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【ｂｕｓｈ＆ｃｏｌｌａｒ】
「………………ん……」
わたしが次に目を覚ますと、そこは石の硬いベッドで横になっていた。
そのベッドの両脇には、なぜか鎖に繋がった頑丈な鉄枷がいくつも取り付けてある。
周りを見渡すと、そこは時代劇で見たことがあるような牢獄みたいだった。
部屋の中は薄暗く禍々しい道具類が揃っている。
わたしが見る限り、それらは拷問や処刑道具に見えた。
唯一安心出来たことは、特に拘束されているわけでもなく、衣服にも乱れがないことだ。
遠野先輩の家なら、こんな牢獄があっても不思議はないかも。
わたしはぼんやりとしたまま、そんなことを考えていた。
すると、間近から不意に声が聞こえてくる。
『あら、やっと起きたのね』
それはわたしの良く知ってる人の声だった。
「あぁ、は、はいっ！
すいません、今起きます！」
遠野先輩の前で居眠りをするなんて、なんてことをしてしまったのだろう。
わたしにとってはこの場所の異常さよりも、遠野先輩の前で居眠りをしてしまったことのほうが重要なことだった。
『私、これから犬を飼ってみようと思ってるのだけど、どういう意味か判るかしら？』
「……え！？……それは、その、あの……」
突然の遠野先輩の問いに、わたしは困惑するしかなかった。
『あなたをペットにしたいと言っているの』
「そうなんですか………って………え、えぇっ！？」
遠野先輩が、とんでもないことをさらりと言ってのけた。
あまりのことにわたしの思考は停止状態だ。
『ペットの意味が判らないのかしら？
日本語で言うと愛玩動物という意味よ』
「遠野先輩、わたし人間です、動物じゃありません！？」
『あなたはこれから私のペットになるの。
これは、もう決定されたことなのよ、あなたには逆らう権利なんてないから』
「………そんなのイヤです、従えません！」
パニックに陥りつつもわたしは必死に拒絶する。
『私は好きではないのだけど、言うことを聞かないペットにはきつく躾をしなくてはならないわね』
でも、わたしにはその台詞とは裏腹に、遠野先輩の顔がとても嬉しそうに見えた。
すると、突然映像が飛び込んできた。
今までこんなにはっきりと未来視したことはなかったけど、これがすぐに訪れるであろう未来であると確信出来た。
今はっきりとわたしは幻視した。
遠野先輩の髪が赤く染まると同時に、髪が伸びてわたしの身体を拘束する。
胸元をはだけさせると、遠野先輩がわたしの胸を噛んだ。
拘束され血を吸われるという異常なことに、目を見開き震えるしかないわたしに、にっこりと微笑みかける。
そして、遠野先輩は滴るわたしの血を美味しそうに啜って見せた。
胸から血が全部吸い出されていく。
血を吸い尽くされ、身体中の力が抜けていった。
血が無くなり意識が遠くなる。
わたしの全てが薄れていくような感覚。
意識が無くなり自分が消えていく。
なのに、嬉しそうにわたしの血を啜る遠野先輩。
おぞましいことのはずなのに、遠野先輩に血を吸われることがわたしにはここちよかった。
それが逆にわたしにはとても恐ろしかった。
それがただの幻だと自分に言い聞かせても、ガタガタと身体が震えてしまう。
遠野先輩に逆らうことが、即自らの死であるとわたしには判ってしまったから。
『素直ないい子になるまで、しっかり躾けてあげるから』
「………あ、あのっ………何でも従いますから、痛いことだけはしないでください！」
『ちゃんと私の言うことを素直に聞いていれば、可愛がってあげるから安心なさい』
ブルブルと震えるわたしに、遠野先輩はやさしく微笑みかける。
『ところで、ペットが服を着ているのって変だと思わない？』
「……はっはい、そう思います………」
『判ったらすぐに脱ぎなさい』
冷ややかな目つきで睨まれ、わたしは怯える。
「……はいっ……」
ためらった末にわたしは視線を落とし、スカートに手をかける。
微かな衣擦れの音とともに、スカートが足下に落ちた。
続いて、キャミソールも。
こんな時でも、つい習慣で服をきちんと畳んでしまう。
