■偲芳歌(しほうか)■【5】




【私の可愛い人形 優しく抱いてあげましょう
 紅色の唇 褪せないように】


「これからお前の唇に紅をさして上げる。
 ずっと落ちないように特別の方法でしてあげるわ。」
 そう言いながら、珠晶が紅い染料の入った器と千枚通しのような太い針を持ってきた。
 祥瓊は恐怖に引きつり目を見開くが、珠晶はまったく構うことなく祥瓊の顎をつかむと、唇に針をあてた。

「動いてはダメよ。
 変な所に刺しちゃうかも。」
「……んんっ……」
 針を器の染料に浸すと、祥瓊の唇へとおもむろに突き刺した。
 ビクッと祥瓊の躰が震える。
 太くて鈍い針が皮膚を突き破る痛みに悲鳴をあげそうになるがなんとか堪えた。
 すぐに二針目が唇に突き刺さる。
 そして、次々と針を唇に突き刺していった。
 珠晶は淡々と彫り続ける。

 少しずつ場所を変えながら容赦なく針を唇に刺していく。
 珠晶は一針ごとに瓶に針を浸けるとまた刺す。
 一針一針が直接神経に突き刺さっているかのような痛みだった。

「んー、ちょっと地味かしら?」
 珠晶は可愛らしく首を傾げると、少し考え込んでいる様子だった。

「ここにも、紅をさしてみようか。」
「…………」
 そう言って、珠晶が指で目の縁を指でなぞった。
 祥瓊はあまりのことに声を失う。
 珠晶はその思いつきを実行に移すことにした。
 それは、祥瓊の目の上下の縁にも鮮やかな紅の化粧をすることだ。

「…うっ………うっ……」
 祥瓊が激痛のあまり、ほとんど意識を失いかけた頃ようやくその処置は終了した。
 珠晶によって顔についた血と汗が拭われると鏡を見せられた。
 そこには娼婦のような淫靡で深紅の化粧をした女が映っていた。
 しかも、その淫靡な化粧はもう一生落とす事が出来ないのである。

「我ながら見事な出来だわ。
 綺麗よ、とっても似合っているわ、素敵な格好よ。」
 両手、両足には宝石を埋め込まれた枷が付けられている。
 首にも同様に豪華な首輪が付けられている。
 胸にはブローチのような飾り、乳首だけは隠さずその左右の乳首には簪(かんざし)が貫通している。
 そして、簪(かんざし)に3つのきらびやかな連珠(くびかざり)が通されている。
 その重みに胸が垂れ下がらないように、簪(かんざし)の両端と首輪に鎖が繋げ釣り上げられている。
 胴には鎧のような拘束具、腰を括れさせ胸は隠すことなくより強調している。
 女陰には鉄の華が咲いている。
 それを固定しているのは、陰唇と陰核に穿たれた鉄環。
 尿道には管を通され、排尿できなくなっている。
 茎の部分は黒真珠が埋め込まれ、それが膣を抉り子宮まで届いている。
 菊座にも小さな鉄の華、内部で広がって抜けることはない。
 顔には鮮やかな紅の化粧をされ、その色彩は褪せることなく永遠に残るように施されている。

 珠晶は満足そうに、祥瓊を眺めた。
 魂の抜けたようなうつろな表情の祥瓊の顔に珠晶はそっと口づける。
 珠晶は自分の作り出した見事な芸術作品の傍で、その美しい姿にいつまでも見入っていた。


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