俺の名は…




 『大戦』――そう呼ばれた時代があった。
 力と力のぶつかり合いは大地を削り、海を蒸発させ、大気を蝕んだ。
 だが、それでも人は戦い続け、戦う力を生み出し、衰退と発展、矛盾しながらも愚かな人々は進み続けた。
 そして、残ったのは暴力の支配と虐げられる弱者だけだった。

 軍事帝国『グレゴリオ』――
 大陸でも屈指の軍事力と有し機械産業を主にしており政治面では皇帝を頂点に貴族を中心とした支配制度がしかれた国家である。その領地の東部第2基地の一室。そこは石造りの堅牢な部屋。室内にはトロフィーや賞状、メダルと部屋の主を称える功績に飾ら革張りのソファーがおかれ黒塗りの机で初老の人物が執務に追われているが、その体から発する気配は猛々しく歴戦の勇士であることを感じさせる。
 コンコン――規則正しいノックが室内に響く
「入りたまえ」
 簡潔な声で返答する。
「失礼します。ファルゼ大佐」
 若い、いや幼いといっていい少女の声とともに軍服をまとった声のとおりのまだ幼さの残る緑掛かったショートヘアーの少女が入室してきた。
「定刻どおりか…まずは楽にしたまえ。アーシャ・L・ルフナ・スゥールド少尉」
「はっ!」
 少女は直立不動の姿勢を律儀に崩し敬礼をする。アーシャの年齢は15歳にもかかわらず少尉の階級を得ている理由は二つ、一つは彼女がただの軍人ではなく帝国4大貴族の一つLの称号をもつスゥールドの令嬢であること。そして、もう一つは彼女にその地位にたつだけの実力も備えているからである。
「君に来てもらった理由だが、まずはこの資料に目を通してくれ」
 アーシャは資料を受け取り目を通す。
「オリジナル『GEA』の保有者ですか?」
「その通りだ。君の任務は昨日確認された保有者に接触そして確保することだ」
「了解しました」
「今回の任務で全ての上限を取り払われている。必要なものがあればいつでも申請したまえ」
「はっ!では、早速準備に取り掛かります」
 少女はそう答え部屋を後にした。
「オリジナル『GEA』…必ずや手に入れてみせる」
 ぎゅっと力強くこぶしを握ったファルゼは窓の外に目を向けた。

 ★ ★ ★

 果てしない荒野『大戦』の傷痕があちこちに刻まれていた。
 陽炎浮かぶその地を長身痩躯の男はふらふらとした足取りで歩いていた。
 男は黒のシルクハット、黒のロングコートを羽織、黒の皮手袋に黒のロングブーツをはいていた。
「おっ…街かぁ〜これで4日ぶりのメシにありつける…」
 方向を街へと向けて歩き始めた。
 
