第四幕〜女たちの戦(いくさ)〜



「シーラ様!リムル!こっちよ!」

ミ・フェラリオのチャム・ファウは燐の光の航跡を残しながら、飛んでいく。

「もうちょっと!この先に“フォウ”が止めてあるわ!」

チャムが二人を振り返りながら言う。

リムル・ルフトはナの国の女王シーラ・ラパーナに肩を貸しながら、小走りで前を飛ぶチャムを追いかけていた。

(もうすぐ、ラース・ワウから出られる!そして、ニーに会える!)

リムルの気は逸っていた。

(もうすぐ・・・。)

と、突然チャムが止まった。

「どうしたの?チャム!」

リムルは足を止め、その小さな友人に尋ねる。

「誰か来るわ。気配を感じるの。」

チャムが短く言う。

リムルはもっていた短剣を抜き、シーラをかばうように構える。

少女三人が息を飲む。

小柄な人影が少し離れたところに見えてくる。

長い黒髪が風に舞っているのが見える。オレンジ色の革鎧、先ほどショウが着ていたものと良く似た革鎧を着ている。

「あ!キーン!」

チャムが声を上げる。そして次の瞬間彼女は、彼女の友達であり、戦友でもあるキーン・キッスの元へ飛んでいく。

「キーン!来てくれたの!」

チャムの声にキーン・キッスも気付く。

キーンの目に自分に向かって飛んでくるチャムとその背後にいる少女、リムル・ルフトの姿が目に入ってくる。

(・・・リムル・・・・・。リムル・ルフト!)

キーンは腰にある短剣を静かに抜く。そしてそれを構えると、いきなりリムルに向かって素早い動きで斬りかかる。

「危ない!」

そのキーンの動きに気付いたシーラがとっさにリムルを突き飛ばす。

シュン!

キーンの短剣が空を斬る。

キーンは勢いあまり、そのままシーラにぶつかり、二人倒れこむ。

突き飛ばされたリムルはまだ何が起こっているのか良く理解できない。驚きで目を見開き、ただキーンを見ているだけであった。

「・・・キ・・・・キーン?!」

キーンはぶつかって倒したシーラのことは眼中にないらしく、またその存在すら気にせずに、すぐにリムルの方を振り返り、睨みながら立ち上がる。そして再び剣を構えなおす。

シーラはその瞬間にキーンの革兜から覗くその目を見た。

憎しみに燃える手負いの野獣のような目であった。

(キーン・キッス!これが・・・!!!)

シーラは息を呑む。

キーンは短剣を構えなおすと、瞬秒の間もなくリムルに斬りかかる。

リムルもようやく事態を呑み込んだのか、持っている短剣でキーンの剣を受ける。

キン!

剣がぶつかる音が響き渡る。

「キーン!どうしちゃったの!?ねえ!キーン!!!」

チャムがキーンの顔の側に飛んでいき、革兜につかまりながら彼女に話し掛ける。

「!キーン・・・・!」

チャムもまたキーンの血走った目を見て息を呑む。

(キーン・・・変よお!どうしちゃったの!・・・。)

