(3)


 時計の針は6時を廻りクラブ活動を終えた生徒達が学園を後にして行く。
 帰途に着く生徒の影を長く映している光が図書準備室の中を赤く照らしていた。
 他には誰もいない部屋の中で窓から差し込む夕日をバックに抱き合う一組の男女がいる。
 おかっぱ頭の男は相手の女性よりわずかに背が高かった。
 日本人形を思わせる美しい顔立ちは男子用の制服を着ていなければ女子生徒と間違えてしまうかもしれない。

 「んん・・・はぁん・・・」

 熱いディープキスを交わしている女性から甘い吐息が漏れる。
 脱色したり染めたりしていない天然栗色の髪が夕日に照らされ金色に輝いている。
 愛する人とする抱擁に幸福を感じながらも夏美の心は複雑だった。
 夏美の脳裏に数分前の出来事が甦ってくる。



 夏美と歩は毎日放課後になると図書準備室で魔道の勉強をしていた。
 図書準備室は一般生徒は入室禁止なのだが図書委員長をしている香織の計らいで使わせてもらっていた。
 期末テスト中だというのに二人は今日も魔道について話をしていた。
 その話の途中で歩が小さな声で夏美に聞いた。

 「夏美さんは・・・処女だよね」

 歩は顔を赤らめて恥かしそうに夏美から視線をそらした。
 夏美も同じく体温が上昇するのを感じていた。
 そして大人になる時が来たのだと察していた。
 1ヶ月前に絶体絶命の危機を助けてくれた救世主で一族以外で初めて会う自分と同類の存在。
 夏美は初めて出会った時から歩に惹かれていた。
 その後も毎日のように夏美の知らない魔法や魔道の知識を教えてもらい恋愛に疎い夏美の心の中に歩が占める部分が次第に大きくなっていった。
 処女は好きな人にあげたい。
 初体験に関しては夏美も普通の女子高生と同じように考えていた。
 スライムと闘った時も1ヶ月前に魔族と闘った時も喪失寸前の一歩手前で守り通してきたものを失う時がやって来たのだ。
 夏美は小さく頷いくとそのまま上目遣いで歩の顔を見た。
 顔を真っ赤にしながら歩の表情を窺っている。
 歩が求めればいつでもOKを出す覚悟は出来ていた。
 しかし歩の口から出た言葉は夏美の期待を裏切るものだった。

 「夏美さんは処女を大事にしないと駄目だ。夏美さんは若いのに物凄い魔力を持っている。だけど過去にいた大魔道士と言われた人達のなかに処女喪失と同時に魔力を失った人達がたくさんいるんだ。夏美さんも魔力を失うとは限らないけど処女でいる事に超した事はない」

 夏美は一瞬思考が止まり歩の言葉の意味を理解するのに数分を要した。

 「私は魔力なんか・・・」
 (魔力なんか無くなっても歩君と一緒になれるなら・・・)

 夏美は自分の思いを伝えようとするがそれより先に歩が言った。

 「もし危険な目に会っても僕が絶対守り通してあげるよ」

 その言葉に夏美は思わず涙が溢れ出し歩に抱きついた。
 夏美は歩の背中に腕を廻すと強く抱き締めそれに答えるように歩も夏美を優しく抱き返した。

 夏美の舌が歩の口の中に入り込んできた。
 歩は積極的に迫ってくる夏美に戸惑いを感じながらも優しく迎え入れた。
 お互いの舌が絡み合い艶めかしい音が室内に響き渡る。
 零れ落ちる唾液が窓から差し込む淡い光に反射して妖しく輝いている。
 愛する者の感触を深く感じるために夏美は更に強く歩を抱き締めた。
 夏美にとってこれが2度目のキスであった。
 ファーストキスは1ヶ月前に見知らぬ男に奪われ無垢な唇は獣のような男の舌に蹂躪された。
 好きでもない男の唾液を飲まされ精液を流し込まれ夏美は自分が物凄く汚れきってしまったと絶望していた。
 しかし今日歩と繋がれる事によって少しずつ浄化されていくような気持ちがしていた。
 肌の感触を直に感じたくてYシャツのボタンを外そうとする夏美の手を歩は捕まえると上に持っていき夏美はバンザイをする格好をとらされた。
 歩は片手で夏美の両手首を持つと自由になったもう片方の手で夏美のブラウスのボタンを外していく。

