第四話・レイン・ミカムラ


 某ジオラマベースのフロントコアにある寝室のベッドで一人の女性が枕を頭に埋め、声を押し殺して泣いていた。ハマーン・カーンだ。
「うぅ……私は…穢れてしまった……。チョウマのゲスに…。私はどうしたらいいんだ…うぅ……」
 身体を強制的に支配されて以降、チョウマの気まぐれで話をするときだけは許せるときに自分の配下になるよう強要されたときに、拒否したのをいい事に「Gガンダム」や「∀ガンダム」、「ガンダムW」の勢力つまり中立派に味方になればハマーンを好きなだけ犯していいとエムの講和条件を持ち込む前に提示して戦意を奪い、動揺させたのだ。トドメにエムの講和条件で中立派も完全に人気側についた。
 当然チョウマは約束を守り、ハマーンを渡して陵辱させた。度重なる陵辱にハマーンの心は擦り切れ、チョウマに屈しないものの、彼に対する恐怖心を持つようになった。
 現在、一定の戦果を挙げられない司令官が多いため問答無用で射殺するための司令官の数が足りず、エースを何人か司令官にして対応しないといけない状況になった。ハマーンも無能な司令官処刑の役目を負っている一人で担当している場所は日本。チョウマは南側つまりオーストラリア故にモニター画面以外彼の顔を見ずにすむだけ気が楽である。とはいえ、数々の陵辱による心の傷は癒えず仕事が終われば泣くの繰り返しの日々だ。
 そこへ小鳥が鳴くようなけたたましい電子音が部屋中に響き渡った。
 ベッドから起きたハマーンは司令室へと向かった。



 その様子を主役の証の力でオーストラリアのシドニーにある上層部用のジオラマベースのフロントコアにある自室で見ていたチョウマはニヤけていた。
(いつ見てもオレに屈しないハマーンの泣き顔は最ッ高だぜ!)



 場面は再び東京にある上層部のジオラマベースのフロントコアにある司令室に変わる。ハマーンはモニターで上層部の偉い人もといガンジオ総帥と会話をしている。
「脱走…ですか」
「ああ。名前はコウト。彼はホワイトベースに乗って自分のジオラマベースを捨て、日本脱出しようとしている。彼を見つけ次第処刑せよ。頼んだぞ」
「了解しました」
 ハマーンが敬礼するとガンジオ総帥の姿がモニターから消えた。
(あの気弱そうなヤツが脱走という大胆なことをするとは……)
 ハマーンはザンジバルに乗ってコウトのホワイトベースを追いかけた。



 その様子を主役の証の力で見ていたチョウマは休暇で自分のジオラマベースに帰る途中で見ていた。
(オレの女になることを拒否したヤツにその程度のことが出来ると思うか。失敗してくれるとありがたいがな)



