お前は俺のものだ




 夕暮れの荒野
 キュィィィィン
 激しく空気が振動し衝撃波が大地を駆け大地を削る中心で二つの存在があった。
 一つは漆黒の鎧をまとった大太刀を構えた死神。
 それに相対するのは、グレートソードを構える白銀の鎧をまとった女神。
 二人が激突するたびに大地の姿は形を変えていく。
「ああ、また地形が変わったで」
「すさまじい戦いだな」
「センちゃん…記録続行…」
 その様子を見つめる2人と一匹はその様子をしっかりと見つめていた。
「ふっ…オリジナルを得た今、私と貴様は互角。そして、この剣の力なら貴様に勝てる!」
「そいつは甘いじゃないのか?俺の剣技は、はっきり言って最強だぜ!」
 先ほどまで高速の動きで力をぶつけ合っていた二人は距離をあけて静止する。
「いくぞ、グレゴリオ流剣術断の章ドラゴンスレイヤー!」
 剣に全ての力を集中させ龍をも一刀両断するつもりで振り切る。単純にして明瞭、故にその動きは単調な技ではある。この一撃を決めるには激しい気迫を相手にぶつけることで相手を圧倒し迷い無く剣を振り下ろすこととされている。アーシャの放つ気迫は鬼迫といっていいほどまでの高みまで上り、龍を断つ鬼神とも思えた。
「たいした気迫だ、たしかに龍もビビリそうだぜ」
 ジュウゾウはそういいながら緩やかに構えをとる。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁセイ!!!!」
 気合と共に振り押されるグレートソード。
 普通の人なら避けようとするが気迫に呑まれて動けないだろう。
 訓練を受けた経験がある人間なら受け流そうとするか避けようとするがやはり気迫に多くの人は呑まれるだろう。
 一流の剣士なら気迫にも耐え避けるか受けようとするだろう。しかし、避けようにも大剣の重みで加速した剣を避けるのは困難だろう。受けようものなら武器もろとも両断されるだろう。つまり、ジュウゾウがどちらの選択肢を選んでも敗北は必至だと思えた。
 だが、ジュウゾウは避けようとするわけでも受けるわけでもなく剣が振り下ろされ瞬間数歩前進した。一撃必殺の気迫を受けながら前進する。普通の人間なら恐怖する状況に躊躇することなくアーシャの間合いに踏み込み自らの刀を大剣の側面にあてそよ風のような力で軌道をそらすとまるで幽鬼のようにアーシャの体をするりと抜ける。
「自らを死者の如く、虚ろにて無にすれば恐怖にすくむことなく。たとえ龍を殺す刃も死者の命は絶つことはかなわないってな。どうだ、これが秘剣ワイト」
「なっ…なんだ今の動きは。て…貴様また!!」
 アーシャは顔を真っ赤にしてジュウゾウを怒鳴りつける。その反応は当然ともいえる。鎧と衣服だけを切り裂かれたのだから。
「ふっ、我ながら見事だゲブッ…」
 もはやお約束とかしたエレスの棺桶が頭に突き刺さる。
「まったく…ミン、そのすまないが服を…」
 もう、なれて感覚が麻痺してるか代えの服を要求する。
「あいよ」
 そういってミンは服と下着一式を差し出す。
「これは帝国の軍服?」
「せや、裏ルートで手に入れるの苦労したんやで」
「そうではなく。こんなものを渡す!」
「ジャスティスのデータも取れたし、そろそろ自由にしてもええやろって。ジュウゾウから頼まれてたんや」
「ジュウゾウが……」
 明らかに落胆して見えるくらい落ち込んだ。
「そうか…そうだな私は敵なのだ…私はいったい…別に好きでもないし…そもそも…いや…だが…くっ…なのに…いいように弄ばれ……」
 いろいろなものがアーシャの中で崩壊を始めていた。
「ミン…ジュウゾウ…事実を表明…」
 それを見かねたエレスが口を挟む。
「エレス、ば、バカ」
 ジュウゾウは慌てて口を止めをしようとしたが。エレスは続ける。
「グレゴリオ帝国情報部にこちらの情報が遺跡での一件が流出を確認。オリジナルGEAを所持したアーシャの存在も認知され、それにより帝国軍部にて背任行為として議論されているもよう。その情報からジュウゾウはアーシャの放逐という行為を選択」
