ギイイ……。
ギイイ……。
巨大な車輪がゆっくりと回っている。
濡れた縄が車軸に巻きついていく。
ワルキューレは、車輪の太い輻にそって、きゃしゃな体を四方に広げられ、手足を革紐で縛りつけられている。なめらかな肌も金色の髪も水に濡れ、肩で激しく息をしている。
ひときわ高いきしみがあがり、車輪の回転が止まった。車軸に巻きついた縄が張りつめる。
ロボティアンが、二体がかりで大きな取っ手を倒した。分銅仕掛けが一気に落とされた。車軸の縄がたちまちほどけだし、車輪が逆向きに激しく回りだした。
「あああーーーーッ!」
車輪に縛りつけられたワルキューレも回転する。頭が下になり上になる。金色の長い髪が地を擦り、空になびく。四肢が四方に引っ張られ、内臓がかき回される。
「ああああ! はああああ!」
「いい格好だな、神の子よ」
ゾウナは鞭をもてあそびながら、めまぐるしく回るワルキューレの苦しみを鑑賞した。車輪の回転がゆるんでくると、ゆっくりと前に出る。
「ひい! ああ!」
回る女体に、鞭が打ちこまれる。大きく広げて固定した股間をあやまたず真下から打ちあげ、逆さまになれば真上から打ちおろす。腿を叩き、すねをたたき、胸元を責める。回されるままにあらゆる方向に下垂する乳房を、四方八方から叩きのめす。
「ああ……あああ……」
縄がすべて解け、車輪の回転がとまった。逆さまになったままのワルキューレに、繰り返し鞭が叩きこまれる。処女をうしなった肉唇を、金色の茂みに覆われた柔肉の丘を、そのはざまにひそむ敏感な核を、傷つく寸前の手荒さで鞭打たれる。防御のためのぬめりが鞭音を濡らす。ワルキューレは歯を食いしばってうめきながら、羞恥と屈辱に耐えるしかない。
「よし、巻きあげろ」
ワルキューレがぐったりとすると、ゾウナは鞭をおさめ、ロボティアンに合図した。レバーが操作され、車軸の縄がゆっくりと巻きあげられていく。同時に、上方から竜のかたちの装置が降りてきて、薄こがね色の水を滝のように流し始めた。
「ウウウ! ぐうう!」
車輪とともに回るワルキューレは、水の流れに何度も顔を突っ込まされる。まともに息がつけない。せきこんでいるうちにまた水流につっこまされる。水を吐いてもがいているうちに、また水流を通過する。体の傷はみるみる洗い流されていくが、息ができない苦しみに、白い体がよじれもがく。
ワルキューレが溺れる前に、水流は止まる。車輪はゆっくりと回り、濡れた縄が車軸にまきついていく。
巻き終われば、分銅仕掛けを落としてまた激しく回転させ、回転がゆるめば鞭で責め、回転が止まればまた巻きあげながら水責めする。その繰り返しであった。
もう何度目かも覚えていない。
それでもゾウナはワルキューレを殺そうとはしなかった。苦しみは与えても、死に至らしめることはないよう細心の注意を払い、責め続けている。
ワルキューレにとって、それは絶望を意味していた。
車軸の縄がすべて巻きあげられた。ゾウナは分銅仕掛けを発動させなかった。手を振って合図して半回転分をゆるめさせ、ワルキューレの頭を下にした。
逆さまになった視界のなか、ゾウナが呪文をつぶやいて、『それ』を手の中に出現させた。
ワルキューレは身震いした。
『時の鍵』。
それが自分を貫いていたときの絶望を思うと、体が震える。あと数秒意識があったなら舌を噛んでいた。あまりの屈辱に頭が真っ白になり、気絶したので助かったのだ。
「神の子が、みずから命を絶って堕ちるところをぜひ見せてもらいたかったのだがな」
ゾウナは笑いをかみ殺しながら、ワルキューレの脚の間で『時の鍵』の狙いを定めた。
