第弐幕〜ラース・ワウの虜囚〜



ラース・ワウ。

アの国王ドレイク・ルフトの地方領主時代の居城である。現在ドレイクは、ラウの国攻略のため居城をエルフ城に遷したため、ここにはドレイクの妻ルーザと娘リムル、および彼女らを守る兵士たちがいるのみである。しかしその城の外れには、通称"機械の館"といわれるオーラ・マシンの開発工場があり、オーラ・マシンの発明者であるショット・ウェポンとその一統がそこにいる。





リムル・ルフトは、何か嫌なものを感じていた。

それが何処から来るものなのかはわからない。ただ、ひどく嫌なものがこのラース・ワウの城を包み込んでいた。

夕方のオーラ光に身を任せながら、リムルは考える。

(この嫌な感じは、何かしら・・・。まさか、ニーに何か悪いことが!)

リムルは父ドレイクと敵対するニー・ギブンと恋仲であった。戦(いくさ)がこの二人の仲を切り裂いていた。父ドレイクのすることに大義を感じられないリムルは過去何度もこの城を脱し、ニーのもと・ゼラーナに逃亡した。が、その都度連れ戻され、いまや母ルーザのもとで軟禁状態に近い状態になっていた。

(違うわ・・・。この感じはこのラース・ワウの中から感じる・・・。昨日のあの黒いオーラ・バトラーと何か関係するのかしら・・・。)

昨日、ショット・ウェポンのいる機械の館に、黒い見たことのないオーラ・バトラーが降りるのをリムルはこの窓から見ていた。そして、そのオーラ・バトラーに何か悪しき力を感じていた。

(お父様は、あのような悪しき機械をショットに沢山作らせて・・・。きっとなにか大変なことが起きてしまう・・・。ああ・・・・お父様・・・何故、あのおやさしかったお父様は何処に・・・。)

リムルはニーのことを想う。

(ニー・・・。もうお会いすることが出来ないかもしれないけれど、ニー、お父様を、お父様をお止めして・・・。)

そこまで思考をつむいだ瞬間、リムルはさっきから感じるこの嫌な感じが、機械の館の方から流れて来ていることに気付いた。

(機械の館・・・。ショットのところに、何が・・・。)

リムルはドアの方に向かい、部屋から外に出た。

(?)

おかしかった。ドアの外にはリムルが逃げ出さないように母ルーザの命を受けた兵士がいるはずだったのに、今は誰もいない。

試しに母の部屋の前にも行ってみる。母の気配もない。

リムルはそのことをおかしいと思いながらも、今は自由に動ける事実を喜び、胸騒ぎの元凶である機械の館に向かった。







気が付くとシーラは石造りの牢にいた。手には枷がついており、自由には動かない。立ち上がり、周囲を見回すが、少し高いところに光取りの窓があることと、隅の方にトイレらしきものがあることぐらいしかわからなかった。

こんなところで便をしたら、臭ってしょうがないな、と場違いなことを考え、シーラは苦笑した。

(自分は今や虜囚なのだ。)

シーラはそう思った。一国の王たるものをこんな場所に閉じ込めるなど、アの国は礼というものを失ってしまっている。シーラは屈辱に耐えながらも、悪しきオーラ力に摂りこまれつつあるアの国を憂いた。

(ここは、ラース・ワウなのか・・・。しかし、ショット・ウェポンは何故私をこのようにしてさらってきたのか・・・?)

その辺りがシーラには解せなかった。

(私自身を人質にする目的なら、そのままウロポロスの城で私を盾にし、開城させればナの国は落ちる。わざわざラース・ワウまで連れてくる必要はない。殺すのならあの場で簡単に出来たはず・・・・。では、何故。)

シーラの牢に食べ物が運ばれてきた。

ここについた昨夜から、定期的に出てくる。毒が混入されているかもしれないとも考えたが、シーラはそれを口にした。

(殺すのなら、とっくにしているはずだ。)

仮にここから脱出できる機会が来る時があったとして、そのときに体力が落ちているのは宜しくない、シーラはそう考えた。

(ここは毒であろうとなかろうと、エネルギーを摂り、オーラ力を蓄えた方が良い。)

シーラは飲み物に手をつけた時、その味に覚えがあるのをいぶかんだ。

(? この味は・・・。)







