はぁ…俺の苦労はいったい…




 「というわけだ」
 ジュウゾウが全てを話し終え落ち着きを取り戻しはしたが向けられる視線は冷たかった。
「へーそんなことがあったんや」
「ええ、そうですわ。ところで皆さんは…見るところ帝国の方というわけではありませんわよね?」
 にこやかな笑みを浮かべた会話だがその言葉には間違いなく敵意がこもっていた。
「うちとエレスはジュウゾウと昔からの仲間…いやちゃうな。それ以上の存在や。なにせうちの体でジュウゾウが触れてへん所なんてあらしまへんし」
 ミンは自分の体を抱きしめ身を捩る
「それわ。それわ…それであなたは?」
「わ、私は軍の任務でだなジュウゾウからオリジナルGEAを奪取すべくだな…その…」
 アーシャは問いにうまく答えられず必死に言い訳を考えるが結局思い浮かばなかった。
「それがなんでジュウゾウ様と同行しているのかしら?」
 あきらかにイーディアはアーシャに対して敵意むき出しである。
「それはだな…その…」
「俺が面白いし、なんといってもちょうどいい暇つぶしになるからな。あと、近くにおいておいたほうが面倒なくていいしな」
 その言葉に、アーシャを除く女性陣全員が
(((((おもしろくない)))))
 と一つの意思で統一された。
「そばに居るだけですわよね。私、ジュウゾウ様にペンダントをプレゼントしてもらったことありますのよ」
 イーディアの先制攻撃
「なんや、そんなもん!うちなんてジュウゾウに腕枕してもらいながら朝までキスしてもらってことがあるんやで」
 ミンが迎撃をするが
「あら、それでしたら。私は胸のさわり心地がよいといつも揉んでいただていましたわ」
 シューナは温和な笑みを浮かべながら胸を突き出す。
「その胸を自慢するのは反則…一番年下なのに…」
 ミリーの一言で女性人の視線が一点に集中し空気が固体化してしまった。なぜならシューナの胸は標準的サイズよりも大きいミンの胸よりも大きいが…
「ちょいまち…あんた年なんぼ?」
「今度16になりますわ」
 ザクッ
 エレス、ミン、アーシャそしてなぜか仲間であるはずイーディアに心に深い傷をつける。
「ですけど、大きいものも考えものです。最近は成長期といいますか…その大きくなっているといいますか…先週買ったブラがもうはいらなく…」
 ドゴォォォォォオン
 今このとき5人の少女達の中で世界が崩壊する音が聞こえた。
「……どうせ私など…どうせ……いまだに13歳とか言われるし…」
「そんなアホな話しあるかいな…うちがどんだけ努力して大きく育てたと…」
「理解不能…理解不能…要因…解明を望む」
「ウソですわ…私…もう2年もサイズ変わってませんのよ…」
「神様は意地悪なのでしょうか…」
 どうやらその威力は無差別破壊兵器だったようで敵味方なんかいい感じの方向に吹っ飛ばしている。
 ちなみにジュウゾウはというと
「これ以上いると…なんかまずい気がするからな…」
とっくに奥へと進んでいたのだった。