むろん本物の時の鍵ではない。ゾウナがつくりだした同じ形のにせものに過ぎない。時空を支配する魔力を秘めた比類なき宝、ゾウナの暗黒支配の源を、このような遊戯に使うはずがなかった。それでも、その姿形を入れられるのは屈辱的だった。
「あ、くうう……!」
「嬉しいか。決して外れないようにしっかりと入れておいてやろう」
ゾウナは『時の鍵』をねじりこむと、革紐を使ってワルキューレの腰にくくりつけて固定した。
「いいぞ、車輪をまわせ。ゆっくりとだ。これに犯されて悦ぶ姿がよく見えるようにな」
ロボティアンたちが黙々と従う。車輪が細いきしみをあげて、ゆるゆるとまわりだした。
「ああ、よくも……!」
にせものの時の鍵は、邪悪な魔力を吸った黄金で出来ている。深く触れ合った肉ヒダに、ぞっとするような冷たさと、せせら笑うような振動が伝わってくる。じっさい、命を宿したように右に左に小さくよじれ、ワルキューレの中を微妙に揺するのだった。
「あ、ああ……!」
ゾウナに貫かれて磨かれた内道が、熱いよだれをこぼし始める。車輪の回転によって、差しこまれた鍵の重みがさまざまな方向にかかる。頭が上ならば、重みに引っ張られてわずかに抜けるように緩み、頭が横ならば、側面に強く当たり、逆さになれば、深くずっしりと差しこまれてくる。
「はあ……いやあ……!」
回されるにつれ、ワルキューレの体が火照ってくる。しっとりと汗をにじませ、きめ細やかな肌が粘っこい艶を帯びる。熱い吐息を漏らし、首をよじる。抜き差しともいえない重みの刺激が、次第にむずむずとしみこんでくる。
「顔がうっとりとしてきたな」
「し、していない、そんなこと……ああ!」
眉根を寄せ、胸を突き出す。小ぶりの乳房がひと回り大きくなり、まりのように揺れ弾んだ。鮮やかな色の先端が、さらに燃えるように色づいている。
「んん……ああ……はあ……ああん……」
低い軋みをあげて車輪が回る。逆さまから横向きに、縦になったかとおもうとまた横に、単調な繰り返しの中、中心を広げる硬い感触がまざまざとして、自身の内壁がもどかしくうねるのを感じる。
「は、ああ、あああ!」
「心地よいのか、このような仕打ちが。まったく淫らな花だ。もっと蜜をこぼすがいい」
ゾウナの長い爪の先がワルキューレを指した。『時の鍵』に紫色のもやが絡みつき、黄金の輝きがギラついて、まがまがしい虹色の光沢を帯びた。
「は、ああ、う、動く……!」
『時の鍵』が左右に首を振る。あたかも見えない手がネジを巻こうとしているようだ。固定のなかで動ける以上にねじれ、革紐をきしませ、右に左に鍵の本体を回して、ワルキューレの肉道をかき回した。
「ああ、あ、やめて、そんな……!」
弱々しく肩を揺すり、熱い吐息をもらす。内腿がぴんと伸び、つま先がよじれる。開いた口元から、唾液があふれた。
「んん、あんん、んん、はあん!」
上も下もない浮遊感のなか、確かな金属の太さが中心に無限にねじこまれてくる。さしたる長さもないというのに、子宮まで届こうとしているように感じる。重みがかかり、体がのけぞる。広げられて縛りつけられた四肢を揺すり、金髪を振り乱す。
「腰がくねくねと踊っているぞ。あられもなく股を突きたてて、ほう、ずいぶんと濡れているものだ」
「ああん、違う……こんなもの……あ、ああ、はああ! とめて、もう車輪をとめて!」
「そうだな、そろそろ仕上げといこうか」
ゾウナはロボティアンに指示し、いったん車輪をとめた。車軸の縄が巻きあげられる。ゆっくりと逆回転でまわされて、鍵の重みが新たな方向と順序で内部に食いこんだ。魔力によるねじこみも続いている。ワルキューレは唇を噛んで快感に耐えた。