 場面は太平洋上空を飛行中のホワイトベースに変わる。
「一先ずは振り切ったか…」
 コウトが安堵の溜息を洩らした時、計器が高い音を立てた。
「!」
 ピンク色の光線がホワイトベースの脇を通り過ぎていく。
「これは…」
 サブモニターを見てみると、遠く離れた位置に黒い影が自分の戦艦に迫っている。
 識別番号を確認。その正体が判明した途端、コウトの表情が一瞬で凍り付いてしまう。
「ザンジバル……特殊部隊専用の戦艦」
 自分に階級戦の裏側つまり最下位から3位の者は容赦なく殺される現実を見せつけたハマーン・カーンの戦艦。
 ホワイトベースに通信が入り、艦内にハマーンの声が響く。
「そこの司令官、聞こえているか? こちらはガンジオ特殊部隊のリーダー、ハマーン・カーン…これは警告だ。今すぐ自分のジオラマベースに帰還せよ。さもなければ貴様の命は終わりだ」
 ハマーンの上から目線と冷徹な物言いは相変わらずだと、コウトは冷や汗をかきながら思った。
「最終警告だ。今すぐ自分のジオラマベースに帰還せよ」
(どうする?)
 コウトは自分に問いかけた。目の前の戦艦の艦長は自分より戦い慣れているため、適当なことを言っても誤魔化せる相手でもないことはあの時の言動で明らかだ。それだけでも厄介なのに、ザンジバルには腕利きのエースが数多く乗っている。ハマーンの乗るザンジバルに気を取られて他のエースの奇襲であっさり沈められた挙句にやられる可能性だってある。
 その2点でコウトはあっさり降参するかと思いきや
「オレには行かないといけない所があるんだ! 時間がないからどいてくれ!」
と、言った。
「そうか、それは残念だな。あの時お前を殺しておけばよかったよ…」
 ハマーンがそう言うと、ザンジバルはホワイトベースに向かってビームを放つ。
 コウトはホワイトベースを急旋回させ、回避した。
「これまでの新人と違ってその程度のことは出来るか。…だがお前の行動は分かっているぞ。私から逃げられはしないぞ」
 ハマーンはザンジバルの主砲の正確無比な砲撃でホワイトベースをブリッジと機関部以外損傷させる形で徐々に追い詰めていく。
「思った以上に頑張るがただそれだけだ…次で最期だ……」
 ハマーンは止めの一撃をホワイトベースの動力部に狙いを定めた瞬間、通信が入った。
 何事かと、彼女は通話を取った。
「こちらガンジオ総帥だ。コウトのジオラマベースが脱走者一味の襲撃を受けている。これまでの資源と資金プラント攻撃と違って攻撃しないことから占拠するつもりだろう。大至急東京八王子に向かえ。コウトは後回しにして構わん」
「わかった……」
 ハマーンは冷静に通信を切ると
(何故コウトのジオラマベースを強制的に自爆できなかったと思ったら、理由はそれか!)
と、内心舌打ちした。



 時刻は少し遡る。アッガイはハマーンに隼人脱走を連絡した後にフロントコアの作戦室に一人いや一体席に座り考えていた。
 何故ハマーンはコウトが脱走したことを連絡した時点で自分たちを処刑しなかったんだろう。予想地点を伝えたり、テクニカルラボや偽装ビルドセンターを作ったことを言ったぐらいで見逃すほど寛容でかつ好奇心がある人物ではないはず。
(おかしすぎる)
 アッガイが、ドムに見回りの報告をさせようと通信スイッチを入れた瞬間、ドムの方から通信が飛び込んでくる。
「アッガイ! 聞こえてるか!? モニターを見ろ!」
 アッガイははっとしてモニターを観てみると無数の光点が現れる。
「正体不明の光点…これはおそらく脱走者一味だ!」
「そうか。とうとうオレたちのジオラマベースが襲撃される時が来たってことだ」
「量産型モビルスーツにエース、出撃! クラッシャーの撃破を優先せよ! そうじゃない場合は近づいた敵から撃破せよ!」
 アッガイの命令でモビルスーツ用の格納庫に待機していた量産型モビルスーツとエースが出撃しようとするが…
「そうはさせないわよ!」
 これはシオン配下のトーラス(サンクキングダム仕様)の台詞。
 何と先頭のリーオー部隊が何かを浴びたらしく、身動きが取れない状態になったために格納庫のドアにリーオー部隊が詰まってしまう形で出撃不能になった。
「モビルスーツを一定時間止めるだと!?」
 それだけでなく、防衛施設も侵入者の姿を確認しても動いていない。
「防衛施設も機能していない! ジャミング粒子散布のスケールアップヴァージョンか!」
 ジャミング粒子散布。戦艦アーガマに搭載されている中範囲で10秒間防衛施設を停止させる能力で、回復同様タイミングが重視される支援能力でもある。
「ジオラマベース周辺に飛び回っているステルス性を持つ丸い物体が原因かもしれないぞ!」
と、身動きが取れない陸戦型ガンダムの報告を聞いてアッガイは
「ハマーンさんは僕たちを処刑しなかったのではなくできなかった理由はそれか。脱走者たちは何としてでもこのジオラマベースを乗っ取るつもりだ!」
と言った。
「そいつらはここフロントコアに向かってくるだろう。その前に自爆スイッチを押すんだ!」
「わかった!!」
 ドムの頼みにアッガイは自爆スイッチを押すが、ボタンが作動しない。
「動かない、何で!?」
「恐らくあのステルス性をもつ丸い物体が発する電波で自爆機能すらおじゃんにされたんだ!」
 ドムの悲痛な声にアッガイは臍を噛む。たぶん自分たちが動けるのは戦おうと考えてないからで、戦おうとしたら身動き取れずにやられるだろう。そこにまるでタイミングを計ったかの如く突如通信回線が開き、サブモニターに切り替わる。するとハマーン・カーンの姿が映し出された。
「お前たち、コウトのジオラマベースを放棄し、無事な連中と共に東京都・立川市に移動せよ!」
「で、ですが…!」
「言うことを聞け…今はお前たちを失いたくない」
 ハマーンの言葉に一拍おいてアッガイは静かに言う。
「…了解しました。これより我々は指定された場所に向かいます」
「早くしろ、時間が惜しい」
 ハマーンの通信がぷつりと途絶えた。
「僕の推測が正しければ使い物にならないのは自爆機能とトラップのはず。無事な量産型モビルスーツとエースは大至急戦艦の格納庫に集合するよう伝えよ!」
「あいつ…コウトが作った非常階段がここで役立つとは皮肉でごわす」
 デスアーミーの意見にアッガイは同意した。