夜が来た。

兵士たちがシーラの牢に入ってくる。

彼らはシーラの手の枷を掴むと無理やりそれを引っ張り、彼女を立たせた。

何をする、とは彼女は言わない。ここは、人としての礼を失ってしまった場所。彼女を貴い女王としての扱いがなされないことは理解していた。なら、うろたえ叫ぶことは無意味であるだけでなく、自分をもおとしめる行為であるとシーラは考えていた。

兵士はシーラの枷を壁の鎖にくくりつけた。

シーラは両手を高く上げ壁に吊るされるような格好となった。

(クッ)

このような姿を晒させるアの国をシーラは怨んだ。



「これが、ナの国の女王シーラ・ラパーナか?ただの小便くさい小娘ではないか。」

兵士たちが出て行くと同時に、金髪の中年の女性を中心に数名の男たちが入ってきた。一人はシーラも知っている男であった。禍々しい黒衣の鎧で全身を覆った男、黒騎士であった。他には黒衣のマントを着た色の白い男と数名の兵士たちがいた。

金髪の女性は年齢こそそれなりにいっているが、妖艶な美しさを醸し出す女性であった。

「・・・ルーザ・ルフト・・・。」

「何?!」

シーラの呟いた言葉にその女性が反応する。

「ルーザ・・・。あなたがドレイク・ルフトの妻、ルーザですね。」

「な・・・、何を言う・・・!」

金髪の女性がうろたえる。

「隠しても無駄です。私にはわかります。ルーザ。今やアの国の王妃たるそなたは、礼というものを逸してしまったのか?他国の国主をかどわかし、このように幽閉するのか!?」

「・・・う・・・。」

ルーザは完全にシーラに気負わされていた。年端も行かない小便くさい少女が、鎖につながれて怯えまくっている、そう思い込み、舐めてかかってしまったのである。

ルーザは自分たちに敵対するシーラの顔を、しかも屈辱に歪むシーラの顔を一目見たかっただけであった。彼女とて、王族に対する礼というものは知っている。馬鹿馬鹿しいとは思っていたが。ただ、礼も知らぬ下賎な者として扱われるのは、ルーザにとっても屈辱的なことであり、そのために名を伏せ、シーラの様子を見にきたのである。

なのに、その正体をあっという間に看破されてしまったのである。

「礼を知らぬ下賎な女。まるで、ガロウ・ラン・・・。」

「なにー!!!」

ルーザは言うが早いか、平手でシーラの頬を打つ。

「うっ・・。」

シーラは小さな呻き声を上げるが、そのままルーザを睨みつづける。その瞳にルーザは逆上してしまう。

「何を言うか!小便くさい小娘のくせして!我はルーザ、ルーザ・ルフト!そなたにそんな屈辱的言葉をいわれる筋合いはない!」

ルーザは自分のことを棚におき、シーラへの呪詛の言葉を吐きながら、彼女の頬を平手で殴りつづける。

シーラは最初の一発こそ呻き声を発したが、後は歯を食いしばり、ひたすら声を上げず耐えつづける。その様子がルーザをさらに熱くする。

「ルーザ様!」

たえかねたかのように、黒いマントの男が兵士に止めさせる。

「ハア、ハア、ハア・・・。」

ルーザは肩で息をしている。

シーラは平手の嵐が去ると、何もなかったかのようにその澄んだ瞳を上げる。

その目の前に黒いマントの男が立つ。

「さすがはナの国の女王シーラ・ラパーナ。噂どおりたいしたオーラ力が携わっている。」

「そなたが、ショット・ウェポンですね。」

「そうです。お初にお目にかかります、シーラ女王。このようなところにお招きしたご無礼を容赦ください。」

「一国の王をこのような格好で辱めながら言うようなセリフではありませんね、ショット・ウェポン殿。」

シーラは気を引き締めながら、ショットの様子を観る。外見上はひ弱な感じさえする優男である。しかし、その内側にはドレイクをも凌ぐ強いオーラの力が垣間見える。悪しき黒いオーラ力がふつふつと彼の奥深くから湧き出てくるのが、シーラの心眼にはくっきりと浮かび上がっていた。

(この男・・・。危険な男。悪しきオーラに摂りこまれている。ルーザなどとは比べものにならない・・・。)