「そうだ、燃えろ。じっくりと燃えるがいい。お前を快楽の炎でやきつくしてやろう」
「ふう、はああ、いや、誰が……あああ、んん、いや、いやああ!」
「あらがっても無駄なことだ。もうすぐ最高の炎を味わわせてやろう」
車輪の巻きあげが止まった。ゾウナはすぐには合図を出さなかった。ワルキューレは、ゆらゆらと揺れる車輪とともに、右に左に揺れながら、荒い呼吸をくりかえしていた。
まがまがしい黄金の鍵が、深みをめざしてねじこむたびに、あごがのけぞり、腿がうねる。美しい桜色に上気した体が、汗の艶を浮かべて淫らにくねる。半開きの口元から唾液がこぼれだしていく。
「はあ、ああ、やめ、ああ……」
「燃え尽きるがいい、神の子よ」
ゾウナの手がふりおろされた。ロボティアンたちがレバーを下げた。分銅仕掛けが一気に落とされ、巻きついた縄が勢いよく引っ張られ、車輪が激しく回りだした。
「アアアアアーーーーーーッ!」
目にもとまらぬ速さでワルキューレが回転する。黄金の鍵の重みに遠心力が加わって、あらゆる方向にかき回され、押し揉まれているような刺激となる。むろんねじこむ動きも止まらない。
「はあああ、ああ、だめ、あああ、はああ、きく、んんん、はああ、あああああ!」
恐ろしいうねりが中心にひろがり、一気に子宮をつきあげた。止まらない波のような快感がわきあがり、爽快な痺れが四肢へと拡散していく。
「ああああ! いやあああ! いく、いく、いくううう! とめてええええ!」
絶頂の快楽はとまらない。高速回転の浮遊と不安と苦しみのなか、後から後から快感のうねりが高まり、縛られた体が革紐を鳴らしてぎくしゃくとよじれる。
「いく! いくいく! あああ! とめて、とめて、もうとめてえええ!」
薄笑いを浮かべるゾウナの前で、ワルキューレは腰をよじってのたうちながら回り続け、やがてぐったりと意識を失った。
◆
『お前に罪人の責め苦を味わわせてやろう。もっとも、その美しさに免じて多少の手心は加えてやるがな』
狭い石造りの部屋である。燃えあがる炎に照らされて、跳ねまわるコアクマンたちの長い影が踊っている。毒を塗った細いヤリの先が、炎の輝きにギラついて反射する。
「あ、あああ、はああ……」
ワルキューレは両手をひとまとめに頭上で吊るされて、木製の責め台に馬乗りにさせられていた。
台は頂点を上にして三角柱を横置きにしたもの、拷問に使う三角木馬だ。白い腿が斜辺にそって大きく広げられ、足先は床に届かない。もしゾウナの手心がなければ、ワルキューレの柔肉はみずからの重みで血を流していただろう。
そうはならなかった。三角形の頂点が、狭い幅で平らになっているのだ。むき出しの木ではなく、革を張って薄く詰め物もしてある。どうにか載せられるほどの幅しかないが、流血と激痛は逃れられた。かわりに屈辱的な甘さが谷間と双丘に食い込んだ。
「あああ……いやあ……」
両脚に力をこめて腰を持ちあげようとしても、腿が斜面に沿って滑り落ちていき、股間が際限なく押しつけられる。ワルキューレは脂汗を流しながら、中心を突きあげる圧迫感に耐えた。
「愛らしい胸がまた張りつめてきたな。コアクマンたちよ、柔らかく揉みほぐしてやれ」
一体がヤリを振りあげて奇声をあげ、ワルキューレのうしろに陣取った。ニヤニヤ笑いを浮かべながら、汗に濡れた背中を眺め回す。
「ひ……いやあ!」
爪の長いほっそりした手が、後ろから乳房を持ちあげた。重みと弾力を確かめるように何度も揺らされる。みずみずしい乳肉が震え上がる。
