第六幕〜ミ・フェラリオの息〜



ラース・ワウの機械の館。

アの国のオーラ・マシーンの製造工場であり、また、その開発者である地上人ショット・ウェポンの住まいも兼ねている。

「・・・・・はあ・・・・・あ・・・・・ああ・・・・・・・・。」

月、バイストン・ウェルの月は天の海に生息する深海魚の燐の光の集まりであるが、その月明かりに照らされる一つの窓から、かすかに女の声が聞こえてくる。

「・・・・・・・ああ・・・・そこ・・・・あ・・・だめ・・・・・・・・はああ・・・・・・。」

月明かりに青く照らし出されるシーツの上で、白く艶かしい体が蠢いていた。

「・・・・・いいの・・・・・はああ・・・・もっと・・・・・は・・・・・お願い・・・・・ああ・・・。」

すらりとした足がシーツの上で突っ張っている。まるで白磁のような美しく白い足である。

その足が宙に持ち上がり、彼女を抱く男の背中を包み込むようにはさむ。

女の手も同時に男の背に回りこむ。男の逞しい胸板の下で、豊満な女の乳房が押つぶされる。

「はあああ!いい!・・・ああ!・・・・・凄いわ・・・・・。」

女の少し肉厚な唇の隙間から、激しい嬌声が漏れつづける。

男は逞しい体をゆっくりと女の上で動かし始める。

「はああああ!ひい!あああ!・・・・いいの!いいの!はあああ!」

女の白い形の良い足が宙空で踊り狂う。

男が激しく腰をグラインドし始める。

「はひいいいいい!ああ!いや!いや!・・・あああ!!」

女はその美しい青い髪を振り乱しながら、男の動きに翻弄される。

「ああ・・・・・もう・・だめ!あああ!きて!ショット様!きて下さい!・・・・はああああああ!!!!」

男、ショット・ウェポンはニヤリと笑いながら、最後のスパートをかける。

「ああ!ああああああ!ショット様!ショットさまあ!ああああ!はあ!ひいいいいいいいいい!!!!」

女が絶叫を上げる。

それと同時に女の体がきゅうっと痙攣をしていく。

「う・・・ううっ・・・・。」

ショット・ウェポンは、女の絶頂に合わせるかのように激しくその女の中にその思いの丈を放出していた。













「今日は今ひとつのれなかったようだな、ミュージィ。」

激しい情事の後、ショットは枕に寄りかかるようにベットに座りながら、傍らで横たわるミュージィ・ポウに声をかける。

「・・・・・・・。」

情事の後の気だるさに包まれながら、ミュージィはショットの顔を見上げる。

「・・・・・そんなこと・・・・・・ありません・・・・。」

ミュージィは、考えもしなかったことをショットに問われ、少し困惑していた。

「心配事だな。・・・・・リムル様のことか?」

「・・・・・・!・・・」

そ うなのだ、とミュージィは思った。今まで意識してはいなかったものの、あの黒騎士がリムル・ルフトを連れて行ったことが、頭の隅にこびりついて離れなかったのだ。それ故、無意識なのだろうが、ショットとの交わりに於いてもいつものように燃えられなかったのだろう、そう感じた。

「私が、リムル様の処置を黒騎士に任せたことに不服なのだろう?」

「・・・いえ・・・そのような・・・。ショット様に不服などあろうはずがございません。」

ミュージィは身も心もショットに捧げようと思っていた。そのショットに不服を持つなど、考えたこともなかった。

「ふふふ・・・。いいのだよ、ミュージィ。お前がリムル様のことを実の姉妹のように慕っていることは良く知っている。だが、黒騎士は大丈夫だ。あ奴にはリムル様を傷つけることは出来ないさ。」

「そうなのですか?」

「お前もあ奴の正体はうすうす感じていよう、ミュージィ?」

「はい。ですから・・・。」

「あ奴は、自分ではどう思っているかは知らんが、あ奴なりの感じ方でリムル様を愛している。それは今も変わっていない。」

「はい、わかっています。ですので、・・・それ故にあの男はリムル様を怨むのではないかと・・・。」

「ふふふ・・・・、そうだな。しかし、あ奴は愛する女を心底怨むようなことの出来ぬ男だ。リムル様には少々きつい思いをしていただくだろうが、それ以上のことは起こりうるまい。」

