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			 【2話】悦獄、そして・・・選択なき決断 
			 
			 
			 
			(3) 
			 
			ソファなどの応接セットは壁際に移され、1脚だけリビングの中央に置かれた椅子に、優希は座らされた。 
			室内の照明は暗く落とされ、正面から優希の周囲だけくっきりと闇から浮き立たせるかのようにスポットライトで照らされている。 
			その照明の前では、バンダナ男がいそいそと三脚を設置し、カメラ撮影の用意をしていた。 
			優希は、「裸ではなんですから」と水沢からショーツと濃紺のワイシャツを着ることは許された。濃紺のワイシャツからスラリとのび、照明に白く輝く素足が、なんとも艶かしい。 
			流石に、その格好は恥ずかしいのだろう、襟元と裾に手をやり、少しでも男たちの視線から素肌を隠そうとするが、それがかえって男たちの獣欲を刺激した。 
			逆光で男たちの顔はハッキリと見えないが、その顔には野卑た笑みが浮かんでいるのが、彼女には容易に想像できた。せめてもの反抗の意思として、キッと正面を見据えているが、恥辱に頬が赤くなるのはどうする事も出来なかった。 
			 
			「それでは、始めましょうか」 
			 
			カメラの用意が終えると、水沢が声をかけてきた。その声は優しげな口調に戻ってはいたが、どこか淡々としていた。 
			 
			「返答は明瞭に『はい』で答えてください」 
			「・・・はい・・・」 
			 
			「私たちの満足できる返答が出来ない場合は中止して、優希には帰ってもらいます、よいですね?」 
			「・・・はい」 
			 
			その水沢の言葉は、上手く返答しなければと、優希の焦燥を煽るものだった。 
			 
			「では、再び貴女に聞きましょう。我々にお願いがあるのでしょう?」 
			「・・・千里ちゃんの・・・代わりを・・・させて下さい」 
			 
			「代わりとは、なんです?」 
			「それは・・・」 
			 
			「しっかり答えて下さい。あとで見て、誰にでもわかるようにね。さぁ、どうされたいんです?」 
			「貴方達のお相手を・・・させて・・・ください・・・」 
			 
			恥辱に顔を真っ赤にさせ、答える優希。 
			そんな優希の反応を、大した反応もせず、水沢は優しい口調でゆっくりと、それでいて優希に落ち着いて考えさせる暇を与えずに、絶妙の間合いで次々と彼女に問いかける。 
			 
			「お相手とは、どんな事をするのですか?」 
			「・・・セッ、セックス・・・です・・・」 
			 
			「普通のセックスですか?」 
			「・・・・・・」 
			 
			その質問に、優希は恥辱に唇をキツク噛む。 
			 
			「もう一度だけ聞きますね。それは普通のセックスですか?」 
			 
			だが、質問は止まらず、再び問いかけられる。その声が、僅かにトーンが下がったのを感じた。 
			 
			「・・・いいえ・・・縛られたりする・・・SMのようなセックスです・・・」 
			 
			言い終えると、悔し涙に潤ませた瞳で、男たちを睨みつける。だが、質問は容赦なく次々と続けられた。 
			 
			「我々はそういうのに興味のある女性しか相手にしないのですが、貴女は縛られるのが好きですか?」 
			「・・・・・・・・・・・・す・・・すきです」 
			 
			優希は、拳をギュッと握りしめ震わせながら、必死の思いで絞り出すように言葉をつむいだ。 
			 
			「貴女は縛られるのが大好きなんですか?」 
			「はい・・・・・・大好きです・・・」 
			 
			「複数の男たちに犯されるようにされるのも大好きですか?」 
			「はい・・・・・・大好きです・・・・・・」 
			 
			「奴隷のように扱われたいですか?」 
			「はい・・・奴隷のように扱って・・・ください」 
			 
			「いっぱい虐められたいですか?」 
			「はい・・・優希を、いっぱい・・・虐めてください」 
			 
			「奴隷は絶対服従しなければいけませんよ? どんな命令も従いますか?」 
			「はい、命令に従います」 
			 
			千里の身代わりをする為に、答える屈辱的な質問に対し、必死に相手の機嫌を損ねぬように、混濁した思考で必死に答える。だが、ゆっくり考える暇も与えず次々とくる質問に、焦れば焦るほどるほど、優希の思考はどんどん先細りしていく。その為、水沢によって上手く返答を誘導されている事に、優希には気づく余裕すらなかった。 
			 