リムルはその友人からの突然の攻撃に、訳も分からず、といって反撃も出来ず、ただ必死で彼女からの攻撃をかわすので精一杯であった。

「キーン!やめて!お願い!いつものキーンに戻って!ねえ!!」

チャムが彼女の革兜を引っ張り、何とか彼女の行動をやめさせようとする。

「邪魔するな!」

キーンの手が無理やりチャムを掴み上げ、後方に放り出す。

「きゃあー!」

チャムは数メートルほど投げ飛ばされ、そのまま倒れていたシーラにぶつかる。

キーンが剣を構えなおす。

「ニーは・・・・ニーは・・・・あなたがいるから・・・・・・許さない・・・・・・。」

キーンが低く呟く。その呟きはリムルや他の二人には聞こえない。

しかし、リムルにはこの仲の良かった友人が今、自分に紛れもない殺意を持っていることがやっと理解できていた。

「キーン・・・・。何で・・・・?」

リムルも短剣を構えなおす。

二人の少女が剣を構え対峙する。

「キーン!お願い!やめて!一体どうしちゃったのよぉ!!」

チャムがシーラの胸の上で叫ぶ。

「シーラ様。キーンは一体・・・。」

「わかりません・・・。ただ、彼女からはあの黒いオーラが感じられます。おそらくその力に摂りこまれてしまっているのでしょう。」

シーラが答える。

「元に戻らないの!?」

「わかりません・・・。が、あのオーラを彼女から取り除くことが出来れば・・・!」

「そんなこと言ったって!」

二人が再び剣を交えあう。

チャムは無駄かもしれないと思いつつもキーンの耳元に飛んでいった。そして彼女が正気に戻るように必死に話し掛け続ける。

一 方、リムルはキーンの剣を受けるだけで精一杯であった。キーンはギブン家に仕えていた騎士の家の娘。子供といってもそれなりに剣は使えるし、また戦場での場数は踏んでいる。それに引き換えリムルは領主の姫君である。多少の剣の心得はあっても、それはおままごと程度のものでしかない。リムルはやがてキーンに追い込まれていった。

カーン!

高い金属音とともにリムルの短剣が弾き飛ばされる。

「!」

リムルが息を呑む。

キーンが呼吸を整え剣を構えなおす。

「キーン!やめて!お願いよぉ!」

チャムがキーンの革兜を引っ張り、一生懸命彼女の邪魔をする。が、キーンにはこたえていない。

「・・・ハア・・・・ハア・・・・リムル・・・・あなたが・・・あなたがいるから・・・・ニーは・・・。」

チャムの耳にキーンの呟きが聞こえてくる。

「?・・・キーン・・・?」

再びキーンがリムルに斬りかかろうとする。

と、その瞬間、リムルとキーンの間にシーラが入り込む。

キーンがビクッとして攻撃を止める。

シーラの鋭い目がキーンを射抜く。

一瞬キーンが気負わされる。

「みんなして・・・みんなして私の幸せを邪魔するの・・・・。」

キーンが呟く。

「・・・リムルがいるから・・・リムルがいるから・・・・。」

キーンの呟きはリムルのところまでは聞こえない。

「ニーは・・・ニーは振り向いてくれないのよぉ!」

キーンは剣を握りなおし、シーラに向かって斬りかかろうとする。

「ばかああああ!!!!」

その瞬間、チャムのオーラ力が爆発した。

シーラはその機会を待っていた。チャムのオーラ力に自分のオーラ力をシンクロさせて、それをキーンの心の中にぶつけていく。シーラの意識とチャムの意識が混合し、キーンの中に流れ込む!

(ばか!キーンのばか!あなたはニーに何をしたのよ!何も努力しないで愛されようなんて!!ばか!ばか!リムルがいなくなったってニーは振り向かないわよ!どんなに努力したって、報われない愛だってあるのよ!私なんか!どんなにショウのことを想っても、この体の大きさの違いじゃ・・・報われないんだから!!ショウの悲しみを抱きとめてあげることすらできないんだからぁ!!でも私はあきらめない!ショウのためにショウのためだったら何でもするんだから!報われなくても、報われなくても頑張るんだから!!)

言葉にするとこんな風になるチャムの溢れんばかりの想いが、一瞬の間にキーンの中に流れ込んでいく。その瞬間、キーンはチャムの切ないそれでいて暖かい想いを共有した。

キーンの体の中から“黒い力”が霧のようになって抜けていく。

シーラもまた、チャムのその想いを感じ取っていた。

(チャム・・・。この子も・・・・ショウのことを・・・。)

シーラは複雑な気持ちでチャムの想いを受け止めていた。

リムルには、その瞬間シーラの発した白いオーラ力がキーンとチャムを包み込んだかのように見えた。彼女だけは何が起こったのか、良くわかっていなかった。それは彼女にとって幸せなことではあった。

「・・・白きオーラ力・・・。これが・・・シーラ・ラパーナの浄化の力・・・・・。」

リムルは思わず呟いた。











「キーン!」

チャム・ファウが声を上げる。

キーンはその声の方に向かい、ゆっくりと目を開ける。

三人の少女が心配そうな顔で覗き込んでいた。

「・・・・!・・シーラ様!リムル!チャム!・・・私は一体・・・!」

「良かった・・・。元に戻ったのね。」

チャムが安堵しながら言う。

「キーン・キッス。あなたはどうやってここへ?」

シーラがゆっくりと尋ねる。

「私は・・・、そう、戦闘中にリムルの姿を見かけて、リムルの救出も出来るんじゃないかと思って、それで・・・・、そう、ショットだわ!ショット・ウェポンに会ったわ!そこから・・・そこから・・・ああ、どうしたんだろう!」