 男が着いた街は木製の家屋が建ち並んではいたが活気は無く荒み絶望が街を満たしていた。
「しけてやがる……まぁ俺には関係ねぇ…そんなことよりもまずは食物だ」
 虚脱しながらも重い足取りで歩を進める。
「うん?この匂いは…食物!」
 男の動きは加速し匂いの元にたどり着く。扉を勢いよく開けると
「食物!!一番安くて早いヤツ!」
 その勢いのまま注文した。
「は、はいっ」
 注文を聞いたブラウン色の髪をポニーテールのウェイトレスは条件反射で返事をした。
「ふぅ」
 一息つきながら空いてる席に座り周りの席を見渡す。周りの席に座っているのは疲れきった動労者ばかりでいまいち覇気もない。
「あの、おまちどうさま…」
 おっかなびっくりとさらにのった小さなハンバーガーが一個乗っていた。
「おお、食物だ!むぐぅっ…うんめぇぇ、4日ぶりの食物…生きててよかった」
 一口かじるなり男は号泣し感慨に浸った。
「お客さんたびの人ですか?」
 ウェイトレスはびっくりしながらも好奇心から話しかけた。
「ああ」
「でも…近くの町から車でも2日はかかりますけど…」
「みたいだな…歩いてきたら死ぬかと思った」
 一口をたっぷりと粗食し楽しみながら男は久々に人との会話をした。
「あの…でも…早く町から離れたほうがいいですよ…」
「あん?なんでだ」
 さらに一口食べようとハンバーガーを食べようと手に取る。
 ガン――
「ごきげんよう諸君」
 軍服を着た小柄で頭の薄い中年が筋骨隆々の男を二人従え店内へと入ってきた。
「本日も偉大なるゴヨ・クー将軍への献上品を預かりにきみしたヨ〜」
 妙に甲高い耳につくいやな声が高らかに店内に響いた。
「あの…」
 ウェイトレスの少女は一歩前にでた。
「なんだネ〜」
「今月はもう、みんな苦しくてこれ以上は…」
 その言葉がいい終わらないうちに小柄な中年は首で両脇の男に合図をする。
「ふん」
 容赦ない拳が少女を殴り飛ばしハンバーガーをこの状況でも食べようとしていた男の席へと吹き飛ばしぶつかる。
「偉大なる将軍閣下の使いである私に意見をし様などとは女・子供とて容赦しませんヨ〜」
「おい」
 黒衣の男はゆらりと立ち上がり背中越しに顔だけを向けた。
「見ない顔だが…何かネ〜」
「その将軍てのはそんなに偉れぇ〜のか?」
「フン、当然だヨ〜なんといっても『GEA』の使い手なのですかラ〜」
 鼻息荒くまるで自分のことのように自慢した。
「そうかい『GEA』の使い手か、くくくく、ははははははははは」
 額に手を当てながら狂ったように笑い出す。
「な、何がおかしいのですカ〜」
「いや…ああ、そうだ」
 何かを思い出したように笑いをとめると男の姿はそこになかった。
 ドゴッ…ドーン
 鈍い音の後に何かが壁に衝突する音が響いた。
「忘れてたぜ。おい、てめぇなに女を殴ってんだ?女を泣かしていいのはベッドの上だけだといってもてめえ見てたいな不細工は女をベッドの上で泣かした経験なんてねえか」
 壁に衝突し気絶している男を容赦なく蹴りを入れ黒衣の男の姿を見ても何が起きたのか誰にもできなかった。
「一体、き、君は何を…いや、その前に何者だね」
「ああ、俺か…俺の名はジュウゾウ・ダテ、何者と聞かれたら…なんでも屋」
「なんでも屋だト〜」
「おっともう一つ忘れてた」
 再びジュウゾウの姿が消える。
 ドゴッ…ズドン
 中年男が天井に突き刺さる
「てめえの所為で4日ぶりの食事が台無しだろうが」
 ドスン……ゲシゲシ
 天井から落ち白目を向いている男に顔面を容赦なく踏みつける。
「さてと…おいでくの坊、こいつら連れて帰りな。そのためにお前は残しやったんだからな」
「ぐっ…覚えてろ」
 気絶した仲間をかつぎお決まりのような捨て台詞を吐き捨て逃げていった。
「さてと…」
 床に倒れたままの少女に近づく容態を確認する。
「気を失ってるだけか」
「おい!あんた」
 いつの間にか店内に居た客が全員がジュウゾウを取り囲んでいた。
「なんだ?」
「なんだじゃねぇ」
「なんてことしてくれたんだ…あいつらに逆らうなんて…」
「そうだ。そうだ」
 周りを囲む男たちは口々に罵声を浴びせる。
「で?」
「あんたを差し出して許してもらうんだよ!!」
 殴りかかってきた男の腕をつかむとそのまま力の方向を少しずらして投げ飛ばす。
「おい、カスども止めときな。言っておくが俺は強いぜ…それでもやるかい?」
 周りを見回し不敵な笑みを浮かべる。
「ぐっ…」
 数の有利などまったく役に立たないと思い二の足を踏む。
「さてと、お前ら逃げるなら早いほうがいいぜ連中…そうだな今の時間からだと明日にはこの町は戦場てところか」
「なっ…なんだと」
「相手が『GEA』なら当然だろ?」
 全員の顔に絶望の色が浮かぶ
「やっぱりてめぇを」
「止めな!」
 今まで成り行きを見守っていた店主が止めに入った。
「逃げ支度を始めな」
「だがよー」
「その兄ちゃんを責めたってはじまんねぇんだ。生き残ることを考えな」
 店主の言葉を受け全員、ジュウゾウに「人でなし…」「てめえの所為で俺たちは…」など口々に呪いの言葉を吐きながら店を後にした。
「悪かったな。とりあえずコレでも食ってくれ」
「おっ、割りいな」
 ジュウゾウは少女をテーブルの上に寝かせるとカウンターに座り出されたスープとステーキを食べ始めた。
「昔はこの辺も平和でよかったんだがな…」
「ふぅ〜であんたは逃げ支度はしないのか?」
「ああ、俺にとっちゃこの店が命だからな…逃げたってしょうがねぇさ」
「うらまないのか?」
「悪いのはあいつらだろ?それにお前は娘のために怒ってくれたしな」
「ふぅん、連中が気に入らなかったから殴る口実にしただけだよ。礼だったらついでに寝床も提供しろ」
 かなり横暴である。
「ああ、二階に宿泊用の部屋はあるから構わないが…」
「なら、借りるは…眠いから寝る」
 食事を全て平らげるとそのまま二階にあがりそのまま寝た。