「はい。・・・・しかし・・・。」

そうはいわれても、ミュージィにとってリムルがひどい目にあうのを見るのは偲び難い。

「リムル様も少し我儘が過ぎる・・・。自重して貰うためにも少々の目にはあってもらわなければなるまい。これは、ルーザ様のお考えである。」

「・・・ルーザ様の!?」

「そうだ。ルーザ様はリムル様をクの国王ビショット殿のところに嫁がせようと考えておられるようだ。そのためにも、あの男、ニー・ギブンへの想いを断ち切らせたいようだ。」

「・・・・・はい・・・・。」

実の母がそこまでのことを娘にするのか、ミュージィは王妃ルーザ・ルフトに対し軽蔑の念を持った。しかし、王妃の意志には逆らえない。この気持ちは男性であるショット様にはわからないのではないかと、感じた。

「ミュージィ・・・。心配しなくていい・・・・。お前はただ、私を信じていれば、それでいい・・・。」

ショットが優しい声でミュージィに囁く。

「はい・・・。」

ミュージィ自身、それでいいと思っていた。この優しいショット様の声を聞き、お側にいられるのなら、それだけでいい、と。

ミュージィは自分の顔をショットの胸のところに持っていき、彼に甘えた。













「ショット様。」

ドアの外からショット・ウェポンに声がかかる。

「何か?」

ショットが、ミュージィの髪の毛を愛撫しながら応える。

「はっ!例のフェラリオの実験の用意が出来上がりましたので、お呼びに上がりました。」

ドアの外で兵が応える。

「わかった。今行く。」

ショットはベットから下り、衣服を身に付け始める。

ミュージィがベットの上から、少し恨めしそうな顔で彼のことを見る。

「ミュージィ。仕事だ。少ししたら戻るからな。」

ショットがミュージィに軽くキスをする。と、ミュージィの顔がほころぶ。

「・・・はい・・・。」

従順な笑顔に見送られ、ショットは自室を出て行く。













ショウ・ザマは、再びラース・ワウの機械の館に侵入していた。

堀に落ちたあと、ショウはシーラ達が待っているはずであるウイング・キャリバーの“フォウ”のところまでいったん戻った。

しかし、想像していた通り、そこにはシーラもリムルも現れなかった。当然、チャムも・・・。

ショウは今回の救出作戦の失敗を改めて感じ取った。

(くそっ・・・。俺の判断ミスだ・・・。しかもチャムまで・・・・。)

通常であるならば、ニー・ギブンたちのいるオーラ・シップ“ゼラーナ”まで戻り、再度作戦を立て直すべきであろう。しかし、事態はそんな悠長なことを言っていられないと、ショウは感じ取っていた。

シーラ女王の救出が遅れることは、すなわちこのバイストン・ウェル自体が悪しきオーラ力に蝕まれていく、という認識である。

ショット・ウェポンがオーラ・マシンにより創り出してしまった悪しきオーラ力のフィールドが、ラース・ワウを中心にバイストン・ウェル全体に広がりつつあった。その広がりを抑えているのが、ラウの国のエレ・ハンム王女のオーラ力であり、ナの国のシーラ・ラパーナ女王のオーラ力であった。バイストン・ウェルの意志を体現する彼女たちのオーラが弱まることはこの世界の拮抗を崩すものとなるのである。

ショウたちは、何があってもこの作戦を成功させなければならなかったのである。

(シーラ様。どうかご無事で・・・。)

ショウは先ほどの衣服の乱れたシーラの姿を思い出す。

一国の女王を捕らえた後に、あのような仕打ちをすることが、ショウには信じられなかった。少なくともショウがいたときのラース・ワウでは考えられなかった。皆、騎士としての誇りを持っていた。

(それが、悪しきオーラ力のなせることというのか・・・。)

再度捕らえられたシーラが、どんな屈辱的な目にあっているのか、ショウは想像したくなかった。それだけに気が焦っていた。

(シーラ様・・・・。)

ショウにとって、シーラ女王は少し苦手な存在でもあった。

それは最初に会った時に言われた苦言のせいかもしれない。

ショウ自身がやりたくても出来なく、いつも歯がゆさを感じていたこと、それを率直に指摘されたあの言葉のせいかもしれなかった。

「ならば、目先の敵になぞに迷わされずに、ドレイク、ビショット、ショットの三人を何故倒さなかったのです?」

シーラの言葉が、ショウが初めてシーラに出会った時の言葉が、ショウの頭の中に甦ってくる。それは、常々ショウがニーに言っていることだ。

「それは理屈だ!ドレイクだって防御してくるよ!」

ショウが頭の中でそのときの自分の言葉も思い出す。

「当たり前です!それを突破してこそ聖戦士でしょ?甘えないで下さい。」

シーラの言葉がショウの頭の中に響く。

(甘えか・・・。確かにいつもニーに食って掛かりながら、どこかでそれがうまくいかないことも考えていた。聖戦士などと煽てられても、まだまだ甘いんだろうな・・・。)