「ああ、ああ、やめて!」
乳房が上下にこね回される。鮮やかな先端が互い違いに踊りくるう。指が食いこむたびに乳房が鈍く痛み、それ以上の甘さが広がっていく。胸先がくびられているようにうずく。
「んん、んんん!」
三角木馬に食いこむ部分がぶるぶる震え、腰が張り出す。よりどころなくもがく腿に、もどかしい感覚がからみつく。力が抜けそうになる。
「罪人の仕打ちが気に入ったか。もっとそれらしくしてやろう」
足元の床から、鎖つきの枷が蛇のように飛び、ワルキューレの細い足首にガチリとはまった。両脚が下に引っ張られる。
「あ、ああ、食い込む……!」
多少なりとも腰をあげたり腿を張ったりして逃れていた分まで、すべてが深く食いこんだ。恥骨がうずき、体の奥から熱い液がぬめり出してくる。
「ああああ! いやあああ!」
その状態で、木馬が前後に揺れはじめた。頂点が容赦なくこすりつけられる。裏門もぐいぐいとこすられる。ワルキューレは両手の鎖をきしませ、上体をよじらせた。そのもがきに合わせるように、胸がさらにこね回される。
「ああああ! だめえええ!」
木馬の動きに身をゆすられながら、ワルキューレは自身の甘さを噛みしめていた。
たとえ戦いの途上で力尽きても、神の子の化身たるものに本当の死は訪れない。不屈の闘志と神の導きによってよみがえり、ふたたび地上へと降り立つ、それを繰り返してきた。
ワルキューレは闇に囚われているが、ゾウナの仕打ちの果てにかりそめの死を迎えたならば、また、はじまりの国へ降り立つだろう。
ゾウナはそれを知っている。ワルキューレを殺そうとはせず、あやまって死に至らしめることもないよう注意を払って、ワルキューレを闇に縛りつけている。
みずからを死を選ぶ所業は、神の子の化身には許されない。もはや神の導きは得られず、ふたたび地上に降り立つことはない。むろん、天上世界へと戻ることも許されないだろう。
(私は……ゾウナが飽きるまでここで痛めつけられるしかないのか……ああ……!)
コアクマンの手つきが手荒さを増す。ほかのコアクマンたちも寄り集まって、けたたましく笑いながらヤリをふりまわし、柄頭で乳首をつついたりこすったり、乳房や尻をひっぱたいたりする。あごをつかみ、口を吸うものもいる。両腿をつかんで体重をかけ、より木馬に食いこむように補助するものもいる。けたたましい小鳥の騒ぎ声にも似た早口の言葉、ワルキューレが痴態をさらすたびにドッと沸く笑い声。とがった乳首が面白そうにつまみあげられる。
(負けない、負けるものか! 命を奪われることがないのなら、いつか反撃する機会も必ずやってくる。そのときまで……耐え抜いてみせる!)
だが、コアクマンに胸をひねり上げられただけで、その決意が崩れそうになる。
「あああ、負けない! 決して負けるものか!……はああああ!」
持ちあげられた乳房の先に、ヤリの柄頭が食いこむ。中心がへこみ、周囲がムリュッともりあがった。ねじこむように動かされ、乳肉がいびつに歪んでうねる。
「うう……くうう、んんん!」
乳房をつかむ手が離れた。かわりに下方から柄頭が押しつけられ、ぐいぐい突きあげて弾ませる。乳房の両側からも槍があてがわれ、両乳房がぴったりと合わせられた。
「く、あ、ああ、やめろ……くうう!」
胸の谷間にヤリの柄頭が押しつけられ、弾力のある合わせ目をかき分けて、乳房のあいだに通されていく。
左右の臀たぶにもヤリの柄頭が複数ずつ食いこむ。金色の茂みにも押しつけられる。
「は、ああ、やめ、ああ、おのれ、はああ、負けない、あ、あ、あああ、いやああ!」