 「あん・・・ふぅん・・・」

 夏美の唇から離れた歩の舌は頬を通って首筋に吸い付いていた。
 歩の優しい愛撫によって夏美の頭の中は既に真っ白になっていた。
 ブラウスの前をはだけた歩の片手はまだ少女から大人に変化しつつある胸を静かに揉み始めた。
 夏美の両手はまだ捉えられたままであったが恐怖感は全然なかった。
 夏美の心の中は歩の肌に触れて安心感に満ちていた。
 歩は夏美のスポーツブラを捲り上げると形のいいお椀型の乳房と苺のように可愛らしい乳首が現れた。
 体育会系の夏美の肌は小麦色に日焼けしているが日の当らない部分は白くてとても奇麗な肌をしていた。
 水着のラインで分かれている白色と褐色の対比が夏美の健康的な魅力を更に際立たせている。

 「あぁん!」

 歩は堅くなり前に突き出している夏美の乳首を軽く噛んだ。
 夏美の体中に乳首から電流が走り腰から崩れ落ちそうになる。
 体中の筋力が力を失い両手を掴んでもらっていなければ立っている事など出来なくなっていた。
 歩の舌は執拗に乳首を舐め続ける。
 もう何も考えられなくなっている夏美が下を見るといつのまにか歩の手によってスカートも脱がされてしまっていた。

 「あぁ!・・・だめ・・・見ないで・・・」

 夏美は動かない腿を閉じて腰を引く。
 しかし歩が夏美の両手を掴んでいる腕を高く上げると夏美の腰を屈めていられなくなり少しずつ前に突き出してくる。
 柄など全く入っていない夏美の白いパンティの秘所の部分にはもうすでに恥かしい染みが出来ていた。
 それどころか歩が足を入れて閉じた腿を開かせるとパンティの中に溜まっていた愛液が日焼けした肌を伝って滑り落ちてくる。
 歩は夏美の両手の拘束を解いたが夏美はもう腕を動かす事が出来なくなっていた。
 夏美の前にしゃがみこんだ歩は両手でパンティの端を掴んで少しずつ下ろしていく。
 一気に降ろされるより少しずつ脱がされる方が恥かしさは何倍にもなる。
 朦朧とした意識の中で夏美は少しずつ現れていく自分の陰毛を見つめていた。
 薄い陰毛が露になった後に既に開ききっている秘唇が歩の目の前に晒される。
 1ヶ月前に複数の男達に見られてしまったがその時と違いただ見られているだけで秘所が熱くなり愛液が溢れ出ているのが自分にも感じられた。

 「夏美さん、とても奇麗だよ」

 パンティを膝まで降ろした歩は夏美のクリトリスに口付けをした。
 夏美はオナニーをする時に主にクリトリスを弄るのだが自分の指では感じられない快感に身体を震わせる。

 「ああぁ・・・あぁん・・・もう、だめぇ・・・」

 体中を駆け巡る快楽の波に耐えられず夏美は歩に枝垂れかかった。
 そして夏美はそのまま気を失ってしまった。

 「ゴホンッ」

 図書準備室の入り口からわざとらしく咳込む声がする。
 歩が音をする方を見るとそこには顔を赤らめながら冷たい視線で歩を睨んでいる香織が立っていた。


 ジリリリリリーン

 期末テストの最終科目である数学の時間が終わった事を告げるベルが響き渡る。
 教室中には期末テストが終わった事に対する安堵感と明日から夏休みに入る事に対する喜びからすぐに騒がしくなる。
 そんな中夏美は急いで帰り支度をすると玄関に向けて走り出した。
 夏美は香織がいる3年生の学生棟を目指していた。
 聖桜学園は広大な敷地を持っていて学生の他学年とのトラブルをなくすために学年ごとに建物が違っているのである。