 ★ ★ ★

 そこは岩山に囲まれた地の利を生かして建設された砦だった。
 その砦の最上階では
「で、お前らはノコノコと帰ってきたと」
「ハイです…も、申し訳ありませんゴヨ・クー将軍閣下」
 町での出来事を中年男と部下二名が目の前に居る強面の男に事細かに報告をしていた。
「カスが俺の顔に泥を塗りおって!!」
「も、もうしわけありまっ……」
 ドンッドンッドンッ
 鈍い轟音が3度響くとそこには3つの肉塊が転がった。
「片付けろ」
「はっ了解いたしました」
 命じられた兵士が即座に片付け始める。
「おい、明日は視察に行く兵どもに召集をかけろ」
「はっ了解いたしました」
 同じ返事を繰り返す
「俺をコケにしてくれた黒衣の男…殺す」
 傲慢な殺意がゴヨから漏れていた

 コンコン
 部屋をノックする音。
「開いてるから勝手に入りな」
 ジュウゾウはベッドにだらしなく横になりながら入室の許可をした。
「こ、こんばんわ」
 ウェイトレスの少女が扉から顔を出す。
「わ、私…マーニャていいます…」
 消え入りそうな声で名乗った。
「で?」
「あ、あの…お願いが…その…この町を救ってもらえないでしょうか?」
「はぁ?何言ってるんだぁ?」
「なんでも屋と聞いたので…ダメですか?」
「ダメって言うかな…」
 ジュウゾウは面倒くさそうに体を起こした。
「金はあるのか?」
「お金は無いです…」
「なら、あきらめな。大体、町を救えって言われてもな。明日には廃墟になるわけだし…」
「そ、そうならないように闘って欲しいんです」
 マーニャはジュウゾウに詰め寄る。
「めんどくせぇ〜手加減して戦うのは逆に疲れるしな」
「そんな…お願いします…何でもしますから…」
「おいおい、お嬢ちゃん何でもなんて軽々しく言わないほうかいいぜ?それがどういうことかわかってるのか?」
「も、もちろんです。こ、子供じゃ…ありませんから…」
「ふーん…とりゃっ」
「きゃっ」
 ジュウゾウはマーニャをベッド引きずり押し倒す。無駄が無くあまりにも自然な動きにマーニャは覚悟は決めていたとはいえ思わず悲鳴を上げてしまった。
「ほら、バカなこと言ってねぇで帰りな」
「いやです。か、帰りません」
「そうかい…なら、やめねえからな」
 服の隙間から手を進入させる。
「はぐぅ…むぐぅ…はぁんっ…」
 くぐもった甘い吐息が漏れる。
「見た目よりも胸あるな…このもみ心地ならEいや…Fか」
 ジュウゾウの指先がマーニャの胸の頂の敏感なところに触れる
「そこはぁぁんぅ」
 甘美な刺激で軽く逝ってしまった。
「くくくく、コレくらいでへばるなよ」
「はぁはぁ…はぐぅ…そんなところ…はぁんぅぐぅ」
 呼吸が乱れる少女の股間をなぞりさらに刺激を与える。
「さてと、そろそろ俺を気持ちよくしてもらおうか…まずは俺のを舐めろ」
「はぁはぁ…どうやって…すれば」
「唾液でたっぷりと濡らすんだ、そうすりゃ挿入するときが痛くなくてすむぞ」
「わかりました」
 少女は男の股間に顔をうずめ始めてみる異形のものに恐怖を感じながら舌を這わせる。
(こ、こんなのが入るの)
 そう思いながら言われたとおりに続ける。それしかできることがないと言い聞かせながら続ける。
「そろそろいい頃だな」
 股間に顔をうずめる少女に行為を止めさせると再び押し倒す体位にするとショーツを少しだけずらすと少女の秘裂に男根を押し当てる。
「入れるぞ」
「かふぅっ…」
 マーニャは呼吸が止まりそうな痛みで声が詰まり閉じていた秘裂からは紅い雫が垂れた。
「おまえ…初めてかよ。経験なさそうとは思ったが、あぁ…とりあえず力抜いて深呼吸しな」
 言われたとおりに深呼吸をして力を抜く。
「くそっ、めんどくせぇ」
 男根を抜かずに体位を入れ替え騎乗位にするとゆっくりと腰を動かす。
「落ち着いたら腰を動かしてみろ」
「はぁはぁ…はい」
 少女は無理に体を動かし始める。
(痛いけど…不思議な…)
 鈍痛以外の刺激に戸惑いながらも知らず知らずのうちに腰を動かす速度が速くなっていった。
「そろそろ、俺からも動くぞ」
「あっ、あっ…なにかっっはぁっぅぅ」
 軽くイクと同時に甘いため息が漏れる。
「イッたか、なら…」
 ジュウゾウは腰の動かし方に緩急をつけ始める。
「えっ…またっ…はぁぁぁぅぅん…あっ、そんな…また…ダメ…ごめっ…こわ…はげ…」
 少女は何度も何度もイカされその度に少女の快感が膨らみ刺激の波に抱かれていった。

 翌朝――

 朝日がまだ昇りきらない頃にはジュウゾウは支度を終えていた。
「あの…」
「うん?起きたのか嬢ちゃん」
 裸のままシーツに包まっていたマーニャが体を起こす。
「どちらに?」
「なに、客が来たみたいだからな出迎えに言ってくるのさ」
「気をつけてください…それと…」
「ああ、仕事はきちんと果たすさ、なにせ極上の報酬だったからな」
 少女は顔を朱に染めうつきながらジュウゾウを見送った。