ヤリの柄頭を楽しげに動かされ、体のあちこちで肉が押される。ワルキューレはしなやかな金髪を振り乱し、木馬の上で白い体をくねらせる。きめこまやかな肌が汗を噴き、たいまつの炎に照らされて光っている。
「んん! はああ! うあ、あああ!」
木馬にこすりつけるように腰を揺さぶりながら、ワルキューレは身をよじり、さけぶ。
「お前たち……覚えていろ……ああああ!」
『……そうだ、その意気だ神の子よ。まだ崩れられては面白くないからな』
ワルキューレの熱い濡れたあえぎ声が、ゾウナの甲高い笑いにかき消されていった。
◆
土と石の冷たい匂いがする。
背中から伝わる肌寒さに身震いして、ワルキューレは目を開けた。手足をぶざまな大の字に広げられ、じかに床に寝かされていた。起きあがろうとすると、鎖が引きずられて粗末な石床にこすれた。
手足に重い枷がつけられ、床に鎖でつながれていた。だが、鎖の長さには多少の余裕があり、ひじをついて少し身を起こすことができたし、完全にではないが脚を閉じることもできた。
紫色のたいまつがひとつだけ、そばで音もなく燃えている。天井も周囲も闇に沈んで果てがはっきりしないが、音の反響や空気の感じから、あまり広くはなさそうだった。
いったいいつ運びこまれたのか覚えていない。三角木馬とコアクマンどものイタズラで、けっきょく失神したらしい。腿の間に、刺激のなごりが重苦しく残っていた。
『待ちかねたぞ神の子よ。さあ、次の責めには耐えられるかな?』
ゾウナの声だけが闇に響いた。
「何でもするがいい、私は受けてたつ!」
ワルキューレは上空の闇に言い放った。
『それでこそ神の子だ。私も責めがいがある。さあ、耐えてもらおうか』
闇のどこかで、重い仕掛けが地響きをたてた。古びた鎖がきしむ音、油の足りない巻きあげ機の悲鳴、そして耳障りな摩擦音を立てて、扉の開く音がした。
ゴトリという重い音とともに静寂が戻る。
否。
濡れたシュルシュルという息づかい。そして大きなものが石床を引きずる気配。それもひとつではない。輪をしぼるようにして、少しずつワルキューレに迫ってくる。
たいまつの明かりが届く場所に、一体が姿をあらわした。
(エンマコンダ……!)
地下迷宮で宝物の守護を担う大蛇のモンスターである。地下で出会うエンマコンダは、恐るべき巨体をしならせて威嚇の声をあげ、火の玉を限りなく放ってきたものだが、このエンマコンダは人間の身の丈ほどの大きさだった。音もなく二股の舌を出入りさせながら、無感動な一つ目で見つめている。
不意に頭上にも気配が生じ、顔をあげると、別のエンマコンダがのぞきこんでいた。足元の方からも、別の一体がワルキューレを見すえて寄ってくる。右からも左からも這い寄ってくる。
「お前たち……何をする気だ……」
沈黙にたえかねてワルキューレがうめくと、五体のエンマコンダたちはいっせいに一つ目を瞬かせて動きを止めた。舌をちろちろと動かしてようすをうかがっていたが、やがてまた動き出した。
(き、気持ち悪い……!)
エンマコンダたちは、ワルキューレの体にのしかかり、次々と絡みついてきた。
エンマコンダの背側は皮を張り重ねた防具のように硬い。腹側は、蛇腹にはなっているものの、その表皮は本物の蛇とはちがって柔らかくしなやかで、油のような濃い粘液の膜に覆われている。油のような分泌液は、背側にも染みこんでいた。
「はなせ……ああ!」
五体のエンマコンダはワルキューレの体を複雑に這い回り、両脚、胴体、胸元とくまなく体中に巻きついた。縄束のような重みと強靭さで際限なく締めあげられ、華奢な骨格が悲鳴をあげた。
(く、苦しい……!)