「甘えないで下さい。」

自分より年下の、まだあどけなさも残るかわいらしい顔でシーラがショウに言う。

その姿と中身のギャップが、ショウにシーラへの苦手意識を持たせているのかもしれなかった。

しかし、それだけでなくシーラはショウにとって気になる存在でもあった。

毅然としながらも、時折見せる少女らしい初々しいしぐさ・・・。

ダンバインの狭いコクピットに乗った際のシーラの良い匂いのする柔らかい体をショウは思い出していた。はじめて男の体に触るような、そんな初々しいしぐさを見せるシーラ。

ショウにとっても、このように女性の体に触れることはバイストン・ウェルに落ちて以来、全くなかった。マーベルと抱擁したことはあっても、お互いに革鎧の上からである。このときのシーラは薄い絹のドレス一枚である。マーベル以上に柔らかい女性の体を意識してしまった。もっとも、すぐ戦闘状態に入ってしまったため、すぐにそんなことを考える余裕はなくなったが・・・。

マーベルのことをショウは好きであった。愛したいと思っていた。では、シーラは・・・。ショウ自身、自分でも良くわからない存在であった。苦手ではあるが、それだけでなくとても気になる存在。

シーラの柔らかい体の感触がショウの中に甦ってくる。

太腿の上に感じ取った柔らかいシーラの臀部の感触。そして、体全体から湧き上がる良い香り・・・・。

「甘えないで下さい。」

再びシーラの言葉がショウの中でこだまする。

(聖戦士をやって見せるしかないのだろうな。)

ショウは剣を握りなおし、機械の館の奥に入っていく。













「・・・・・・・あ・・・・・・。」

チャム・ファウはベッドの上で目を覚ました。

「・・・・・何処・・・・?」

チャムは体を起こそうとする。何か体が重かった。羽を震わせて、飛び起きる、といったいつもの行動が出来なかった。

ベッドの上に体を起こし、座る。

「・・・え?」

そこまで体を動かし、はじめて周りの様子がおかしいのに気付いた。

全てのものが小さいのである。

彼女が腰掛けているベッドも、その部屋の様子も、全て、彼女の感覚からすると異常に小さくなっていた。部屋の様子全てがまるで自分のサイズに作られているかのように・・・。

チャムは羽を震わせ飛び立とうとする。

「・・・・・・え?」

羽に力が入らない。

というか、羽が自分の背中からなくなっていた。

チャムはあらためて自分の体を見る。

「・・・やだ・・・。裸?」

チャムは自分が何もまとっていないことに気付く。いつも来ている水色のビロードのような服はどこかにいってしまっている。ただ、黒い変な丸い石のようなもののついた腕輪だけが右手首にくっついていた。

チャムはベッドの上のシーツを体に巻きつける。

背中を見る。やはり羽がなくなっている。また、体の丈が高くなったように思える。

周囲を見回すと、壁に姿身の鏡があった。チャムはベッドから立ち上がると、その鏡の前に立ってみる。

「・・・これ・・・。これが・・・・私・・・?」

そこにはすらっと背の高い美しい大人の女性が映っていた。

赤いカールされた髪、緑の瞳。そして、胸は良い形にふくらみ、腰も引き締まっている。肌の色も透き通るように白く、この世のものとは思えないような色艶があった。

「・・・・お姉さまたちみたい・・・・・。」

お姉さまとは、チャム達ミ・フェラリオが成長した姿といわれる、天界“ウオ・ランドン”に住むエ・フェラリオ達のことである。彼女たちは人間と同じサイズの妖艶な風貌の美女たちであり、天界においてはこのバイストン・ウェルの世界を司る者達である。ただし、好奇心に負け、コモン界に降りてきたエ・フェラリオはその妖艶な姿から、コモン人を惑わす者として忌み嫌われている存在でもあった。

チャムは自分のその美しい姿に驚きながらも、嬉しくなってくる。

「どうだ?人間のサイズになった感想は?」

不意に背後から声がかかる。

「!」

チャムが振り返る。

部屋の入口にショット・ウェポンが立っている。

「ショット・ウェポン・・・・・。」

いきなり現れた敵にチャムは身構える。羽がなくなり、体が重く感じるチャムは、いつものような飛び蹴り攻撃は出来ない。

チャムは見知っているショットの体のサイズが自分と同じことに気付く。そして、それにより、自分がエ・フェラリオ同様、人間と同じサイズになっていることをあらためて認識する。