 ★ ★ ★

 酒場の周りをざっと50人ほどの銃火器で武装した集団が囲んでいた。無論それに進んで拘ろうなどという住人がこの町に居るわけも無く。ただひたすら息を潜め嵐が過ぎ去るのを待っていた。
「さてと、おっぱじめるか。全員構え」
 屈強な肉体をもつ2メートルほどの大男が指示を出す。
「はぁ…朝からご精が出るねぇ…俺はお前らのせいで早起きしたんだぞ、このやろう。普通昼間で寝てるだろ?というか寝かせろ!!」
 さすがにそれは寝すぎというかこの状況でそんな台詞がでるのはある意味すごいと感心させられる。
「この状況でそんなこと言えるとはな…おもしれい。どうだ俺らの仲間にならねぇか?」
「何だてめぇは?」
「俺様の名はゴヨ・クー将軍。俺は実力があれば多少のことは多めに見てやってもいいぜ。なにせ三人ほど欠員もでてるしな」
 傲慢不遜な態度でジュウゾウを見下す。
「そうだな…俺が頭なら考えてやるぜ」
「ガハハハハ、おもしれぇ…なめてるのか?」
 豪胆に笑いながらその目は肉食獣のような鋭い目で睨みつけ手を上げる。その動作をみた瞬間、ジュウゾウは半歩後ろに下がる。
 パンッ
 ジュウゾウの動作から遅れることほんの一呼吸後、何かが今までジュウゾウの居た場所を通り過ぎ壁に穴を穿った。
「いや、いたって本気だが…それにしてもセコイまねをしてくれる。集団で囲んでおいて少し離れた場所に伏兵とはな。なめてるのはお前だろ?その程度で俺を殺れると思ってたんだからな」
 ドサッ
 遠くでなにかが地面に落ちた音が聞こえた気がしたがゴヨ・クーはその方向を見ずにジュウゾウのみ注視していた。
「戦術といってもらいたいな。伏兵に気づいてどうやったかはわからないが仕留めるとはかなりの実力は認めてやるが、この数相手に勝てる気か?」
「寝起きの運動くらいにはなるだろうぜ」
「そうかい、ならお前らこいつは眠てぇらしいからたっぷりと鉛弾で眠らせてやりな」
 全員がいっせいにジュウゾウに銃口を向け引き金を引く。轟音が鳴り響きながら殺意の塊が数十、数百とジュウゾウへと襲い掛かる。だが、その殺意の塊はジュウゾウを捕らえずに囲んでいた男たちに次々に命中していく。ジュウゾウはいつの間にか握った長身痩躯のジュウゾウではとてももてるはずの無い身の丈ほどもある太刀で小枝でも振るかのような速度で銃弾をはじいて囲む兵たちに当てていた。
「なるほどな。それがお前の『GEA』…しかし、太刀の『GEA』とはずいぶんとランクの低くちゃっちい『GEA』だな」
 ゴヨ・クーは鼻で笑った。
「ちゃっちいだと?」
「ああ、ちゃっちいねぇ…本当の『GEA』を俺が見せてやる」
 その言葉に部下達は動揺が広がる。
「しょ、将軍が『GEA』を使用するぞ!」
「ぜ、全員退避しろ!!」
 負傷した仲間を抱えながら逃げていく。ゴヨ・クーの体から鉄の腕が左右に20本ずつ計40本が生え始める。
 『GEA』とはGimmick an Element Arms(さまざまな仕掛けを要する武器)の略であり人体と兵器を結合させる器具を身につけることでナノマシーンにより武器を構築するというシステムの総称である。
