分の勃起したペニスを捻じ込んでゆく。まだ男を知らない少女の膣は引き裂かれ、真っ赤に染まる。激しい激痛に少女は泣き叫び、隣に並び立つ少女達は青い顔をしてその光景から目を逸らすしかなかった。そんな少女達の嘆き声を心地良さそうに聞きながらバッハルは腰を振り、少女を犯してゆく。そしてその穴に飽きると、隣の少女のヴァギナを犯し、もう一人も犯してゆく。泣き叫ぶ少女の悲鳴と、面白おかしそうに笑うバッハルの笑い声が部屋中に響き渡る。
「ふぅっふぅっ、さすが処女、いい締まり具合じゃわい！！」
「ひぐぅっっ、痛い・・・お母さん・・・」
「助けて、パパ・・・」
「もう、許して・・・」
バッハルは己の欲棒を満たすためだけに、痛みに苦しみ悶える少女達を容赦なく犯す。少女達はその苦しみから逃れようともがき、足掻く。しかし、少女達が逃げ出そうとすると、バッハルは容赦なく手にしたムチを振り下ろすのだった。容赦なく振り下ろされたムチは少女たちの衣服を引き裂き、その白い肌を赤く切り裂く。バッハルはその裂けた少女達の衣服を引き裂き、裸にすると、その露になった胸を弄り、その裸を貪りつくす。
「さてと、そろそろ出そうじゃ。・・・よし、三人ともそこに並んで顔を突き出せ！！」
少女達のヴァギナを犯していたバッハルは自分の限界を感じ、少女達に自分の前に膝をつき、顔を突き出すように命令する。命令に従うほかない少女達はバッハルのその醜いものに顔を突き出す。その少女達の顔目掛けてバッハルは己の欲望を思い切り解き放つ。解き放たれた欲望は少女たちの顔を、髪を白く染め上げてゆく。その生臭いものを顔に浴びた少女たちは顔を顰めて涙する。しかし、バッハルの暴挙はこれで終わりではなかった。白い液を放出しきると、今度は黄金色の水を少女たち目掛けて放出する。それが何かを察した少女達は悲鳴を上げる。
「おう、すまぬ。つい一緒に出てしまった」
「ううっ・・・」
「しかしご主人様の下の世話もお前達の役目。ちゃんと飲んで始末するんじゃ、いいな！！」
拒否を許さぬ口調で威圧するバッハルに少女たちは涙ぐんで床に広がった黄金色の水を始末してゆく。そんな少女達の哀れな姿をバッハルは愉快そうに眺めていた。しかしそんなバッハルの頭上で何か轟音が聞こえてくる。何事かと顔を上げたバッハルの目に崩れ落ちる天井が広がっていた。慌てて逃げ出そうとしたバッハルの視界を白い煙が覆い隠す。眼の前は真っ白に染まり、何が起こったのか、まるでわからない。
「なんじゃ、なにごとじゃ！！？？」
突然の轟音、爆音、土煙にバッハルは完全に混乱しきっていた。ワタワタと左右を見渡し、何が起こったのかを尋ねる。しかし、自分の周りを固めるメイドたちも混乱の極みにあり、逃げ惑うばかりで答えるものは誰一人としてなった。そんな状況がバッハルをさらに混乱させ、恐怖のどん底に陥れる。
「なにが起こったのじゃ！誰か説明をせい！！！」
タプタプと揺れる大きなお腹を揺すりながらバッハルはわめき散らす。何が起こったのかを聞いたからと言って混乱が収まるわけではないが、わめき散らすことで恐怖から少しでも逃れようとしてのことだった。しかし、誰もバッハルの声に耳を傾けようとはしない。そんな周囲の態度にバッハルはさらに声を荒げる。
「ええいっ！ワシの、ワシの声が聞こえぬのか！！」
「げほげほ・・・まったくひどい目にあったわい・・・」
恐怖に怯え声を荒げるバッハルの眼の前に白髪の老人が降り立つ。老人にバッハルは見覚えがなかった。何よりこの老人、目の前にある柱から降りてきたように見えた。よく見ればその柱は宇宙船であり、その老人はその宇宙船のハッチから降りてきたらしい。さらにその後ろから筋骨逞しい男たち四人も降りてくる。