「フフ・・・。そんなに怖い顔で睨むな。お前の体にオーラを注ぎ込み、エ・フェラリオにしてやったのだから、感謝してもらいたいな。」

「何で、私があんたなんかに感謝するのよ!」

チャムはショットに食って掛かる。

「フフフ・・・。そうだろう?お前はずっとそのサイズ、つまり人間と愛しあえる体に憧れていたのだろう?」

「え?」

「ミ・フェラリオからエ・フェラリオになるには何百年もかかると伝説では言われる。だが、お前はそんな先ではなく、今すぐにでもそのサイズの人間になりたかった。違うか?」

「・・・私は・・・・・私は・・・。」

チャムはショットの言葉に動揺していた。

(そう。私は大きくなりたかった。ショウを抱きとめてあげるような体が欲しかった。)

「ねえ、いいのショウ。お父さんとお母さんをあのままにして・・・。」

不意に地上界に出てしまったときの二人の会話がチャムの頭の中で甦ってきた。ショウが実の母親に拳銃で撃たれかかった後の“ダンバイン”のコクピットでの会話だ。

「もういいんだ。あの二人がどういうつもりで俺を育ててくれたか、よくわかったから・・・。」

チャムはショウの革兜にぶら下がり、ショウの想いを受け止めようとする。

「でも、ショウもお父さんもお母さんもみんなかわいそうみたい・・。地上の人もバイストン・ウェルの人もみんな同じみたいね・・・。」

「同じ人間だからじゃないのか・・・・。親子で戦ったり・・・いがみ合ったりさ・・・。」

ショウの悲痛な声がチャムの小さな体に染み渡ってくる。

「私には父さんも母さんもいないからわからないけど、・・・・悲しいわ・・・。私はショウには何にもしてあげられない・・・・。」

「有難う。チャム。君にそう言ってもらえるだけで嬉しいよ。」

「ショウ!かわいそう!!」

チャムは全身を使って、ショウの顔に抱きつく。

全身を使って、ショウの悲しみを受け止めてあげたかった。

でも、チャムがどんなに頑張ろうと、ショウにとっては自分の顔にしがみついているようにしか感じられない・・・。

どんなに頑張っても、チャムはショウを慰めてあげることが出来ない・・・・。

(そう、あの時も・・・・いつも・・・・。私には何も出来ない・・・・・。ショウの悲しみを少しでも受け止めてあげたいのに・・・・。)

チャムは大きくなった自分の体をもう一度見直す。

(大きくなりたかった。ショウと並んで歩けるような体・・・・。ショウを抱きとめ、ショウの嬉しさも悲しみも全て受け止めてあげられるような・・・・そんな人間の体が欲しかったの・・・。)

チャムの心臓が激しく、ドクドクと音を立てはじめていた。

チャムの中で何かが動き始めていた。

(ああ・・・・ショウ・・・・。私・・・・。)

「フフフ・・・。チャム・ファウ。そのお前の愛しい王子も、こっちに向かっているようだぞ。」

ショットがチャムに声をかける。

「え?」

ショットが右手をゆっくり上げる。そしてその右手にある手甲から、黒い霧のようなものが溢れ出し、チャムの背後にある鏡の中に吸い込まれていく。チャムは魅入られたかのように黒い霧が吸い込まれていく鏡を振り返りながら見る。

(何・・・?何が見えるの・・・?)

黒い霧に包まれた鏡の奥に、機械の館の中の暗い廊下が映し出される。

そこに剣を構えながら用心深く進む緑の革鎧を着た騎士が見える。

「あ・・・!ショウ!」

その瞬間、チャムの中で何かがはじけとんだ。

黒いどろどろしたものが、チャムの体の中に生まれ、それが体を包んでいくような、そんな錯覚にチャムは見舞われた。

「・・・・あ・・・!・・・ああ・・・・。ショウ・・・・。」

チャムは体の奥の方がだんだん熱を持ってくるのを感じ取っていた。それと同時に頭の中が靄に包まれたかのように鈍くなっていく。

「・・・ああ・・・ショウ・・・。ショウ!!」

チャムは切ないような、もどかしいような、何か自分を抱きとめて欲しいような、何か狂おしい想いに憑りつかれつつあった。













ショウは迷路のような廊下を進んでいた。

気がはやっていた。

(シーラ様は、チャムは、何処だ!?)