「こいつが俺様の『GEA』センジュカノンだ!!」
 構築された全ての手から放たれた光弾がジュウゾウに襲い掛かる。その数を回避することなど不可能であり、ましてや防御しても一つ一つの光弾の威力は戦車を用意に破壊できるほどである。
「バカなヤツだ俺様に逆らうなんてな」
「そうでも無いぜ」
 光弾の残光が薄まったそこにはジュウゾウが何も無かったかのように立っていた。
「どうやって…」
「さぁな、だが今度はこっちの番だ。まぁ、お前クラスなら全力を出すまでも無いがなっ!」
 ジュウゾウは高速の移動でゴヨ・クーの背後にやすやすと回り込む。
「なめるな!!確かに早いが…俺のセンサーは捕らえているぞ!」
 目にも留まらない動きを捉えながらゴヨ・クーは光弾を放つ。しかし、その光の弾がジュウゾウの太刀に触れた瞬間、その光を吸収し消滅させる。それが光弾を浴びても平然としていた理由だと気がついたときにはすでに鋼鉄の腕が4本切り落とされていた。
(ちからが抜ける…なんだこれは…)
 ゴヨ・クーは妙な虚脱感に襲われ困惑する。その戸惑いが再び腕を一本失わせる。そして、切り落とされたことで生まれる死角繰り出される斬撃がゴヨ・クーの体を斬り裂いていく。
「くくくく、そろそろとどめ行くか」
 もはや立つこともままならないゴヨ・クーを前に悪魔のような笑みを浮かべている。どっちが悪人か判断に困るが多分どっちも悪人である。
「逝かせてやる。俺の必殺技パート1『デスサイズ』でな」
 肩で太刀を担ぐと神速ともいえる動きで背後を取るとそのまま振り下ろし『GEA』センジュカノンのみを粉砕し、その衝撃でゴヨ・クーは白目をむいて気絶する。
「止めは刺さないでおいてやる。ああ、俺様はなんてやさしいんだろうな。くくくくくくはははははははは」
 力に溺れその力を振るっていたものがその力を失えばその先にあるのは因果応報のみ殺されたほうがまだ幸せだったかもしれない。
「ま、まさか将軍がやられるなんて…」
 その様子を見ていたゴヨ・クーの手下たちは顔面蒼白、恐怖で身を振るわせながら逃げ出そうとしたが
「ああ、後片付けはきちんとしねぇとな」
 黒い風が駆け抜けると手下は全員昏倒した。
「仕事、完了てな」
 それと同時に扉があき町の人々が姿を現し無責任に喜び合い、その声につられてマーニャも外に出たときだった。
「くそ…どもがっ」
「きゃぁ」
 殺さないように手加減をされていたためにまだ、動けたゴヨ・クーがマーニャをつかみ堕ちていた銃をこめかみに押し当てる。
「てめぇの『GEA』をよこしやがれ。さもないと」
「アホだな、お前ごときが俺の『GEA』を使いこなせるわけ無いだろうし…それに」
「それになん…」
 そこでゴヨ・クーの言葉が切れた。背後から光弾で貫かれていたのである。
「もう、死んでるやつには必要ないだろ?それにしても…」
 ゴヨ・クーの背後、約1キロ先にいる存在を感じ取り視線を送る。
「相変わらずいい腕だ」