エンマコンダの体がうごめいて、互いにこすれ、きしみをあげる。ワルキューレの体もミシミシと音をたてた。肺の空気が、いやそれどころか内臓まで口からしぼりだされそうだ。頭をのけぞらせ、首をよじるたびに、床に広がった金髪が乱れ動く。
「くうう……ああ……!」
両腿が緊めつけられ、股関節がボキボキと音を立てる。揺さぶられ、引っ張られて、このまま関節を外され、脚をもぎとられそうだ。腰骨もきしんで歪む。腿がさらに広げられる。
「んんんん!」
背筋がのけぞり、腰が限界まで弓なりに反返った。背骨が、腰骨が、こわれるのではないかという音をたてる。腕のつけねが引っ張られる。腕に巻きついたエンマコンダにひじがねじられ、肩がガタつく。
「は、ああ、うあああ!」
互いに絡み合うようにうごめくエンマコンダたちが、ワルキューレの体をてんでに締めあげる。無秩序にねじり、ひっぱり、ゆさぶりをかける。白い体が人形のようにめちゃくちゃに動かされる。
「くう、あ、ああ、ああ!」
ぎり、ぎりとエンマコンダの胴が音をたて、ワルキューレの体が海老反りになる。壊される寸前の苦痛に、脂汗が流れる。
「あがああ……!」
乳房の上下が手厳しく巻き緊められ、股間にも太い大蛇の胴が通って食いこんでいる。抵抗の力を失った両脚が、エンマコンダが這い締めるたびにゆらゆらと開閉する。されるがままに持ちあがり、くねくねとよじれる白い腰の動きは、淫猥にさえ見えた。
(く、苦しい……からだが潰れる……手足がもぎとられる……!)
圧倒的な大蛇の力に、細いからだの膂力が抗し得るはずもない。ワルキューレはぐったりとして動かなくなった。意識がある証に荒い呼吸をして、ときどき首をふるばかりだ。
『どうやら遊びも限界だな。そろそろ本格的に始めるとしよう』
エンマコンダたちはいっせいに瞬きをすると、骨をくだかんばかりの巻きつけを緩めた。ワルキューレははあはあと息をつき、思い出したように嫌悪に身を震わせた。湿っぽくつめたい蛇腹の皮が、裸の体にぴったりと吸いついている。重さと締めつけで逃れることもできず、気色悪いことこのうえない。
巻きあげられた中で、ワルキューレはむなしくもがく。エンマコンダがせわしなく動かす舌から、粘液がこぼれて落ちてきた。
「……ひ!」
生ぬるさと生臭さに、ワルキューレは身をよじる。厳しく巻きつかれて動けない体に、半透明の灰色の唾液がどろどろと吐きかけられてきた。汚泥のように白い肌に飛び散り、ギトついた油のような虹色に反射する。
「か、かけるな……ああ!」
気持ちの悪い液体が、ワルキューレの体中にぬるぬるとまぶされる。逃げられない乳頭に、それぞれ舌をあてがわれ、樋のように流しかけられる。首筋を、耳元を、好きなように舐めまわされ、髪にまでこぼされる。
『いい姿になってきたな』
ゾウナの笑いが響く。
「おのれ……このような低俗な辱めで、私が屈するとでも……」
「どうかな。お前は大変にみだらな才覚を秘めているからな。お前のような肌と肉には、たいそう刺激的なはずだ」
「ふざけたことを、私がそんな……アッ!」
両乳首に際限なく注がれながら、ワルキューレの体がびくんとはねた。拘束のなかでよじれた体に、エンマコンダの蛇腹が激しくこすれた。
「あ、あああ!」
『効いてきただろう。そのエンマコンダの体液には、人の淫欲を高める力が秘められているのだ。もっと燃えあがらせてやろう』
