決戦!!ラルデリカ最後の日(後編)
鋼の巨鳥は一点を目指して上昇していた。鋼の巨鳥の名は『ティターン』ヴリュンヒルデ。それを操るのはチェルシーそして副座にはゼクロが座っていた。
「来ます!!」
チェルシーがそう叫んびほんの少し機体を動かした一瞬、その場所を青白い光の矢がその場を通り過ぎたのつかの間、巨鳥から放たれた閃光が赤い光の矢が青白い矢が飛んできたほうへと飛ぶと数秒後、爆発音が響く。
「あの大丈夫でしたか陛下?」
「ああ、大丈夫だ。構わず行ってくれ」
巨鳥は『イカロス』の堅牢な迎撃システムを撃破していきその本体が目に入った。
「大きい・・・」
それは巨大な城いや都市が浮いていたのである。
(た・・・け・・・・・・て・・・)
「えっ・・・この声・・・間違いない」
「どうかしたか?」
「声が、声が聞こえたんです。助けてって」
ゼクロはそれを聞くと次の指示を出す。
「とりあえず城につけられるか?たぶん城門からなら中に入れるはずだ」
「は、はい」
チェルシーはヴリュンヒルデを城門へと進ませる。城門は開かれておりそこから球体が無数に飛んでくるとその球体から無数青白い光の矢が広範囲に放たれる。その光の矢を旋回、上昇、下降を巧に使い分けながら反撃をする。巨鳥から放たれた光の矢は数こそ少ないが的確に敵を貫き爆発を起こしその爆煙が晴れるあっというもに球体を一個残らず残骸へと変える。
「つきました・・・あの、この後は?」
「俺を降ろしたらここから離れろ、お前なら1人で逃げれるはずだ」
「そ、そうはいきません。私も戦います」
強い意志をもった瞳で返されゼクロは説得するだけ時間の無駄と考え
「・・・その手の目をする人に何を言ってもムダだなならお前には陽動の役目をしてもらう。だがあまり無茶をするなよ?お前になにかあったらアルトに俺が殺される」
最後に冗談ぽくいうとゼクロはヴリュンヒルデから降りるとイカロス城内へと乗り込んでいった。
「陛下・・・ごめんなさい。私、やらないといけないことがあるんです」
ゼクロの姿が見えなくなったあとチェルシーはヴリュンヒルデを天使をもした形体へと変形させ城内へと進んだ。
★ ★ ★
チェルシーはヴリュンヒルデを駆り深部へと向っていた。まるでその道を知っているのかはたまた何かに導かれているのかは判らないが迷うことなく道を選ぶ。だが、敵の数も半端ではない。閃光が飛び爆音が響きわたる。だが、その無数の閃光を時に避けあるいは弾きヴリュンヒルデの手に握られた一対の刃で敵を切り裂き奥へと進む。その姿はまるで戦いの女神の舞のようであった。
「もうすぐ・・・あの扉の先にいる」
行く手を阻んでいた扉に近づくと、なにもすることもなく自然と開かれた。
そこは非常に広い空間で全長が5メートルあるヴリュンヒルデの頭上よりも天井はさらに18メートルは高いであろう。
『フォフォ、まさかここまで来るものが居るとはの』
老人の声が響く
「どこです?」
『どこ?目の前に居るではないか?』
そういうとチェルシーの前の壁が動いた。
『おお、これはすまんの。こちらがあまりに巨大な故判らんかったかの?』
「まさかそんな・・・」
見上げるとはるか上方、天井の近くに頭らしき物が見える。チェルシーの前の壁が動いたのではなく巨大ななにかがいるのである。
『見えるかの?この『ネフィリム』アナンタの巨体が?さてと侵入者を排除させてもらうかの』
「えっ・・・?」
機械仕掛けの触手が襲い掛かってくる。それを一個一個撃破するがとても間に合わず片翼がもがれる。
『ほれほれ』
老人は虫を甚振るかのように少しずつヴリュンヒルドを壊していく。だがチェルシーは例え相手が巨大であっても戦う意思は折れていない。アリがゾウへと挑むのと変わらない質量の差がありながらも必死に戦う。その放たれる攻撃はアナンタの外装をすこし削り取る程度でも無限ともいえる触手を一、二本切り落す程度でも決してあきらめない。
『ふむ、いい加減に飽きてきたの』
しかし、そのがんばりも一瞬で水泡へと帰した。無数の触手がヴリュンヒルデ絡め取るとゆっくりと圧迫していく。
