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 さて、コレがなんだか解るかね?」
 軍服姿の男が持ち出してきたのは、手榴弾のような形のゴム製エアポンプに繋がった、細長い「風船=バルーン」だった。黒色の肉厚のゴムでできた「それ」は、雁首や節くれ立った血管を彫り込まれた「ペニス」だった。
「……やめなさい。クッ!」
 男はミレーヌの乳首の先端に、鋭く尖った鉗子を差し込むと、その先端の「銃口」を大きくこじ開けた。乳首を模した鳶色の人工皮膚が、ミチミチと無理矢理に拡げられていく。パックリと口を開けてしまったミレーヌの乳首に、男は「バルーンペニス」を詰め込んでしまう。
「本当は女性のアソコの拷問に使う膣圧計みたいなものだよ。くくくっ、今は乳圧計とでも呼ぼうか」
 男は、もう一方の乳房にも手際よく「バルーンペニス」を挿し込んでしまう。
「今、キミのオッパイは、内側も外側も一番固くなっている状態のハズだ」
 男はラグビーボール状に脹らみ切っているミレーヌの乳房の表面を撫でた。
「……だ、だから触らないでよ。この助平野郎」
 ミレーヌの両乳首からは、ブランと弧を描きエアポンプがチューブでぶら下がっていた。太いチューブをねじ込まれ、その周囲に引き延ばされて張り詰めている乳首が痛々しい。
シュコ、シュコ! ポコン、ポコン!!
 男がエアポンプを握りつぶし、乳房の芯を貫く「バルーンペニス」に空気を送りはじめる。
シュコ! ポコン!!
 ポンプが握りつぶされるたびに、乳房内の「バレル」に満ちた「バルーンペニス」が膨らんでいく。
「ウッ、クウっ!」
「これは、そこいらの産婦人科のモノとは圧がちがうんだ」
シュコ、シュゴ! ポコン、ボコン!!
 「バレル」は拳銃弾の経を越え、やがてライフル弾のそれを越えた。打ち出す液体硬化弾に回転を与えるためのライフリングの「ヒダ」が、膨らみ続ける「バルーンペニス」によって引き延ばされはじめる。
「くくくっ、トラックのジャッキ代わりにも使える代物だからな」
シュコ、シュゴ! ポコン、ボコン!!
(う、内側から壊される!!)。
 もう、乳房内の「バレル」が限界まで脹らみきっていた。今、ミレーヌの乳房内には、すさまじい内圧が掛かっている。精密射撃モードでカチカチに硬化しているラグビーボール状の乳房がビクビクブルブルと痙攣していた。
「オッ、オック……。クウウっ!」
 その圧力で、弧を描いてぶら下がっていたゴムチューブとエアポンプが、今はミレーヌの乳房から、真っ直ぐ前に突き出している。
「さて、この状態で、オマエのオッパイのモードを変えると、どんなコトがおきるのかな?」
 ニイッ、男はあの「かたち」で笑うと、コントロールパネルを操作する。
「アッ! アッ! アアッーっ!!」
 ミレーヌは、自分の乳房の中で小さな爆発が起こったように感じた。
プクンッ! ポコンッ!!
 太いゴムチューブに貫通され、大きなイチゴのサイズに膨らんでいた乳首の下で突然、乳うんがテニスボール大に弾け飛び出した。乳房内の「バレル」の硬化が解かれ、その孔に挿入された「バルーンペニス」が爆発的に急膨張していく。
「アヒィーッ! ア、ア、アア!!」
 ミレーヌは、たまらず眼を見開き大きな叫びを上げていた。感じないはずの「痛み」が眼の前で惨たらしく変形していく乳房からズキズキと感じられた。
(これはテレパシー!? テレパシーで「痛み」を送り込まれているの!?)。
 ありえない「痛み」の発生に、その感覚に翻弄されながらも、ミレーヌの「エージェント」の部分が推理を走らせる。
ポコンッ! ボコンボコンッ!!
 ミレーヌの乳房は、見る見るうちにバスケットボール大に膨れ上がっていく。
 イチゴ大の乳首の帽子に、テニスボール大の乳うんの頭部、バスケットボール大の胴体……。今や、ミレーヌの両乳房は、雪国の子供たちがつくる雪の人形・スノーマンのようだった。
「ヒクッ! ヒクヒクっ!」
 予測していなかった激痛の感覚に、ミレーヌは打ちのめされていた。どうしても眼の焦点が合わない。どうしてもカチカチと鳴る自分の歯を止めることができない……。
ブリッ、ブリブリブリッ!
「おっと!」
 乳首から「バルーンペニス」の尾部が「排泄」され始めるに至って、ようやく男は、ミレーヌの乳房のモード変更を中止した。
「ふむ、これはけっこう堪えたのかな?」
 バスケットボール大に膨張させられたミレーヌの乳房をさわりながら、ニイッと男が笑う、また、あのイヤな笑いの「かたち」だ。
「?」
 その笑いがスッと消えた。濃厚な気配が、室内に急に湧いたのだ。血と錆のニオイのする不吉な気配……。

「ワタシガ、ヤッタ……」
 音も立てず、尋問室に車椅子の女が現われた。
「アナタジャナイ。ワタシガヤッタ……」
 中世の貴婦人を思わせる血のように赤黒い色の古めかしいドレス。黒いベールで隠された顔。「死」の気配を漂わせる不吉な女。……彼女が気配の主だった。
 動力も付いていない車椅子は押す者も居ないのに、スルスルと床を滑るように吊り下げられたミレーヌへと移動する。
 「チッ、ジョアンナ。余計なコトを……」
 軍服姿の男は、「バルーンペニス」の空気を抜き、ズルリとミレーヌの乳房から引きずり出すと、車椅子の女のために場所を空けた。

「……ワタシガ、ヤッタノヨ」
 ジョアンナと呼ばれる車椅子の女は、空中にX字に張り付けられたミレーヌを、黒いベール越しに見上げて呟き続けた。


To Be Continued


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