首筋を舐めていた舌が這いあがり、ワルキューレの唇とあごをなめまわした。灰色の粘液が白い顔を汚辱する。舌先が唇に押しつけられ、こじあけようとする。ワルキューレは顔をそむけ、歯を食いしばり、唇を引き結んで抵抗した。
「あ、あああ!」
胸元の舌が仲間に加勢した。あてがっていただけの舌先で、いきなり乳房を味わうように舐めはじめたのだ。粘液にくまなくまみれ、成分の浸透した乳肉は、はじけて燃えあがるような快感に襲われた。
悲鳴をあげた口に、エンマコンダの舌が飛びこんだ。冷たいぬめっとした肉筒が、喉の奥へどろどろと唾液を注ぎはじめた。
「んん、うぐう、やめ、んんん!」
歯をたてても、なんら痛痒を覚えたようすもない。むしろ粘液が搾り出したように大量に分泌された。口いっぱいに生臭い液を満たされ、必死で口元からこぼしても間に合わない。ついにごくりと飲みこんでしまった。
「ふぐううう!」
腹の奥に火がついた。カッと体が熱くなり、爽快なほどの汗がとめどなく流れ出した。
「ん、んん、ふうう、んん……!」
なおも舌をくわえさせられて、大量の粘液を飲まされ続ける。体の熱が際限なく上昇していき、それらは胸と腰に集中していった。
「ふうう! はあんん!」
まだ何もされていない谷間から、大量の快蜜がほとばしる。ぬるりと体から滑り出すたびに、その部分が融けそうな快感に襲われる。前の双丘までびりびり震えがはしる。
「もっと神の子に注ぎ入れてやれ」
気ままに舐めまわしていた二体が、広げて固定した腿のあいだで頭を並べた。一体が舌を伸ばし、茂みの下、熱い粘りを垂らす谷間の肉門に舌先を押しつける。
「んぐうう! ふ、んん、はあああ!」
舌を内部に挿入されて、ワルキューレは腰をうねらせた。ゾウナの器官やにせものの時の鍵よりもはるかに細いが、恐ろしいめまぐるしさで抜き差しし、肉壁に火がつきそうなほど摩擦する。大量の灰色粘液が、抜き差しごとにドプッドプッと送りこまれてくる。肉ひだが奥までヌルヌルと満たされていく。
「は、ああ、ううん! ふあああ!」
もう一体も舌を伸ばし、金色の茂みの奥の秘核をとらえ、押し揉みながら粘液を浴びせる。目の奥で火花が散る。
「口だけではなく、下からも飲ませてやろう」
乳首を責めていたエンマコンダの片方が、足の間へと首をのばし、仲間二体に加わった。頭を下げ、舌を下の方に伸ばす。谷間をこじあけてうねりくるっている仲間の舌よりさらに下、ワルキューレの小さな尻の割れ目に舌を這わせる。
「はあん! ふぐう! ん、ふうう!」
不浄のすぼまりが舐めまわされる。唾液を塗りこんでヒダをこすられる。ゾウナの指で軽くくじられたときとはくらべものにならない鮮烈な火花がワルキューレの尻に襲いかかった。
「ひい……はぐう! ん、んん、ふうう!」
集束する中心をぬるぬると押し揉まれ、よじり合わせた二又の舌先で軽くノックされる。むずがゆい感覚とともにヒダ穴がうねる。舌先が中心に這いこもうとする刺激が、排泄の瞬間の甘さを生み出す。
(そ、そんな……こんなところはいや!)
柔らかくもろい肉が容赦なくかき回され、ほぐされていく。体が下からめくれかえるような震えが走る。引き締めたいのに、緩んでしまう。
(ああ、なか、なかに、いや、いやあ!)