 異質――異様――異常――
 荒みきった町を歩く少女はまさにそのどれでもあった。
 年のころは14、5だろうか?しかし、その表情はまるで人形のようで異質の存在感を放ち衣服は装飾華美の白で統一されており特に際立つ薄青色の腰まで伸ばした髪がなびき周りの色彩と比べれば異様でありながら少女持っているものもは異常としか思えない白銀の鎖で繋いだ唯一の黒である棺桶を引きずっていた。
「よう久しぶりだな。エレス」
 ジュウゾウはそれらをまったく気にせず挨拶をする。
「………待ち合わせ場所いなかった………さがした………」
 少女がジュウゾウに歩み寄るとあることに気がつき足を止める。
「…女の匂い……また?」
「ちょっ、まてエレ…ぐのっはっ」
 勢いよく振り回された棺桶に右わき腹を殴り飛ばされその勢いそのままに吹き飛び壁にめり込む。
「…不潔…何人……手……だしてるの……」
 それを見つめる町の人々は先ほどまで圧倒的な強さで暴君を倒した男がまだ少女に簡単に伸されている事態に唖然となる。
「あとで………お仕置き………今は…ここから離れるのが……先…」
 少女はそういうと昏倒する男を棺桶の上に乗せるとそのままその場を立ち去った。その間に誰も少女と男に話しかけることはできなかった。


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