反逆の徒『アルト・フィリス』



 ベッドの上に一組の男女がシーツに包まっていた。
「で、いつまでそこに隠れてるのかな?クロエ」
 青年の呼びかけにいつ部屋に入ってきたのか黒衣の人物が影からあらわれキルデは慌てて身だしなみを整えた。
 クロエはなぜかフリップをもっておりそこには「申し訳ありません・・・お楽しみの最中でしたので・・・・・・」とかかれていた。それをみた青年は小さく微笑みかけた。
「いいよ。で、報告を聞こうか?」
 フリップから文字が消えると、こんどは騎士風の青年が映し出された。
「アルトか・・・」
 はたしてアルトとは、なにものなのだろうか?クロエの報告は始まった。

 ★ ★ ★

 アルト・フィリス。年齢は23歳、性格は冷静沈着、文武ともに秀でており容貌はマッチョではないが無駄なく鍛えられた肉体は引き締まっており生きたい芸術品といっても差し支えない。目鼻立ちは綺麗に整っておりアイスブルーの瞳は多くの女性を魅了し、さらに家柄はラルデリカでも5指に入る名家の産まれと非の打ち所が無い。
 そしてその名は聖王国ラルデリカでもっとも誇り高い聖天十字騎士団のなか燦然と輝いていた。人は彼のことを聖天十字近衛騎士団、始まって以来の天才と呼ぶ。その功績はわずか10歳でラルデリカ武闘際で優勝し、13歳で騎士団長へと上り詰めた。
 北方のオーガ討伐。ゴブリンに囚われてい人々の救出。ノーライフキングとの死闘の末に止めはさせなかったがそれでも退けることに成功。さらにレズン地方に現れた無限の再生能力をもち毒のブレスをもつヒドラを1人で退治する。と偉業を上げればきりが無い。
 その彼と彼の部隊200人が反旗を翻したの報せが王都に届いたとき誰もが耳を疑った。そして、それを確かめるために向かわせた調査隊がアルトの手によって壊滅したことで反逆は確かなことと証明された。

 ★ ★ ★

 馬上のアルトの前に金色の髪を馬の尾のように結びした美しい少女がバスターソードを両手でしっかりと握り立ちふさがっていた。
「引け・・・・・・チェルシー」
「いえ、引きません。お兄様!なぜこのようなことを・・・思い直してください。まだ、今なら間に合います!!」
 体を震わせながらチェルシーは必死にアルトを説得し様としたがアルトは真っ直ぐな瞳で見据え静に語り始めた。
「ムダだよ。チェル・・・私は引かない。もう、この国は終わりだ・・・金で法位を買うもの、神の教えを金儲けにしいまではブクブクと醜く声太った豚どものが高笑いを浮かべているなか、貧しい民は飢えで死んでいく!!もう、私はこれ以上耐えることはできない・・・・・・」
 その声はチェルシーにとってとても心地よい人前では厳しい兄が自身と触れ合うときにだけ見せる優しい響きでありながら強い意志が込められていたことがはっきりと聞き取れた。
「で、でも、だからって・・・闇に組するなど・・・」
「闇に組するか・・・・・・偉大なる神に反逆する愚かな闇を討つ者・・・それが聖天十字騎士団の前文だったな・・・だが果たして闇は悪なのか?」
「お、お兄様なにを言って・・・」
「悪だの善だのそれは人が見えるただの一面でしかない・・・なのに人は闇を知ろうとせずにただ恐れるだけ・・・私は知ってしまったのだよチェル・・・闇に生けるものの悲しみを苦しみを痛みをそして彼らの優しさを・・・だから私は彼らの手を取った・・・チェル、このまま隣国に逃げろ。戦火にお前を巻き込みたくない・・・頼む」
「嫌です!!お兄様が止まらないのなら私は銀十字騎士団の一人としてアルト・フィリスを神に仇名す者討ちます!!」
 敬愛する。兄に刃を向けるそれはチェルシー・フィリスにとって断腸の思いだったろうだがその瞳には苦痛に耐えながらも必死に己を貫く意志が込められていた。
「そうか・・・お前達は手を出すな。」
 馬から青年はおり部下達に静止をかけ、無手のまま緩やかに構えをとる。それを合図に少女は一気に間合いを詰め鋭い斬撃を放った。だが、その斬撃はあっさりとかわされる。
 しかし、それは予想内のこと相手は最高の天才と謳われたほどの人物。今まで彼に少しでも近づきたくて、彼の妹であることに恥じぬように修練を積んできた。自身との実力の差がどれほどあるかも理解している。それでも少女は懸命に斬撃を繰り出し続けた。それに対して青年は、ほんの数歩だけ動いて間合いをずらすことで生じるわずかな死角を巧に利用し少女の斬撃をかわしつづけた。
 その戦いはあまりも不思議な光景だった。少女の剣からは明らかに殺気が放たれているのに青年を傷つけることは無く。それどころか青年が指導するかのように少女を動かしていた。
 少女の息は乱れ斬撃の鋭さも徐々に鈍くなっているのに対し青年は呼吸は乱れるどころか汗一つかかずに幾度となく少女の剣を弄んでいる。
「はぁはぁ・・・なんで・・・攻撃しないのですか・・・・・・わ、私は本気で・・・・・・戦ってるのに・・・」
「そうだな・・・・・・許せよ・・・」
 そう呟くと一瞬、青年の姿が消え次の瞬間には少女の意識は深い闇へと落ちていった・・・・・・
(お兄様・・・・・・)

