10


「そら、今度は右足だ。いい顔、見せてくれよっ」
 そのかけ声とともに、右足の枷がジリジリと引き上げられていく。必死にこらえようとする右足の筋肉が激しく痙攣し、内腿がガクガクと震えて女の抵抗を示している。だが、機械で巻き上げられていく鎖への抵抗は無駄なことなのは明らかだった。
「う……ああっ」
 女のうめきと同時に、ブルブルと震える右足のつま先が浮いた。一度均衡が破れるとあとはあっという間だった。
「へへへっ──ご開帳──っ」
 女の足はすでに腰とほぼ同じ高さにまで持ち上げられ、腰を前に突き出したような姿勢を強要されている。足首が下腹部のすぐ前にくる位置に固定された姿勢は、あぐら縛りなどと呼ばれる拘束にそっくりだった。
 ──ああっ、こ、こんな姿勢──っ。
 まるであぐらをかいたまま身体を固定され、倒されたような姿勢。両腿は大きく広げられたままなので、女性の羞恥の部分どころかお尻の恥ずかしい穴までもがさらされてしまっている。
「ひゃっほう、丸見えだぜえっ」
 さらに、無理な姿勢で吊られているために足首や膝の痛みがひどい。首と腕の力で肩関節にこれ以上負担がかからないように体重を分散させてはいるが、長くは持たないだろう。羞恥と苦痛とをこらえながらエミリーの表情に恐怖が浮かんできているのを、男達はニヤニヤと観察している。
 できることなら誰もいないところに走り去り、物陰に隠れて泣きじゃくりたかった。先ほどまでならともかく、快楽に溶け落ちた官能のありさまを見られるのはあまりにつらく、情けなかった。
 この卑劣な男達によって呼び起こされた官能の波はまだ体の奥で反響を続けている。開いた淫唇、濡れそぼった秘肉をさらけ出されてしまった女刑事は前を見ることもできずに顔をそむけながらも身体をふるわせるのだ。
「う──ううっ──」
 気弱な声はあげたくなかった。せっかく気力を奮い起こして立てなおした心がグズグズと崩れていってしまいそうだ。だが、身動きすらままならぬ状態では自分を鼓舞することすら難しかった。
 男達がどこからか小型の投光機を持ちだし、スイッチを入れる。まともに恥ずかしい部分に光があてられる感覚は肌を火であぶられるような灼熱感だった。
「はははははっ──ヒクヒク動いてやがるぜっ」
「けっこういい色合いじゃねえか? 立派な上つきじゃねえか」
 男達の卑猥な言葉に耳をふさぐこともできないエミリーは唇をかみしめてこらえるが、すぐに悲鳴をあげることになった。男達が敏感な部分に触れてきたのだった。その瞬間、肉扉がはじけたように、中に含んでいた蜜が流れ出す。
「ああっ、いやあっ」
 熱い液体が尻肉に流れていく感触は投光機のライトの光りの前で、男たちにもさらされている。身も世もなく顔をそむけて身体をこわばらせる。
「ふひゃひゃはははっ。垂れてるぜえ、トローリってなあっ」
「どうしたんだい、そんなにモノ欲しそうにヨダレ垂らしてよおっ」
 何を言われても、今のエミリーには耐えるしかない。快楽に火がついたままの、いや、さらに燃え盛りつつある身体を前にして視界が暗くなるほどの屈辱を感じていた。