★ ★ ★

 ダダダダ
 ミン、アーシャ、エレスは凄い勢いで走っていた。というかその表情は怒りに燃えていた。
「あのボケ!どこいった!!見つけたらただでおかへん!」
「乳オバケといちゃついた罰…きっちりつける」
「とりあえず、なんか腹立たしいので私も加勢するぞ」
 その後方400mでは
「ま、まちなさい…」
「な、なんですの…あの人たちは」
「と、というより…なぜ私たちにはトラップが作動するのでしょう?」
 イーディアとミリーはぼろぼろなのになぜかシューナだけは無傷で追随していた。
「このままでは、見失いますわね…しかたありませんが私だけ先行させていただきますわ。
EW『エアリル・フェザー』」
 シューナのまわりを1メートル程の長さの六枚の白い羽が舞う。
「では、お先に失礼したしますわね」
 1枚の白い羽に乗るとサーフボードの要領で空中を猛スピードでミン達に迫る。
「お待ちなさい」
「ちっ、もう追いついてきたんかい」
「…私が止める先に…」
「任せた」
 エレスは立ち止まる。
「『GEA』タワー…モード・ウロボロス起動」
 腕から伸びる銀色の鎖の先端がナイフへと変化する。
「あら、随分と程度の低いGEAですのね…そんな簡易変換しかできないんて」
「乳お化け…滅」
 鎖につながれた刃は空中を舞いながらシューナへと襲い掛かる。
「あらあら…エアリル・フィールド展開ですわ」
 にっこり微笑みながら手を振るとエアリル・フェザーが宙を踊るナイフを弾き飛ばす。
「私のエアリル・フェザーの防御は完璧ですわ。そして、こういう事も可能ですのよ」
 白い羽は風を切り裂きエレスへと突撃していく。エレスはそれをなんとか左に飛び紙一重で回避したかに見えたが
 スパッ
 完全によけたはずが左袖が切り裂かれていた。
「……高速移動にともうなう気圧の変動で刃を形成と推測」
「正解ですわ。私のエアリル・フェザーは風を支配する羽。どういたします?あなたの鎖のついたナイフなど脅威にはなりませんが?」
 狭い通路の中での回避は困難窮まりながらもエリスは果敢に攻撃をするが空気圧の壁に阻まれナイフは何度も壁に叩きつけられる。
「あの、そろそろ通してくださいませんかしら?」
「却下…そしてチェックメイト」
「えっ…はっ、これは…」
 エアリル・フェザーがいつの間にか全て鎖で縛り付けられていた。
「ついでに…コレも…」
「コレは扱いはあんまりですわ」
「イーディアさん…逆さ吊りにされては…」
 いつの間にかイーディアとミリーも捕獲されていた。
「お、お二人ともあっさりと…そういえば距離もたいしてありませんし…すぐに追いついてこられると思いましたのに…」
「全て私の計算内」
 エレスの攻撃は防がれていなかったのである。なぜならエレスの本命はナイフを当てることが目的ではなく鎖で相手の動きを封じ込めることこそが目的だったのである。そして
「確保」
「しまったですわ」
 シューナも同様に逆さ吊りにされた。
「追跡不能にする」
「いったいなにをする気です?」
「不言実行」
「いやぁぁぁぁぁぁぁあ」
 エレスの不気味な迫力に三人の少女が悲鳴をあげる。だが、そんな事を気にも留めず鎖を少女たちの服の下へと滑り込ませると
 ビリビリビリ
 全ての着衣を布切れへと変えると鎖で縛りそのまま少女たちの体を壁に縫い付ける。
「ひゃうっ…冷たい…」
「破廉恥ですわ」
「ううぅぅぅ恥辱の極みです」
「…這いずり回れ冥府へと繋ぐ蛇」
 エレスの言葉に反応して鎖があたかも生き物のように少女たちの体を這い回り少女たちの敏感の所を刺激する。
「やめ…こんなのいやぁぁ…はぁん…」
「あっ…そこダメです…あっ…そっち…私そこは…」
「そ、そんな場所を引っ張らないで」
 冷たい鎖の責めで身もだえする。
「一時間程で開放する…それまで…ずっと…」
 エレスは珍しく口数が増えていた。
「ちょっ…はぅん…なんで…こんな恥辱を…きゅぅぅん…いゃぁん」
「ジュウゾウ…一ヶ月もローグに居た…私…留守番…寂しかったのに…ジュウゾウの馬鹿…」
 鎖はそのエレスの深い怒りの感情に反応しその動きを強くする。
「あぅっ…」
「…追跡再開…運良く誰かに発見されれば助かる…別の意味で危機」
 そういうと鎖の先端部とエレスから伸びる鎖1メートルがはずれるとその部分同士で結合し鎖の大半を少女たちの体に残した。
「モード・コフィン」
 棺おけの形へと再び変えるとエレスはおもむろに棺おけの蓋をあけると三着服を取り出す。
「武士の情け…下着も置いていく…じゃっ」
 実は、棺おけはエレスの着替えなどを収めているアタッシュケースなのであつた。それは別としてそういい残しジュウゾウたちの後を追った。
 この後少女たちは本当に1時間、嬌声を漏らし身もだえしながら過す羽目になるが運がよかったのか誰にも発見されることはなかった。