 ★ ★ ★

(ここは・・・)
 チェルシーが気がつくと見慣れない天井が視界に入った。そして、自身が生きていることが認識できた。
「ようお目覚めか?」
 声をかけてきたのは神官服を来た男。無精髭をはやしただらしない顔つき。はっきり言って神職にあるとは到底思えない。
「しかし、お前さんも無茶するね。アルトの実力を一番知ってるだろうに・・・」
(お兄様を知ってる?いえ、多分、捕まったんだ・・・捕まったという表現が正しいかは判らない。でもお兄様が反逆したのは間違いなくて、それだとこのだらしない男がいるのも判る。そもそも隊長であるはずのお兄様を呼び捨てにするなんて!!なぜ、このような男が私の傍に・・・はっまさか、きっとお兄様の目を盗んで私にいかがわしいことをなんて破廉恥な・・・このままやられるものですか!!)
 実は、チェルシーは重度のブラコンだった・・・そもそも騎士団に所属しているチェルシーが単独でアルトの前にあらわれたことからしておかしいのである。命令も無く出撃すればそれは立派な軍規違反。だがチェルシーはアルト反逆の報を聞いていても経ってもいられずつい単独でアルトに接触した次第である。
 それはともかく・・・
「おい、大丈夫・・・うわっ」
 チェルシーは起き上がると同時に男にシーツを投げかけると同時に回し蹴りを放った。着ていた鎧は脱がされ武器は取られており下着姿だが運良く見られることは無かった。
 もっとも、ここまでは順調だったが、それもそこまで放った回し蹴りがあっさりと止められベッドに押し倒されてしまい。男に馬乗りのされる体勢になってしまった。
 そこにコンコンと音が響き
「失礼するぞ」
 少女らしき声が聞えるとドアが開いた。修道女の少女とそして一緒に入ってきた青年は言葉を失った。