「ショウ。」

何処か聞き覚えのある声にショウは呼び止められた。

「誰だ!?」

振り返りながら、低く気合を込めた声でショウは相手に問う。

「・・・・・ん・・・・・?」

女が立っていた。

すらっとした美しい肢体に、白い布をまとっていた。

美しい赤い髪は燐光を放つかのようにきらきらと光り、その肌の色は透き通り、この世のものではないような美しさを醸し出していた。

(フェラリオか・・・・!?・・・シルキー・マウか?)

ショウは、自分をこの地、バイストン・ウェルに呼び込んだエ・フェラリオのことを考えた。

(いや、シルキーは“ウオ・ランドン”に戻した。それにシルキーは緑色の髪をしていた・・・。じゃあ、・・・・ラース・ワウには他にもエ・フェラリオがいるのか!?)

ショウが自問している間にも、その女は流れるようなしぐさでゆっくりとショウに近づいてくる。その顔は妖しく微笑んでいた。

「ショウ・・・。」

彼女は愛しむような優しい声でショウの名前を呼んでいる。

その声はショウにも聞き覚えがあった。

「・・・・ま・・・まさか・・・!?」

その顔にはショウの良く知っている少女の面影があった。だが、その女はショウの知っている少女のような愛くるしさはなく、大人の女性の妖艶な、恐ろしいくらいの美しさに変っていた。

「・・・そうよ・・・。ショウ。私・・・・。」

「・・・・まさか・・・、そんな馬鹿な・・・!」

ショウには目の前に起こっている事実が受け止められない。

何か悪夢の中を彷徨っているかのような感覚であった。

「・・・・チャム・・・・・なのか・・・・?」

ショウは恐る恐る聞く。

チャムの顔がぱっと明るくなる。美しい笑顔だ。

「そう!そうよ!ショウ!」

チャムがショウに飛びついてくる。

その勢いに、チャムの体にまとわれていた白いシーツが、するりと脱げ落ちる。

チャムの美しい肢体があらわになる。

チャムは全裸のまま、ショウに抱きつく。

「ショウ!私、大きくなったの!ショウと同じ大きさの体に!お姉さまたちと同じように!!」

チャムは興奮した面持ちで、ショウの体をきつく抱きしめる。豊かになった乳房がショウの胸板に押し付けられる。

「チャ!チャム!!」

ショウは狼狽していた。この美しい女性は確かにチャム・ファウらしかった。それは、確信できた。しかし、そのチャムらしい美しい女性が自分に一糸まとわぬ姿で抱きついてきたのである。ショウはその女体の柔らかさ、かぐわしい匂い、そして目に飛び込んでくる美しい肢体に翻弄されていた。

「チャム・・・・一体・・・・どうして・・・・!?」

ショウは乾いた声で、やっとの思いで、チャムに質問する。

その問いかけにチャムは体を少し離し、ショウの顔を見上げるように覗き込む。

体を離したため、彼女の乳房がショウの目に飛び込んでくる。豊かな曲線を描いている。

チャムは“何を聞いているの?”と言いたげに、潤んだ瞳をショウに向けている。

ショウは息苦しかった。

チャムの柔らかい肢体が、その潤んだ目が、ショウの体の奥深くに変化をもたらそうとし始めていた。喉がからからになってくる。

「ショウ・・・。私、私、ショウのこと守ってあげる・・・。悲しいときも、嬉しいときも、・・・・ショウの全てを受け止めてあげる・・・。大きくなって、・・・・・やっと・・・・やっと、ショウにしてあげられる!」

チャムの目から涙があふれていた。

ショウは、金縛りにあったかのように、そんなチャムから逃れることが出来ない。

(何だ!?どういうことなんだ!?)

ショウの心の奥で警鐘が鳴り響く。しかし、体は別の方向に反応する。

チャムの体がショウに押し付けられる。きれいな形の乳房が再びショウの胸に押し付けられる。そして、チャムの下半身がショウの足に絡みついてくる。チャムの女性の部分が革鎧の上からであるが、ショウの下腹部に押し当てられる。革鎧の上からだから、ショウの触覚には感じ取れないはずなのだが、なぜか、ショウにはチャムの柔らかいそこの感触が直に伝わってきた。

(・・・・ウ・・・・・馬鹿な・・・。)