 フロントコアに潜入したシオンとルナマリアは作戦室に向かった。
「コウトが逃げたおかげでこのジオラマベースを早く占領できるわ。後は妹のお見舞いに行かないと」
 二人が作戦室に入るともぬけの殻だった。
「私たちで動かせるようにすれば占拠完了!」
 シオンはDNAパスワードに不正アクセスして自分のDNAで動かせるように書き換えようとした時、戦艦の格納庫からアルビオン、プトレマイオス、ミデアが飛び立った。
「防衛エース以外人並みの大きさだから量産型モビルスーツとエースが大量に戦艦に乗り込めたわけだわ。でもどのみち攻撃できないからシオン姉さんは気にせずやって」
「わかったわ、ルナマリア」
 それから十数分後にシオンのDNAで動かせるようになったので、こうしてシオン一派によるコウトのジオラマベース乗っ取り計画は成功に終わるのだった。



 一方、アメリカのシカゴでは、コウトのホワイトベースが不時着していた。
(何と…しても…元居た場所に…帰ってやる)
 コウトは肩で息をしながら、目的地つまり自分が今いる世界でニコル達とあった場所へ走っていたが、その近くのジオラマベース近くで
「怖気づいて逃げ帰るなんて男としてなっちゃいないな」
 左肩にバラを加えた獅子をかたどった模様をした紅と桃のガンダムが立ちはだかる。
「時間がないんだ、見逃してくれ、カガリさん!」
「ふざけるな! お前のせいで、お前の基地が乗っ取られたんだぞ!」
「オレの基地が…」
 カガリの言葉に流石のコウトも言葉を失う。
「自分のやったことが分かったようだな。分かったなら」
「死ななきゃならないよね」
 と、ガンダムアシュタロンのパイロットであるオルバがコウトを殺そうとするが、コウトは自分が最初に訪れた山の中に向かう。
「あいつの逃げ場所はよりによって我々が入れない所だ!」
「とにかくあいつを捕まえよう」
 悔しがるオルバに呆れつつも、カガリはコクピットから降りて追いかける。



「防衛エースにシオン姉さんに忠誠を誓うようプログラミングした後、修理するように…」
 コウトのジオラマベースを完全占拠したシオン一派のM1アストレイが、量産型モビルスーツに次々と指示していた。
(施設に偽装するビーム砲に対空能力を持ったヘヴィバルカン、このジオラマベースには結構強力な施設がそろってる。ぜひ有効活用させてもらうわ)
と、コウトの発明を吟味してシオンはそう思った。



(はぁ、はぁ、はぁ、逃げ切ってやる!)
 コウトは目的地にたどり着いた。
(よし、まだ地面が光っている! 今なら帰れる)
と、金色に光る地面に乗ると、コウトの姿は光に包まれ、消えた。
「待て!」
 カガリとオルバが来たが、時すでに遅し。コウトの姿は見えなくなった。



