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「いやっ──やめなさいっ! こ、これは、感じてるんじゃなくてっ──くうっ」
必死で言い募る女の声がつまった。乳房に何かが吸い付いたのだ。まるで吸盤のような吸着力の強い吸い付きが、ヌラヌラと粘液をまぶしながら乳房
の先端にむかって移動していく。
「くくくっ、どうした。──ヤツのおクチがお気に召したかな?」
異様な感触に身震いしながら言葉を飲み込む女刑事を、男たちはニヤニヤと淫靡な笑いを浮かべながら見守る。この女刑事がその見事な肉体のわりに性体験に乏しいのは先刻承知の上だ。徹底的に女の肉体のもろさと、そこに潜む快楽への道しるべを植えこんでやるつもりなのだった。
いっそう固く両腿を閉じ合わせようとするエミリーだったが、もはやそれがかなうことはなかった。それ以上男の手が入り込んでこないようにするのが精一杯なのだった。
──な、なに、この感触。今までの感覚とは全然違うっ──。
なめらかな肌の上を、プリプリと弾力に満ちたふくらみの上を、男の唇が移動していく。白い乳房の上に、唾液のあとを残しながら。その女肉を吸い込もうとするかのような吸い付きの中心部で、男の舌が音何の柔肌をなめしゃぶっているのだ。
「いやっ──こんなの、やめて──やめさせてっ」
エミリーの反応に、男達がドッと笑う。
「何がいやなんだか、言ってみな? それじゃあ、わからねえなあ」
女刑事の顔が恥辱に歪んだ。なぜいやなのかなど、言えるわけがないのだ。火を噴くような視線が男たちに注がれるが、その目の光も、例の男の唇が乳房の頂点に近付くにつれて狼狽の色にかわっていく。
──あっあっ──こ、こんな感触、いやあっ──そ、そんなっ、近付いてくる──!
身震いしながらもその淫らないたぶりに耐えようとする女の胸の先端で、唇の移動がゆっくりになった。乳輪にさしかかった唇は上下逆に、同じにうごめきながら乳輪の細かな凹凸の上を這いずっていく。その間も舌の動きはいやらしくも縦横無尽に女の肌を責めつづけているのだ。
「ひあっ──くうっ」
思わず色っぽい声を出してしまった女捜査官は必死で声をおし殺したが、出てしまった淫らな声音はもはや撮り返しがつかない。ついに淡く色づく乳輪に、固くなった乳首にさしかかった唇に恐れおののく刑事を、男達がからかうのだ。
「どうした、刑事さん、苦しいのかい?」
「苦しかったら言ってみな、オレ達が優しくさすってやるからよおっ」
異様な快感に女の象徴の一つを捕えられているエミリーにはその野卑なからかいに応える余裕はない。声を押し殺し、身をかすかに揺すってその感覚を少しでも逃がそうとするだけだ。
──ちゅぷっ──クリュッ──
「ひんっ──い、いたいっ──」
強力な吸引の中、歯が押し付けられてその間から乳首が吸い込まれたのだ。男の歯には力がこめられていないが、その前歯に乳首をはさみコリコリと転がすのだ。それでも、固く勃起した乳首にはヒリつくような痛みをもたらすのだ。
いや、口惜しいことにそれは痛みだけではない。強力な吸い込みにピチピチに張りきって敏感になっている乳首は、巧みな舌の動きの中で、明らかな快感を伝えてきていた。
狼狽する女の胸に押しつけられた男の唇の中でどのようなことが行われているのか、この場にいる誰もが知っている。そして、その効果を知らないのは哀れな虜囚ただ一人なのだった。
歯の間でコリコリと敏感な突起を転がされるかすかな痛み。これが押しつぶされたらどんな感覚が襲ってくるのだろうか。怯える突起の先端にザラリとした、しかしなめらかで強靭な粘膜がすりつけられる。舌だ。ついに男の舌が女の固くおきあがった突起をとらえたのだった。
──す、すごいっ。胸だけで、こんなに──っ。
認めたくはないが、それは紛れもなく快楽だった。すでに熱く、固くはれあがった桜色の乳首はジンジンと甘い快楽の波にとらわれ、乳房全体がさらにボリュームを増しているような気がする。
「どうした、静かになっちまったじゃねえか」
「くふうっ──はあ、はあ──」
真っ赤になってしまったエミリーは、もはや男たちの視線を受けとめることができない。目をそらし、肩をふるわせながらも歯をくいしばって声をおさえようとするのだった。
チロチロと先端だけを愛撫したかと思うと、こんどは舌全体が乳首をつつみくむようにして、側面からすりたてる。いまだかつてあじわったことのない巧みな愛撫に女刑事の抵抗はもろくも溶け崩れようとしていた。
その間も全身を嬲る男たちの手が休んでいるわけではない。腕を、脇腹を。そして太腿を、尻肉を。男たちの手が柔らかくもみほぐされつつある女刑事の身体をさぐっているのだ。
首筋を、脇腹を男の舌が這いまわっていた。腰のくびれを男の掌がなでまわしていた。ひとたび堰を切った快感の波のおしよせる様は荒れ狂う嵐の巻き起こすものを思わせた。
「くうっ──こ、こんな感覚にっ──」
だが、男たちは彼女が最後まで言葉をつむぐのを許さない。一人一人が色責めに熟達していることをうかがわせる巧妙さで、未経験の感覚におそれおののく女捜査官を翻弄するのだった。
──だめよっ。このままじゃ──。
自分の弱さに内心舌打ちしながら、呼吸を少しでもゆっくり、深くとろうとする。縛められ、男たちの手にとらわれた身体をゆすり、その感覚を逃そうとする。だが、その全てが無駄だった。肝心なところをがっちりと押さえ込まれた女刑事には、すでに逃げ道は残されていなかったのだ。
快感が、体の奥底にたまっていく。どこからか落ちてくる快楽の滴は少しずつ、確実に悦楽の水位を上げていく。自分の限界水位はどこなのだろう。エミリーは奈落の底を覗きこむような恐怖の中、そんなことを思うのだった。
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