 下着姿の少女
   ↓
 男に押し倒されてる
   ↓
 少女の貞操の危機

 そんな構図が2人の脳裏をよぎった。
「き、貴様なにをして・・・」
「ま、まて・・・これは・・・はぐぅっ」
 少女が激昂するよりも早く一緒に入ってきた青年が一気に駆け出し押し倒していた不埒者を蹴飛ばすと不埒者は一回、二回、三回ほど回転しながら窓ガラスを突き破りガラスが粉雪のように舞い散らかしながら落ちていった・・・・・・どうやらここは宿屋の二階だったようだ・・・あっ鈍い音が・・・
「だ、大丈夫か!?チェル!!へ、変な事されなかったか?」
 アルトはチェルを抱きしめながら安否を確認した。
「あー取り乱してるとこ悪いがアルト・・・・・・クルツが落ちたのだが・・・・・・」
「知らん。」
 にべも無く言い放った。
「えっ・・・お兄様・・・あのその」
 普段はクールな兄がここまで取り乱したことにチェルシー自身もかなり動揺してしまった。そんななかすごい勢いで階段を駆け上がってくる音が響き部屋の入り口に息を切らしながら先ほど窓から落ちた男が戻ってきた。
「はぁはぁ・・・おいアルト!!いきなり何しやがる!!」
 たしかに真っ当な言い分である。
「大切な妹が男に押し倒されていたら普通けりの一発や二発いれるだろ?」
 何を馬鹿なことをいってるんだお前みたいのようにあっさり言い切った。
「だからってあそこまでやるか?なんかいってくれリーゼ」
 声を荒げながら恋人である修道女に助けを求めたが
「うん?まー前科があるからな・・・・・・それにお前ならあれくらいどうてことがないだろ?」
 助けを求めた修道女姿の少女からあっさり助けを拒まれるどころか逆に敵に回られた。
「お、俺が悪いかの?」
「「お前が悪い」」
 二人に同時に言われクルツは落胆し床に突っ伏した。
「では、妹君が気がついたようだ。我らは去るとしよう。いろいろと話もあるだろうしな・・・いくぞ」
 リーゼはクルツを引きずりながら部屋を去っていた。
 チェルシーにとって今見た兄の姿に不思議な感覚を覚えた。非常に気安いのだ。兄は皆から慕われているが対等な友人などは見たことは無いし対等で接することが出来るものを見たことが無い。だが、今の2人との会話、それは自然で友人同士そのものであった。
 ベッドに腰掛け2人は話を始めた。
「あーチェル・・・その・・・体はなんともないか?」
「いえ・・・お兄様・・・その・・・あの・・・お兄様!!まだ間に合います・・・ですから・・・」
「いや、そんなに甘くないよ。チェル。それに仮に許されるとしても戻る気はないよ」
「なぜです!!なにが不満なのですか?私は・・・私は・・・お兄様に拾ってもらって・・・それで一生懸命にがんばって・・・」
 チェルシーはアルトと血の繋がった兄妹ではない。両親をモンスターに殺されあわやというところをアルトに救われそのままフィリス家の養子となったのである。
「それは・・・お前に縁談が持ち上がりている。相手はゲイニス侯爵の子息アイベルトだ。俺はそれが耐えら。なかった大切なお前を!!あんな醜く肥え太りただ産まれが侯爵家の息子というだけで!!」
「お兄様・・・そんな、そんなことで反乱をなさったのですか?私は・・・フィリス家のためになるのなら・・・そうです。私がアイベルトさまの妻になる条件として温情をいただけるように・・・」
「よせ!!」
 アルトは思わずチェルシーをベッドに押し倒していた。
「す、すまない・・・だがな・・・チェル。俺はお前を愛してしまった・・・妹してではなく1人の女として・・・くだらないことかもしれない・・・それでも俺は自身を抑えられなかった・・・それに俺はずっと悩んでいた。ただ生まれだけという理由でふんぞり返り民を食い物にする輩・・・化け物と呼ばれる者たちのこと・・・そんなときに彼に出会った。」
「彼・・・ですか?」
「ああ、今回の反乱の首謀者・・・俺は彼の野望に共感し共に戦うをことを決めた・・・だからたとえお前の事が無くとも反乱を起こしただろう・・・」
 兄の告白をチェルシーは静に聞きつづけた。
「かつてオーガ討伐の任を命じられたとき俺は迷うことなく戦いを挑んだ。そのとき相対したオーガのリーダーは気高かった。伝え聞くように粗暴でただ破壊を行うということなく。さらに姿は人に近かった。そのリーダーは一対一の決闘を求めてきた。負ければその地を自分達はさるという条件で・・・むろん、その戦いは知ってのとおり俺が勝った。オーガ達は潔く去りそしてリーダーは自らの敗北した責として自らの心臓を抉った。一族全てを背負うものが敗北したとき自ら命を潔く絶つ俺はその行為に誇り高さを感じそれから魔物というものに疑問を覚えた。彼らもまた生きるために戦っているのだとな・・・」
「でも・・・やっぱり私のことが・・・・・・なければもしかしたから・・・その」
「もしはないよ。さてと話は終わりだ。お前を国の外に出さないとな。軍規違反の責めもあるだろうし、なによりこれからこの国がどうなるかは解からないからな・・・」
「そ、そんな・・・」
「俺はお前に死んで欲しくないんだよ・・・だから・・・なっ?」
「私もお兄様には死んで欲しくありません・・・私もお兄様のことを・・・始めてあったその日からずっと・・・ずっとお慕い申し上げておりました・・・・・・私はお兄様の傍に居たいです・・・」
 ただ沈黙が続いた。互いに思い合いながらも義理とはいえ兄妹として抑えてきた思いはあふれ自然とどちらからとも無く唇を重ね合わせた。