そして、わたしは白い下着だけになった。
恥ずかしさのあまり、両手でそれぞれ胸元とショーツの前を隠して縮こまってしまう。
わたしは白い下着姿のまま、窺うような目で遠野先輩を見上げた。
遠野先輩は仁王立ちのまま腰に手を当てて、無言でわたしを睨みつけている。
やっぱり、全部脱がないとダメなようです。
しかたなく、わたしは震える手でブラジャーを外した。
でも、最後の一枚だけはどうしても躊躇してしまう。
だけど遠野先輩は、ペットに服を着せる趣味はないようです。
わたしはためらいながらショーツも脱いだ。
『私によく見えるように、手は後で組んで』
「はい」
言われるまま、素肌を晒すわたし。
遠野先輩がわたしの身体を見下ろした。
凹凸がなく色気のない線の細い身体が見られる。
遠野先輩が眼を下げ、薄い恥毛に被われた股間に注目すると眉をひそめた。
『あら、まだ邪魔なものがついているわね』
たった今気が付いたみたいに、わざとらしくわたしの下腹部を指さす遠野先輩。
『私はね、自分のことは自分で出来る賢いペットが好きなの。
あれを使って自分で処理なさい』
そう言うと遠野先輩は無骨なテーブルを指さす。
わたしがそこを見るとテーブルには、工具類や何に使うのか良くわからないものがごちゃごちゃと並べられていた。
『そこにガムテープがあるでしょ』
たしかに、ガムテープが置いてあった。
えぇっ、そんな、ガムテープで脱毛しろってこと？！
そんなこと、とても出来そうにない。
わたしは力なく首を左右に振っては懇願したけど、遠野先輩は冷徹に睨み返すだけだった。
わたしは仕方なくノロノロとテーブルに近づくと、ガムテープを手に取る。
そして震える手でガムテープを短く千切ると、ゆっくり恥毛にガムテープを張り付けた。
『さぁ、はやくしなさい！』
━━━━━ビィッッ━━━━━
「ひっ、痛いぃぃ！」
わたしは股間に貼り付いたガムテープを引き剥がしたけど、数本の恥毛がガムテープに貼り付いているだけだった。
「うぅ、ガムテープでなんて痛くて無理です……」
『あなたのやり方が悪いのよ、もっとしっかり張り付けてから勢いをつけて剥がしなさい』
「………はいぃぃ……判りました……」
もう、ガムテープで脱毛することは避けられないみたいです。
覚悟を決めて、今度はガムテープを長めに千切ると、しっかりと恥毛に張り付ける。
━━━━━ベリィッッ━━━━━
「……ひぃぃ！……」
遠野先輩に言われるまま勢いよくガムテープを剥がすと激痛が走った。
『その調子よ、そこの毛を一本残らず脱毛してしまいなさい』
「………うぅ………はいぃぃっ………」
━━━━━バリッッッ━━━━━
━━━━━ベリッベリッッ━━━
「……いやぁぁぁぁ！……」
わたしは激痛に呻きながら、ガムテープを恥毛に張り付けては引き剥がすという作業を繰り返した。
そうして、恥毛が全く無くなりつるつるの股間が姿を現す。
ようやく惨めで苦痛の作業が終わった。
『ほら、ぼんやりしてる暇なんてあなたにはないのよ。
こんなのはまだ序の口なんだから。
次は、あれよ』
遠野先輩はあくまで非情だった。
促されて、遠野先輩の視線の先を見るとわたしは動けなくなった。
そこには紅い革製の大型犬用の首輪があった。
それは、普通の首輪よりも遥かに頑丈で、南京錠で止めるようになっていて、カギがなければ首輪を外すことが出来ないようになっている。
それをどうすればいいのか、すぐに判ってしまった。
遠野先輩は本当にわたしを犬扱いするつもりのようです━━━━━
わたしは、手にした首輪をしばらく見つめると、もうあきらめて自分の首に巻きつけていった。
金具を留め、自分で外せないよう小さな南京錠を掛ける。
わたしの首でカチリと無常な音が聞こえた。
『耳も付けないとね』
テーブルの上には、どこで手に入れたのか、犬耳カチューシャが置いてあった。
わたしは震える手で犬耳カチューシャを着ける。
『良くできました』
遠野先輩がにこやかに誉めてくれるけど、わたしはちっとも嬉しくない。
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