 東京都・立川市の某司令官のジオラマベースにコウト配下のアッガイ達の戦艦とハマーンが乗るザンジバルが着陸した。
「ハマーン様、ようこそおいで下さいました」
 敬礼して迎える司令官。
「うむ、出迎えご苦労。これより当分の間、私がこのジオラマベースで対脱走者の指揮を執る」
と、ハマーンは宣言した。



 数日後、チョウマのジオラマベースのフロントコア内の司令室内ではモニターに映っているエムの連絡でハマーンがシオン相手に苦戦しているとの情報が入った。
「そうですか…」
「チョウマ、下手をしたらお前にも反乱鎮圧の手伝いが回ってくるかもしれないぞ」
「了解しました、エム様」
 エムの姿がモニターから消えた時、チョウマは大げさに拍手しながら、大笑いした。
「いいぞ、いいぞ、シオン。その調子でハマーンを苦しめろ! そうしたらあいつは失脚し、オレの出番が来る。その時、ハマーンが完全にオレに跪くときだ!」
 そして、チョウマは地下室へと向かっていった。



 地下室の某部屋。
「チョウマね……」
 両手を鎖に繋がれたミニスカ姿の女が天井から吊るされている。両足にも重り付きの鎖がはめられていた。その姿だから長い手足で痩身なのに胸だけが異様に大きいことがよく分かる。
「お待たせしてすみませんでした、レイン・ミカムラ姫様」
 慇懃に一礼するチョウマに向かってレインは毒づいた。
「まったく何白馬に乗った王子様を気取っているんだか…あの時、ドサクサに紛れて私を攫っておいて被害を最小限にしたと恩を売られてもね」
「まあ、そう言うな。おかげでお前の所属勢力が『SEED』『X』『Gレコ』『AGE』のようなゴミ勢力と同じと見なされただけでなく殺し合わなくて済んだのだから」
 チョウマは屁理屈で受け流した後、
「レイン、オレのモノになれ。拒否しても構わないが、『Gレコ』のアイーダ・スルガンがハマーンの輪姦を見て泣き叫ぶ姿は心地よかったなァ」
 チョウマの脅しを含んだ要求にレインは諦めたように溜息をついて答えた。
「わかったわ。アイーダのようなバカ女のレッテルを貼られたり、ハマーンのように多くの人に陵辱されたくない!」
 レインにとってチョウマのみに犯される以外現時点で最小限にする方法が思い浮かばないのでそれ以外の選択の余地がなかった。
「賢い女だ。ハマーンのようなくだらぬプライドの塊やアイーダのようなお花畑と違って話が早くて助かるよ」
 満足したチョウマはレインの唇を奪うと舌で彼女の舌を絡め取った。それに対してレインは諦めて舌を絡めさせた。心ゆくまでレインの唇を楽しんだチョウマは口を離すと彼女の服の前を開き、乳房を露にさせた。
「流石ドモン・カッシュの幼馴染であり、彼のパートナーのだけの事はある」
 痩身の割には大きな乳房を根本から掴んだチョウマは揉み始めた。執拗にせめられ、レインは堪らず官能の吐息を漏らした。その隙にチョウマは彼女のタイトミニのスカートをズリ上げ、下着に手を当てた。
「もう熱くなってきてるじゃねェか…そろそろ始めるか…」
 ニヤニヤしながらチョウマはレインのタイトミニを脱がしていった。レインは乳房を露にし、下半身は白い下着姿になった。そのレインの前でズボンに手を伸ばし、ファスナーを下ろして肉棒を引きずり出した。チョウマは自分の右指でレインの下着の股布を横にズラすと、一気に逸物を押し込んで処女膜を貫いた。
「レイン、入ったぜ……」
 チョウマは快感に震えた。何せ手に入れたい女の一人の処女をまた一人奪えたのだ。心を弾ませたチョウマはレインの腰を掴むと豪快に腰を上下させた。その度にレインは喘ぎ声を上げる。その過程を楽しみながら、チョウマは絶頂に向けて腰の動きを早めていった。
「中に出すぞ、お前がオレのモノになった証にな」
 中に射精すると聞き、レインの顔が一瞬にして青ざめた。
「拒否していいぞ。ハマーンのようになりたかったらな、クックック……」
 チョウマの囁きのような言葉にレインは涙ながらに「お願い…」と懇願した。それに気を良くしたチョウマは思い切り、膣を突き上げ膨れ上がった逸物の先端を子宮の入り口に密着させると、レインの中に勢いよく大量の精液を放出した。灼熱の精液がドクドクと子宮に流れ込んでくるのを感じると同時に、レインは大きな声を跳ね上がらせ、拘束された身体を震わせて絶頂を迎えた。
「仕上げといくか…」
 チョウマがレインを吊るしていた拷問具の鎖を緩めると、レインはその場に尻餅をついた。そして、拘束を解いた。
「では、レイン。オレのモノをしゃぶってキレイにしろ…」
「はい」
 レインはチョウマの命令どおりに彼の逸物をしゃぶった。このまま己の欲望を注ぎ込みたいが、ハマーンの失敗談が楽しみなのか綺麗になったら良しとした。
「では、レイン。お前の主と恋人は誰だ?」
「それはチョウマ様、あなたです。どうかこれからも可愛がってください…」
 レインの言葉にチョウマは満足して笑い声を地下室中に響かせたのだった。