キーンにはリムルを襲った記憶はないようであった。

「そうか。やはりショット・ウェポン・・・。」

シーラが黒きオーラ力の恐ろしさを感じ、短く震える。

「どういうことなのですか?シーラ様。」

一連のことを良く理解できていないリムルがシーラに訪ねる。

「ショット・ウェポン、そしてあの黒騎士は、機械の力を用いてカ・オスの悪しきオーラ力を自在に操れるようになっているのです。キーンはきっとショットのそのオーラ力に摂りこまれていたのでしょう。」

シーラはキーンの行動が彼女の欲望に起因していたのを知っていた。しかし、キーンとリムルの関係を考え、そこは伏せて話を続けた。

「ショットが・・・、そのような恐ろしいことを・・・。」

リムルはシーラのその説明に恐怖した。キーンも言葉がない。

「ちょっと、シーラ様、あの黒騎士もそんな力を持っているの!?」

チャムが沈黙を割って声を上げた。

「そうです・・・。」

「そんな男とショウは今戦っているの!!だめよぅ!ショウが危ない!」

チャムが騒ぎ出す。

「シーラ様は・・・・それを知っててショウを・・・・?!」

チャムが“まさか”という思いでシーラを軽く睨む。

「あの場合のショウの判断は的確でした。あの場で私たち全員がやられるわけにはいきません。」

シーラは自分の気持ちを押し隠しながら、ゆっくり、噛み締めるようにそう言う。

「そんな!ショウを見殺しにするの!!自分を助けにきたショウを!」

チャムがシーラに食ってかかる。小さな手でシーラの頬をばたばたと叩く。そんなチャムにシーラは何も言うことができなかった。一番ショウを心配しているのは、他ならない、シーラ自身であった。が、シーラはチャムのようにその気持ちを素直に表すことが許されていない。そんな風にショウへの気持ちを素直に表せるチャムのことを、シーラはうらやましくすら思えた。

(誰がショウを見殺しになぞにしたいか・・・。)

「ショウは・・・大丈夫です・・・。私はショウを信じています・・・。」

シーラはそう言うのが精一杯であった。

「私、ショウのところへ行く!」

チャムが羽を振るわせ、飛び上がる。

「キーン!リムルとシーラ様をお願い!私、戻る!!」

「あ!チャム、待ちなさい!」

リムルが止めようとするが、もうその時にはチャムは遠く機械の館の方に向かって飛んでいってしまっていた。









「ハア・・・・ハア・・・・。」

ショウの息は上がっていた。ショウは剣を構えなおし、再び黒騎士と向かい合う。

ショウは地上にいるときに空手をやっていた。師匠からは筋の良さを誉められたこともあった。一般の人間と比べ、人の攻撃を読んだり受けたりするのにショウは慣れてはいる。とはいっても、それはあくまで平和な現代人の戦闘の真似事にすぎない。戦(いくさ)を職業にしている男の剣裁きについていけるはずもない。ショウは黒騎士の剣を受けるだけで精一杯であった。

一方、黒騎士は余裕の攻撃を楽しんでいた。彼にとってはショウを斬り殺すこと自体は容易いことであった。しかし、彼はそんなにいとも簡単に彼に引導を渡したくなかった。自分が受けた屈辱を少しでもショウに味あわせるためには、そう簡単に殺してしまいたくはなかった。

(・・・俺をいたぶっているつもりか・・・・。)

ショウは黒騎士の攻撃について、そう思う。

(・・・楽しんでいやがる・・・・。)

ショウは最初からこの妖しい騎士に剣技で勝てるとは思っていなかった。あくまでシーラやリムルを逃がすための時間稼ぎでしかなく、隙を見て逃げ出すつもりであった。しかし、そのショウの考えは甘すぎた。黒騎士と彼の剣技の差はあまりに歴然としすぎており、手を抜いて相手をしている黒騎士の隙を捉えることすらショウには出来なかった。ショウは城壁の端に追い込まれていた。

城壁の下は堀である。そこまでは数十メートルの高さがあるが、この窮地から逃げ出すにはそこに飛び降りるしかないとショウは考えていた。しかし、黒騎士が彼にそんな隙を与えてくれるとは思えなかった。