鋭くよじれて螺旋状になった舌が、尖った先端をヒダの真ん中に押しつけた。ぐにっと肉ヒダが伸びる。ヌルヌルに濡れた舌が、三分の一ほど差しこまれた。舌がよじれを戻し、その回転で収束のヒダをさらに開く。ドクドクと脈打ち、粘液をにじませると、舌は残りを一気にワルキューレの中に突っこんだ。
「は、はぐうう! ん、んぐう、んんん!」
中に粘液が一気に流れてきた。舌がよじれくねり、かき回す。クチュクチュとみじめな音が響く。チャプチャプあふれてこぼし続ける谷間と、淫らな水音を競い合う。大量の唾液が股間から際限なくヌルヌルと流れ落ち、たいまつの炎にきらめいた。
『いいぞ、塗りこめ。たっぷり注ぎこんでやれ。内も外も粘液漬けにして、全身にしみこませるのだ。手落ちがあってはならんぞ』
ゾウナの命令に、エンマコンダたちは長い胴体を滑らせて、ワルキューレの肌に粘液をまぶしつけた。ときおり責め場所から頭を放しては、唾液を体にまんべんなくしたたらせ、また責めに戻る。ワルキューレの体は粘る膜につつまれたようにぬらぬらと光った。
『舌を離したときは尾を使え。わずかなりと休ませてはならん。徹底的に磨きあげるのだ』
口、右の乳房、左の乳房、茂みの中、秘部、不浄のすぼまりと、集中攻撃の的は六ヶ所である。五体のエンマコンダは、胸元を一体で担当していたから、乳房の片方は舌と唾液の責めをまぬがれていた。体中にたっぷりと唾液を注ぐために、二体ほどが常に頭を持ち上げるているようになったので、集中した責めは三ヶ所同時までに減っていた。
だが、ゾウナの指示とともに、常に六ヵ所すべてに行われるようになった。放置されている乳首を尾の先がしごく。口に尻尾をくわえさせられる。谷間には、舌と尾が交互に攻めこんで、太く硬く力強い挿入と、柔軟で行き届いた挿入を使い分けて責められる。
「はああ、やめ、それはやめてえ!」
こね回された尻奥にも尾の先が押しつけられた。尖った先でぐりぐりかき回し、放射状にたどり、中心を叩く。
「あああああ!」
突きこまれる。肉が伸びる。鈍い痛みが広がり、身震いする。尾はズンズンと振動しながら容赦なく押しあげ、しだいに大きくなる直径で裏門を引き伸ばしてぬめりこんでくる。
「ふううう! はうううう!」
悲鳴をあげる口元に舌先が出入りし、少しずつ粘液を注がれる。ワルキューレはごぼりと大量に吐き出しては、はあはああえぐ。臀を貫く刺激が高まっていく。
(う、うそだ、私の尻が……こんなに開いて……あああ!)
尻だけではない。いつのまにか谷間の肉門も尾の挿入を深々と受け入れ、腰骨が外れそうなほど充填されて抜き差しされている。巻きつかれた両腿が抜き差しのたびに開き、淫猥な動きを披露している。
「は、ぐう、胸、だめ……!」
唾液を注ぎに注がれた乳首は、ふやけて剥けてしまうのではというほど扱かれ、つままれ、こすられている。乳房の上下をぎりぎり締めあげられ、高くくびりだされた乳肉を、ときおり尾が鞭のようにひっぱたく。火照った実りがふるふると揺れる。
『いいぞ、淫らな姿だ、そのまま快楽にのたうちまわるがいい。そのエンマコンダたちは疲れを知らぬ。激しい責めを幾らでも続けてくれるぞ』
「は、ああ、そんな、ああああ!」
『このままお前が力尽きるまで楽しむつもりだ。それとも今、私に許しを乞うというのであれば、考えてやらなくもないがな』
「は、ああ、誰が、お前になど……ふうう、はああ、ふぐうう!」
『では、力尽きるまで絶頂を繰り返すがいい。ここで我が慈悲を拒んだ報いは、いずれ体で十二分に思い知ることになるだろう、さあ……またいけ。気をやってみだらに悶えるのだ!』
「ひ、いや、あああ、うあああああ!」
紫色のたいまつに照らされるなか、ワルキューレは五体の大蛇に巻きつかれ、尾を舌を突きこまれ、尽きることのない淫らな唾液を注ぎこまれて、粘液におおわれた体をのた打ち回らせた。
「ああ、くう、いく……ああ、またイクうう!」
(あ、ああ、とまらない……誰か助けて……ああ、神よ!)
――水晶を通して、ゾウナは密室のすべてを眺めている。美しい唇の両端を、残忍な満足と、そしてさらなる期待に吊り上げる。
「神の子よ……この闇の中で、お前は陥ちるのだ。生まれ変わらせてやろう。もうすぐ、もうすぐだ……」
第2話 完
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