チャムの足が、ショウの足に絡みついてくる。

ショウは全身で激しく柔らかい女体を感じ取っていた。

「チャ・・・チャム・・・・やめ・・・てくれ・・・・!」

ショウの下半身は、もう、激しく反応していた。

「・・・チャム・・・俺たちは・・・・こんなことしている・・・・場合じゃない・・・・・!忘れたのか・・・・!」

ショウは必死に沸きあがってくる感情と戦っていた。

いくら妖艶な体に変身したとはいえ、チャムにそんな風に性的感情を抱く自分が情けなかった。確かにショウはバイストン・ウェルに落ちてきてから、女性との交わりはなく、精は溜まっているかもしれなかった。マーベルを抱きたいと思ったことはある。しかし、戦場という緊迫した空間の中では性欲は希薄になっていたし、また“ゼラーナ”という小さな船の中では、物理的にもそんな機会はなかった。大人の魅力を感じさせるマーベルに対してもそうなのである。チャムに対しては、いいパートナー、かわいらしい友人、妹のような存在、とは思うものの、性的な対象としてなど考えたこともなかった。

そのチャムに、今・・・・。

「ショウ・・・。」

チャムの潤んだ目が近づいてくる。

「ショウ・・・・・好き・・・・。」

「・・・んん!!」

チャムの唇がショウの唇に重なる。

途端、とろけるような強い感覚がショウの体を襲った。体中の力が一気に抜けていく。下半身のある一点を除いて・・・・。

(・・・・何!・・・・・・これは・・・・一体・・・・!?)

体中が、何か浮遊しているかのような気持ちよい感覚に、ショウは包まれていた。

それは、痺れるような、安心するような、不思議な気持ち良さであった。ショウの理性はその心地よさに飛ばされそうになっていた。

(ああ・・・・いい気持ちだ・・・・・。体があったかい・・・・。)

ショウの目が閉じられていく。

チャムの舌がショウの中に入っていく。

心地よい刺激がショウを包む。

ショウのかすかな理性が、コモン人の老人に聞いたフェラリオの魔的な性の話を思い出していた。

成長したフェラリオであるエ・フェラリオは、天界においてはこのバイストン・ウェルの世界を司る者達であり、コモン人の畏怖する対象でもあるが、好奇心に負けコモン界に降りてきたエ・フェラリオ達は、逆に忌み嫌われている。それはその妖艶な姿から、コモン人を惑わす者とされているからであり、実際にエ・フェラリオと交わった者は、その深遠なる性の虜となってしまい、堕落すると言われているのであった。かつて勇猛なる騎士たちがフェラリオと交わったため、落ちぶれて行ったという。

ショウはその話をただの伝説だと思っていたが、その一方で、自分をこの世界に呼び入れたシルキー・マウの妖艶な美しさを考えると、あながち嘘ではないな、とも感じていた。

(ああ・・・・これが・・・・そのフェラリオの体か・・・・。)

ショウはそう感じながらも、もう抵抗する気持ちはなくなっていた。

ショウの体もいつしか横たわっていた。

(宙に浮いているようだ・・・・・。いや・・・・まるで、母親の胎内の中のようだ・・・・。)

チャムはゆっくりと唇を離す。

ショウが目を開く。

そんなショウに柔らかい微笑を返すと、チャムは手をショウの下半身に伸ばしていく。

革鎧の上から、チャムはショウの男性自身を触る。

「う!」

ショウが呻き声を漏らす。

その指の刺激に、ショウは思わずいきそうになったのだ。

チャムはそんなショウの様子が嬉しかった。自分のすることに、こんなに素直に反応するショウの様子が嬉しかった。

チャムは手際よくショウの下半身を裸にしていく。

ショウのモノはもう我慢できないくらいにそそり立っていた。

チャムはその様子をかわいい、と思った。

(愛おしい・・・・。これが、ショウの・・・。)

そう思うと、もう居ても立ってもいられなくなった。

経験はなかったが、チャムには何をすればよいのか、よくわかっていた。

チャムは、両手をそのいきり立つモノに軽く添え、自分の唇をそこに近づけていった。唇をその先に軽く触れさせる。

「・・・う!」

ショウが呻く。

チャムはそのまま口を開き、ショウのものを咥え込む。

「あ・・・・うう・・・。」

ショウが気持ち良さをこらえるように、短く声を出す。

チャムはゆっくりとそのかわいらしい唇でショウのモノをしごき始める。

凄まじい快感であった。

チャムの口の中はとても暖かく、柔らかい感触があった。

舌が絡みつくだけで、激しい電流がショウの体を襲った。

まるで、女陰に挿れている様だった。いや、それ以上の感覚であった。

ショウ自身、地上界にいるときには何人かのガールフレンドと何度か寝たこともある。しかし、彼女たちとのセックスなど比べものにならないような快感が、チャムの口で感じていた。

(うう・・・・駄目だ!・・・出る!!)

