お会いしとうございました




 ヘイズから西に10kmと比較的近いところにその遺跡はあった。近くにあるのに発見されなかったのは入り口部分が深い崖の中腹にあったため発見されなかったのが偶然落ちた人によって発見が報告され発掘が始まった。入り口には巨大な昇降機が設置され遺跡の管理組合などとそういった事態はヘイズを収める議会にとっては慣れた作業であったために早い期間で発掘が開始された。それほどまでにヘイズの周りには遺跡が多いそのため盗掘を行うトレジャーハンターが絶えなかったが逆にそれを利用し発掘をスムーズに進めることに政策としてライセンス制度を導入しそれによりヘイズの発展を進めることになった。
「はい、ライセンスに間違いはありません。どうぞお進みください」
 ジュウゾウたちは昇降機が設けられたゲートを通り過ぎる。
「しかし、ある意味凄い場所だな」
「ほんまや、並んでる自動車や警護に当てられとるんはグレゴリオの自動歩兵に戦車、ローグの機獣部隊に、ありゃ?聖王国ホーリュの聖典騎士団もおるやん。いやーこんだけの部隊がきとるちゅうは凄いな」
 ミンは感嘆の声をもらす
「まったく、なぜ我が軍はローグなどと肩を並べているのだ」
 その様子をアーシャは不愉快そうにぶつくさと愚痴をこぼしていた。
「こんな場所で武力衝突したらいろいろと面倒になるからな、発掘品を早いモン勝ちのほうが被害が最小で済む。まー軍事衝突が起きるよりは面倒がなくていいしな」
「平和が一番…」
 その一言で会話がとまり、とりあえず地下へ降りることにした。

 ★ ★ ★

 ジュウゾウ達が降り立ったその場所は意外と綺麗だった。いや、誇りにまみれてはいるがその壁などは高度な科学力で作られた建造物であることが感じ取れる。
「それでどうするのだ?」
「奥に進むに決まってるだろ?」
 アーシャの問いに当然のように答える。
「だ・か・ら!」
「目的地はわからへんのやまずは奥に進んで適当に情報収集してお宝ゲットや。大体、探索なんちゅうはそんなもんやし…とりあえずアーシャはエレスのとなり歩いとき、ジュウゾウは後ろまかせたで」
 声を荒げるアーシャを制してミンは指示を出す。
「むぅ」
「そや、あんま大きい声ださんといてな音声感知系のトラップなんぞあるかもしれへんから…ほな、いくで『天河珍鉄』起動、長さは10フィートや」
 長めにした棒を構えると歩き始めた。
「おい、もう少し説明を」
「…ミンは感知、探査、調査に能力が優れてる…私は射撃、遠距離支援…ジュウゾウは…とりあえず後ろ…」
 エレスが一応、説明を加える。
「ぐっ…しかしだな。こんな場所を」
「まーそこらへんはプロである俺らにとっちゃ造作もないんだよ。まーこういう任務の経験がないだろうから仕方ないだろうが」
「そ、そんなことは、ない!私はエリート部隊にいたのだ。遺跡の探索の訓練とて受けている」
「だったら黙ってついてきいや。おっと忘れるところやった『GEA』蛍火雪光」
 ミンが起動させたGEAが光を放ちながら周りをまるで蛍のように飛ぶ。その光をたよりに歩きはじめる。それも無造作といっていいほど、しかしその足取りはしっかりとしていた。
「エレス、一つ聞きたいがあのGEAはなんだ?軍の教本にも光を放ちながら飛ぶなどというGEAは載っていなかった筈なのだが…」
「…ミンが作ったGEA…光って飛ぶ…遺跡にもぐるときに便利」
「まて、作っただと?そんな技術があるのかミンには」
 アーシャは素直に驚いた。GEAは現在の科学力でもなんとか解析し一部分をなんとか転用しているに過ぎない。そしてほとんどの国家レベルでようやく簡単なGEAを作ることができるように近年可能になったがそれを個人でできるということはとても信じられない能力である。