「なんじゃ、貴様らは！！」
「んっ？この星の方かの？ちょうどいい、姫様の・・・」
「わしを誰だと思っておる！ワシは、ワシはバッハル・・・」
「じゃかましい！人の話を聞かぬか！！」
ロハンは自分が人の話も聞かずにいる事を棚にあげてバッハルを思い切り殴りつける。そして自分が尋ねたいことをさらに捲くし立てる。その身勝手さに身勝手なバッハルが耐えられるはずがなかった。しかし混乱しきったこの状況で彼を助けてくれる者など誰もいない。しかもこの老人の背後には屈強の男たちが控えている。仕方なく懐に隠し持っていた機械のスイッチを入れる。それに呼応するように地下から巨大なロボットがせり上がってくる。バッハルはそれに飛び乗ると、じろりと足元を睨みつける。突然現れたロボットにロハンたちは呆気に取られていた。
「ワシをこばかにしおって・・・許さん！！」
「貴様、ワシを誰と心得る！ザムザイール皇星連邦第一皇女シルヴェリア＝デューム＝エヴォール様付きの・・・」
「そんなこと知るかぁぁぁっっっ！！！」
胸を張って自分の身分を明かすロハンにバッハルは拳を振り下ろす。はっきり言ってシルヴァがいなければロハンの地位などたかが知れている。シルヴァあってのロハンなのだ。それが分かっているバッハルは思い切り拳を振り下ろし、逃げ惑うロハンたちを追い詰めてゆく。その光景をシルヴァたちは少し離れたところから伺っていた。
「どうします、姫様・・・このままではロハン様たち・・・」
「爺たちがどうなろうと知ったことではないが・・・」
「でも私たちじゃ、ロボットの相手は無理ですよ？」
「しかしのぉ・・・って、あの馬鹿！このままでは屋敷が・・・」
ロハンを助けたものかどうか悩むシルヴァたちを他所にバッハルは暴れ続けていた。もはや周囲のことなど気にも掛けない動きで暴れまわるために屋敷はどんどん崩壊していく。屋敷にいた人々はすでにエルやカーラたちが逃がしているが問題ないが、このままでは自分たちまで巻添えになる。一刻も早くこの場から離れようと思った矢先、バッハルのロボットの腕が屋敷の屋根を思い切り吹き飛ばす。崩れ落ちた屋根がシルヴァ目掛けて降り注ぐ。逃げ出すのが遅れたシルヴァはそれを呆然と眺めていることしか出来なかった。つぶされる、そう思った瞬間、何か巨大なものが視界を遮り、落ちてきた屋根からシルヴァたちを守ってくれる。
「ったく、結局こうなるんだよな・・・」
精子朗はあきれきった口調でそう呟く。屋敷に降り立ったシュテンカイザーでシルヴァたちに降り注ぐ屋根の残骸を振り払ってやりながら辺りの様子を伺う。何がどうなっているのかは分からないが、目の前にいるロボットが敵である、それだけは間違いなかった。向こうも自分の存在に気づいたのか、臨戦態勢を整えつつあった。精子朗はシルヴァたちを引かせると、拳を握り締めて構えを取る。
「おら、さっさと掛かってきな！」
「生意気な！この機体を何だと思っている！皇国軍最新鋭機の・・・」
「最新鋭だろうが何だろうが皇帝機を超えることはできていないんだろう？なら問題ねぇ！」
バッハルの言葉を精子朗はばっさりと切って捨てる。たとえ最新鋭機であっても皇帝機以下の力しかないなら何の問題もない。正直雑魚以外の何者でもない。皇帝機に匹敵する力を持っているシュテンカイザーが目の前にいればその事実にすぐ気付きそうなものであるが、シルヴァの正体を知り、駐留軍に見放され、混乱の極みにあったバッハルがそのことに気づくことはなかった。気付くことなく無駄な戦いに挑むことになる。