「ふふふ・・・・。ショウ・ザマ。お遊びはこれまでだな。」

黒騎士が楽しそうに言う。

「命が惜しければ、助けてやってもいいんだが?」

黒騎士はショウが命乞いなどしないのをわかっていつつ、こんなことを言う。彼の目的はショウに果てしない屈辱感を与えることだ。

「・・・誰が!」

ショウが吐き捨てるように応える。

「ふふふ・・。そうだろう!そうでなくては面白くない!」

黒騎士は剣を構えなおし、烈迫の気合とともに剣を突き上げてくる。

ショウはやっとの動きでその剣を自分の剣で受けるが・・・。

「あ!」

ショウの剣は黒騎士のそれに弾き飛ばされてしまう。

黒騎士は、最初からやろうと思えばいつでもこのようにショウの剣を弾き飛ばせたのだ。ショウは自分が云い様に嬲られていたことに屈辱感を覚える。

「クッ・・・」

「終わりだな・・。ショウ・ザマ!いくぞ!」

黒騎士が再び斬りかかる。

「南無三!」

ショウが思わず呟いたとき、

「やらせないよ!!」

「チャム!」

チャム・ファウの小さな体がショウと黒騎士の間に入り込む。そして、彼女の渾身の飛び蹴りが黒騎士のマスクに炸裂する。

「ウ!」

黒騎士の兜の目の部分を覆っていたマスクが外れる。黒騎士の顔の一部が現れる。

「その顔は!」

ショウが思わず叫ぶ。黒騎士がそれに反応し、思わず隠そうと手で顔を覆う。そこが黒騎士の隙になる。ショウはその隙を見逃さずに、弾き飛ばされた剣の方へ自分の体を転がし、剣を掴む。

「チイィィィ!!!」

黒騎士は自らその隙を与えてしまったことに後悔しながら、それでも体制をすぐに立て直し、ショウに斬りかかる。

「ショウ!逃げて!」

チャムが再度攻撃をかけるが、今度は黒騎士の腕で簡単に薙ぎ払われてしまう。

「きゃあぁぁ!」

チャムが悲鳴とともに数メートルほど吹っ飛ばされる。

「チャムー!」

叫ぶショウに黒騎士が斬りかかってくる。

「うわぁぁぁぁぁ!!!」

ショウはその剣撃を必死でよけるが、そのままバランスを崩し、城壁から落ちる。

「しまった!」

黒騎士は城壁の上から下に落ちたショウの姿を探す。下までは数十メートルはある。が、下は堀になっている。

(逃がしたか・・・。)

黒騎士は早めにとどめを刺さなかった自分を憎憎しく感じた。

そして倒れているチャム・ファウの方に振り返る。

(このフェラリオが邪魔さえしなければ!私はショウを!)

黒騎士は、気を失っているチャムを踏みつけようとする。

足を上げる。

「待て!黒騎士!」

と突然、穏やかながらも威圧感のある声が黒騎士の背後からかかる。黒騎士が振り返る。黒いマントの男が近づいてくる。ショット・ウェポンである。

「そのフェラリオを殺してはならぬ。」

「何故です?ショット様。」

黒騎士が“納得できません”と言いたげにショットに尋ねる。

「面白い材料ではないか。おしゃべりで噂好きでおよそ人の役になぞ立たないと云われる自分勝手なミ・フェラリオが、命をかけて聖戦士を守ろうとした・・・。」

「はい。」

「また、フェラリオは我々がオーラ力を集めたカ・オスとは正反対の場所である天界に住む者・・・。」

「は?」

「わからんのか?このフェラリオらしからぬフェラリオに黒きオーラを注いで見るのだよ。全く相容れぬことのない存在が交わったとき、・・・・ふふふ・・・・どうなることやら・・・。」

ショットはチャムを掴み上げると黒騎士の方に振り返った。唇の両端が耳の辺りまで吊り上っていた。黒騎士はその笑みに背筋が寒くなるものを感じた。











「ねえ、リムル。」

キーンがリムルに話しかける。

「え?」

「私、あなたに何かしたんでしょ?」

「・・・・。」

「ごめんなさい。よくは覚えていないのよ。ただ、黒い力に包まれた後、自分の中から何かとてつもない嫌なものがむくむくと動き出したような・・・、よくはわからないんだけど、それがリムル、あなたに向かっていったような気がするわ・・・。だから・・・。」

「キーン、いいの。もう、気にしないで。」

リムルは考える。キーンがどのようにして操られたのかはわからないが、ショット・ウェポンが何か禍々しいことを始めていることだけはわかった。そして、それは人の心を弄ぶ悪しき行いだということを。

「それより早く脱出を。」

「ええ、この先に私の“ボチューン”があるわ!」

キーンが先導し建物の中から出た瞬間、

ヒュン!