 ★ ★ ★

 先へと進んだジュウゾウは何かに導かれるような確かな足取りでその場所へと向かった。
「この感じは…なるほど今回は大当たりかよ」
 目の前に立ちふさがる強固な扉を見つめ。不適な笑みを浮かべる。
「さてと、どうするかな……よし、壊すか」
 あっさりとそんな答えを導き出すとGEAを起動させると壁を切りつけるがまったく傷がつかない。
「おいおい、どんだけ硬いんだよ。なら、ダーク・プロミネンス」
 全てを喰い尽くすはずの黒い炎がまったく通じない。
「どうなってるんだ!この扉、まったく効かない…なんでだ?」
 首を傾げるがなぜか判らないがとりあえずむかついたのでがむしゃらに切りつける。
「ああ、イライラする!くそっ、ミンはどこほっつき歩いてんだ!こういうのはアイツの専門だろうが!」
 というか、置いてきたのは自分なのに勝手な言い草である。
「オラオラぶっ壊れろや!」
 その背後に二人の気配がせまる。
「見つけたでジュゥゾウ」
「この女の敵が覚悟するがいい」
 怒り心頭の二人である。
「お、丁度よかったミン。この扉があかないだがどうやったら壊れる?」
 悪びれもなく尋ねる。
「はぁ?デスでも壊せへんの?」
 そんな質問に拍子抜けしてしまい気力がそがれる
「ちょいまちや。興味深いで……ふむふむ…なんやのここら辺の建材…」
「ええい、それよりもまずはジュウゾウに制裁をだな」
「いや、こっちが先や…ここいらの建材、全部GEAに使われとるもんと同じや、ふむふむ、判ったで!壊れへんやのうて壊れた先から即座に再生してんねん」
「なるほど、どうすれば突破できる?」
「まかしとき」
 扉の近づくと壁にふれると
「ぽちっとな」
 少しだけ出っ張ったところを押す。
 ゴゴゴゴ
 鈍い音とともに扉がひらく。
「開いたで、というわけで覚悟しいや!」
「へっ?」
「ゴヴァノン…ハリセンブレード!」
 アーシャが背後から思い切り巨大ハリセンで殴り飛ばす。
「のわっ…ちょい…」
「おお、それは伝説のハリセンブレードやないの!さすがGEA古代の英知がつまとるな」
 本当にいいのか古代の技術という気もする。
「…棺桶制裁」
「のぎょぉぉぉ」
 飛んできた棺桶に弾き飛ばされ変な悲鳴をあげたジュウゾウが転がった。
「お、追いついかいな」
「制裁開始」
「同意だな」
 自業自得なジュウゾウの悲鳴が響いた。

 ★ ★ ★

「はぁはぁ…とりあえず俺が悪かった」
 土下座して誤るジュウゾウだった。
「とりあえず、今回は許したる」
「制裁完了」
「…なぜ、ハリセンはあたるんだ?ほかの武器なら確実に避けることができるのに?」
 アーシャの疑問はもっともだがそれはお約束だからである。
「さてと、こんだけ厳重なんやさかい、きっとごっついお宝やで」
 そこには光る二つの球体が台座に安置されていた。
「なんだこれは?」
 無防備にアーシャは一つに近づく。
「ば…ばか」
 思わず静止の声をジュウゾウがあげる
「うん?」
 さらに振り向きながらその手はしっかりと光の球にしっかりと触れていた。
「あっ…」
 アーシャは思わずまの抜けた声を上げる。
『生態コードを認識しました。声紋登録を実行します。音声を入力をしてください』
 球体から突如、声が響いた。
「ふむ…GEAなのか?よし、私はアーシャ・L・ルフナ・スゥールドだ」
『声紋を確認、ジャスティスの所有者として確定します』
「な、なんだとぉぉぉぉぉぉおおおお」
 その音声にジュウゾウは呆然となり立ち尽くす。
「あ、アホな…ちょいまちということはまさかもう一つも!」
 ミンはあわてて触れようとしたとき既にエレスが触れていた。
『動物のモデルを設定してください』
「…オオカミ」
『了解しました』
 もう一つの球体が発光するとそこには白いオオカミがエレスの前にお座りをしていた。
「我は独立型GEAコード『チャリオット』我の能力は機動兵器に可変、タイプとしてバイク、バギー、タンクになることが可能だ。武装はマニュピレターコード2本、爪型と牙型単分子カッター、光子力カノン一門搭載だ。主」
「私はエレス…宜しくセンちゃん」
「センちゃんとはなんだ?」
「名前…センちゃん」
「了解した我の名前は今後、センちゃんと認識したよろしく頼む」
 そんなやり取りをよそにアーシャは
「わ、私がオリジナルの所有者に…これはどうしたらいいものか…と、とりあえずちょっとだけ…き、起動『ジャスティス』」
 白い翼が舞うとアーシャは光の甲冑につつまれ、その背には大剣が備わっていた。
「おお、こ、これはいったいどんな能力が……」
 大剣を構える。
「う、うち、目眩がしてきた…」
「ミン、教えてくれ。これにはいったいどんな能力があるのだ!」
「あ、ああ…それがナンバー]Tのジャスティスに間違いあらへんのやら…それは切断のGEAや…ためしにここの特殊装甲の壁きってみぃ、多分、おもろいことがあきるで、壁を切ることを意識するんやで」
「わ、わかった」
 そう答えると壁の前に立ち大剣を振るとデスでは傷つけることができなかった扉と同じ材質の壁が豆腐でもきるかのようにあっさりと切り裂いた。
「これはいったい?」
「ナノマシーン同士の結合まで切ったんや。それがそのGEAの能力。斬りたい物だけを斬るGEA『ジャスティス』や。まぁ、オリジナルGEAやGEAやと精神エネルギーの力場もあるさかい精神力で勝ってへんと壊せへんやけどな…はぁ…」
「そうか、そうなのか!」
 アーシャは嬉しそうにジャスティスを振り回し、エレスはチャリオットことセンちゃんと無言で見詰め合っていた。
 その様子を見つめるジュウゾウは
「はぁ…俺の苦労はいったい…」
 とりあえずご苦労様としかいうしかなかった。


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