まだ口に含まれて、数秒しか経っていないのに、ショウのそこはもう限界だった。

ドピュッ!

ショウの欲望がチャムの口の中で弾けた。

「んんんん!!」

チャムが短い呻き声をあげる。

しかし、彼女はショウのものを口から離さず、そのままショウの吐き出したものを飲み出した。

チャムの舌がショウの男性自身に触れる。

「・・・う・・・うう・・・。」

その舌の感覚が刺激になり、ショウのものは再び硬くなっていく。

「・・・・・ふうう・・・・・はああ・・・・・。」

チャムがその唇をショウのものから離す。

その顔は何処か満足げであった。

「ショウ・・・・ショウ!私、ショウ・・・・大好き!」

チャムの女性の部分はもう充分に濡れていた。

「ショウ・・・・・。私・・・・欲しいの。ショウを・・・・欲しいの。」

チャムはショウの腰の上に跨ろうとする。

「チャム・・・・。」

チャムはショウの分身を掴み、自分の女性の入口に導こうとする。

「・・・・チャム・・・・駄目だ・・・・チャム・・・・・。」

ショウのわずかな理性が、チャムを止めようと、そんなセリフを吐かせる。しかし、ショウの体は動かない。

ショウのものがチャムの女性自身にあたる。チャムの愛液がショウの男性自身の上をツウゥゥと流れる。その感触にショウの男性はますますいきり立っていく。

(駄目だ・・・・チャム・・・やめ・・・るんだ・・・・。)

チャムはゆっくり腰を落としていく。

ショウのものがチャムの中に侵入していく。

「はああ!ああ!ああああああああ!!!」

チャムが嬌声を上げる。

「う・・・うう!!」

ショウも、短い呻き声を上げる。

チャムの中は熱く、柔らかく、しかも心地よい締め付けをショウに与えた。先ほどの口の中などとは比べものにならない快感を、ショウにもたらしていた。

「は!あ!い!いた!・・・」

途中でショウのモノが何かに突っかえたかのように侵入出来なくなる。

チャムは痛みを感じつつも、それでもショウのモノを自分の中、奥深くに入れたいと思い、腰を再度ゆっくりと落とし始める。

「はあ!あ!あ!あ!あひいいいいいいいいいいいいい!!!」

ショウのモノがチャムの処女を破り、一番奥にまで到達する。

「ああ!ショウ!ショウ!はああひいいい!!!」

ショウとチャムは、その一点で完全につながった。

その瞬間、ショウの心の中にチャムの想いが怒涛の勢いで流れ込んできた。

それは、これまでチャムがどんな気持ちでショウの側にいたのか、その小さな体ゆえの悲しい恋心がまるで自分の感情のようにショウの中に溢れてきた。

この瞬間、ショウとチャムは体だけでなく心もつながっていた。

(チャム・・・・そうか、チャムは・・・・。)

ショウは限りなくこのパートナーの少女を愛おしく感じた。

愛おしい感情に反応するかのように、ショウの男性自身はさらに熱く、硬くなっていく。

ショウは自ら腰を動かし始めた。

「ああ!はああ!ひいいいい!!ああ!ショウ!ショウ!ああ、いい!」

チャムが激しく声を上げていく。

チャムの中は信じられないくらい気持ちが良かった。ショウの動きに合わせ、柔らかく包み込むかのように、それでいてきつく締め付け、ショウの欲望を倍増化させていく。

もっと奥へ、もっと奥へ、行きたい、ショウはそう感じ、激しく腰を動かす。ショウはもう、それ以外のことを何も考えられなくなっていた。

「ああ!すごい!はあ!あ!あ!いい!いいのおお!ショウ!ショウ!」

ショウの上で、チャムがその美しい肢体をくねらせる。赤い髪が揺れる。透き通るような肌もほんのりピンクがかってきている。形の良い乳房も激しく揺れる。

 
(美しい・・・。)