空気を何かが切るような音がした。キーンの左腕に一本の矢が刺さる。

「あああああああああ!!」

キーンが悲鳴をあげる。

そのまま数メートル下の城郭に落ちていく。

「キーン!」

リムルが城壁の上から、キーンの落ちた方を覗きながら叫ぶ。

ボウガンを持った兵士達が現れる。リムルとシーラはもう兵士たちに囲まれていた。

「姫様。」

指揮官らしき者がリムルに話しかける。青髪の涼しげな目をした女騎士であった。

「ミュージィ!」

「そなたは!」

リムルとシーラが同時に声を出す。

「え?」

リムルはシーラとミュージィが顔見知りらしいのに驚きながら、二人の顔を見る。

「シーラ様、ご無沙汰しておりました。」

ミュージィ・ポウがシーラの方を向き、軽く微笑をたたえながら言う。

「ミューズ・ザラマンド・・・、いえ、アの国の騎士ミュージィ・ポウと呼んだ方が良いか。」

シーラはミューズ、いやミュージィ・ポウのオーラの色を観察しながら言う。彼女は明確にシーラに敵意を持っているのがそのオーラの色からわかった。ウロポロスの城でシーラの世話をしていたときとはまるで別人のようであった。

「ええ、ナの国ではいろいろとお世話になりました。」

そのシーラへの敵意はリムルにも感じられた。

「ミュージィ!お願いもうやめて!私とこの人をここから逃げ出させて!」

「姫様、それはなりません。ここにいるシーラ女王はショット様の大切な捕虜。逃がすわけには行きません!それからリムル様、あなたもラース・ワウから出すわけには行きません。」

ミュージィが優しく、しかしきっぱりとリムルに言う。

「ミュージィ・・・。」

リムルが懇願するようにミュージィを見る。ミュージィはきっぱりと言ったものの、そのリムルの強い想いを受け止められず、困惑していた。

(そうか・・・。)

シーラは思った。

(ウロポロスでの彼女の心持ちはこのリムルへの想いだったのか。リムルへの気持ちをこの私への感情にすり替え、私をごまかしていたのか。)

そう思いつつ、このリムルへの彼女の優しい想いが本当の彼女の姿なのだということもシーラには理解できた。

(だから私をごまかせた。こういう人の心を利用するショット・ウェポン。許せない・・・。)

ミュージィの愛情深き心は、ショット・ウェポンという男を愛してしまった瞬間から、間違った方向にいってしまったのだと、シーラは感じていた。

「姫様。これ以上我儘が過ぎると姫様の立場まで悪くなります。ここは私の言う通りにしてください。」

「嫌です!私はニーのところに行きます!」

ミュージィの説得に対しリムルはがんと聞かない。

「困ったお姫様だ。これはお仕置きが必要になるな。」

ミュージィの背後から太い男の声が響く。ミュージィが驚いたように振り返る。

「黒騎士・・・・。」

「ミュージィ!娘二人捕まえるだけになにを手間取っているか!」

「なに!」

黒騎士はミュージィの反発を無視し、リムルの方に近づいていく。リムルは負けじと睨み返す。

「フ・・・。」

黒騎士はそんなリムルの様子を鼻で笑ったかと思うと、

びしっ!!!

