第6話 「服従の証」


「うぅん・・・ここは・・・・・・そっか・・・あたし・・・・・・昨日、あんなこと・・・」
 ナナは、眼を覚まし昨夜のことを思い出し、頬を朱に染めた。ベッドの上はナナとカイの淫水がが混ざり合い昨夜の淫楽の残り香がただよっていた。
「・・・あんなに激しいなんて・・・・・・しかも、あれで優しくだったら・・・・・・」
 カイはたしかに昨夜は優しくすると言っていたが、それでもかなりの激しさだった。もっとも、激しくなったのは自身が快楽を求め腰を動かしたこともあるのだが・・・
「・・・・・・でも・・・仕方ないんだよね・・・・・・うぅぅ」
 ナナは自身で言い出したことであれ、まぎれもなく初めて体験。今だ未熟な少女にとっては辛い事実であり、そしてそれからは逃れることはできずこれからも続くその悲しみは一滴の涙となって少女に頬を濡らした。
「でも、泣いてなんか入られない・・・サクヤに嫌われるよりはいいわ・・・」
 自分に言い聞かせナナは自身を鼓舞した。
「さてと・・・とりあえず着替えないと・・・・・・ショーツはいいけどこのままじゃ・・・」
 服を着たまま行為をおこなったため。服はシワがつき、淫水でぬれており、けして気分のいいものでもない。
「たしか・・・昨日買った中に・・・」
 ナナは、昨日無理やり買わされたアダルトグッズの紙袋を一つとりその中から、衣裳を取り出した。
 一方その頃カイは、朝食の用意をしていた。カイの料理の手つきはなれたもので無駄のなく鮮やかなものであった。その手つきから毎日自然と身につけたものは明らかである。
「さてと、今朝はこんなものかな。そろそろ、ナナを起こしに・・・」
 カイは振り返るとそこには着替えを終えたナナが立っていた。
「おはようございます・・・ご主人様」
 カイは、珍しく膠着してしまった。ナナの身につけた服装。その服装は、黒のワンピースの上にフリルのエプロン頭にはフリルのついたカチューシャ。つまりメイド姿なのである。そして、その姿で『ご主人様』と呼ばれればあまりにもはまりすぎて膠着してしまったのである。
「えっと、ナナ。その格好は?」
「昨日買った物ですけが・・・似合いませんか?」
 ナナは完璧な口調でカイに訊ねた。普段は不遜な言葉遣いが目立つが、本来は良家の令嬢でありそれに加えロイヤルガードの彼女にとって言葉使いの勉強は必須。主人相手の言葉使いはなれたものである。もっともその主人が強制的なものではあるが。
「いえ、似合ってますよ。でも、カチューシャまで身につける必要あったんですか?」
 カイはナナに反抗心がまだあることは察している。そのため完全なメイド服姿で現れたのは予想外だったのである。
「昨日の購入のさいに、店主の方にお尋ねしたところ・・・」
 ナナは昨日のゲン爺との購入のさいに交わした会話の内容の説明を始めた。



「これってカチューシャ付じゃないとダメ?」
「当然でございます。カチューシャなくしてメイドにあらず!!カチューシャなきメイドは冥土に送れといわれております。」
「な、なに?」
 ナナは老人の突然の興奮に一歩引いてしまった。
「宜しいですかお嬢さん。カチューシャはメイドの命。メイド服にカチューシャがなければ、それはただのエプロンドレスにございます。かつてメイド暗黒時代と呼ばれ時代。赤髪の鬼女はカチューシャ狩りを行い数多くのメイドを闇に葬りその凄惨は他の勢力であったナース親衛隊、シスター十字軍、セーラ服連隊、巫女神軍などの列強をも恐怖したとのちの歴史家もしるしております。」
 老人の興奮はよりいっそう高まりその背後からはすさまじい気迫が満ちていた。
「えっと・・・」
 ナナはその気迫に押され、何もいえなくなった。いや、止めようものなら・・・死ぬとさえ思えた。
「しかし、そのような悪鬼が力を振りかざしながらも銀髪の聖女はカチューシャを守るため命の限り戦い守り抜いたのがカチューシャなのです。ですので、メイド服を身につけるならカチューシャは必須アイテムなのです。ご理解いただけましたか?」
 老人は涙ながらに語った。
「わ、判りました。これ着るときはちゃんと着ます・・・」
「おお、ありがとうお嬢さん!!」
 老人は固く握ってきた。



「―――ということがありました。」
 ズル―――
 カイは思いっきりこけてしまった。よく知る老人の意外な一面をしりかなり動揺してしまった。
(ゲ、ゲン爺・・・いい仕事してるな)
 内心、カチューシャをつけることを力説した老人にエールをおくりつつも、気をとりなし
「ま、まーいいでしょう、朝食にしましょう」
 カイが用意した朝食は、ジャガイモのパンケーキ、フランクフルト、ベーコンのスープと、日本邸宅に似合わないメニューではある。
「美味しい」
 ナナは一口食べて、素直に感想を述べた。ナナは、地球の食べ物でとくに好きなものはドイツ料理である。食感や味付けなどが故郷の料理に似ているそうだ。もっともナナの料理は色彩はパステルカラー料理しかも味は死ぬほどいや死んだ方がましなほど不味い料理。いやプロミスランドの料理が不味いのでなくナナの料理が不味いのだがその事実を知る人間は、こちら側の世界にはいないのでEMP分署内でのプロミスランドの料理はこちら側に人間には合わないという共通の理解がある。そんなナナの料理とドイツ料理を比べたらゲルマンの誇りにかけて成敗されてしまう。
「それはよかった。」
 カイは無論、ナナの食の好みも知っていた。人間、おなかが膨れれば自然と気も楽になる。それが、好きなものならなおのことである。もっとも料理は趣味なので別段計算があるわけではないのでカイにとっても誉められるのは悪い気はしない。
 ナナとカイの食事は思いのほか穏やかであった。もっともナナのメイド服姿で畳に座ってドイツ料理食べてるというなんとも不思議な情景ではあるが・・・
「さて、それじゃ・・・いいですね。ナナ?」
「はい・・・・・・ご主人様」
 例え穏やかに食事にとろうと2人の関係はあくまで主従関係、そこにどのような感情があってもその事実は変わることはない。


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