『さてとどこまでもつかの?』
「こんなところで・・・負けられない」
必死にあがくも万力で締め付けるような触手の締め付けで機体は軋み亀裂が走る。
(ここまでなの・・・お兄様・・・もうしわけありません・・・チェルシーは・・・もう)
脱出は不可能、流石のチェルシーもあきらめかけたそのとき
(あきらめないで、貴方には力があるわ)
夢の声が心に響く
(この声はでも・・・私には・・・力なんて・・・)
(大丈夫、私が力を貸すからさー手を前にかざして)
チェルシーは声の主の言葉に従い手をかざす
(そして、こう唱えるのよ。創造と破壊と再生の天龍コアトルよ)
「創造と破壊と再生の天龍コアトルよ」
口から自然としかし力強く言葉を紡ぐ
(そうそうよ・・・そしてこう続ける。創造と破壊と再生を我が手に宿したまえ)
「創造と破壊と再生を我が手に宿したまえ・・・えっ、なに?」
差し出した手に熱い感覚が広がる。
「これは・・・えっ・・・そんな・・・でも・・・判りました」
チェルシーの頭の中に一気に情報が溢れ出す。
(それが何かは理解できたわね?さーみせてチェルシー貴方の力を)
「はい。『回れ・・・回れ・・・輪廻の輪よ。創造と破壊と再生の理の龍よ・・・全てを貫く閃光の刃を私にください』」
その言葉を終えた後チェルシーの手には光り輝く剣が握られていた。
「えいっ!!」
手に持った剣を振ると最も強固な装甲であるはずのコックピットの装甲とともに締め付けていた触手を一刀両断される。その一撃でできた裂け目から脱出すると剣を構える。
『なんじゃと?バカな、内部から触手もろとも切り裂いたじゃと・・・ありえん・・・いったいどうやって・・・面白い、殺すのは止めて捕らえさしてもらうかの』
再び触手がチェルシーに襲い掛かるが
「もう、負ける気がしません。『回れ回れ輪廻の輪よ。創造と破壊と再生の理の龍よ。天を舞う翼を私にください』」
その言葉とともにチェルシーの背に純白の翼が現れる。
『その呪文は・・・龍語魔法じゃと?バカなその使い手は・・・』
そこまでいって老人はさらに驚愕する。
「私は求める千条の光の矢を!!」
チェルシーの翼から羽が舞うとその一枚一枚が光の矢と変わり触手を貫いていく
『己、ワシのアナンタを!!』
初めて巨人の豪腕がうなるがチェルシーは片手でその圧倒的質量を受け止めたのである。
(いいわ。チェルシー。やっちゃいなさい)
「はい、私は望む閃光の大槌!!」
チェルシーの生み出した光のハンマーが巨人の胸部を激しく打つと装甲が砕け散るとそこには大きな水晶が輝いていた。
「あれは・・・夢の女の人」
(ええ、そうよ・・・)
『これほどの力があるじゃと?バカな。たとえあったとしてもいかなる魔法も無力化することができるはずじゃ』
動揺し動きが止まった巨人に一気にチェルシーは近づくと力任せに水晶を取り出した。
『なんじゃとしまった・・・くっ!!』
水晶を抜かれた巨人からは軋む音が響き装甲が徐々に欠けどんどん瓦解していく。
「やった」
(ありがとう・・・でも早く出してくれると嬉しいのだけど・・・)
「あっ、はい。私は望む束縛の戒めよ解けよ」
その言葉とともに水晶は砕け散り水晶の中にいた女性は解放されるとチェルシーに抱きつき。
「きもちいい。こうやって喋るのも10年ぶりくらいかしら?助けてくれてありがとうチェルシー」
「あの・・・貴方は?」
その反応にキョトンとしたチェルシーは思わず訊ねた。
「がーん・・・もしかして私のことわからないの?」
「えっと、そのすみません・・・」
思わず謝ってしまった。
「ショックだわ・・・ゼクロからも私のことを聞いてないの?」
いじけるように両人差し指をくっつけたり離したりしながら訊ねる。
「えっ・・・陛下からですか?」
「なんでゼクロのことを陛下て呼んでるの?」
「あの・・・それは・・・」
「ちょっと待って」
チェルシーの言葉を一旦、止めるとエキドナは周りを確認する。