いきなりリムルに平手打ちを食らわせる。

「ああ!」

リムルがその場に倒れこむ。リムルは黒騎士を睨み続けながらも体が震えてきていた。

黒騎士はそんなリムルを無視し、今度はシーラを見る。シーラもまた射るような目で黒騎士を睨みつづけている。

黒騎士はその視線に少しひるむが、フッと笑うと踵を返し兵士たちに命令を出す。

「この二人を機械の館の地下に連れて行け!」

黒騎士はミュージィの“リムル様もか?”という無言の訴えを無視し、その場を去っていく。











再び機械の館の地下牢。

二人の少女が壁際に天井からの鎖に両腕をつながれて立たされていた。

その二人を取り巻くかのように数名の兵士が立ち、二人を見張っている。

牢の入口の扉が開く。漆黒の鎧を着た男が中に入ってくる。黒騎士である。

「黒騎士・・・・。」

再び枷につながれたシーラが彼を睨みながら呟く。

黒騎士はそんなシーラには一瞥もくれず、もう一人の少女リムルの方を見やる。リムルと目が合う。

「一体私に何をするのですか!この鎖をはずさせなさい!無礼者!」

リムルは黒騎士に命令する。しかし黒騎士はそんなリムルの言葉を無視しながら彼女を見つめつづける。マスクで顔を覆っているので、その表情はわからない。

「私はこの城の城主ドレイク・ルフトの娘です!私の言うことが聞けないのですか!」

黒騎士の周りにいる兵士達が少し動揺する。封建社会であるバイストン・ウェルのコモン界では自分の主(あるじ)の存在は絶対である。

「フ・・。」

黒騎士がそんなリムルの言い草を嘲笑する。

「このアの国の反逆者であるニー・ギブンに内通したり、ここにいる捕虜のシーラ・ラパーナを逃そうとするような裏切り者にそのようなことを言われる筋合いはない!」

「違います!私はこのバイストン・ウェルに戦乱を巻き起こす父のやり方に反対しているだけです。父を裏切っているわけではありません!」

気の強いリムルが言い返す。

「それがアの国のためにならないことがおわかりにならないのか!」

「クッ・・・。」

「わからんようなら、わかるよう仕置きをしなければなりますまい。リムル様・・・。」

黒騎士がリムルに近づく。そしてその手がリムルの顎を荒々しく掴み上げる。リムルはその黒騎士に不気味なものを感じ恐怖するが、それでも彼のことを睨み返す。

黒騎士はもう一方の手でおもむろに兜についているマスクと頬当てをはずす。黒騎士の素顔がリムルの前に現れる。黒騎士はシーラには背を向けているので、シーラの側からはその素顔は見えない。

「!・・・あなたは!?」

リムルが驚きの声を上げる。

「そう、昔あなた様に恋焦がれていた男。ショウ・ザマのために失敗を重ね、遂には騎士団を追われた哀れな男。それがこの私だ!」

「いいえ・・・。あなたは・・・・あなたは私を愛してはいなかった・・・。あなたは自分の出世のために、私を利用しようとしただけ・・・・。」

「リムル様はあの頃から反逆者のニー・ギブンしか見ていなかった。だから私のこともそのようにしか見ていなかった。」

「そんな・・・。」

リムルの顔が曇る。

「そして今、私は力を得て、このラース・ワウに戻ってきた!」

黒騎士はいきなりリムルの唇を奪った。

「んん!んんんんんんんー!!!」

リムルがふさがれた口の中で悲鳴をあげる。

(いや!やだ!いやああああ!!)

リムルはなんとか黒騎士の唇から逃れようとするが、両手の自由を奪われ、顔も彼の逞しい腕に押さえつけられており、全く抵抗が出来ない。やがて黒騎士の舌がリムルの口中に侵入する。そしてリムルの舌に執拗に絡み付いてくる。

(いや!気持ち悪い!はあ!ううう・・・。いやあ!!)

黒騎士の舌は、今度はリムルの歯の裏側を丹念に舐め始める。

(いや!ニー!ニー!助けて!いやあああ!)

リムルはあまりのおぞましさに気が狂いそうであった。心の中で愛しいニー・ギブンに助けを求める。

黒騎士の手が今度はリムルの胸にすっと伸びてくる。

(!)

服の上からであるがゆっくりとその柔らかな胸を揉みしだく。

(やだ!いや!そんなところ!いや!触らないで!はあああ!いやああああ!)

リムルの体に鳥肌が立つ。リムルはこの気持ちの悪さから必死で逃げようともがきつづける。そしてリムルは渾身の力で黒騎士の唇から逃げ出す。

「いやああああああ!やだ!ニー!ニー!助けてええええ!」

思わず、愛しいニー・ギブンの名を読んでしまうリムル。その声を聞き、黒騎士の目に憎悪の光が宿る。

「やはりそうか!この国を売る売女奴が!!」

ビシッ!

黒騎士はリムルに平手打ちを食らわす。

「ああ!!」

リムルが短い悲鳴を漏らす。それでもリムルは黒騎士のことを睨み返す。自分の唇を無理やり奪った男を許さない、といった風に。

黒騎士は頬当てとマスクを再びつけると、今度はその手をリムルの襟元にもっていく。そして、彼女の服を掴んだかと思うと、いきなり下半身までその服を引き裂く。リムルの白い肌が太腿の辺りまで一気に一同の目にさらされる。