「ふふ・・。シーラ殿、我々はあなたをナの国王としてここに招いたわけではないのですよ。」

ショットは悪魔のような笑みを浮かべながら話を始める。

「何?!」

「我々はあなたの強いオーラ力を頂くために、その実験材料として来ていただいた。」

「・・ど・・どういうことか・・?」

シーラはショットの言葉にひどく禍々しさを感じながら、それでも毅然と自分を保ちながら、聞き返す。

「これまで、我々はオーラ増幅器の改良を重ね、バイストン・ウェルの人間でさえ、地上人と同様に戦えるオーラ・バトラーを開発してきた。しかし、ショウ・ザマのように強力なオーラ力を持つものにはマシンの性能だけでは勝つことは出来ない。」

ショットが話し続ける。

「そこで考えを変えた。マシンでなく、パイロットのオーラ力を人為的にパワーアップできないかと。ふふふ・・・強化人間とでも言うかな・・・。」

「な・・・なんということを・・・。」

シーラはショットの悪魔的考えに恐怖する。

(人間そのものを改造して、兵器化するなんて・・・。)

「そこで、このオーラ集積器を開発した。」

ショットは自分の右手についている手鎧のようなものを見せる。手の甲に黒いレンズのような機械がついている。シーラの目にはそのレンズ上の部分から黒い霧のようなオーラが

にじみ出ているのが見える。シーラは黒騎士も同じ手鎧をつけていたのを思い出す。

「これは、バイストン・ウェルの地の底カ・オスから湧き出すオーラ力を人の体の中に注ぎこみ蓄積させる機械だ。」

「カ・オスのオーラ・・・。悪しきオーラ・・・。」

シーラが一瞬震える。カ・オスのオーラは強欲の力。そのようなものを摂りこめば、人は人でなくなる。

「その通り、カ・オスのオーラを摂り込んでも、ほとんどの兵士は発狂し、そのまま死んだ。強靭な意志を持つ私とここにいる黒騎士以外はな。」

ショットはシーラの考えを読んだかのように話を続ける。

「そこでまた、計画を変更せざろう得なかった。」

ショットがシーラの顔を覗き込み、彼女の顎を掴み上げる。

「今度は他人のオーラを自分の物とすることを考えた。」

「そのような・・そのようなことできるわけないでしょう!」

シーラはショットのその狂的な目に恐怖し、首を振りその汚らわしい手を振り払おうとした。

「ふふふ・・・。」

ショットは再び悪魔のような笑みを浮かべ、シーラから離れる。

「あるのだよ。シーラ。そのような方法が。」

「!」

シーラが息を呑む。

その様子を楽しみながらショットは続ける。

「地上界に中国という国がある。そこの古来の術に房中術というものがある。」

「ぼうちゅう・・・?」

シーラには聞きなれない言葉が出てくる。

「房中術というのは男女の営みを通じて、相手の気、すなわちオーラ力をコントロールする術のことだ。」

「な!・・・・なんという!」

シーラには言葉もなかった。男女のことなど、これまで遠ざけてきたシーラにとって、そのような術があること自体信じ難いことであり、ショックであった。その禍々しさに体の底から震え上がった。

「・・・魔道の術か・・・。」

「魔道かどうかはわからんが、私はこの術を機械的に補助する新式のオーラ集積器を開発した。素人でも房中術という高度な術を使えるようにするためにな。そして、その集積器の実験台として、強いオーラ力を持つ者を探していた。それがシーラ、お前だ。」

「・・・・」

「実験台としては、わが軍のオーラ力が強い者を使うわけにはいかない。戦力がダウンしてしまう。それに、雑兵はほとんどが男だ。房中術を施す相手としては女でなくてはならない。というわけで、危険ではあったが、オーラ力が強い女性、シーラ・ラパーナ、お前を選んだ。しかも、お前をかどわかせば、ナの国の戦意後退にもつながる。一石二鳥というわけだ。」

「・・・・この外道が・・・・。」

シーラは気を張り、そういうのが精一杯であった。あまりに禍々しい悪魔的計画に言葉を失っていた。

ショットはそういうシーラに冷たい一瞥を送り、ルーザの方に近づく。

ルーザはやっと落ち着いてきたようであった。

「さあ、ルーザ様。こちらへ。」

ショットはルーザを牢から連れ出そうとする。

「黒騎士!後は頼むぞ。後で実験結果を教えてくれ。」

ショットはルーザを促し、外へ出て行く。







リムルは機械の館に忍び込んでいた。

(何か変・・・。この館の様子自体が何か変ってきている。)

以前に来たときより規模が大きくなっている。しかしそれ以上に、何かよくない雰囲気が漂っていた。

「あ!」

格納庫に昨日見た黒いオーラ・バトラーを見つける。その姿にリムルは恐怖する。何かよくないものをそこから感じ取ってしまう。

(お父様・・・、こんな機械を使うことが本当にお父様の望むことなの・・・?)