「まー驚くんは無理あらへんけど、これくらいのレベルやったらあと数年で大概の国でつくれるようになるで」
「しかし、個人で作れるはずが…」
「それは企業秘密や…おっと、エレス100メートル先、右上方、仰角15.7てところや」
 ミンは会話を続けながらもなにかに気づきエレスに指示をだす
「了解…『GEA』モードスナイプ起動」
 その言葉の意味を即座に理解しライフルを構えると指示のあった方向に一発、紅い閃光を放つ、数拍のうちに小さな爆発音が聞こえてきた。
「いい腕だエレス、ミン、今のはどっちだ?」
「そやね。設置されてた場所を考えるとたぶんこの遺跡の防衛システムやな先にいっとる連中の仕掛けた罠にしては位置がちいとばかし上すぎるさかい間違いないやろ」
 ジュウゾウの問いに自分の考察を伝える。
「と、なると…あと少しか」
 その言葉の意味をアーシャはほんの僅か後に理解することになった。
「伏せろ!」
 その言葉の後に蒼い閃光が何もない空間を穿ち、空気が悲鳴をあげた。
「おいでなすった」
「いったいなにが…」
 その答えは暗闇の中からガシャンガシャンと音を立てながら何かが迫ってきた。
「あれは自動歩兵?しかし、あの出力は我が軍の所有しているものよりも遥かに上回っているぞ」
「あの自動歩兵はこの遺跡の防衛ユニットというところや。ジュウゾウまかせたでくれぐれもやりすぎんといてな」
「ああ、判ってるよ」
 そういいながらジュウゾウは自動歩兵へ駆け始めた。自動歩兵は搭載されたレーザーを放たず接近戦に持ち込もうとする。
「おお、なかなか高性能やな。設備えの被害を最小に抑える判断もしっかりできとるなんて、むっちゃ解剖したい」
 ミンは身もだえしながら興奮気味に解説をする。その相手をするジュウゾウは
「さてと、じゃーいくぜ必殺技パート4ソール・イーター」
 腰ダメに構えるとまるで矢のような鋭い突きを放つと自動歩兵の硬い装甲を穿ち貫く
「喰らい尽せザ・デス!」
 突き刺さった刃から放たれる黒い炎が機械仕掛けの兵の命の源を食らい尽くすのにさほどの時間は必要なかった。
「超楽勝。ミン」
「ほいほい、うちの出番やな」
 ミンのメガネがきらりと光る。
「いたいなにを?」
「沈黙必見」
 エレスにそういわれとりあえず成り行きを見守ることにするアーシャであったのだが…
「ほないくで『GEA』ハイプリエステス起動や!」
 ミンのメガネから突然コード伸び自動歩兵とつながる。
「……ハイプリエステス?……ちょっとまてぇぇぇぇぇぇぇえ!そ、それはまさか…」
「オリジナルGEA…ナンバー2…分析のGEA」
 エレスの駄目押しの一言にもう唖然とするしかなかった。
「ちょ、ちょっと待て…つまり…ミンもオリジナルGEAの保有者だったのか?」
「そうやで、ふふふ、すごいやろ…ふむふむなるほど…こら…おおおお」
 自動歩兵のデータを調べながら時折、感嘆の声をもらしながらミンは自分のGEAを自慢した。
「ど、どうなっているのだ!オリジナルGEAを!国家単位の力で調査してもなかなか見つからないものをなぜ個人で…しかも三人が所有しているのだ!」
「うん?ああ、まぁーそれは内緒だ。企業秘密というやつだな」
 ジュウゾウはあっさりと答えた。
「な、納得いかん!」
「そう、騒ぎいな。うちらがどうやってオリジナルを手に入れたかは教えられへんけど、そのかわりオリジナルGEAのこと教えたってもええで、オリジナルGEAのことあんまり知らへんやろ」
「た、確かに…」
 アーシャは少し考える。実際、どこで入手したなどということはどうでもいいことであり、最終的に帝国に持ち帰ればいい。なら少しでも情報を得るべきという答えにたどり着いた。
「なら、そもそもオリジナルGEAとはいったい何なのだ?一つでも一個大隊にも匹敵するだけの戦力になると聞くが…」