 そういわれてアーシャも自身の置かれている立場がはっきりと理解できた。オリジナルGEAは一つでも一個中隊と戦えるだけの能力は少なくとも有している。それほどの強大な力を持ちながら帝国軍部に献上、報告をしなければ背任と見られるのは当然である。
「アホ、なんで話すんや」
「事実」
 つまりジュウゾウなりの気遣いだつたわけなのだが、アーシャは自身が戻るということはなにを意味するかといことに考えが至った。
「ま、まて。私が戻ればジャスティスはもちろんだがお前たちの細かい情報が帝国に伝わることになるんだぞ?命だって狙われることになるんだぞ?」
「うんなの分かってるよ。能力を知られて、顔も知られる。当然命を狙われるだろうが、そんなの今に始まったことじゃない。すくなくとも、俺達はそういう世界で生きてきた。だから気にするな。それに持ち帰ればお前は英雄扱いだろうからな。よかったじゃないか」
 飄々とジュウゾウは話す。確かに、オリジナルを手に入れればそれだけで将来は約されたも同然なのである。
「ふ、ふざけるな!!」
 アーシャの怒りが爆発する。
「なにが命を狙われるのが当たり前の世界だ!!そんなの私のしったことか!!貴様が私にしたことを!!私が許してというのにお尻で何度もするし!恥ずかしいカッコウとかさせるわ!おまけに…おまけに…お前のことで頭を一杯にするし…最近はお尻でされるのも気持ちよくなってくるし…あまつさえ我慢できなくてついいじってしまって寝不足になることもあるのだぞ!!」
 爆発の方向がとんでもない方向に暴発している。その言葉をジュウゾウは顔を真っ青にしながら聞いていた。いや、アーシャに首を絞められながら激しく振り回されていたので聞こえていないかもしれない。
「責任を取れ!!一生かけて!!誠心誠意!!放逐などこちらからお断りだ!!」
 放逐というジュウゾウの行為に心底怒りを感じたのだろう。理性があまりはたらいていない。
「アーシャ…少し落ち着く」
 エレスが土気色に顔色がかわるジュウゾウを見かねて止めにはいるが止まるわけもない。
「うるさい!!私はお前よりもジュウゾウのことが好きなのだぞ!!」
 もう大暴投もいいところである。
「その意見否定。私のほうがジュウゾウのこと好き」
「私のほうが…あぅ…今、私は何を…」
 エレスのジュウゾウが好きという言葉に反論しようとしたときようやく自分が今、何をいったかに思い至り次にとった行動は…
「もう死ぬ、こんな恥辱…か、介錯を!!」
 一気に変な方向に飛んでいった。最初は本気で付け狙っていた相手に惚れるなどというあまりにもベタな自身の行動に、最初のころは拒絶していたのに今を受け入れて軍人として封印していた女としての部分が完全に露見し体裁すらも保てない。おまけに自爆。死にたくもなる。
「いやぁ大胆発言やったな。というわけやけどジュウゾウどないすんの?」
 ミンは意地の悪い笑みを浮かべる。
「そうだな。こうする」
 混乱して取り乱すアーシャとそれを取り押さえようとするエレスの間にわって入るとアーシャの腰に手をまわし引き寄せると唇を重ね口内に舌を侵入させ濃厚なキスを1分、2分、3分…
「ぷはぁ」
「はぁはぁはぁ…」
 長時間の口付けでアーシャの体から完全に力が抜ける。
「俺の私怨に巻き込みたくなかったんだがな…」
「まったく…女好きで、自由奔放に振舞ってもアイツにはなれへんのに…おまけに残酷なほどの優しいんところはまんまなんやから。エレス、今夜は二人きりにさせてやろうな」
 優しく微笑みながらエレスに語り掛けると
「了承…偵察任務につき早朝期間予定。センちゃん」
「御意」
 今回は聞き分けよくさっさと闇と同化し場を去った。
「ほならな…せやけどちゃんと話たりいや…それとうちの新作GEA『姫宮豊城』や屋根のないところちゅうのもアレやしな簡易屋敷として使えるギアや」
 ミンもジュウゾウにGEAを渡すとエレス同様に闇へと消える。
「さてと…」
 受け取ったGEAを起動させる。