リムルが黒いオーラ・バトラーを見上げていると、奥の方から話し声が聞こえてくる。

その声の主はこちらに向かってくるようであった。

(!)

リムルは慌てて物陰に隠れ、その人影を探す。

(・・・あれは・・・。お母様!それにショット。一体何を・・・。やっぱりここには何かあるのね。)

ショットとルーザが城の方に行ってしまうのを確認した後、リムルはショットたちが来た方に走り出す。

胸騒ぎがどんどん強くなる。リムルは自分の勘が当たっていることを確信していく。

気付くと、機械の館の地下に入っていた。何か禍々しいものを感じる。

「リムル様!いけません!」

聞き覚えのある透き通った声にリムルは呼び止められる。

「誰!」

リムルが振り向く。

そこには青髪のすらりとした女性がアの国の革鎧を着て立っていた。涼しげな目が特徴的であった。

「ミュージィ!」

リムルの音楽教師であったミュージィ・ポウである。リムルは彼女を姉のように慕っていたが、リムルを甘やかしたとルーザの不評を買い、くびになっていた。そんなミュージィに対しリムルは申し訳なく思っていた。そのミュージィとの再会であった。

「お久しぶりです。リムル様。」

リムルはミュージィに抱きつく。

「いいえ!私の方こそミュージィにずっとあやまらなくてはと思っていました。ごめんなさい、私のせいで・・・。」

「いえ、昔のことはもういいのです。」

「でも、ミュージィ。あなた、この格好は・・・。まさか・・・。」

リムルはミュージィの革鎧姿にあらためて気付く。

「はい。今はショット様の下で、戦士として働いています。」

「・・・ミュージィが・・・戦士・・・。あの優しいミュージィが・・・。」

リムルは驚きを隠せない。

「はい。そういう時代なのです。リムル様。」

「ミュージィ・・・・。」

リムルはつらかった。あの優しいミュージィまでもが戦場へ。自分の音楽教師をくびになったため、食べていくためにこうなってしまったのか。しかも父ドレイクの軍の下に・・・。自責の念でリムルは押しつぶされそうであった。

リムルは知らなかった。ミュージィはショットを愛し、彼のために働きたくて自ら進んで戦士となっていったことを・・・。

「リムル様。ここから先はリムル様の来るところではありません。お部屋にお戻りください。」

ミュージィが諭すようにリムルに言う。

「・・・え・・・。ミュージィ!何で!?」

リムルの問いにミュージィは答えない。

機械の館の中で、二人の女性が見つめあう。







黒騎士はゆっくりとシーラに近づく。

その右手をゆっくりと伸ばし、シーラの顎を掴み、顔を上げさせる。

「クッ!」

シーラはそんな黒騎士を睨みつける。

「ふ・・・。」

黒騎士の目がその兜の中で笑ったように見えた。

「黒騎士殿、そなたも騎士の端くれであろう。このようなガロウ・ランのごとき振る舞い、恥ずかしくはないのか!」

「ふふふ・・・。女王に対してなら確かにこれは無礼な行為であり、騎士として恥ずべき行為であろう。しかし、そなたは今は女王ではない。ただの実験材料にしか過ぎない。」

「なに!」

シーラは屈辱に身を震わせる。

「ただの実験材料に示す礼など、私は持ち合わせていない!」

「何を・・・!」

シーラはその屈辱的な言葉に身をさらしながらも、自分のオーラ力を充足させていく。この黒い男は危険であった。一瞬の隙も与えることは出来ない。ウロポロスでの失態がそれを物語っていた。

「ふふふ・・・。シーラ。オーラ力を強めようとしても、この私には無駄だ。ウロポロスではあのフェラリオ奴のオーラ力が加わったから抵抗できただけで、ここでは無意味だ。」

(そんなことはない。この程度のオーラ力・・・。しかし変だ・・・。思うように力が入らない・・・。)