 昨日、歩との情事で気を失った夏美は気がつくと歩の姿は無くなっていた。
 歩の替りに図書準備室にいた香織はどことなく曇った表情をしていたような気がする。
 そして今日の期末テストに歩は欠席した。
 歩の事を考えると他の事は何も手がつかなくなり数学のテストはほとんど白紙のままであった。
 しかし今の夏美にはそんな事より昨日、香織と歩の間で何があったのかを聞く事が最優先であった。

 夏美は帰途につく生徒を押し退け玄関を目指して走る。
 そして玄関に向かう最後の角を曲がった時反対側から来る人にぶつかってしまった。

 「キャー」

 転んだ夏美がぶつかった相手を見るとその人物は夏美が嫌っている体育教師の響子だった。
 その体育教師はまだ若く昔格闘技をやっていたといわれているその身体は引き締まっていてとてもスタイルが良かった。

 「夏美さん、廊下を走ってはいけないと何度言ったらわかるのかしら」

 早く香織のところに行きたがっている夏美をわざと邪魔するかのように響子は他の生徒で一杯になっている玄関で説教を始めた。

 「どうもすみませんでした」

 夏美は響子から早く逃れるために仕方なく頭を下げた。
 しかし、いつも自分に反発している夏美が素直に謝ったのを見て響子は更に意地悪をしてみたくなっていた。

 「駄目よ。謝る時はもっと深く頭を下げなさい」

 自分が下手にでたのを見て強気に出た響子を睨みながら腰を直角に曲がるくらいに折って頭を下げた。
 響子の言う事を聞いて頭を下げるのは気に入らなかったが香織が帰ってしまう前に捕まえるためには仕方が無かった。
 自分が嫌っている相手に深々と頭を下げる屈辱に耐え頭を上げようとしたが背中を強い力で押されて状態を戻す事が出来ない。

 「夏美さんはまだ反省してないみたいだからちょっと折檻をして他の生徒の見せしめになってもらうわね」

 響子は左手を夏美の腰に廻し背中の上に圧し掛かる様にして夏美の動きを封じてしまった。

 「躾の悪い生徒にはお尻を叩いて反省してもらうわ」

 響子は嬉しそうに言うと夏美の短いスカートを捲り上げた。

 「イヤー!やめて下さい!」

 夏美に周りにはたくさんの生徒が集まっている。
 その生徒達にパンティを見られてしまっているのだ。
 夏美は何とか逃れよう身体を動かすが響子が次に取った行動によって夏美の動きは固まってしまった。
 響子はスカートを捲り上げただけでなく夏美のパンティを掴むと膝の当たりまで降ろしてしまったのだ。

 「おおー」
 「キャー!やめて!見ないでぇ!」

 夏美の視界にも集まっている生徒達の顔が見えるが男子生徒達は好色そうな顔をし女子生徒も興味深そうに夏美のお尻を見ている。
 夏美が本気を出してこの体勢から逃れようとすれば出来たのかもしれないがその為には力を出すために足を開いて膝を落とさなければならない。
 しかしそんな事をすれば今はお尻しか見られてないが足を開いた時に秘所まで見られてしまうかもしれない。
 結局この屈辱的な体勢から逃れられなくなった夏美はもはや響子のなすがままであった。
 日焼けしてない白いお尻を軽く撫でた後、響子は思いっきり平手で叩き出した。
 しなやかにスナップの効いた平手打ちは夏美のお尻に激痛を与えた。