 これ以降チョウマはハマーンの失敗話を聞いて内心ほくそ笑んだ後、レインを犯すを何度も繰り返した。ハマーンがいつか失脚するときを狙ってだ。しかし、そう簡単に物事は進まない。
 それはコウトが元いた世界に来たマリーダがコウトに叱咤したのだ。
「でも、これだけは言っておくぞ。恐怖に負けてるままじゃどんな些細なことでも何一つできない」
 これによってコウトは「ガンダムジオラマフロントの世界」に旅立つ決意をした。



 そして「ガンダムジオラマフロントの世界」ではハマーンのいや日野市のジオラマベースの活動は目立って活発になった。
 ハマーンは
「もっぱら、占領された相模原を攻撃しろ。反乱軍のリーダーが出て来たら一切戦わずにさっさとジオラマベースに逃げ込め」
と命じてある。
 八王子のジオラマベースにいるシオンも、この野伏戦法には閉口した。
(妙な手ね)
 と思い、初めこそ一々大部隊を出して追っていたが、自分の部隊が疲労するばかりで、何の益にもならないことに気付き、日野市のジオラマベースを積極的に攻めなかった。
(日野市のジオラマベースは枝葉にすぎない。根本は立川いえハマーンだわ。いずれハマーン自身が図に乗って大挙侵入してくる時を待ち、叩きに叩いてハマーンの息の根を止めてやるわ!)
 シオンは無理をしない。普通なら積極的に立川市のジオラマベースへ攻め入るところだが、八王子の周辺を安定させることを最優先して、そういう外征はいっさいしなかった。
(そう来るだろうと思った。こちらも周囲に気を付けながら、気長に待つとしよう)
 ハマーンも無理をしなかった。
 そこへコウト部隊の戦艦たちとガランシェールが戻ってきた。ホワイトベースの修理も完了している。
「今更何しに戻ってきた」
「自分の不始末を自分の手でつけに」
 ハマーンの問いかけにコウトは答えた。
「この後、どうなるか解っているだろうな」
「解りません」
「間接的に反乱を幇助した罪で死刑になるぞ」
「ああ、そうか。我ながら迂闊だった。自分の手で終わらせたいと思うあまり肝心なことを忘れてましたよ」
と、コウトはすっとぼけているものの、冷や汗をかいて内心
(今もこいつと話すときは怖いな)と思うのだった。
「戻ってきたということは、考えはあるだろう」
 ハマーンの問いかけにコウトは頷き、説明すると
「いいだろう。お前は元八王子の司令官だからまだ利用価値はある。だから今の所死刑は勘弁してやろう」
 そういうと、ハマーンは終戦に重要な手を一つ打った。
 シオンに、
「どうであろう、こうして戦いをジメジメと続けていても切りはなく互いに何の利益もない。元八王子の司令官がお前と話し合いをしたいというので、それに応じるなら我らは一時手を引く」
「わかりました」
 と、意外にもシオンはあっさり返事した。それもそのはずで、シオン達は実の所、ハマーンのゲリラ作戦に手を焼いていた。それから受ける経済的損失は馬鹿にならない。
(話し合いでどうにかなるならいいわね。仮に騙されたとしてもそれを逆手にとればいいし)
とも思った。
 コウトは市の境までハマーンの軍に送られ、シオンのいるいやかつて自分がいたジオラマベースに入ると、シオンと対面した。シオンの傍にはルナマリアがいる。隼人からしたら二人はマリーダとは方向性は違えど美人の部類である。
「八王子の司令官であるあなたの望みは何なの?」
 シオンは率直に切り出した。
「これ以上反乱を止めてほしいということだ。理由は見当がつく。オレだって一時は最下位から3つ下の司令官の死や意図的な降格の現実に耐えられなくて逃げた口だからな。勿論、単にやめろとは言わない」
「条件付きで止めてくれと」
「そういうこと。ある一定のフロントコアのレベルと地位なら絶対に降格しない制度だ。例えばフロントコアのレベルが6でかつ、地位が少尉ならそれ以下にならないよう制度を変え、それに降格しても死刑にはしないを実行したらだ」
「悪い条件ではないわねェ」
と、シオンは首を縦に振りながら「その保証はあるの?」と尋ねた。
「わからない。でも、妥協点を探るという点では悪くないんじゃないか」
 コウトが真摯に言うので、
「考えておくわ。取り敢えず帰りなさい」
と、シオンはコウトを立川市のジオラマベースに送り返した。