「くくくっ──どんな気分だい、刑事さんよお」
「こんな立派なカラダを見せびらかせて、嬉しいだろう?」
 勝手なことを言いながら逃げることのできない女の美肉に手を這わせる男達。肩に負担がかかることを恐れて身動きもできないカラダを存分にいじりまわしていく。
「やっやめなさいっ……やめなさいってばっ」
 すでに火をつけられていた体はみるみるうちに悦楽の火勢をあおられて、内側から燃えあがっていく。上ずった声で制止の声をあげる女刑事だったが、男達は鼻で笑うだけだ。
「だれがやめるかって、なあ?」
「そうそう、何もかも丸出しで気取ったって、しょうがないぜ、刑事さん」
 そう言われると言葉が出ない。あぐら縛りのまま転がされたような恥ずかしい姿勢は、それだけで女の心まで拘束しているようだった。歯をハチガチ鳴らして屈辱に震える女捜査官の股間は投光機の光りに照らされ、いっそういやらしくぬめ光っているのだ。
「んんっ……」
 一度はヒリつく熱さから開放された乳首が、ふたたび熱をもってそそり立っていた。唇だ。あの魔的な効果を発揮する唇と舌が、エミリーの肌を這いまわっていた。内側からみっしりと肌をおしあげる弾力を楽しむかのようについばみ、ときに甘噛みするその口はあまりに巧妙で、性体験から身を遠ざけていた女刑事は対応の術を知らない。
「う……くうっ……」
 その唇は乳房の丘の外周、重々しくそびえる丘の境界の凹みを執拗になぞると脇腹に移動した。乳房とはまた違う感覚に女体がせつなげに震える。
「へへへっ……刑事さん、よっぽど『口』がお気に入りのようだな」
 からかわれても反論する余裕がなかった。『口』だけでなく数人の男がそれぞれのテクニックを駆使して豊かな、はりつめた女体を嬲っているのだ。秘裂のぬめりもとどめることができず、ジクジクと湧き上がる蜜は早くも尻にまで垂れていた。
「おうおう、洪水じゃねえか、刑事さん。そんなに嬉しいかい?」
「ビラビラもヒクヒク動いて喜んでいるぜえ」
 そんなことはないと反論したかったが、否定できないないことはエミリー自身が一番よく知っている。一度快楽の前に屈した女体は十分に立ち直る時間すら与えられずに、再び淫虐ないたぶりをうけているのだ。男達の手が触れるたびに身体に電流が走り、指が肌をなぞり、舌が柔肌をなめずるたびに快感のさざなみが全身に広がっていく。
 よく鍛えられたアスリートの肉体は、わずかな間に淫らな肉人形のものにかわっていた。女の肉体に潜む魔性を思い知らされた気分だった。
「あ、ああっ……いやあっ──」
 男達の手が、今度こそ無力になりはてた女の体を弄んでいる。無理な姿勢に身体をおりまげられたまま、女は柱を背に抱かされたまま悶える。ミルクを流したように城言といわれる肌は紅潮し、ピンクがかったものになり全身に浮かぶ汗とともに淫靡な眺めを演出していた。
 柔肌をなめしゃぶる音。ぴたぴたと尻肉を叩く掌の音。そして、その刺激に身体をこわばらせ、身もだえする女の喘ぎがクローズアップされている。男達は相談するまでもなく分担して女刑事の身体を辱めている。
 髪と首筋、そして耳を嬲るもの。乳房と脇腹にこだわるもの。そして、内腿と股間に顔をうずめるもの。尻肉と、その狭間の隠されたすぼまりに執着を示すもの。
 どの男も女の急所を心得ているようで、そのやり口は手際よく鮮やかだった。身体の中に眠っていた悦楽の鉱脈を知り尽くしているかのように的確にツボを抑えた攻撃をしかけてくる。
 ──ああんっ、こんな──っ。
 中でも、あの乳房を這い回る口と股間に陣取る男は別格だった。すでに熱く湿った秘肉を性急に嬲ることはせず、淫唇の周囲から、陰阜からじわじわと追いつめるようにして刺激してくるのだ。
 下腹部にふっくらと盛り上がる恥丘を飾る繊毛を指で優しく撫でたかと思えば、秘裂の周囲の肉に指をあてて肉門を開閉してみたりと、いやらしくも緩慢な、じれったくなるような動きだ。
「ひいっ」
 かすかに口を空けた秘洞に息を吹き込まれた。かすかな擦過音が羞恥心の泉に大きな波紋を広げた。その周囲の粘膜にからむ蜜液がこらえきれずに滴となって流れ落ちるの感触が熱い火箸のように女の心をえぐる。
 敏感な突起の周辺の肌と繊毛をつままれ、クニクニといじりまわされる。敏感な部分には直接の刺激がないのが救いだったが、鋭さのないだけに、じわじわと牝肉を蕩かしていくことにエミリーは気付いていなかった。
 ヌチュッ──。
 男の舌が秘肉の狭間に突き刺さった瞬間、エミリーの全身に緊張が走った。中にたっぷりと蜜の入った果実が割られ、粘度の高い花蜜がこぼれる。男の舌は筒状に丸められていて、膣道から淫蜜をかき出すかのように出し入れした。
「あふうっ……やめてっ、やめてえっ」
 男は一転して激しい責めを開始し、すでに官能のとがりきった女体はひとたまりもなく快楽の奔流に押し流されていく。少しでも男達から身を遠ざけようとするかのように身体がうねり揺れるが実際にはわずか数センチのことで、男達はむしろその抵抗を楽しんでいるのだった。
 たわわに実った半球状の乳房が揺れ、腕は苦痛をこらえながらも柱に身体を引き付ける。切なげな喘ぎは火のように熱く、真っ赤に染まった頬のままで唇は苦しげに歪んでいた。
 ギチギチッ──。
 女が身動きするたびに、縄や鎖が鳴る。そのたびに少しずつ背中がすべり、肩への負担が大きくなっていくのだ。首と腕の力で抑えてはいるが、気を抜けばひどいことになるだろう。
 足首と膝の痛みもひどい。下腹部の前で交差する足首に下半身の重量がかかり、それを不自然な姿勢で支えている膝関節にも無理な力がかかっていた。女捜査官の体力を徹底的に搾り取ろうとする、男達の巧妙な責めなのだった。
「つらいか? ちょっとだけ楽にしてやるぜ」
 全身を汗にまみれさせながらも怯える女刑事の腰の下に何かがあてられた。クッションらしい。これで当面肩関節の心配はいらなくなったが、腰を揺らす自由すらも奪われてしまったことに彼女は気付いていなかった


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