★ ★ ★

 簡単な屋敷というミンの説明は、半分間違っていた。簡単なものではなくキッチン、バス、トイレはもちろん客間、ダイニング、寝室とどれも数人の人間が生活するのに一切困らない設備が整った立派な邸宅だ。
 そのベッドの上、アーシャはシャワーを浴び。まもなく、始まりの時を迎えようとしていた。
(まさか、このようなことになるとはな…任務を受けたときまったく想像などしなかったな…だが…高揚する気持ちを抑えられないな…これもあのバカが原因だな。任務を放棄し国家への忠誠を放棄するなど…女なのだな…強引に無理やり抱かれていたのにいつの間にか…もしかしたら最初のときからなのか)
 様々な思いにアーシャは柔らかなベッドに横たわりながら思いをめぐらせる。
「ふぅ…さてと」
 ジュウゾウは普段の黒衣に手をかけると脱ぎさる。その姿を横目で見つめた。実はジュウゾウの裸をみたことは無かった。今までジュウゾウがアーシャの前で裸を見せたことは無かったのである。その体には昨日今日ついたものではない無数の深い傷が刻まれていた。
「ジュウゾウ…その傷は」
「ああ、こいつか。拷問を受けたり、処分されそうになったり、まっ、覚えてる傷は一つだけだがな…」
 今までアーシャの見たことのない悲しげな表情でその傷であろう一際大きな傷をそっと撫でた。
「処分…」
「ああ、俺は人を殺す武器としてのみ存在を許されていたのさ。でも、俺は不良品だったらしくて道具にはならなかった。ミンもな…オリジナルGEAはその組織で手に入れた。そして、俺たちは誓った。奴らを完全に潰すと」
 ジュウゾウの体から今までに無く深い悲しみがアーシャに伝わってくる。
「そんな組織があるなどとは…知らなかった…」
「裏の奥深いところにいる連中だからな。この世界中で歪な戦争を起こし金儲けをしている死の商人たちさ。その根は様々な国家、大規模な反政府組織、宗教家と顧客は選ばずに戦争をするものなら喜んで武器を売る。くだらない悪党さ」
「そんな者達にジュウゾウは戦いを…」
 アーシャは感動していた。まさかジュウゾウの旅の目的がそのような崇高なものだとは考えてもみなかった。そう、思ったのだが…
「勘違いするなよ。別に武器を売ろうが戦争の火種をまこうが俺のしったことじゅねぇ、ただ、俺をコケにしてくれたあの連中が気に入らないだけだからな」
 折角の感動をあっさり覆された。
「さてと」
「きゃっ…むぐぅあぅぅ」
 ジュウゾウに馬乗りにされ思わず女の子の悲鳴を上げてしまったが、その口の支配権をあっさりジュウゾウに奪われてしまう。抵抗しようにも口の中をかき回される支配される感覚で脳がしびれと同時に酸欠で徐々に抵抗する力を奪われていく。今日まで幾度と無くジュウゾウと体をあわせてきたアーシャは本人が気づく前より以前からすでにジュウゾウの支配下へと置かれていたのである。唇を合わせたままアーシャはジュウゾウに首に手をまわし自ら引き寄せ必死にジュウゾウの存在を全て感じようと動いている。ジュウゾウの指に肌を軽くなぞられただけで軽くイってしまい。それが、耳の後ろ、うなじ、乳房へと流れる刺激はまるで音階があがるように快感を跳ね上げさせる。小さな膨らみの頂のつぼみを弾かれ、大きな波がアーシャの心をかき乱し秘裂から溢れさせる。
「入れるぞ」
 そういわれたときアーシャはか細い声で「はい」と返事をするとジュウゾウはベッドの上に仰向けになりアーシャのやわらかくほぐれた秘裂がジュウゾウの肉棒と口付け交わす。
「自分で広げていれて気持ちよくしてくれ」
 ジュゥゾウからの頼み。アーシャにとってそれは嬉しく感じられた。自分の居場所がジュウゾウの元でもある喜びを感じられずにはいられなかった。アーシャは破瓜の痛みに耐えながら前進を軽く痙攣させる。だが、ジュウゾウのプレイの本番はここからだった。
「アーシャ、お前はなんだ?」
(私は…私は…初めてなのに感じて…そうか…私、あの本のようにマゾの変態メス奴隷…いたぶられて感じる変態だ)
 こっそり勉強のためにとミンに渡された官能小説の内容を思い出しシチュエーションと本の記憶がだぶる。
「私は…ジュウゾウさま専用の肉壺です…どうか卑しいメス奴隷にジュウゾウ様のザーメンを注いでください」
 淫靡な台詞を口にしてさらに興奮したのかアーシャの顔を赤くそまる。
(ミンのやつ…陰心顕鏡を使ったな…)
 陰心顕鏡とはその人間の潜在願望を感じ取り読み物を編集するもので、その本を読んだ人間は登場人物の与えられた快感を刷り込まれるというものである。といっても洗脳などの類ではなく本人が気がついていない部分を気づかせるという精神操作能力があるGEAである。
 アーシャは乱れた。
今までの価値観を全て否定される不安感。
 ジュウゾウに対する素直な気持ち。
 苦痛と恥辱と快感の経験。
 前のほうで交わるといういままでにはない安心感。
 それらの思いがアーシャを乱れさせる。腰を必死に動かしジュウゾウの物を受け止める。アーシャは三度出されて立ち上がると閉じることを忘れた秘裂から溢れる自らの蜜と一緒手で救いとると口をつけズルズルと大きな音を立てながら呑み込む。
「アーシャ、お前は俺のものだ」
「は、はいぃぃぃぃいん」
 前を後ろと犯されるアーシャは出されるたびに耳元でささやかれる言葉に喜びの涙をこぼしながら、うなずく。
 アーシャの初体験が二人きりでの終わったのは明け方であった。
「おい、起きろ」
 ジュウゾウに起こされるも一晩中ハードなプレイを続けたアーシャは立つことさえままならない。
「ジュウゾウ…おはよう」
 言葉遣いこそは普段とかわらないがジュウゾウの股間にしゃぶり付きながらアーシャは自分のために用意されていた赤色のメイド服に袖をとうした。アーシャは自らの意思でジュウゾウの所有物の道を選んだ道であり、そして、最愛の人の傍らにいられる居場所を自分の手で手に入れたのであった。