「なんやそんな基本的なことも知らへんかったん?オリジナルGEAはある一つの特性を突き詰めたいわば実験用GEAやつまりオリジナルGEAを研究すればGEAの製造や強化にもつながるし実験用のためにとんでもない機能をもっとるGEAもあるうんよ。たとえばエレスのタワーなんわ、打ち込むポイントによっては小国一つを滅ぼすだけの威力があるんよ」
「そ、そんなにか?」
「せや、破滅の性質の結晶といってもええ存在。それが『タワー』や」
「だったらジュウゾウの『デス』は」
「俺のか?俺のは、力の流転。まーようはエネルギーを吸収してそれを放出するという力らしいがな」
 あっさりと秘密をばらすというよりもまるでおもちゃを自慢する子供のようなジュウゾウであった。
「聞いていてなんだが…いいのかあっさりとばらして?」
「別に知られたからといってそれくらいじゃ俺には勝てないからな」
「確かに性質がわかったからってどうこうなる訳やないしな。ちなみにうちのGEAの特性は解析や。どんなもんでも解析できるんやで…多分、GEAのデータ収集なんかのために開発されたオリジナルGEAなんやろな。あとオリジナルGEAにも3タイプあるんやで、まず一つはうちの『ハイプリエステス』のような解析とか戦闘支援なんかに使うタイプ、エレスの『タワー』のような一面に優れた特化型、ジュウゾウの『デス』のような性質変化型、ようは力の方向性の制御みたいな力をもったGEAに分類できるんよ」
「なるほどオリジナルGEAとはそういうものだったのか…しかし、いいのかそこまで教えて?」
「…問題皆無…このレベルでの情報はある程度のレベルの国家及び特殊機関でなAランク情報として存在しています」
「A、Aランクだと…それは少佐以上の人間でなければ知ることのできない機密情報のランクではないのか?」
「まー確かにAランクやけど、たいした情報やあれへんからな。隠蔽のあまい情報やし。さてと、構造データの入手完了や、ついでに警備システムの進入コードも見つかったさかいちょっとまててや」
 そういってミンは壁を調べ始めると
「あった。これやこれ」
パネルを開き再びコードを差し込む
「進入開始…登録情報を入力と、これで罠の類は無効化は完了とほないこか」
 あっさりとそんな事を言ってのけた。
「いったい何を…」
「この遺跡、動力が保安設備と重要設備にたいしてのみ活動中やったねん。せやからその警備システムに細工をすこしさせてもらったねん。無人の警備システムを無効化するなんてうちにとっては朝飯前の準備運動やで」
 古代の防衛システムはあっさりと無効化されてしまった。
「ほな、行こうか。目的地までの道順も調べといたさかい」
「ああ、うん?アーシャ伏せろ!」
「なっ?」
 突然かけられた声に反応できず動けない。
「ちっ」
 ジュウゾウはすばやくアーシャの足を払うとアーシャの今まで立っていたところを何かが通り過ぎていった。
「…策的開始……発見…」
 エレスはライフルを構えると背後に向かって撃つ。
「そこに隠れてる3人組でてきいや!」
 その声に応えるように揃いの軍服を着た三人の少女が姿を現す。
「これは失礼、おば様」
 ショートカットの少女は見下すような笑みを浮かべる。
「お、おば…おんどれら殺す!」
「貴様はローグのイーディア・フリーゲリット!」
 その少女の姿を確認したアーシャが叫んだ。
「な、なんや知り合いかない?」
「あら?お久しぶりねアーシャ・L・ルフナ・スゥールド…まさかこのような所であなたに会うなんて」
  アーシャの姿を確認したイーディアもアーシャを見つめる。
「ふ、それは私の台詞だ。マギナ武闘祭での決着つけてやる。みな手を出さないでもらおうアイツは私の宿敵だ」
「みなさま、これは私情ですが、お手を出さないようお願いいたします」
 なんだか奇妙な成り行きである。