 立川市のジオラマベース。
「取り敢えず奴は話を聞いてくれたか。役目、ご苦労」
 コウトの報告にハマーンは頷いた。
「上層部には私から話しておく。お前は休んでおくように」
と、ハマーンはコウトを下がらせると、上層部に事の顛末を離した。
 すると上層部から「1週間待ってほしい」との通達がでたので、周囲を警戒しながらその通りにした。



 1週間後
「…という訳だ。これらの条件を受け入れるなら復帰を約束するとの上層部からのお言葉だ。どうする?」
 と、ハマーンは隼人に説いた。
「お言葉に従います」
 コウトの即答にハマーンは満足気に頷き、
「では、早速反乱軍のリーダーの元へ行き、話をつけるがいい」
と言って、コウトを再度シオンの元へ行かせた。



 元コウトのジオラマベース
 コウトは自分が提示した条件をガンジオ上層部が呑んだことで八王子以外の反乱が自然に治まったことを先述し、そちらはどうか尋ねた。
「それでいいわ」
と、シオンは答えると、ルナマリアがシオンと同じ罪を自分にも下すよう頼んだ。
 コウトは理由を聞いたが、当人は答えなかったので彼女の表情からシオンは大事な人と察し、取り敢えずかけあってみるから通信できるようにと言って立川市のジオラマベースに戻った。
  コウトからの伝言を聞いたハマーンは「ふむふむ、それについては私が伝える」と言って隼人を下らせ、通信でルナマリアの意見をちょっとした事情でシオンに死刑や終身刑を出せないので聞くと伝えたことで呆気なく強引ではあるが「ガンダムジオラマフロント」の歴史に残る最大の反乱は終わりを告げた。
 後にこの反乱は「第一次シオンの反乱」と呼ばれるのだった。



 この報せを聞いてチョウマは喜んでふりをして内心は怒った。
(コウト、お前の名前はしっかり覚えておくぞ…!)