『ふふふふ、貴様よくもやってくれたな・・・エキドナを解放したからの・・・動力が落ちたんじゃ・・・イカロスは地に落ちるわ・・・くくくくくくはははははははは・・・もう終わりじゃよ』
老人は狂気につかれたように大笑いをすると音声の最後に鈍い音が響くとゴゴゴゴと激しく何かが崩れ始める音が大きくなった。
「不味いわね・・・とりあえず制御室に向うわよ。このままだとイカロスが落ちるわ」
「えっ・・・あっ、はい」
チェルシーは言われるままエキドナの後に続いた。
★ ★ ★
ゼクロは重い制御室の扉を開いた。
「ずいぶん遅かった・・・いや早かったですね。王子」
それも予測済みと落ち着いた口調でフランシスが出迎えた。
「手厚い歓迎だっぞ・・・フランシス」
ゼクロの体には致命傷はないまでも頬や手足には無数の傷がついていた。
「それはどうも・・・しかし、ここまでまさか剣一本で100体近いネフィリムや無数の防御システムを突破してくるとはいやはや。流石と先ずは言っておきましょうか?」
「ここまでだな。フランシス。十年ぶりというところか・・・覚悟はできているか?逆臣フランシス・ファーブニル・ジーク・ムント」
剣をフランシスへと向ける。
「ふふふふ、その真の名前で呼ばれるのもずいぶん久しぶりですが・・・殺される気はありませんよ。王子!!」
フランシスは跳躍すると腰の剣を抜きゼクロへと切りかかる。その斬撃は鋭いがゼクロもその斬撃を弾き間合いをとる。鋭い斬撃の応酬、一進一退の攻防が繰り広げられる。
事体に変化がおきたのは切り結んぶこと30分近くが経過した時だった。
「くっ!」
フランシスの一撃でゼクロの頬から鮮血が舞う。
「がはっ・・・」
だが、ゼクロの一撃はフランシスの肩口に深く切りつけておりフランシスは片膝をつく。
「はぁはぁ・・・まさかこれほどまでとは・・・」
「次で終わりだフランシス」
「終わり?ふははははは、舐めてもらって困りますよ王子!!純血の龍人族である私が下等な人間とのハーフの貴方に負けるとでも?御覧なさいこれが高貴なる純血の龍人の力です!!」
龍人族。それはこの世に存在する全ての種族と比べあらゆる面で秀でておりその力で超文明を築き上げるがその力を制御できずに滅んだといわれる古の種族である。
フランシスの傷が治ると肉体が一回りほど大きくなり見る見る蛇のような鱗に覆われると背中には蝙蝠の翼と長い尾が生え頭からは角が生える。
「どうですこの威厳のある姿?そう、私こそが最高の龍人・・・なのに姫様はなぜあのような下等な人間の冒険者を選んでしょうね?」
たいした力をいれない軽い動作で繰り出された拳にゼクロの反応が一瞬遅れ腹部に命中し吹き飛ばされる。
「ちっ!」
「おや、どうかされましたか?軽く殴ったつもりなのですけどね・・・まー所詮は下等な人間とのハーフ。誇り高い龍人の血を引いていても所詮はその程度でしょうね。まったく姫様も私を選んでいれば国は滅ぶどころか世界に覇者となっていたものを、人間などと結ばれ結果が龍語魔法を使うのが精一杯で変身することもできないできそこないとはね」
唾棄するように言い放った。
「言ってくれる。お前のくだらない自尊心のために国を売り敵国の地位を手に入れた奴に言われたくわないな。そもそもお前の場合は母さんに片思いをしていた完全な横恋慕だろ?」
ゼクロは吹き飛ばされたかに思えたが実は後方に自ら飛ぶことによってダメージを軽減していたのである。
「それにできそこないの龍語魔法とはいってくれる。ならそのできそこないの一撃を受けてみるがいい『冥府の龍王よ。その爪で我を阻む者を切り裂け』」
漆黒の爪がフランシスへと飛ぶが
「おっと『宝物の番人たる毒龍よ。その堅牢なる翼で我を守れ』」
翼が大きく広がりフランシスを包み込むと漆黒の爪を防ぐ
「まあまあの威力ですが今度はこちらが『毒龍よ。その毒牙で・・・」
魔法を唱えようとした瞬間激しい爆発とともに大きく揺れる。
「これは・・・ドクターどうした?」
慌てて通信装置に呼びかけるが反応がない。
「くっ・・・いったい何が・・・」
