【1】邂逅、そして・・・待ち構える罠



(3)


水沢の部屋は豪華な2LDKで、大学生の1人暮らしにしては正直大きすぎる部屋だった。
通されたリビングにある大きな窓からは、少し離れたビジネス街のネオンが夜景に彩りを添えて美しく輝いている。
部屋にある調度品は派手さはなく、無機質にならない程度に物が置いてあるような感じで、全体的にさっぱりした印象を優希は感じた。
そうして室内を観察していると、水沢は既に用意をしていたのだろう。手馴れた手つきで紅茶を用意すると2人にソファをすすめ、自分も向かい合うように座った。

「ちょうど良い茶葉が手に入ったところなんですよ。この紅茶は僕のお気に入りなんです、さぁ、温かいうちに、どうぞ」

そう言って美味しそうに自分も紅茶に口をつける。それにつられる様に、2人も紅茶に口をつけた。確かに、独特な甘みを感じる個性的な紅茶で、肩の力がすーっと抜けるような心地よさを感じた。

「さて、それで先生がご一緒に来られたということは・・・・・・見られてしまったのかい、千里?」
「はっ・・・はい」

水沢は、それまでの柔和な表情からスッと目を細め、どこか威圧的な雰囲気を千里に放った。だが、それも一瞬だった。

「・・・・・・それで、橘先生としては、どうせよと? 僕たち恋人同士で愛し合ってるだけで、何も後ろめたい事はないですよ?」

水沢が一転して苦笑いを浮かべ優希に尋ねてくる。

「べ、べつに私は別れろっというつもりはありません。ただ・・・ただ、もう少し分別をつけてあげて欲しいと・・・」
「千里は喜んでいるのに?」

優希は予想外に自信満々な水沢の態度に戸惑い隠せずにいた。その為、ついつい口調が弱くなってしまう。そんな優希の言葉を遮るようにピシャリッと相手は言葉を被せてくる。

「そっ、そんな訳は・・・」
「僕は一度も千里に強制をしてませんよ。それに先生も見たでしょう? 千里は嫌がるどころが感じて濡らしているんですよ・・・ねぇ? 千里」

そういうと水沢は千里の手を取り立たせた。そして自分の前に立たせると、制服のスカートを優希に見えるようにめくり上げた。

「あっ、いやっ・・・」

慌てて手でスカートを押さえようとするが、背後から鋭く名前を呼ばれると、その手はおずおずと引っ込んだ。
水沢は小さな銀色の鍵を取り出すと、手慣れた仕草で千里の貞操帯をロックしていた南京錠を取り外す。
そうして、おもむろに貞操帯を千里の股間からずり下げた。ゴポッっとまるでお漏らしをしたかのような大量の愛液と共に、2本の禍々しい黒いバイブレーターが千里の体内から姿を表した。

「あっ、あ、あ、あぁ・・・・・・・・・は、はずかしい」
「ほら、見てやってください、橘先生。千里は、こうしている間にもグッショリと濡らして感じていたんです」

そう言って、目の前のテーブルに貞操帯を置く。そびえ立つ2本のバイブレーター・・・それは頭上のライトの光を浴び、千里の体液でヌラヌラと妖しく濡れ光る・・・その光景に、優希は気圧されたように目を見開き、無意識に生唾を飲み込んだ。
貞操帯の内側には更に、ちょうどクリトリスのある位置に2つの突起が付いており、そちらも別のモーターで刺激する仕掛けのようであった。

「・・・千里ちゃん・・・こんな・・・」
「千里はマゾなんですよ。こうして僕の前に立っただけで、はしたなく涎をたらすね」

水沢は千里を抱き寄せると、ショックを受けた優希に見せ付けるように、水沢は千里の秘部を指で押し広げる。そして、千里の首筋に舌を這わし、乳房を荒々しく揉み立てた。
そのたびに、千里は熱い吐息を吐き、切なそうに声を漏らし、その瞳はみるみる潤んでいく。
その姿に、優希は戸惑い、混乱していた。ショックで身体が痺れたように動かず、目の前で行われる痴態から目線を逸らせる事も出来ずにした。
そして、頬が熱を帯びたように熱くなり、知らず知らずのうちに呼吸が早くなっていく。