「う〜ん、基地とはいえど、この世界の我が家はいい」
 コウトは大きく伸びをしてから言った。
「司令官手帳に記録が残っていたのは幸いだったよ。防衛施設の配置も叛乱前に元通りだ」
「そうだな、アッガイ」
「反乱を幇助した罪を軽減法として6カ月の謹慎と少佐までしかなれないのと、モビルスーツの等身大化や試作の防衛施設の技術提供で済んだのは何よりだよ。こうして僕たちモビルスーツは存在できるんだから」
「そうだ、オレが元いた世界でのお土産をあげよう」
 そう言ってコウトはアッガイとドムとザクに、ガシャポンフィギュアをプレゼントした。
「終業式の帰りに買ったんだ。遅くなってすまない」
 コウトがすまなさそうに謝っているところにザンジバルが降りてきた。
「試作品は全て接収しただろ、ハマーン」
「確かに。その土産の箱を接収するのを忘れたので大至急戻ってきた」
「ガシャポンっていうけどな…。それ接収しても意味ないし」
「冗談に決まっておろう。約六ヶ月間お前をガンジオ上層部の施設開発部に連れていくことを思い出したので戻ってきた」
「謹慎期間といっても、実際は少なく見積もっても働いてもらうための期間というわけか」
 コウトのその言葉を肯定する形でハマーンは頷いた。
「でも、ガシャポンも使えそうなのでそれも持っていく」
「待てや、こら」
 こうしてコウトはガンジオ上層部の施設開発部に連れていかれるのだった。



 七ヶ月後
 コウトはハマーンに連れられ、自分のジオラマベースに帰還した。
「これより貴官の司令官への復帰を許可する」
 ハマーンはそう言うと、隼人に新しい司令官手帳を渡した。
「有難うございます」
 コウトの敬礼にハマーンは「ふむ」と小さく頷くと、ザンジバルに乗ってどこかへ飛び去った。
 ハマーンの顔が少し赤らめていた事にコウトが気づくことはなかった。



 その後にコウトの専属パイロットに実験とは言え、マリーダが配備されたことにチョウマは激怒した
(コウトめ、ハマーンを跪かせる計画を邪魔するだけでなくオレのマリーダを横取りしやがって! 今に見ていろ!)
 


 何ヶ月後チョウマはコウトをジオラマベースごと消し去る計画を立てたが、マリーダごと消し去ったために喜べなかった。
 しかし、コウトとマリーダが異空間にいる事を知って更に激怒した。
(コウトめ、オレのマリーダを独り占めしやがって、もう我慢出来ん! お前からマリーダを取り返し、お前が元いた世界の人間どもを皆殺しにしてやる!!)
 コウトへの復讐を考えるチョウマ。だが、それが己の破滅の遠因になる事をこの時のチョウマが知る由もなかった。
















『あとがき・キャラ紹介など』



〇 チョウマ

 本作主人公のオリジナルキャラクター。
 今回はレインを自分のモノにする事に成功したが、コウトによって他力本願のハマーン失脚を邪魔されたことで彼を憎む。




〇 コウト

 16歳のオリジナルキャラクター。
 今回は脱走したが、それによって大変なことになったことを知り、マリーダの説得で戻って話し合いで解決したりと忙しい。
 彼の発明が後々のガンダムジオラマフロントの上層部に採用されることになる。




〇 シオン・カーチェ

 16歳のオリジナルキャラクター。 
 今回はコウトのジオラマベースを乗っ取りハマーンと渡り合う。コウトがいなければ実はチョウマすら詰んでいたのは内緒。




〇 レイン・ミカムラ

 『機動武闘伝Gガンダム』のメインヒロインで、ドモン・カッシュとは幼馴染であり、彼と行動を共にするサポート担当である。
 ガンダムジオラマフロントでは原典通りレイジングガンダムに乗るが、あまり驚異ではない。
 前回ドサクサに紛れてチョウマに攫われた挙げ句今回、陵辱を嫌々ながら受け入れた。




〇 マリーダ・クルス

 ガンダムシリーズでは有名なプルの12番めのクローン。
 ガンダムジオラマフロントでは対して驚異ではないが、リプレイド作戦ではクシャトリヤ・リペアードのみ『虹の彼方に』の最も難易度が高いのや『不死鳥狩り』で活躍できる率が高いのがせめてもの救い。




〇 ハマーン・カーン

 今回はシオンの反乱鎮圧の司令官として活躍するが、チョウマの陵辱によって腕を奮えなかったが、それでも頑張れたのは流石。
 コウトに興味を持ったご様子。

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