★ ★ ★

「ご報告にあがりました」
 簡素な部屋へと髪を結わえたスーツ姿の女が部屋の主に一声かける。
 部屋にはギシギシとなにかが軋む音にまじって微かに女の声が聞こえるが暗くてよくは理解できない。
 だが女性はそれに動じない。なぜなら今のような状況は彼女にとって日常である。
「連絡の途絶えたゴヨ・クーですが、死亡が確認されました」
 その報告で鳴っていた音がやむ。
「彼にはセンジュカノンを与えていたはずですが?」
 まるで天使のような美しい少年の声が響く。
「はい、センジュカノンにつきましては完全に破壊され使用不能となっていました」
「センジュカノンが破壊ですか。それは実に興味深いですね。」
 少年の声は軽やかに弾んではいたが、その声と反比例するかのように部屋は底知れない恐怖で重く凍りついた。
「破壊したものは全身黒衣の男との情報です。また、同行者と思われる少女は棺桶を引きずっていたそうです」
 その重圧に耐えながら報告者はなんとか話を続ける。
「全身黒衣の男と棺桶の少女。そうか、彼なんだね。ふふふふふふははははは」
 少年の声は狂気じみた声へと変わる。
「計画はどれほどで始められるかな?」
「当初の計画通りに半年ほどで、準備は完了いたします」
「そうですか。急いでもしかたありませんから予定通りに遅れることは許しませんよ。しかしながらとても気分がいいです。貴方にもご褒美を差し上げますよ」
「ありがとうございます」
 女は衣服を脱ぐと少年の声のほうへと近づいた。
 闇の中、声の主は嬉しそうにつぶやく。
「Zクラス・ナンバー13。待っていてね。君の最高の贈り物をもって会いに行くよ」
 闇の中から響く声は無邪気でありながら底知れないおぞましさを感じさせた。

つづく


→戻る

アイアン・グレイブのトップへ