「われは！！」
ガーバスの拳が唸りを上げる。それにあわせてシュテンカイザーの拳も唸りを上げる。双方の拳が物凄い勢いで激突する。轟音を上げてぶつかり合った二つの拳はガーバスの拳の方が一方的に崩壊する。砕かれた拳は肘の方まで砕かれその機能を完全に停止させる。
「この銀河を支配する！！」
それならばとガーバスが蹴りを見舞う。その蹴り足をシュテンカイザーは悠然と払いのける。裏拳が太股を砕き、破砕し、引き千切れる。足を失ったガーバスは無様にも地面にひっくり返る。それでも抵抗を続けようとするガーバスの残りの手足を精子朗はおもむろに破壊する。
「大商人、バッハル・・・」
「うぜぇっっっ！！」
自分の栄光を声高に叫ぼうとするバッハルだったが、その言葉を遮るように精子朗はガーバスのコックピットを踏みつける。シュテンカイザーの足がコックピットを蹴り破り、誘爆を引き起こす。連鎖して起こる爆発の中、バッハルの声はもはや聞こえてこなかった。ただ連鎖して起こる爆発音だけが響き渡る。
「ふん、馬鹿な男じゃ・・・」
「まったくですね。少しは役に立つと思ったんですが・・・」
「！！だれじゃ？？」
連続して爆発を起こすガーバスの姿を見つめながらシルヴァは哀れみの言葉を漏らす。その言葉に賛同する声が背後から聞こえてくる。それは男の声であり、ここに居る誰の声でもなかった。はっとシルヴァたちが背後を振り返るのと、背後にいた男が短剣を振り下ろすのがほぼ同時であった。
「姫様、危ない！！！」
「おのれ、不埒者！」
「我らが筋肉の力、とくと見よ！！」
「”マッスル・バリア”！！！！」
シルヴァの危機を察した大男達が慌ててシルヴァと男の間に体を入れる。そのまま突き刺すことが出来ないと察した男は冷静に短剣に刃の部分を飛ばしてくる。それは正確にシルヴァの顔面に向かってゆく。体を入れただけではそれを防ぎきれないと分かった男たちはお互いの体を押し合い、筋肉を脈動させる。
「むおおおおぉぉぉぉっっっ！！」
「むあっする！！！」
四人の筋肉が激しく脈動し、鼓動する。その振動が空気を動かし、大気を戦慄かせる。大気の振動は壁となり、シルヴァに迫る短剣を弾き飛ばす。自分の必殺の一撃がはじかれたのを見た男は舌打ちをして大きく跳び退り、シルヴァたちから距離を置く。ニ撃目を繰り出そうとする男だったが、それを許すほどカーラも馬鹿ではなかった。一気に距離を詰めると、男の腹部を手にした棍で突き上げる。その稲妻の如き一撃を男はぎりぎりのところで回避する。
「その武器・・・貴様、ヒデムスか？」
「ふふふっ、さすがカーラ殿・・・一筋縄ではいかぬか・・・」
男はカーラの顔をニタリと笑って見つめ返すと、自分の腹部を擦る。先ほどぎりぎりでかわしたはず一撃によって男の衣服の一部が裂けていた。奇襲ならばともかく、それに失敗した今、正面から戦いを挑むには敵の人数が多すぎると男は判断し、手首に仕込んだ機械のスイッチを入れる。
「出でよ、我が懲罰機・ハロイン！！」
ヒデムスに呼ばれるように地響きが起こり、大地を揺らす。ヒデムスの背後の地面が大きく盛り上がり、そこから巨大な顔の刻まれたかぼちゃが頭をのぞかせる。ヒデムスがその口から乗り込むと、かぼちゃは地面の中から巨大な手足を伸ばしてその巨体を現す。ハロウィンのかぼちゃのお化けを思わせる頭であったが、その容姿はかなり違っていた。長い四本の腕が伸び、それ俺に刀、槍、斧、鉈が握られている。足は非常に短く、長い胴体が猫背になっている。それはまるで眼の前の獲物を狙っているようだった。