「!・・・き・・・きやああああああああああああ!!!!!!」

リムルが凄まじいまでの悲鳴をあげる。

リムルの育ち始めたぷっくりとした乳房も、まだ幼さの残る股間の茂みも一気に黒騎士、そして兵士達の前にさらされた。こんな屈辱はリムルにとって生まれてはじめてであった。恥ずかしさと悔しさと恐怖でリムルは震え、涙を流した。

この黒騎士の行為にはシーラも周りにいる兵士達も驚愕した。

「や・・・やめなさい!黒騎士!あなたは主筋の王女に手をかけようというのですか!それでもあなたはアの国の誇りある騎士ですか!」

シーラが黒騎士に向かって叫ぶ。

「ふ!敵と繋がる女に王女としての資格などない!」

黒騎士がシーラに振り返り、言う。黒騎士が自分の怨念を持ってリムルを辱めようとしているということを、シーラはわかっていた。それを止めさせなければとシーラは考えつつも、その行為自体の禍々しさにシーラ自身恐れを感じてしまい、その結果黒騎士の気迫に押されてしまっていた。

「あなたたちも自分の主(あるじ)の娘が手をかけられようとするのを、じっとただ見るつもりなのか!?アの国とはそんなにも乱れた礼のない国なのか!?」

シーラが今度は周囲の兵士達に問う。兵士達にも動揺が走っていた。シーラの言葉にその気持ちが揺らぐ。

「馬鹿な!お館様とて今回のリムル様の不始末は許せないことである!また今回のリムル様の不始末の処理についてはルーザ様も知っておられること! こんな女狐の言うことなぞに耳を傾けるな!」

黒騎士が兵士達を一喝する。兵士達は王妃であるルーザ・ルフトが何もかも承知という黒騎士のセリフでなにやら落ち着いてしまう。妙な説得力があったのだ。

「ルーザ・・・・ルーザ・ルフトか・・・。」

(あの女であれば、そうするかもしれない。)

シーラもそう思う。

黒騎士は兵士たちを一喝すると、もう抵抗する気力の抜けてしまったリムルを見やり、その白い胸に手を伸ばし、その肌を直にギュッと掴む。

「はああああ・・・・、い・・いやあああああああ!」

リムルは絶望のため息の後、再び悲鳴をあげ、その手から逃れようと暴れまくる。手枷についた鎖がジャラジャラと音を立てる。

「やめなさい!やめなさい、黒騎士!」

シーラが叫ぶ。

シーラはなんとしてもリムルを助けなくてはと感じていた。このような卑劣なことを許してはならないと思っていた。しかしその一方で、何も出来ない自分の無力さを呪っていた。

「だまっておれ!」

黒騎士がシーラを一喝する。その気迫の強さにシーラはすくんでしまう。シーラにとって目の前でいたいけな少女が陵辱される姿を見ることはショックがあまりに大きく、その結果彼女のオーラ力はそのショックにより、かなり減退してしまっていた。

「そんなに騒がなくても、貴様もリムルの後にかわいがってやる。」

「クッ・・・。」

シーラはその屈辱的な言葉にただ耐えるしかなかった。もう黒騎士に言い返す気力もなくなってきていた。

黒騎士がリムルへの責めを再開する。黒騎士は両手で彼女の柔らかい胸を揉みしだく。その度にリムルは悲鳴をあげ、涙を撒き散らし、暴れた。

「いやああ!やだあああ!お願い!もうやめてええええ!いやあああ!」

リムルは自分の肌を他人に見られるだけでも死んでしまいたくなるくらい恥ずかしいのに、自分の女性を象徴する胸を揉まれる姿を他人に見られるなぞとは、考えるだけで気が狂ってしまいそうであった。

「いや!いや!いやああああああ!お願いいい!もう、やめて!」

しばらく強弱をつけながら揉みしだくと、黒騎士は今度は指の股でリムルの乳首を摘み上げる。

「はああああ!!!」

リムルが今までと少し違った声を上げる。

胸を好きでもない男に揉み解される気持ち悪さとは違う、変な感覚がリムルの中で生まれ始めていた。

(いや・・・何・・・?この感じ・・・・?ああ!いや!いやあああ!)

黒騎士が乳首に攻撃を集中させる。

「あああ!いやあ!そこは!いや!やめて!はあ!はあひいいいいい!」

リムルは乳首を摘まれる度に、何か気持ち良いようなむずがゆいような感覚を覚えてきた。

(ハア・・・やだ・・・なんか変になってくる・・・・。)

しかし黒騎士はリムルのその様子を見ると、突然胸への攻撃を止めた。

(?)

