鰍ノ章(其ノ壱)


駿城“甲鉄城”は美馬の率いる駿城“克城”に連結され、金剛郭に向かっていた。甲鉄城の乗組員たちは皆、囚われの身となり、克城にて飼われている無数のカバネの食料の為に生き血を取られていた。

「すまんが妻は勘弁願えませんか?」

鰍はその声のする方を向く。

甲鉄城の男の1人が狩方衆に懇願をしていた。

「代わりに、私が二人分出しますから…。」

どうやらその男の妻が血を取られ過ぎて、調子が悪いらしかった。

「だそうですが?」

(どうします?)という感じに、狩方衆の一人が幹部の瓜生と蕨(わらび)に尋ねる。

「俺は別に構わねえよ。」

瓜生は応えるが、蕨は別の意見を言う。

「いや、それでは取引として面白味がない。」

蕨は右手で小刀を弄りながら立ち上がり、甲鉄城の男の方に歩いてくる。

「いや、それなら三人、いや四人分でも…!」

男は懇願する。と、蕨はその男を鋭い目で見つつ云う。

「宜しい。取引成立だ。」

蕨は握手を求めるかのように、男に左手を出す。

男は安心するかのように、その蕨の手を握る。とその瞬間!

蕨の小刀がきらりと光る。

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

男の悲鳴が克城の採血車両の中に響き渡る。

「ひ!!」

様子を見ていた鰍の口からも短く声が漏れる。

男の左手が肩から無くなっていた。男は肩口を押さえ、床にうずくまり苦痛に耐えていた。その妻はあまりのことに気を失う。

「ちっ」

瓜生は舌打ちをする。

「血を取れ。」

蕨は何もなかったかのように、配下の狩方衆に声をかける。

「蕨、弱い者いじめも退屈だぜ。」

瓜生が蕨に云う。少し非難しているようだった。

「ふっ。」

蕨は笑いながら立ち去ろうとする。蕨にとっては一寸した退屈しのぎであった。

「お前!なんてことするんだよ!!」

大声が採血室に響き渡る。

鰍はその声の持ち主の方を見る。逞生であった。

逞生は狩方衆に押さえつけられつつも、怒りの表情で蕨を睨んでいた。

「君の目方なら…三十人分は軽いか…?取引するかね?」

蕨は逞生の小太りな身体を見つつ、揶揄するかのように云う。右手の中で血を吸った小刀を弄繰り回している。

「なんてことするの!」

鰍も思わず叫びながら逞生と蕨の間に身体を滑り込ませる。鰍も逞生同様周囲にいた狩方衆に押さえつけられる。鰍の身体は恐怖で小刻みに震えだす。衝動的に叫んでしまったことに後悔しつつも、でも黙ってもいられなかった。

「あなたたち、いったい何様のつもりよ!!」

鰍は恐怖に負けまいと身体を震わせつつも蕨に食って掛かる。

蕨はその鰍の様子をじっと見る。そして彼女の方へ近づく。

鰍の身体は恐怖で震えが止まらない。

蕨はそんな鰍の顎を刀を持たない左手でしゃくり、その顔を覗き込む。

鰍は恐ろしさで涙が出そうになるのを必死でこらえ、気丈にも蕨の顔を睨み返す。

「ふっ、なかなか気丈な娘だな。気に入ったぜ。」

とそれだけ云うと、踵を返す。

「娘の方は連れてこい!男は開放していい。」

蕨は背中越しに狩方衆に命令し、部屋を出ていく。瓜生は軽く舌打ちをしただけで、蕨に対しもうこれ以上意見は云わない。命令された狩方衆は鰍を押さえつけたまま、彼女を連れて蕨についていこうとする。

「ええ!!…ちょっ…ちょっと、いやああああああ!やだあああ!!」

鰍が恐怖のあまり叫ぶ。

「待て!!鰍!!かじかああああああ!!」

逞生が叫ぶ。

「た…逞生くん!!逞生くぅぅぅぅんんんん!!」

連れ去られつつ、鰍の叫びが採血車両の中でこだまする。













克城の客車。

広めのコンパートメントのようになっている。しかしながら、壁に収納できるような簡易ベッドがあるだけで、あとは特に何もなく殺風景なところである。幹部の個室と云うより、兵士たちが寝るだけのためのスペースの様である。