『せっかくあなた方が別行動をしたのでラピス様を連れ戻させていただこうとも思ったんですが・・・』
『生憎だったな！ラピスはここでお眠中だぜ？』
『ほう、それはそれは。では貴方を倒してラピス様をお返しいただきましょうか！？』
この星に来てからずっとシルヴァたちの動きを見張っていたヒデムスだったが、ラピスがカーラたちと別行動を取ったのは彼にとって幸運であった。すぐさま後をつけシルヴァたちの船に潜入したヒデムスであったが、どういうわけか目標のラピスを見つけ出すことが出来ず、逆に船に残っていた女性陣に見つかって痴漢扱いを受けて追い出されてきた次第であった。仕方なくシルヴァの首だけでもと思いここまできたのだが、それも失敗し自虐気味になっていたところにラピスが目の前にいることを知り、ヒデムスは歓喜していた。
『出来るものなら・・・な！！！』
精子朗は膝の上で眠り続けるラピスを気にしながらレバーを操作すると、一気に跳躍し、ハロインとの距離を詰めるとその顔面を掴んでシルヴァたちから引き離すようにする。ここでシュテンカイザーのフルパワーを使えばシルヴァたちまで巻き込んでしまう恐れがあったからだ。ある程度距離を置いた精子朗はハロインを地面に叩き落すと再度構えを取り直す。今度は遠慮などしない、フルパワーのシュテンカイザーで。関節部から真っ赤な炎が吹き上がり、シュテンカイザーの体を包み込んでゆく。その姿は真紅の鬼神、そのものであった。
『我らが何者かも知らずによくそのような口を・・・』
『いや、よく知っているぜ？ベルスとかいう奴とも戦ったし』
『ほう、ベルスと・・・よく命がありましたね？』
『驚くほどのことじゃないぜ？今頃地獄の底でリゾート気分満タンで休んでいるだろうよ』
『！！貴様！！』
精子朗の挑発にヒデムスはあっさりと乗ってくる。ベルスとその搭乗者ハイクのロストの報はすでにヒデムスにも届いていた。エクレアに絶対の忠誠を誓ったハイクが自分たちを裏切るとは考えられない以上、撃破されたことは間違いないとは頭では分かっていた。しかしそれを茶化した口調で煽られてヒデムスはカッとなっていた。それは機体の動きに顕著に表れる。その大きな隙を精子朗は逃しはしなかった。
『あんたもそいつと一緒にリゾート旅行に行って来な！！』
『黙れ！貴様をハイクの元に謝りに行かせてやる！！』
一気に懐にまで飛び込んできたシュテンカイザーをハロインが迎え撃つ。剣と斧が唸りをあげてシュテンカイザーに振われる。その二つを炎の拳が迎え撃つ。ぶつかり合った二つはシュテンカイザーの拳の方が一方的に剣と斧を溶かしてゆく。ヒデムスは舌打ちをしてすぐさまそれを投げ捨てると、今度は槍と鉈で攻撃してゆく。その攻撃を華麗にかわすと、シュテンカイザーの渾身の蹴りが巨大なかぼちゃを蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたかぼちゃはごろごろと大地を転がり、土煙を上げて無様な姿を晒す。
『くっ！なんというパワーだ！！』
ヒデムスも自分の来たのパワーには自信を持っていたが、シュテンカイザーのそれは明らかに桁外れであった。こちらの攻撃は完全に無効化され、シュテンカイザーの攻撃は大ダメージを与えてくる。正直このままでは勝負にならないことは明白であった。
『ならば！！』