ショウはそう思う。

ショウは手を伸ばし、その乳房をギュッと掴む。

「ああ!ひいいいいいいいいいいい!!!!」

チャムが悲鳴をあげる。その瞬間、チャムのそこがキュウウっと収縮する。

「あ!おおお!!」

ショウの体を激しい電流のような快感が走りぬける。思わず、ショウは吼える。そしてその瞬間、ショウはチャムの中に精を放った。

「ああ・・・・いいわ・・・ショウが・・・・中に入ってくる・・・・。」

チャムがショウの精を感じ取る。

ショウは、一気に力が抜けていくのを感じていた。しかし、心地は良かった。

チャムがショウの上に体を預けてくる。

「はあ・・・・はあ・・・・はあ・・・・。」

ショウは息が上がっていた。が、チャムはそうではないようだった。

「・・・・ショウ・・・・。」

チャムが潤んだ目でショウを見る。

「・・・・・?・・・・」

「ショウ・・・・もっと・・・・もっとショウを欲しい・・・。」

チャムはそう言うと、彼女の女性自身をキュッと締め付け、まだ中に入っているショウの分身を刺激する。

「ああ・・・・おお!!」

その快感に、ショウは思わず声を上げてしまう。

チャムのそこは、まるで別の生き物のように蠢き、ショウに快感を与えていく。

ショウの分身はまたすぐに硬度を上げていく。

それとともにショウの中に再び強い欲望が生まれていく。

ショウは体を起こし、今度はチャムの上にのしかかる。そして激しく腰を使い始める。テクニックなどというものはない。ショウは壊れた機械のように、ただただ激しく腰を使うだけである。

「ああ!ショウ!いいの!ああ!うれしい!もっと!もっと!はあああああ!!!」

チャムが嬌声を上げていく。

それとともにチャムのそこは愛液を滾々と沸き立たせていく。

その愛液に包まれることは、この上ない快楽だとショウは感じていた。

ショウは自分の体をすべて男根と化し、チャムの中に入っていきたいと感じていた。

「うう!出る!」

ショウは再度精をチャムの中に放つ。

「ああ!ショウ・・・・いいの・・・・・。」

と言いつつも、チャムはまだはてない。

チャムの手がショウの体を擦る。電流がショウの体を走り抜ける。と、ショウのモノは再び起き上がる。

「ショウ、来て・・・。もっと奥まで!」

チャムがショウを求める。

チャムの熱い女性に包まれると、ショウの欲望は再び火がついてしまう。

「いくぞ、チャム!」

ショウは再度チャムに挑む。

チャムの中は最高であった。ショウは、チャムとつながっていられれば、後はもうどうなってもいい、そんな風に感じていた。

チャムのそこからは熱い愛液が溢れ出してくる。その愛液はショウのモノを溶かし、ドロドロにさせて、チャムの中に引き込もうとしているようにも、ショウには感じられた。

それはそれでいい、そうショウは思っていた。

「ああ!はあああああ!ショウ!ショウ!素敵!すごい!ああ!いいの!いいのおおおお!!!」

「ああああああ!!来て!来て!ショウ!ショオオオオオオオオオオオオ!!」

チャムの嬌声が機械の館の中に響き渡る。













「ショウ・・・・?どうしたの?・・・・もう、終わりなの・・・・?」

何度激しく交わったのだろうか、ショウは力尽き、もう起き上がることすら出来なくなっていた。

「・・・・ショウ?大丈夫・・・?」

チャムが心配そうに覗き込む。

ショウはもうしゃべる気力さえなかった。

「・・・・ショウ・・・・。可哀相・・・・。こんなに元気なくて・・・・。私が慰めてあげる・・・・。」

チャムはそう言うとその顔をショウの下半身の方に移していく。

そして萎えて力のないショウの男根を優しく両手で包み込む。

「・・う!」

ショウが呻く。快楽の電流がショウの体を走る。

「ショウ・・・・。元気になって・・・。私がついている・・・。」

チャムはそう言うとショウの男根を再びその口で咥え込む。

「・・・・ああ・・・・!」

ショウが再び呻く。

チャムの口の中でショウのものが再び硬くなっていく。

(ああ!ショウ!素敵・・・・!もう、誰にも渡さない・・・・。)

体力を使い果たし動けないショウに、チャムは愛撫をしつづけた。













続く

















◎登場人物紹介



アの国

○    シルキー・マウ

エ・ フェラリオ。どのような経緯かは不明だが、天界である“ウオ・ランドン”からコモン界に落ち、ドレイク・ルフトに捕らえられた。オーラ・ロード(地上界と異世界バイストン・ウェルをつなぐ道)を開く力を持っており、ドレイクによって地上人を何人も召喚させられた。ショウ・ザマもそうして、バイストン・ウェルにやってきた。

普段は、天界の環境に近い“水牢”に閉じ込められていた。が、ショウとマーベルの活躍で、ラース・ワウの城から救出され、天界“ウオ・ランドン”に戻った。


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