 ★ ★ ★

「あまり見ないでください・・・その恥ずかしいです」
「綺麗だよ。チェル・・・」
 ベッドの上。2人は衣服を脱ぎ去り肌を重ね合わせていた。チェルシーは色白で小柄な体つきではあるが、それでも最近主張を始めた胸はあきらかに女を感じさせる。
「チェル・・・」
「お兄様・・・」
 2人の甘い息が漏れる。互いに気持ち良くなってもらおうとつたない手つきで互いの隅々を愛撫しあい2人の感度は高まっていた。
 チェルシーは小さなふくらみの上にある小さな野苺は熟し激しく主張し、それを味わうように丁寧に舌で愛撫するとチェルシーは頬を上気させながら「あぁん・・・はぁん・・・お兄様・・・そんな・・・ひうぅぅっ」と甘い声を漏らした。
「お兄様・・・お願いです・・・私もう・・・だから・・・その」
「ああ、チェル・・・」
 アルトの愛撫で少女の秘裂はしっかりと濡れており少女の体は男を受け入れる準備を整えていた。アルトはそそり立つペニスを少女のヴァギナへと挿入した。ぴたりと閉じた秘裂は抵抗があったが、かまわず挿入したが・・・
「はぁぐぅ・・・痛い・・・・・・あぎぃ・・・お兄様・・・ちょっとまってください・・・」
 破瓜の痛みに耐えかね身を強張らせた。
「判ったよ。チェル」
 青年は苦痛に耐える妹を気遣い動きを止めながらも耳を甘噛みし髪を軽くなでて落ち着くのをまった。
「お兄様・・・も、もう大丈夫です・・・う、動いてください・・・」
「ゆっくり動くからな。」
 少女の意識から痛みが消えると自然と甘い声が漏れ、徐々に自ら腰を動かし始めていた。
「はぁん・・・お兄様・・・お兄様・・・もう大丈夫です・・・だから・・・動いてください・・・」
 アルトの動きは徐々に加速しそのたびに一動作とともに呼吸が乱れる。だが2人の互いの呼吸はやがて重なりそして快感への遥か高みへと導いた。
「お兄様、お兄様、なにかくる白いのがあああぁぁぁぁぁぁぁ」
「チェル・・・俺も・・・うっ」
 アルトは己の子種で妹の胎内を満たしていった。
「はぁはぁ・・・お兄様・・・お兄様と一緒なら・・・私は幸せです・・・」
「俺もだよチェル・・・」
 そっと唇を重ねた

 ★ ★ ★

 アルトが愛しそうに少女の髪をなでていると・・・
「もう、済んだか?」
 いつまにか気だるそうにクルツが入ってきていた。
「うわっ・・・クルツ・・・お前・・・いつから?」
「うん?ああ、安心しろおまえらがやってるのは判ったから外で待ってたぞ。しかし、激しいなちょっと俺、赤面だぞ。」
「うっ・・・」
 言葉を失い何もいえなくなった青年に追い討ちをかけるように続けた。
「しかし、義理とはいえ妹に手を出すとはな。獣だね。そもそもそんな奴に蹴られて二階から突き落とされるなんてああ、なんて可愛そうな俺。」
 王宮にいる頃は常に涼しげで機械的な表情を浮かべていた青年の顔はいまは面影も無くなんとも人間らしい表情をしていた。
「わるかったよ・・・まったく」
「冗談だよ。まーよかったじゃないの?ずっと好きだった子と一緒になれて。ああ、それとあのロクデナシからの連絡。剣の国は予想通りに落ちそうだからこっちも予定通りにだと・・・」
「了解だ。というか一応、いっておくがちゃんと陛下と呼んだほうが良くないか?」
「あーまーいいだろあいつだってきっと『素晴らしい呼び名をありがとう』といってくれるさ。それで?妹はどうする?一緒に連れて行くか?」
「そうだな・・・・・・一緒にと約束したからな・・・だが公私混同は・・・」
「それなら俺も似たようなものだろ?しっかり守ってやれよお兄ちゃん」
「ああ、守って見せるさ・・・必ずな」

 ★ ★ ★

「なるほどね。妹と・・・」
 クロエの報告を聞きながら青年は頷いていた。
「とりあえず彼の方は問題無いみたいだね・・・それとクルツの奴だれがロクデナシなのかね・・・ふふふふ覚えておくよ」
 メモ帳を取り出すと短くなにかを書きこんでいた。
 青年は報告を聞きながらも部屋に机を用意させており書類などに目を通していた。その量は青年の背丈よりも高く詰まれているがそれがどんどんすごい勢いで処理されている。キルデはというとすでに部屋を後にしており事後処理へと戻っていた。


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