真正面から戦いを挑んでも意味がないと悟ったヒデムスはすぐさま戦法を変えてくる。力押しだけがこの機体の得意技ではない。ハロインにはベルスに炎を操る能力が備えられているのと同様に、特殊な能力が備わっている。その能力を駆使して戦えばこの化け物じみたパワーを持つ機体に巻けることは考えられなかった。
『？？何をする気だ？？』
『こうするのさ！！』
ハロインの動きに変化を感じた精子朗が首を傾げると、ヒデムスはすぐに動きをみせる。ハロインの大きな口から何かが飛び出し、大地にまき散らかされてゆく。それはすぐさま蔦を生やし、実を結んでゆく。ハロインと同じ巨大なかぼちゃがいくつも大地にその姿を現す。
『それがどうかしたのか？』
『その余裕、どこまで続くかな？？』
ヒデムスの笑い声に呼応するように巨大なかぼちゃがその姿を変えてゆく。表面に顔が浮かび上がり、手足が伸びて一体、また一体とハロインが増殖してゆく。気がついたときには２０を越えるハロインがシュテンカイザーを取り巻いていた。まさかこんな力を有しているとは思ってもみなかった精子朗は素直に驚きの声を上げる。
『すごいな・・・こんな力もあるんだ・・・』
『その通り。一体、一体、ほぼ本体と同等の力を有しているぞ？？』
ヒデムスはにやりと笑うと、一斉に攻撃を仕掛けてくる。口から無数の種を飛ばし、四方八方から狙い打ってくる。精子朗はその種を炎の拳で叩き落してゆく。しかし、数が多すぎるため撃墜できなかった種がシュテンカイザーの周囲で爆発する。一発一発の破壊力はきわめて低いが、数が多すぎる。じわりじわりとシュテンカイザーの装甲を削り、ダメージを与えてゆく。
『くぞ、これならどうだ！！』
種を落としきれないと分かった精子朗は今度はハロイン本体に攻撃を仕掛けてゆく。本体の数をそぎ、種爆弾の数を減らすのが目的であった。しかしこの攻撃も１体２体と撃墜しても、新たな種が吐き出され、実を結び、新たなハロインが生み出されるだけでいっこうに解決策にはならなかった。
『ちまちまとうざったいな・・・』
『どうですか？いくら倒しても倒せない。ハロインの無限地獄からもう逃げられないんですよ！』
『逃げる必要なんてどこにもなんだよ！』
自分の技に絶対の自信を持つヒデムスは降伏を迫ってくる。そのヒデムスに精子朗は１体１体ハロインを叩きのめしながら降伏勧告を拒絶する。それならばとヒデムスはさらなるハロインを呼び出し、シュテンカイザーを埋め尽くしてゆく。１体一体の防御力などはハロインに比べてコピーは低いと言っていい。シュテンカイザーの一撃で破砕するのだから刺して強敵というわけではなかった。しかし、数が数である。ダメージは徐々に蓄積されていくだろうし、何よりも鬱陶しくてたまらなかった。だから精子朗は一気に決着をつけにいく。
『こいつで終わりにしてやる。斬漢刀・弐式！』
『刀？大きな刀ですが、そんなものでこの数のハロインをどうにかできるとでも？』
『終わりにしてやるといった！いくぞ、斬漢刀・弐式！”満月斬”！！！』
この戦いを一気に終わらせるべく精子朗は腰の巨大な刀を抜き放つ。これまで使っていた斬漢刀をさらに大きくしたようなそれを目の当たりにしたヒデムスは少し弱気になったが、相当数のハロインが埋め尽くしたこの状況を大きな刀ひとつでどうにかなるとは考えられす、未だに強気でいた。そんなヒデムスを窘めるように睨み付けると、精子朗は斬漢刀・弐式を腰ダメに構える。そして自分を中心として円を描くように斬漢刀を振う。まるで満月が大地に広がるようにシュテンカイザーの斬撃が辺りに広がってゆく。その一撃は周囲を取り囲んだハロインのコピーを切り裂き、なぎ倒してゆく。