「いやあああ!離してえええ!!」

狩方衆達に腕をつかまれた鰍が連れて来られる。

狩方衆は乱暴に彼女をそのベッドの上に放り出す。そして後から入って来た蕨と入れ違いに部屋から出ていく。

「は!」

ベッドから身体を起こしつつ、鰍は蕨を睨む。

蕨は変わらぬ冷酷な目で鰍を見ている。右掌の上で先程その威力を見せた小刀を弄繰り回している。

「な、何をする気!?」

鰍は恐怖で身体が震える中、蕨に問う。声が震えないようにゆっくりと話す。

蕨はその冷たい視線で作務衣を着た鰍の身体を舐め回すかのように見る。

「ふっ。愚問だな。こんな部屋に連れ込まれ、二人になったらやることは一つだろう。それとも、そんな想像もつかない程、おぼこでもなかろう?」

鰍の身体が更に震える。そう、彼女にも何が起きようとしているのかわかっていた。でも、経験のない身の硬い少女にとり、それが実際どんなことになるのかは想像が出来ない。

鰍は蕨の舐めるような視線から胸の部分を隠そうと両手で作務衣の前の部分を閉じる。

「へ…変なことをするのなら…、し…死んでやる…!!」

屈辱を与えられるなら死んだ方がまし、鰍はそういう少女らしい潔癖さを持っていた。いつでも舌を噛めるようにと、そう考える。本当は自決袋が欲しい、そうとも思ってしまう。甲鉄城の者たちはみな囚われの身であるから、武器にもなれる自決袋は狩方衆に奪われてしまっている。

蕨は手のひらの中で小刀をクルクルっと回した後、柄をしっかりと掴み、その刃先を鰍の鼻先に向ける。

「ひっ!」

鰍が小さな悲鳴を上げる。身体がガタガタ震える。

「いい、アイデアだ!俺が殺してやってもいいんだが…。」

蕨が酷薄な目を向け鰍に云う。

「だが、お前が死ぬとあの子供たちが困るんじゃないか?」

鰍は顕金駅出発以降、親を亡くした赤ん坊や子供たちの世話をしてきていた。将来は寺子屋の先生になりたいと思う鰍は子供が好きだったので、進んで世話をしてきたのであった。子供たちからも親代わりのように慕われていた。

「もっとも、お前が死んだ後に、後を追わせてやってもいいんだしな。」

蕨の目は冷酷であった。鰍は先の磐戸駅での狩方衆の襲撃を思い出す。彼らは平気で女子供でも殺す。

(駄目…。私はどうなっても、あの子たちは守らなくちゃ…。)

鰍はそう考えてしまう優しい少女である。

「どうだい?お嬢さん?」

蕨は冷酷な目にいやらしさを滲ませながら鰍に聞く。

「…駄目…。あの子たちには、手を出さないで…。」

鰍は蚊の鳴くような小さな声で答える。一気に体の力が抜けてしまったようだった。

「なら、楽しもうぜ。お嬢さん。」

蕨は小刀を鞘に戻す。

そして鰍の顎を掴み、顔をあげさせる。鰍の顔は涙で少し汚れていたが、その目はしっかり蕨を睨んでいた。

(この位、気が強くなくては面白くない。)

蕨はそう思いつつ、いきなり鰍の唇を自分の唇で塞ぐ。

「…んん!むぐぅぅぅぅぅ!!」

鰍 は軽く悲鳴を漏らす。ショックである。鰍はまだ特定の男の人を好きになったこともない、恋に憧れつつも未だ恋をしたこともない少女である。生駒や逞生のことは友人として好きではあったが、彼らと接吻をしたいと思ったこともない。いつか素敵な人が出来たら、こんな事もするのかなぁと、考える程度であった。

蕨に諾と答えたとき、奪われることはおぼろげに覚悟はしたが、それが実際どういう事なのかはやはりわかっていなかった。脳天をショックが駆け巡った。

蕨は鰍の唇を貪るように吸ってくる。その感触が気持ち悪かった。

(い…いやだ…こんなの……!!)

彼女にとって接吻は、素敵な男性とのこの上もなく甘い行為だと考えていた。だから、今こうして自分の身に起こっていることは、信じられないことであり、彼女自身を絶望の中に落とし込んでいくものであった。

(いや…やめて…お願い……気持ち悪い…!!あっ!ああああああ!!)

鰍の口中に蕨の舌が侵入してきた。鰍は相手の口の中に舌を入れると云った接吻の仕方は知らなかった。先ほどまで感じていた以上の激しいショックが彼女を襲った。

(やめて!!やめてやめて!!気持ち悪いよぉぉぉ!!)

まるでナメクジを口中に入れられたような気分であった。鰍はその気持ちの悪い舌を自分の口中から押し出したいと考える。自分の舌を使って、微かに抵抗を試みる。が、しかしそれは結果的に蕨の舌に自分の舌を絡めることとなり、蕨を楽しませる結果にしかならなかった。

(いやあああ!お願い、もうやめてええ!!)

気丈な鰍も蕨のこの攻撃には耐えられなく、蕨の唇から何とか逃れようと身体をよじり、また、手で蕨の腕の中から逃げようともがく。

蕨にはその小さな抵抗が楽しかった。従順な女を抱くだけではつまらないと考えていたからである。

(このぐらいの抵抗がないと、つまらんな。そろそろ許してやるか。)

蕨はそう思い、鰍を激しい接吻攻めから解放してやる。

鰍は蕨の身体を押し出し、自分はベッドの後ろの方に逃げる。しかし、鰍は今の接吻攻撃でまいっており、それ以上どうすることも出来なかった。

(奪われた…私の唇…!大切な唇を…あんな…あんな男に!!)