シーラは自分の中でオーラ力が何か空回りしているように感じていた。

「シーラ。強いオーラ力を持つ貴様を何故あんなに簡単にウロポロスの城から誘拐できたと思うか?」

黒騎士がシーラから少し離れながら言う。

「どういうことか?」

シーラは考える。

(そうだ。あの聖戦士との謁見以降、何か自分の体の調子がおかしかった。白昼夢のような淫夢を見たり、体調はいいのに勘は悪くなったり、そしてあの夜も、完全に黒きオーラ力に呑みこまれていた。)

「そうさ。貴様のオーラ力を低減させる何かがあったのだ。」

黒騎士がシーラの考えを読み取り、言う。

「まさか・・・。」

シーラは信じたくなかった。

「しかも、これから始まる実験にふさわしい体となるようにも調合されていたということだ。」

シーラは考え込む。

「まさか・・・。ミューズが・・・。」

(彼女には邪心はなかった。私を愛しむ心しかなかった。あの彼女が・・・。いや、ありえない!)

シーラは毅然と黒騎士に立ち向かう。

「黒騎士!世迷言で私をだまそうとしても無駄です。私を迷わせ、隙を作り、オーラ力をを奪う気でしょう!二度も同じ手は食いません!」

シーラのオーラ力はそれに伴い増していく。

「ふふふ・・・。私にはミューズとか言う者がなんであろうと構わない。今の私にとって貴様程度のオーラ力を減殺させるのはたやすいこと・・・。」

黒騎士が言い終わったかと思うと同時に、彼は腰の刀を抜き、シーラの下半身に向けその剣を烈迫の気合とともに突き刺す。

「ひぃ!」

シーラが悲鳴をあげる。下半身のその部分は女性の急所である。烈迫の気合とともに剣を突き立てられれば、普通の者ならば失禁して気を失うであろう。しかし、シーラはかすかな悲鳴をあげただけでそれを耐え抜く。

剣はシーラの微妙な三角地帯の数ミリ下の壁に彼女のスカートごと突き刺さっていた。鋭い刃の先が彼女の女性の部分にヒヤリとあたる。ほんのあと数ミリずれていただけで、彼女の大事な部分は、見るも無惨に切り刻まれていただろう。黒騎士はたいした剣の使い手であった。

シーラは体の震えをもう止めることが出来なかった。今の攻撃に耐えるだけで、完全に気力を失ってしまったのだ。彼女が力を抜いて腰を一寸でも落とすものなら、大事なそこは真っ二つになってしまう。彼女は震えながらも、体をふんばっていた。

下半身からある液体が思わず流れそうになるのを、シーラは頑張って抑えた。数的は漏れたかもしれないが、それでも失禁を免れたのは、おそらく彼女の女王としての最後の誇りだったのかもしれない。

「フ・・・。」

黒騎士は軽く笑うと、シーラのスカートを裾まで切り裂きながら剣を抜き去り、わずかについたシーラの小水を祓うと鞘に収めた。

と同時に、シーラの体から力が抜ける。もう抵抗する力はなかった。切り裂かれたシーラのスカートの裾から、目を見張るような白く美しい足がのぞいていた。

黒騎士はシーラの枷を縛り付けている鎖を壁からはずす。と、シーラはその場に座り込んでしまう。黒騎士は彼女の両手の枷を掴み、吊るし上げるような格好で、彼女の顔の位置を自分の股間の高さに持っていく。

「では、シーラ殿。始めてもらいますかな。」

「・・・な・・・何をさせるのか・・・・。」

力は抜けきり、抵抗できなくなっても、シーラはまだ正気ではあった。黒騎士に弱々しい声ではあるが問い返す。

「ふふふ。前座だ。いきなりでは少しかわいそうだからな。」

「・・・何のことだ・・・は!ひい!」

黒騎士はシーラの顔の前に自分のモノを出す。それは大きく脈打つように蠢いていた。

シーラははじめて見る男のモノに恐怖する。そして、先程のショットの"男女の営み"という言葉を思い出す。

(こ・・・こんなものが・・・・あそこに入るのか!)

それはシーラにとってこの上なくおぞましい想像であった。

そんなシーラの様子を楽しむかのように黒騎士が言う。

「これを口に含んでもらう。」

「・・・な・・・何を・・・馬鹿な・・・そのようなこと・・・できるわけが・・・は!いや!!」

黒騎士はシーラの頭をもう片方の手で掴み、無理やり自分の股間に持っていく。

シーラは口をつぐみ、そのモノの侵入を防ごうとする。黒騎士のモノがシーラのかわいらしい頬をなぜまわす。その感触はシーラをさらに恐れさせた。

(いやだ!このようなものが!やめなさい!ああ!いや!気持ち悪い!はあ!いやああ!)