『そんな・・・馬鹿な・・・』
『言っただろう？終わらせるって！！』
周囲に広がった斬撃の余波が収まると、そこにはハロインの残骸が山のように横たわっていた。その中心で斬漢刀・弐式を肩に担ぐような格好で精子朗は最後に残ったハロインを睨みつける。片足を失ってはいたが、それが間違いなくヒデムスの乗るハロイン本体であることは間違いなかった。そして精子朗は肩に担いだ斬漢刀・弐式を両手で掴むと、最後の、とどめの一撃を振り下ろす。
『斬漢刀・弐式！”十列斬”！！！！』
『ぎぎゃあああああぁぁぁぁっっっ！！！』
勢いよく振り下ろされた斬漢刀はハロインの胴体を頭から真っ二つに切り裂く。その勢いで回転するように切っ先を返し、今度は横から胴体を切り裂いてゆく。十文字に切り裂かれたハロインは一拍置いて大爆発を起こす。その爆音と紅蓮の炎を背に受けてシュテンカイザーは斬漢刀・弐式を腰に納め直す。
『お友達のところに行って慰めてもらいな！』
爆炎を見つめながら精子朗はそう言い放つ。その言葉に答えるものは誰もいなかった。ただ赤い炎が燃え盛る。消えて逝ったヒデムスとハロインを慈しむかのように・・・
「セイシロー！見事であったぞ！」
戦いが終わるとシルヴァは満足そうに頷きながらシュテンカイザーに近付いてくる。ガーバスの館では主がやられ、その後に出てきた強大な力を持った相手もいとも簡単に退けられた現実に騒然としていた。ガーバスに買われ、奴隷のように扱われてきた女性たちは歓声を上げ、ガーバスに傅いてその富の栄誉に饗してきた連中は恐怖に悲鳴を上げる。これまで奴隷のように扱ってきた自分たちが報いを受ける番、そのことを彼ら自信が一番よく分かっていた。実際そのとおりで、手に手に武器を持った女たちはその取り巻き達に復讐を果たしてゆくのだった。
「うむ、これでこの星も少しはマシになるであろう！」
「まったくですじゃ、姫様！」
満足そうに頷いたシルヴァだったが、その声に表情が凍りつく。先ほどは混乱に乗じて無視していたが、この状況では無視することはできない。恐る恐る振り返ると、白い鉢巻をした爺さんが４人の筋肉男を従えて仁王立ちしていた。その顔にシルヴァは非常によく見覚えがあった。正直忘れてしまいたいくらいに・・・
「爺・・・どうしてここに？」
「このシスルに姫様ありと聞き及び、参上仕りました！」
「ここはシスルではないわ！！！」
自分の降り立った星がシスルと思い込んでいるロハンは胸を張って答える。その答えにシルヴァは思わず突っ込みを入れる。シスルに向かっていたはずなのに、どういうわけかこの星まで来てしまう辺り、ロハンの運のよさと悪さがにじみ出ている。当のロハンはそんなこと気にも留めず、シルヴァににじり寄る。
「さあ、姫様！一刻も早く陛下の下へ！」
「今、アル達と向かっているところじゃ！そなたに用はない！」
「そうは参りませぬぞ！姫様には覚えていただかなければならぬことが山のように！」
「これだからそなたには会いとうないのじゃ！」
そう言うが早いか、シルヴァはロハンに背を向けて走り出す。やっとの思いで見つけ出した姫君を逃がしてなるものかとロハンがそれを追いかける。シルヴァの悲鳴とロハンノ小言が響き渡る中、不毛な追いかけっこが始まる。その様子を見つめていた倫は隣で生暖かい笑みを浮べるアルに問いかける。
「だれ？あのお爺さん？」
「姫様の爺やですよ。口うるさいのが玉に瑕ですけど・・・」
「・・・納得・・・」