「そして、橘先生・・・貴女もそんなマゾの素質がありますよ」
「・・・なっ?!」

そんな優希の反応を見透かすように、水沢は意地の悪い笑みを浮かべ自信満々に言い切る。
その言葉に衝撃を受け、優希は現実に戻された。

「そっ、そんな・・・何をいってるの!!」

慌てて立ちあがろうとして、優希は自分の膝が力が入らずガクガク震えるのに、ようやく気が付いた。

「えっ?・・・・・・まさか・・・・・・貴方・・・」

優希は立ち上がったものの、よろけてソファの背に手をつく。

「折角来たんですから、ゆっくりしていってください、橘先生。ちょうど今日はパーティを開く予定だったんですから、飛び入り参加を歓迎しますよ」

ぼやけ始める優希の視界の中で、水沢が相変わらずニッコリと微笑む、だが、その瞳・・・その奥に宿す冷たい光は・・・そう、人ではなく、まるでモノを見ているような目なのだと、優希は、やっと理解し鳥肌を立てた。
そして、その水沢の言葉が合図だったのだろう、別室のドアがガチャリと開き、3人の男たちがリビングに入ってきた。

「チッ・・・またっく、待ちくたびれたぜ!」
「ヒヒヒッ、まぁまぁ、そのお陰で嬉しい飛び入りが増えたじゃねぇスか」
「おぉ、噂の橘 優希も参加となれば、いい画が取れそうじゃない」

その男たちの事は千里も知らなかったのだろう。
ビクッと肩を震わせ、そして彼らの顔を見て、愕然とした。

「えっ・・・そんな・・・この人達は・・・」
「ふふふ、そうだよ。初めて会った時に千里にチョッカイを出してた人たちだよ」

水沢は、そんな千里の反応を面白そうにしつつ、愛撫の手を緩めない。

「千里を俺たちにも楽しませろって五月蠅くってね。だから、今日はみんなで楽しもうと思ってたんだけど・・・素敵な手土産をありがとうね、千里」

その言葉に千里は愕然とした様子だった。だが、それもすぐに水沢に愛撫によって頭の芯が真っ白に痺れるような快楽を与えられると、徐々に押し流されていった。


優希は猛烈な眠気に襲われていた。頭がふらふらし、足元がおぼつかない。
眠気を振り払うように頭を振るが、足がふらついてソファに倒れこみそうになる。

「大丈夫かセンセ〜ぇ、ヒヒヒッ」
「さ、さわらないで・・・」
「お〜っと、危ないぜセンセよぉ」

フラフラと足元がおぼつかない優希のスラリとした身体を髭面の大男が薄笑いを浮かべながら背後から抱き止めた。
そのしっとりと柔らかく、弾力のある優希の肉付きに、ニヤニヤと口元をほころばせる。

「うへぇ、でけえなぁ」

両手で濃紺のワイシャツの上から荒らしく胸を揺さぶると、更に高ぶった声を放った。

「くっ・・・や、やめ・・・やめなさいッ」

優希は意識が沈みかけ、膝が落ちそうになるのを、必死に踏みとどまっていた。
そんな彼女の様子に残りの男たちも下碑た笑いを浮かべ迫ってくる。
彼らは、すっかり噂の橘 優希を陥落したと思いこんでいたのだ。

「やめなさい・・・って・・・いってるでしょうがぁ!」

だが、その叫び声と共に事態は一転した。
優希の正面にたっていたサングラスをかけた男が、股間を抑え苦悶の声をあげ崩れ落ちた。
更に次の瞬間には背後にいた大男の身体が軽々と宙に舞っていた。そして、そのまま残ったバンダナの小男を巻きこむように床に叩きつけられる。

「ぐッ・・・うぅぅぅ・・・」

すかさず床に這った3人の腹部に優希の追いうちの蹴りが振り下ろされ、男たちはそれぞれ泡をふいて気を失った。

パチパチパチ・・・

惨状となったリビングに乾いた拍手が鳴り響く。

「いやぁ、驚きました。流石は橘 優希・・・と言ったところでしょうか」

優希が振り向くと、相変わらず笑みを浮かべた水沢が立っていた。

「・・・あんたのそのニヤケ面にも一発入れてあげるわ」

気を奮い立たせるように自分の頬を張ると、優希は一気に間合いを詰めた。
そして、まるでスキだらけの水沢の顔面目掛けて掌底を放つ。
だが、その必殺の一撃は空を切った。

「・・・えっ?・・・なに!!」
「・・・残念でしたね」

その場でしゃがむ様に態勢を低くし、優希の必殺の一撃を回避すると、素早く、そして鋭い足払いが繰り出された。
体調が万全な優希なら回避できただろう。だが、今の優希の肢体では、その一撃をかわす事が出来なかった。足を見事に刈られ、肩から床に叩きつけられる。
だが、日ごろの鍛錬の成果で、身体が反射的に受け身を取り、大したダメージは受けずにすんだ。
しかし、すかさず打ち下ろされる水沢の蹴りを避ける事までは出来なかった。
腹部に強烈な衝撃を受けた。その一撃で急速に気が遠くなっていく・・・

「たっぷり楽しませてあげますよ・・・優希」

水沢の声が遠くのもののように聴きながら、優希は自身の意識が闇の中に沈んでいくのを、どうすることもできなかった・・・


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