鰍は憎々しげに蕨を睨む。再び涙も出る。

そんな鰍の様子が蕨の嗜虐心を更に刺激する。

「ふっ!」

蕨は軽く笑うと、一気に彼女をベッドの上に押し倒す。

「え!…ああ!きゃあ!」

鰍は短く悲鳴を上げる。その鰍の上にのしかかる様に蕨が行く。

今度は鰍の首筋に蕨は唇を寄せる。そして舌で鰍の白い首筋を舐める。

鰍の身体の中を軽い電流が走っていく。

「あああ……いや……!」

鰍は、蕨の舌の動きに動揺する。まるでナメクジが這うような気持ち悪さを感じつつ、でもその奥に何か気持ちの良いものが隠れているかのような、鰍がこれまで味わったことのない不思議な感覚が身体の中を駆け巡っていた。

(…やだ……何?この感じ…、気持ち悪いのに…。)

蕨は鰍の着ている作務衣の前をはだかせる。鰍の可愛らしい形の良い胸が現れる。この時代、女性はまだ下着と云う概念のものを着ていなかった。作務衣の下にはすくすくと成長した鰍の健康的な生身の身体があるだけである。

「いっ…いや!見ないで!!」

鰍は反射的に両手で胸を隠す。

その両手首を蕨は自分の大きな左の手のひらで掴み、彼女の頭の上に持っていく。

「あっ、痛!!」

鰍はベッドの上で仰向けに寝転がされ、手を万歳した格好で固定されてしまう。作務衣の前ははだけ、可憐な胸が丸見えになっている。

「いや…!お願い、見ないで……。」

鰍は羞恥心で顔を真っ赤にし、横を向く。いやらしい視線を送る蕨の視界から逃げたかった。

蕨はそんな鰍の様子を楽しみながら、今度は唇を彼女の胸に這わせる。

「あっ、いや!は!はああああああああ!!」

鰍の身体の中を電気に似たものが走り抜ける。

「や…そこは止めて…、あっ…ああ!!はああああああああ!!」

鰍が悲鳴を上げる。

(何…、この感じ…気持ち悪いのに…。何で…この感じ…あっ…あああああああああ!!)

蕨が鰍の乳首を咥える。途端に心地よい電流が身体の中を駆け巡る。鰍には未体験の強い刺激であった。

(ふふふ。他愛もない。)

蕨はそう思う。そうである、蕨は克城で行った駅々で今回のように女を騙しモノにすることを多々行っている、いわゆる女好きの男であった。女を気持ち良くするテクニックもいろいろと熟知している。男を知らない鰍の未発達な性感を翻弄するぐらい、訳もなかった。

蕨は、左手で鰍の両手を押さえ込みつつ、空いている右手と唇で、鰍の胸を愛撫する。

「あああ!!いや!やめて!お願い!!はあ!あああああああああああ!!」

まるでナメクジに這われているように気持ちの悪い感触が消え、心地よい快感が鰍を襲っていた。

(いやだあああ。何で?!どうしてこうなるの?!気持ち悪いのに!気持ち悪いはずなのに!何?この感覚は何なの!!)

心地よい、しかしながら激しい電流が胸から起こり、それは脳天まで貫き、そしてお腹の辺りに沈殿していく。鰍はお腹の辺りが熱くなり、ドロドロと何かが溶けていくような感覚を味わっていた。

「いや…!もう、やめて…!熱い!熱いの!!お願い!!はあ!あああ!!」

蕨が乳首を軽く噛む。

「ひゃあ!やだ!いやあああああああ!!」

これまでにない強い刺激が鰍の身体を駆け抜ける。

「駄目!ああ!もう!やめて!ひゃうううう!!あああああああああああ!!」

鰍が耐えられない刺激に襲われ、首をイヤイヤ振りながら叫ぶ。

蕨はその様子を見届けると、一回体を起こす。

「…はあ…はあ……はああ………。」

鰍は呼吸が上がり、半分放心状態になっている。

蕨は押さえつけていた鰍の両手も放す。

そして、彼女が履いている作務衣のズボンを下ろす。彼女の女性の部分が蕨の前に開かれる。そこはまだ少女らしく毛も薄く、しかし今の蕨の攻撃に反応したか、少し口を開き、少し濡れた内側を見せていた。

「いいねえ。まだ手付かずって訳か。」

蕨はニヤリと笑う。

鰍の凌辱劇は始まったばかりだ。











続く













☆人物紹介



〇蕨

美馬の率いる狩方衆の幹部の一人。性格は残忍酷薄。剣の腕も優れている。



〇瓜生

狩方衆の幹部の一人。









◎用語説明



★    自決袋

お椀型の小型指向性爆弾。カバネに噛まれた際、カバネ化する前に心臓部分に当てて爆破させる。日ノ本の民一人一人に、幕府から配布されている


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