アルの説明に倫はあっさりと納得する。あんな口うるさいのに側にいられたらうるさくてしょうがない。それを考えると思わずシルヴァに同情してしまう。そんな倫を他所にシルヴァとロハンの追いかけっこはシルヴァの勝利で幕を引いていた。体力の尽きたロハンはその場にうずくまってしまう。
「おお！ロハン様！！」
「むうっ！これはいかん！」
「我らの筋肉で元気付けて差し上げよう！！」
「おお！それは名案！！」
その場にへたり込んで動けなくなってしまったロハンの異常に気付いた筋肉男たちは慌ててロハンの元に駆け寄る。そして異様な踊りを踊りながら筋肉を戦慄かせて腰をくねらせ始める。その見ているだけでも変な匂いがしてきそうな暑苦しい光景に倫は眉を顰める。
「何、あの変態？？」
「姫様の親衛隊です。姫様には嫌われてますけど・・・」
「まあ、普通そばに置きたくないわよね・・・」
嫌そうな顔をしているアルに代わって説明してくれたエルもまた眉を顰める。倫は心底嫌そうな顔をする。口うるさい年寄りに暑苦しい筋肉変態軍団。こんなのと関わりになるのはごめん被りたかった。同時にこれから先こんなのと一緒に旅をするのはもっとごめん被りたい。だからシルヴァが困る姿を見る喜びを捨てて精子朗に声を掛ける。
「精子朗！わたし達を連れてって！早くここから発ちましょう！」
『・・・・・その方が得策だな・・・』
シュテンカイザーから外の様子をう赤がって射た精子朗も同意見であった。すぐさまシュテンカイザーの膝を着かせると、両手を広げて倫たちを迎え入れる。ロハンの魔の手から逃れたシルヴァもそこに飛び乗ってくる。全員が手の平の上に乗ったのを確認すると、精子朗はすぐさまシュテンカイザーを立ち上がらせる。
「ううっ、姫様！お待ちを・・・」
「すまぬな、爺や！わらわはこの者たちとともに行かねばならぬところがある！」
「姫様、いま皇国内は不穏な動きが・・・」
「許せ、爺や！！」
あくまで引き止めようとするロハンにわざとらしく目元を拭いながらシルヴァは手を振ってみせる。そんなシルヴァを乗せたシュテンカイザーは轟音を轟かせてその場から飛び立ってゆく。シルヴァの名前を叫ぶロハンの声はその轟音にか消え去れ、あっという間にシュテンカイザーはロハンたちの視界から消えてゆく。シュテンカイザーの消えた空を見上げていたロハンはふらりとよろめく。
「むぅぅぅっっ・・・眩暈が・・・」
「むっ、まずい！みんなもっと激しい踊りを！！」
立ちくらみを起こしたロハンを元気付けるべく、四バカはさらに腰を激しくくねらせて踊り始める。じっとりと体に浮かんだ汗が周囲に撒き散らされ、さらなる悪臭を漂わせる。ここまでの長旅の疲労に加えてやっと会えたシルヴァに逃げられたショックにロハンの体力は限界ぎりぎりであった。そこに追い討ちをかけるように四バカが怪しい踊りを踊って悪臭をばら撒いたからたまらない。ロハンは白目をむいてその場に倒れ伏してしまう。ぶくぶくと泡を吹いて卒倒するロハンの意識はここで完全に途絶えてしまう。
「むむっ！ロハン様が気を失われた！」
「これはいかん！すぐに人工呼吸を！」
「それはわれが！！」
「いや、われが！！」
我先にとロハンの唇を狙い始める四バカ。このあと誰に唇を奪われたのか、加減を知らず大量の意気を流し込まれたロハンが生死を彷徨うかけたことなどなど、残された五人が大騒動を起こしたのだが、それはシルヴァたちの与り知らぬところであった。
こうして旅は続く。新たな追っ手を巻き込みながら・・・
続く
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