リムルがいぶかっていると、黒騎士はその手を彼女の股間に持っていき、いきなり指を彼女の中に突っ込んだ。

「は!ひゃああああああああ!!!!」

もの凄い痛みがリムルを襲う。感じ始めていたとはいえ、リムルのそこはまだ濡れてはいなかった。そんな中に無理やり指を突っ込んだのである。リムルには痛み以外の何ものも感じられない。

「痛い!いた!あ!いや!抜いて!はあああ!痛い!いやああ!!」

リムルが悲鳴をあげ続ける。しかし黒騎士はそんなリムルの様子を構わず、指を彼女の中でかき回しつづける。

「いやああああ!いたい!いたい!抜いて!はあああ!やだ!抜いてええ!ああ!ひいいいいい!!!」

リムルは泣きじゃぐりながら、黒騎士に訴え続ける。しかし、黒騎士はそんなリムルを無視し、彼女の奥の奥まで指を押し込む。

「ひ!ひいいいいいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!!」

リムルは痙攣したかと思うと、そのまま力が抜けていく。がっくりと、体を黒騎士に預けている。目は虚ろに見開かれていた。

黒騎士はそんなリムルの様子を見てニヤリと笑った後、彼女の腰の部分を掴み手前に引く。と、天井から下がっている手枷の鎖が伸び、リムルは海老反りしたような格好で黒騎士に腰を抱かれる。と、黒騎士はリムルの体を裏返す。今度はリムルは壁に手をつき、尻を突き上げるような格好になった。リムルは黒騎士のなすがままであった。

シーラが繋がれている場所の方にリムルは尻を突き上げさせられて立っていた。

シーラの目にはリムルの女性がくっきりと入ってくる。シーラは自分のものも含めてその部分をしっかり見たことはない。

(あんな風に・・・なっているのか・・・。)

リムルのそこは、まくれ上がりピンクの内壁が見えていた。中は何かヒクヒクと蠢いていた。リムルのそこを見させられ、シーラは息苦しさを感じていた。

「シーラ、よく見ておけ!お前のそこもこんな風に男を咥えるのをただ待つようにだけ出来ているんだ。」

シーラはその言葉に屈辱を覚える。

「これから、それを見せてやろう。」

黒騎士は自分の一物を取り出す。それはすでに隆々と突き上げていた。

「や・・・やめなさい!黒騎士!」

シーラがあわてて叫ぶ!

「ふ!心配するな!お前にも後でたっぷり味あわせてやる。」

そういいつつ自分のモノをリムルのそこにあてる。そして、その結合がシーラから良く見えるような位置にわざと立つ。

「・・・え・・・・あ・・・・いや!」

リムルが自分のそこに当たるものの感触で正気づく。

「リムル!行くぞ!」

黒騎士が腰を沈めていく。

シーラが息を呑む。初めて見る男女の行為に目が離せない。

「はああああ!ひいいい!いやあああああ!!!」

挿入とともに、リムルが絶叫する。

 
リムルの股間から先ほどとは比べものにならない激痛が走り抜ける。まだほとんど濡れていないそこに、黒騎士の太い一物はただの凶器でしかなかった。

「いやあああ!いたい!あああああああひいいいいいいい!!」

シーラはそのリムルの悲鳴を聞きながらも、リムルのそこの部分に黒騎士のモノが入っていくその光景から目を離せない。見たくもなく、聞きたくもないのだが、何かに憑かれたようにどうしても目を離せなかった。ずぶずぶと、肉が擦れる音まで、シーラの敏感な感覚は捉えてしまう。

(これが・・・・これが・・・・・男女の・・・交わりなのか!・・・いや!こんなこと・・・!!!)

シーラは黒騎士とリムルの行為に激しく恐怖する。体が震え、意識が遠くなりそうになる。

「はああ!いたい!いたい!やめてええ!はあ!ひ!ひいいいいいいいいいいいい!!!」

激しい痛みを感じ悲鳴をあげながらも、リムルは黒騎士のモノがゆっくりと自分の中に入ってくる感覚をしっかりと感じ取っていた。それは堅く重く、そして熱いというよりは冷えきった暗い情念の塊のような感覚のモノであった。

(いやだ!こんなものが私の中に入ってくるなんて!!)

その冷たいモノの感覚は、リムルに思い出したくない過去を思い出させていた。







続く

















◎用語説明



★    お館様

その城の主(あるじ)のこと。ここでは、アの国の国王ドレイク・ルフトのこと。


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