「行くぞ、GEA『ゴヴァノン』モード・ツインブレード」
 長さ40センチ程度と長さ60センチの長さの違う二種類の剣を構える。
「では、こちらも『EW』ライジング・トンファー」
 EW、それはローグの主力兵装の総称である。GEAの技術を転用し、変化能力を取り除き特殊な効果のみを残した属性付与兵装(Element Weapon)とよばれるものである。
「いくぞ」
「ええ」
 互いにはじかれたように間合いを詰める。イーディアの戦闘スタイルはトンファーを主軸に置いてはいるが基本は体術、トンファーに気をとられると容赦なく蹴りが飛んでくる。だが、アーシャも間合いの違う二種類の剣で斬撃を放つ。その闘いを見るジュウゾウはなぜか首をかしげている。
「どないしたんジュウゾウ?」
「いや…あの三人になんか見覚えが……うーんと……あっ…」
「“あっ”てなんや!」
「な、ナンデモナイゾ」
 ジュウゾウの声は裏返りながら目をそむける。そのジュウゾウの様子にエレスも無言で気がついていた。これはなにかあると。
 闘いに視線を送っていた二人の少女もジュウゾウを見て何かに気がついた。
「シューナ…」
 みつあみの小柄な少女が隣にならぶ自分よりも頭二つほど高い温和そうな少女に声をかける。
「なにかしら?ミリーさん」
「あの、黒衣の人って…」
「黒衣の方?…あっ…」
 二人の少女はイーディアとエレスの戦いから完全にジュウゾウを視線をむけ何かを確信すると二人とも駆け出した。
「な、なんや?こっちに走ってくるやる気かいな?」
 ミンは何事か判らずに構えをとる後ろでバタンと倒れる音がした。振り返るとジュウゾウが倒れておりその足にはエレスの鎖が巻き付いていた。
「敵前逃亡不許可」
「た、頼む…まずいから…いろいろと」
 珍しくジュウゾウは慌てふためいていた。
「何事だ?」
「何事です?」
 アーシャとイーディアも戦いの手を思わず止めると。その二人の横をシューナとミリーが駆けていくとジュウゾウに飛びつく。
「やっぱりジュウゾウ様ですわ」
「お会いしとうございました」
 二人の少女に抱きつかれジュウゾウは冷や汗をたらしながら明後日の方向を見ている。
「ド、ドチラサマデシタカネ」
「まー酷いですわ。あんなに激しく私たちの体を」
 何かを思い出したのか二人の少女は顔を赤く染めると同時にジュウゾウの顔は青くなっていく。
「ジュウゾウさまですって…まー本当に…申し訳ございません。お気づき出ませんで」
 イーディアも駆け寄りジュウゾウの前に座ると深々と頭を下げる。
「ほー、どういうことやジュウゾウ?」
「要説明」
「確かに聞いておく必要があるな遺言として」
 ミン、エレス、アーシャからすさまじいまでの殺気が放出されジュウゾウは固まってしまった。
「ああ、黙秘権は認めへんで?」
「ぐっ…わ、判ったから…アレは確か二年前…」
 ジュウゾウは重い口を開き始めた。
 二年前、ジュウゾウは一人ローグの施設にオリジナルGEAのデータを入手するため潜入した。むろん警備は厳重だったが問題なく潜入し、データを手に入れるまではよかったが脱出の際に警報機が作動してしまい。基地を必死で逃げ回っているときにジュウゾウを見つけたのがイーディア、シューナ、ミリーの三人だった。というかジュウゾウが隠れたのが女子更衣室のロッカーの中だったのだが…このくだりの時点でとりあえずエレスの棺おけがジュウゾウの頭に命中したのは言うまでもなく。そのあととりあえず三人を気絶させその場でTラウンド程楽しみとこのくだりで今度はミンの鉄拳制裁をうけ。そのあと一月ほどローグで三人とお楽しみな日々を送ったと白状したときにはアーシャから容赦なく踏みつけられるジュウゾウであった。


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