シーラは必死で首を動かし、黒騎士のモノから逃れようとする。

黒騎士はこれでは埒があかないと思い、手首のオーラ集積器に念を送る。と、そのレンズ上の部分から黒い霧状のオーラが溢れ出す。そしてそれはシーラの顔の辺りに流れていく。

「あ!」

突然シーラの口が彼女の意思に反し大きく開かされる。シーラは何が起こったのかわからない。その隙にシーラの口中に黒騎士のモノが挿入される。

「んんん!!!ングウッ!!!」

シーラが悲鳴をあげる。

黒騎士の巨大なものはシーラの喉まで突き刺さる。

(いや!こんなこと!うぐううう・・・。ああああ。)

シーラはおぞましさと苦しさで気が狂いそうであった。

何とかこのモノを口の外に押し出したかった。しかし、黒騎士の力強い手で頭は完全に固定され、動くことは出来なかった。

(ああ!気持ち悪い!なぜ、私がこのようなことを!)

シーラは舌を使い、このモノを押し出そうとする。それが男にとって心地よい刺激になるとは経験のないシーラには分かり様もない。

(早く、出して!ああ!息が!ああああ!)

シーラの舌が黒騎士のモノに絡みつく。黒騎士はそんなシーラの行為を大いに楽しむ。

「シーラ。やはり貴様は淫乱な娘よ。はじめて男のものを咥えたくせに、もう舌を使い男を楽しませるとは!」

(!・・・・違う!私はこの息苦しさから逃れたくて!ああ!だめ!苦しい!)

シーラは屈辱的な言葉に耐えながら、それでも舌を動かさざろう得なかった。

黒騎士のモノは刺激され、シーラの口中でどんどん大きくなっていく。

(いや!はあ!だめ!助けて!はああああ!)

シーラは酸欠でもう何がなんだかわからなくなってきていた。

「いいぞ、シーラ。もっともっと淫猥に舌を使って見せろ!」

黒騎士がシーラを言葉で嬲る。

(いや!私はこんなことしたくない!ああ!苦しい!いや!はああ!)

シーラは自分が悩乱するのは酸欠だけでないことに気付いていなかった。

この行為を続けることによって、シーラの体は微妙に反応し始めていた。

(ああ!いや!もうやめさせて!お願い!はあああああ!)

黒騎士はシーラの体の線が柔らかく変化し、顔が紅潮していくのを見届けてから、シーラの頭を前後に動かし始めた。

「んんんんんん!!!!んぐうぅぅぅ!!」

シーラが喉を突かれる苦しさから悲鳴をあげる。このような大きなモノを口に含まされ、しかもピストン運動をさせられるなぞ、シーラの限界を超えていた。

(いや!もう!あああ!苦しい!やめて!壊れる!はああああ!いやああ!)

シーラは心の中で悲鳴をあげ続ける。そこには毅然とした女王の強い精神はなく、ただの17歳の弱い少女の心しかなかった。

(助けて!はああ!いや!もうだめ!はああああ!ひいいいいい!熱い!はああああああ!)

シーラは自分の股間が反応し、熱くなっていることに気付いていなかった。ただ、この苦しいような快感のような行為が早く終わることのみを願っていた。早く終わらないと、自分が自分でなくなってしまうような、そんな恐れを感じていた。

「シーラ・・・。そろそろ行くぞ!」

黒騎士が言う。そろそろ限界が近づいてきていた。黒騎士は自分の腰も使い激しくピストン運動を行なう。

(・・・えええ!何なのか!行くっとは!?はああああ!ひいい!いや!もうやめて!苦し・・・・・!はああ!)

シーラの口の中で黒騎士のモノがピクピクと蠢きだす。

(何!これ!?・・・はひいいいい!やだ!はああああああああ!)

「いくぞ!」

黒騎士は己の欲望をシーラの口中に解き放つ。

「んんんん!!はああんんんんんんー!!!」

シーラはそのモノが自分の口の中で跳ねた瞬間、ドロドロとした重く熱い液体が自分の喉にぶち当たるのを感じていた。苦しくて思わず飲んでしまうが、その次の瞬間もの凄い吐き気がシーラを襲う。

(・・・・ううう・・・。何か、これは・・・・。)

黒騎士のモノはさらに跳ね、この熱い液体を吐き出しつづける。

(いや・・・・。こんなもの・・・!)

