■拷問機械■


「フム、あの娘でもためせと?」
 激しく明滅していたレーザームチと放電がやみ、いつの間にか吊された高嶺の傍らに、全身を金属装甲に覆われたアレイダが立っていた。言葉を交わさずネルヴァルと会話している。
ブン!
「あっ! 桜っ!?」
 空中に展開したホログラフモニターが映し出したのは、五姉妹の末の妹……、齢12歳にして博士号を持つ桜のあどけない姿である。
 ニコニコと何も知らずに笑っている桜の無事な姿に、高嶺は少し安心を覚える。しかし……。
「あの子は、まだ何も知らないのよ! 獅子堂と貴方たちとの関わりの事も!」
 銀色に輝くアレイダの顔面が、動くはずもないのに笑いの形に歪んだようだった。
「どうやら、オマエのウィークポイントはわかった」
 幼い妹の事を思い、一瞬でも動揺したことを高嶺は悔やむ。
「オマエが耐え続けるかぎり、あの娘には手を出さない事にしようではないか」
 どう取っても一方的な条件である。自決という切り札を封じられ、過酷な拷問に耐え続ければ高嶺の精神は疲弊し、やがて敵のなすがままになるだろう。
「それでは本格的に始めるとしよう」
 アレイダの手刀がボロボロになりながらも、高嶺の身体を隠していた衣服を完全に引き裂いた。
「うッ!」
 レーザームチのミミズ腫れと、放電責めによる火傷があちこちに点在するものの、その青白い裸身は剥きたてのゆで卵のようだった。全身を濡らす脂汗が、その「ぬめり」をさらに強調している。しかし、人工知能ネルヴァルにとっては、単に炭素生命体の生体反応にすぎないのだろう。
 後は、より効果的にその反応を誘導していけば良いのだ。
「スペシャリストの出番だ」
ブインっ! ブインブインっ!
 イオノクラフト特有の作動音を響かせ、一抱えほどのサイズの「医療用ドロイド」が現れた。各部に追加改造が施され毒々しいオーラを放っているが、なぜか皮肉に「赤十字のマーキング」がなされたままだった。
「こっ、こんなドロイドで……、な、なにを!?」
 無駄かつ無意味と知りつつ、あらわになった裸身を必死に捩って身を守ろうとする高嶺の目前で、改造「医療用ドロイド」の外装が展開する。
ガチャ! グバッ! カチャカチャ!
 まるで内蔵を吐き出すように変形するドロイドは、無数のコードやチューブを生き物のように蠢かせ、注射器や鉗子のマニュピレーターを大きく振り上げると、高嶺の裸身に覆いかぶさっていった。


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