ゼクロそっちのけで事体の収拾を始める。
「これは・・・やってくれましたね。まさか動力炉を破壊できるものをつれてきているとは・・・このまま行けば聖都に落ちますね・・・やれやれ貴方のせいで余計な仕事が増えてしまったではないですか・・・しかたありません。ここは破棄しましょう。『毒龍よその咆哮を放て』」
天井に穴を開けるとフランシスは飛び立とうとするが
『冥界の龍王よその牙をつきたてよ』
その一瞬を見逃されるわけもなく黒龍が飛びフランシスを襲い肉を深く抉る。
「ぐっ、なかなかの一撃でしたが・・・私を倒すことはできなかったようですね」
だがフランシスの負った傷が見る見る打ちに再生されていく。
「では、空を飛べない貴方はそのまま地に落ちるといいでしょう」
そういい残しフランシスは空に舞うが、
「だれが飛べないって?『冥界の龍王よ。我に翼を』」
ゼクロの全身から黒いオーラが溢れそれは巨大な黒龍の様であった。
「お前は、俺を過小評価してたみたいだな。それじゃそろそろ決着をつけさせてもらうぞ?」
「ぐっ・・・」
2人の間に緊張感がはしり一瞬触発の臨戦状態になった。
「この薄情者!!」
だが、その2人の間に1人の女性がわってはいりゼクロに掴みかかった。激しく揺さぶった。
「姉さんは悲しいわ。貴方がこんなに薄情な子に育って・・・なんであの子に私のことを話してないのよ!!」
「あぐっ、あぐっ・・・ちょ・・・エキドナ・・・ねえ・・・なんの・・・」
「一体何が・・・しかし、エキドナの封印が解けるなどあの封印を解けるものは龍語魔法の使い手だけはず・・・むっ?」
鋭い閃光がフランシスへと襲い掛かってきたがそれを何とか回避する。
「今のは?」
視線を走らせ
「外れた・・・もう一度、私は望む光の矢×15!!」
「なに!?く、毒龍よ毒の牙を放て」
紫色の光がチェルシーから放たれた光の矢と相殺する。
「「なっ、なんでお前が龍語魔法使えるんだ??」」
思わずゼクロとフランシスは同時に叫んだ。
「何言ってるの。チェルシーが使えて当然でしょ?妹なんだから・・・あっ、そうだゼクロ、なんでチェルシーに陛下なんて呼ばせてるのよ!!」
「いや、姉さんそれはおいおい説明するから・・・今はフランシスを」
さすがのゼクロも焦り何事なのか理解できてはいなかったがとりあえずそう口にするのが最善だと直感的にそう思った。
「判ったわきちんと説明してもらうからね。さてとフランシスよくも私を長い間閉じ込めてくれたわね。たっぷり落とし前をつけさせてもらうわ」
「ハーフが3人集まったところで私が負けるわけあるまい」
3対1の戦いが始まった。
「私は望む光の剣。剣よ舞え」
チェルシーの生み出した光の剣がフランシスを切り刻む。
「海龍王ティアマトの力を見せてあげる。七頭水竜連弾」
エキドナは七つの頭をもつ水の龍を作り出しその牙がフランシスを襲う。
「くっ、だが龍の中でももっとも生命力が強くもっとも強固な鱗をもつファーブニルがこれくらいで・・・」
防ぎきったはいいがフランシスの体勢は大きく崩れていた。
「ならこれはどうだ?『冥界に眠る龍王バハムートよ。いまこそ目覚めのとき・・・』」
「なっ、バカな・・・冥龍王バハムートを目覚めさせることができるだと?長い龍人の歴史の中で初代龍人王のみが使った記憶が文献に僅かに残っているだけだぞ?そんな最上級をハーフである貴様が使うことなど」
フランシスは狼狽する。
『深く冥府の門を越え。暗き顎を開きその咆哮を持ちて愚かなる者を塵へと変えよ』
黒いオーラがよりいっそう濃くなる。
「行くぞ『冥龍王・滅界』」
巨大な黒龍が大きな顎を開きフランシスを捕らえる。
「ぐあぁぁぁ体がぁぁあおのれぇぇぇぇこのまま死んでたまるかぁぁぁぁあこうなったら少しでも多くを道連れにしてやるぅぅぅファブニールよその体躯をもち瓦礫の山を築けぇぇぇえ」
フランシスは全ての力を振り絞り最期の一撃をイカロスへと放った。
「なに!?」
その一撃でイカロスはバラバラに砕け大きな破片となって地上に落ちていった。