 「ギャー・・・イタッ・・・キャッ・・・」

 叩かれる度に夏美は悲鳴を上げる。
 それが面白いのか響子の平手はさらに強くなる。
 夏美の白いお尻はすぐに真っ赤になってしまった。
 そして感覚が鈍くなったお尻を叩かれると今度は痛みとは違う感覚が夏美の身体に走りはじめる。
 夏美が秘所を見られない様に閉じている腿のガードの力も次第に弱くなってきている。

 「先生、すみませんでした。もうしません。もう先生の言う事には逆らいません。だから許して下さい」

 ついに我慢できなくなって夏美は響子に謝った。
 夏美の泣きそうな声を聞いて満足した響子も平手打ちを止めた。

 「いいわね夏美さん、今度このようなことがあったらこれだけではすみませんからね。今度あった時はこうしますよ」

 響子は両手で夏美のお尻を掴むと大きく広げて生徒達にお尻の穴を晒してしまった。

 「イヤー!」

 叫び声を上げながら夏美はその場に崩れ落ちた。


 夏美が3年生の学年棟に着いた時もう生徒の姿はほとんどなかった。
 香織ももう帰ったのだろうと思いながら階段を上っていくと女性の声がしてくる。
 階段を上って廊下に出るとそこには香織と数人の女子生徒がいた。

 「香織さーん」

 夏美は香織の元へ走っていった。
 香織の近くに来てその場の緊張した雰囲気を感じ取った。
 香織と向かい合っている女子生徒の間にピリピリとした空気が滞っている。

 「あら、香織。男を咥えるのを止めたと思ったら今度は同性に手を出すようになったの?」

 女子生徒達の中心にいるブロンドヘアーの生意気そうな顔をした生徒が香織を見下したような口振りで話しかける。
 夏美はこの女性に見覚えがあった。
 どこであったのか夏美が考えていると

 「麗華さん、このサルみたいな小娘は何者なの?」

 周りにいた生徒が夏美を馬鹿にする。
 もちろん頭にきた夏美は怒鳴り返そうとしたが香織が手で制した。
 麗華。
 この名前を聞いて相手が何者なのかやっと気付いた。
 この女生徒は聖桜学園の生徒会長だった。
 そして麗華の周りにいる取り巻き達は生徒会の役員たちであった。


 「香織、あなた柔道部や相撲部の部長もやったんでしょ」

 麗華は相変わらず相手を馬鹿にしたように話している。

 「えー、あのブサイクなのと」
 「私だったらあんなのと死んでもやりたくないわ」

 周りの生徒達はわざとらしく囃し立てる。

 「それも中に出されたり、精液をおいしそうに飲んだんでしょ。あんた恥かしくないの」

 香織は顔を真っ赤にしながら麗華を睨み返している。
 屈辱に耐える香織の拳は物凄い力で握られていて小刻みに震えている。

 「信じられないわ、あんな男のものを飲むなんて」
 「本当、全く恥知らずな女だわ」

 香織がそのような男達に身体を汚された事情も知らないで皆大声で笑っている。
 香織の瞳に光る涙を見て夏美は我慢できずに麗華に殴り掛かろうとした。
 しかし麗華は避けようしないどころかポケットから1枚の写真を取り出した。

 「昨日、風紀委員から連絡があったの。学園内の立ち入り禁止区域に入り込んだ鼠を捕まえたって」

 麗華はそういうと持っていた写真を夏美の方に見せた。

 「!!」

 そこにはおかっぱ頭の美少年の姿が写っていた。
 しかもただ写っていた訳ではない。
 両手を鎖で繋がれ天井から吊るされている。
 服はところどころ切れていて破けた箇所から見える肌には血が滲んでいた。

 「ちょっとこの生徒についてあなた達に聞きたい事があるんだけど付き合ってもらえるわよね」

 麗華はそれだけ言うとこちらの返答は聞かずに歩いていった。
 香織と夏美には麗華の後を黙って着いていく事しか出来なかった。


→次へ

→前へ

→魔道士夏美のトップへ