			「それで、今までの質問をまとめると、こうなります。ちゃんとつかえずにカメラに向かって言ってくだい。ちゃんと言う事が出来れば、僕たちは貴女のお願いを聞きいれますよ」 
			 
			そういって水沢は一度、優希の傍まで歩いてくると、その言葉を優希の耳元に吹き込んだ。 
			 
			「そ、そんな・・・」 
			「どうしましたか? 今、言った事をもう一度、言うだけですが・・・先ほどの言葉は、皆、ウソでしたか?」 
			 
			水沢の言葉に、泣きたい気持ちになる。 
			だが、ソファで横たわる千里の姿を目にすると、キッとカメラに睨みつけるように、屈辱の言葉を口にした。 
			 
			「・・・私、橘 優希は、水沢様たちとSMセックスがしたいです・・・私は縛られるのが大好きで、犯されるように、奴隷のように扱われたいです・・・どんなご命令にも従いますから・・・どうか・・・どうか奴隷に・・・してください・・・」 
			 
			絞り出すように言い終えると、あまりの悔しさと恥ずかしさに見尻に浮かんだ涙を、ワイシャツの袖で必死に拭う。 
			 
			「・・・今のではダメです。もう一度お願いします」 
			「・・・えっ?」 
			 
			だが、そんな優希に、水沢の言葉が冷や水をかぶせた。 
			 
			「そんな怖い顔されても、とてもお願いされているように思えません。それに、もっとちゃんと聞こえるように明確に、スラスラと言って下さい」 
			「そっ、そんなこと・・・」 
			「・・・やはり、できませんよね」 
			 
			そう言って苦笑いを浮かべると、水沢はカメラの電源を切ろうと指を伸ばす。 
			 
			「まっ、まって!」 
			 
			慌てて、静止する優希。 
			 
			「・・・まって?」 
			「まっ・・・まって下さい」 
			 
			落胆したように嘆息する水沢に、優希は慌てて言い直す。 
			 
			「では、撮りなおしますので、しっかりお願いしますね」 
			「・・・はい」 
			 
			そうして再び、屈辱的なセリフを言わされる。 
			 
			「・・・・・・私・・・橘 優希は、水沢様たちとSMセックスがしたいです・・・私は縛られるのが大好きで、犯されるように、奴隷のように扱われたいです・・・どんなご命令にも従いますから・・・どうか奴隷に・・・してください・・・」 
			 
			だが、なかなか水沢は満足せず、細かい修正を加えては、何度も何度もリテイクが繰り返された。 
			そして、何十回目になるだろうか、ようやく水沢のOKがおりた。 
			 
			「・・・私、橘 優希は、水沢様たちにSM調教を受けさせてほしいです・・・私は縛られるのを考えただけでオ×ンコを濡らすような淫乱マゾ女です・・・どうか・・・優希の穴という穴を犯し、奴隷のように貶めて下さい・・・優希は、どんなご命令にも従い、穴という穴を使いご奉仕いたします・・・どうか優希をご主人様の奴隷にして下さい・・・よろしくお願い致します」 
			「はい、喜んで、よろしくお願いしますね、優希」 
			 
			すると、それまで冷たい目で見つめていた水沢が、優希が言い終わった途端に一転してニッコリを微笑み、「よく頑張りましたね」と優しく声をかけてきたのであった。 
			その言葉で、張りつめた気持ちが緩んでホッとしたのだろう、緊張から解放さたのと、やり遂げた達成感・・・そして、それを褒めてもらえた事に、疲れきった優希の思考に暖かいモノが流れ込んだ様で、自然と涙が頬を伝った。 
			 
			だが、これから、自らの身にどんな事が降りかかるのか、彼女は知る由もなかった・・・ 
			
			
  
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