「くっ、不味い。あれクラスの大きな塊がバラバラで落ちたら被害がでかくなる。さっきの一撃ですこし力を使いすぎたし・・・」
必死で考えをめぐらし最善の策を考える。
「陛下!!」
「ゼクロ」
エキドナとチェルシーが空を飛び駆け寄ってくる。
「時間がない。姉さん、チェルシーとりあえず可能な限り破壊してくれその間に連絡をとる」
「判ったわ」
「はい」
2人は破片を砕き始めるが落下速度のほうが速く地上にたどり着くまでに全てを壊しきるのは不可能に近いゼクロは素早く通信魔方陣を走らせる
「全員聞こえるか?いまラルデリカに向ってイカロスの破片が落ちてくる。逃げれる者はすぐに逃げろ。破片が落ちればラルデリカは完全に廃墟になる」
その通信に
『それだと、逃げてもムリよね。なら可能な限り破壊するわ』
『まったくじゃ、それに無力な無辜の民もおる。それを守るのも王者の勤めであろう?』
『堕天衆にも破壊をさせます・・・』
全員が口々に破片の破壊を述べてきた。
「判った・・・だが死ぬことは許さない。全員、生きろ」
その通信を受け取った地上では
「そろそろ破片が落ちてきたわね・・・」
フリーダが無数の魔方陣を展開する。
「倒れるまで唱えて見せるわよ。『破壊の鎚よ。その力は純粋なるまさに破壊なり。爆裂戦鎚』」
魔方陣から放たれた光球が地上に振り注ぐ岩を細かく砕く。
「数が多いな・・・だが弱音は吐かぬ」
高い建物の上にキルデは斬馬刀を構えると自らの体よりも大きい岩を砕く。
「キルデ様。我ら五行鬼もはせ参じました。お手伝いいたします」
駆けつけたオーガの精鋭はその短くのべるとそれぞれ散り岩を砕き塵へとかえる。
「はぁぁぁぁ疾風裂刃」
馬族の長メイは槍を振り岩を砕き
「転身蘭武だよ」
兎族の長フェイリンは爆薬を仕込んだナイフを岩に投げつけ破壊していく。
「隆起地昇ですわ」
牛族の長アンリは大地を操る術で岩の塊をぶつけ破片を細かくする。
「そっちいったわよ。フェイロン」
「任せろシンシア」
犬族のフェイロンと猿族のシンシアはコンビネーションを駆使して岩を砕いていく。
「息が上がってないかリーゼ」
「ふん、私を誰だと思っている?私はヴァンパイア、リーゼロッテ・ドゥケルだぞ?これをみてそれを言えるか?炎球天界」
特大の火球が頭上に浮かぶとそのまま固定され触れる瓦礫が蒸発する。
「どう?」
「おお、楽できて良いぞ」
クルツはいつの間にかのんびりとくつろいでいた。
「休んでないであんたもなんとかしなさいよ!!」
「ああ、じゃーえっとかなりの質量だから・・・距離800・・・性質は鉄・・・形状は鎚・・・必殺!!アイアンハンマーショット!!」
巨大な金槌を作るとそれで岩を弾きまるでピンボールのようにリーゼの作り出した火球へと放り込んだ。
「よしーじゃ次々いくぞ」
「うぉぉぉぉぉ」
アルトはティターンで岩石を受け止めそのまま抱きしめ砕いていく
「まだまだあるのか・・・だがチェルもがんばっているんだ。ここであきらめるわけにはいかない」
岩を弾き飛ばし砕いていった。
「影門転位」
クロエは影で岩を包み込み遠くへと飛ばす
「黒炎よ焼き尽くせ」
アバドンの黒炎が岩を焼き
「蜘蛛の布」
アラクネの作り出した結界が落下する岩を絡めとると
「せい!」
バジリスクがその岩を砕き
「めんどくさいけど・・・腐敗の風!!」
ベルゼブブの風が岩を腐らせ
「これはいかがでしょう?」
マモンがアリをひきいて蟻酸で溶かし
「我に切れるものなし」
アスモデウスの氷の刃が煌き岩を凍りの粒へと変え
「樹呪根痕」
ベリアルは一瞬で植物を育てるとその根が瓦礫を貫き細かく砕く
「お姉さま、がんばったらクロエ様がご褒美を下さるそうよ」
「まぁそれは素敵ねならがんばらなきゃ」
レヴィアタンは水流でベヒモスは重力の渦を作り岩を砕いた。
ラルデリカ中で岩を砕く音がする。その音はまるでゼクロ軍の勝利を称える花火のようでもあった。
そして・・・
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