シーラはその液体を吐き出そうとする。しかし、黒騎士が頭を押さえ、自分のモノを吐き出させないため、その液体を吐くことが出来ない。

「シーラ、飲め!飲み干すんだ!」

黒騎士が命令する。

シーラは泣く泣く飲むしかなかった。気持ちが悪かった。その目からは涙が流れた。





黒騎士が、シーラの頭を離すと、シーラはそのままその場に倒れこんだ。そして、激しく咳き込んだ。シーラは先程の気持ちの悪い液体を吐き出したかったが、飲み込んだそれは、もう出て来はしなかった。

「どうだ、シーラ。初めて飲んだ男の精は。」

黒騎士が問う。

(精・・・。あれが・・・。そのようなものを飲まされたのか・・・・。私は・・・。)

男の精を飲まされた。たとえ強制的とはいうものの、その事実はシーラを打ちのめすには充分であった。

「初めてのくせをして、あんな風に美味そうに飲むなんて、貴様もたいした女だな。」

「・・・ば・・・馬鹿な。そのようなことは・・・。」

シーラは否定するものの、その言葉にもはや力はない。

黒騎士はシーラに近づき、かがみこむ。

裂けたスカートの裾から、シーラの下着が覗く。こころもち湿っているのが外からもわかる。

「しかも、こんなに濡らして・・・。感じていたのか?」

「!」

シーラはそのとき初めて、自分のそこが熱く濡れている事に気付いた。

(馬鹿な!何で!このようなことが!)

シーラは狼狽する。

シーラは知らなかった。先程黒騎士が言ったように、シーラの体自身がある薬を服用させられ続けたことにより、性的に反応しやすくなっていることを。

「あれほど言いながら、本当は男を求めているのではないか?この淫乱な娘が!」

黒騎士がシーラを嬲る。シーラは反論できない。

(そうなのか・・・。私は・・・。馬鹿な・・・そんなことは・・・。)

そう思いながら、シーラは自分のそこが熱く疼いているのを感じていた。

「では、望みどおり男を教えてやろう。」

黒騎士がシーラに身を寄せてくる。

シーラはこの禍々しい男に、そしてこれから起こる行為に恐怖を感じる。しかし、体は蛇に睨まれた蛙のように、痺れて動かすことが出来ない。

黒騎士の手が、シーラの足を掴む。

「はあ!」

シーラの口から絶望の吐息が出る。



と、その時。



もの凄い大音響が響き渡る。爆発音である。

シーラ達がいる牢もピリピリと振動する。

「何事!」

黒騎士が立ち上がる。

兵士が中に駆け込んでくる。

「わかりません!何者かがこのラース・ワウに侵入した模様です!」

「それではわからん!確認して来い!」

黒騎士が兵士に命令する。

その間にも爆発音は絶え間なく聞こえてくる。

「ゼラーナです!ゼラーナがこのラース・ワウに侵入してきました。」

別の兵士が報告にくる。

「ゼラーナが・・・。よし、私が出る。おまえはショット様にこのことを伝えろ!それからお前はこの女をしっかり見張っておけ!」

黒騎士は兵士に命令するとゼラーナを迎え撃つべく、彼の愛機、黒いオーラ・バトラー"ズワァース"に向かった。







続く











◎登場人物紹介



アの国

○    リムル・ルフト

アの国王ドレイク・ルフトの一人娘。父のことは愛しているが、父の大義なき戦に"悪"を感じている。ゼラーナの艦長 ニー・ギブンとは恋仲である。何度かニーのもとに逃げ出し、父ドレイクと戦おうともした。

○    ルーザ・ルフト

アの国王ドレイク・ルフトの妻、リムルの母。己の征服欲のため、夫ドレイクをたきつけるだけでなく、クの国王ビショット・ハッタとも姦通し、操る毒婦。娘リムルさえも、自分の欲望実現のための道具に使おうとする。

○    ミュージィ・ポウ

元リムルの音楽教師。心優しく、いつもリムルの良い相談相手であったが、それが災いして、ルーザに疎まれる。現在はショット・ウェポンに身も心も全て捧げる女戦士。青髪と涼しい目が特徴。


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