大爆星誕生!爆星機神セイザイガー


「己…!」
 少女はその体躯には似合わない大きな椅子に深く腰掛けながら爪を噛んだ。
「姫様。まもなく本星勢力圏を脱出いたしますが」
 その美少女の側にたつ老紳士が現在の状況を伝播する。
 少女の腰掛けるのは、宇宙戦艦『天河(てんが)』の艦長席。少女は目を閉じ一呼吸を置く。そして、その大きな瞳を開くと明瞭な声で快濶に宣言する。
「これより、本艦は、ポイントN−15866へと向かう」
 その言葉にブリッジはざわめき立つ。
「姫様、そ、そのポイントは…」
「分かっておる爺。星と星の絆が生み出す重力の嵐のいずる場所。その超重力を利用し亜空間航行を行うのが目的。この船での通常の亜空間航行はせいぜい7千光年。しかし、その重力場を利用した場合、一挙に12万光年の距離を移動することができる」
「しかし、それだけの距離を移動できたとしても…」
「あんずるな。星機神が導いてくれる。担い手となるに相応しい者の元へとな。総員、対重力姿勢、及び亜空間跳躍の姿勢をとれ」
「仰せのとおりに」
「対重力姿勢に移行致します」
「亜空間フィルード…固定まで5、4、3、2、1、0固定完了」
 少女の強い意志の込められた言葉に動揺していたクルーたちは落ち着きを取り戻し少女の指し示す虚空の彼方の希望へと宇宙(そら)を翔けた。

 ☆☆☆☆☆

 21世紀末――
人類はついに宇宙へと進出を成し遂げ。月に移住地ムーンエデンを建造。新宇宙時代を迎えることになった。

 22世紀初頭――
 人類の宇宙での居住空間はまし宇宙空間にも居住区スペースノアを建造に成功。これにより、地球上の人口過密問題が解決される。

 22世紀中期――
 宇宙空間で活動を目的とした全長8メートルサイズの人型作業機械、アーマードワーカーの運用が一般化。宇宙開発がさらなるステップへと進む。それに伴い火星圏のテラフォーミングが開始され火星圏への移住が開始される。

 22世紀後期――
 地球連合代表アイエスト・ホープマンの宇宙に住まう人間にたいし「貧しき人種」と発言。撤回と謝罪をするも宇宙移民の強い反感をかい退陣へと追い込まれる。このころより地球に住む人間と宇宙に住む人間の間に齟齬が生まれ始める。
 アイエスト元代表の退陣から4年後。スペースノア]Zにて毒ガステロが行われ住民はすべて死亡。翌年、犯人はアイエスト元代表のシンパであることが報道される。その報道をうけ宇宙革命軍『星の涙』がプロジェクト『アイアン・グレイブ』を敢行、廃棄されたスペースノア]Zが地上へと落ち、そのさい巻き上げられた塵により5年間の太陽光が遮断され冬の時代が到来。

 23世紀初頭―― 
 後にスターダストエイジと呼ばれる時代。アーマードワーカーを兵器として投入。戦況は泥沼化の一途をたどる。地球連合軍は宇宙戦艦ファフニールを建造し『星の涙』への対抗兵器とした。それに対し星の涙はゲリラ戦を仕掛けスペースノアの独立自治を要求。100年戦争ともよばれる戦争の幕開けとなる。

 24世紀(西暦2312年)――
 地球、宇宙の双方での和解を成立。ゼクロ・ラグーン氏を筆頭に両勢力より集まった有識者により垣根を越えて平和を維持する機関「アルセリア」が結成される。これにより戦争で遅れていた宇宙開発が再開される。

 西暦2367年――
 突如、木星より飛来した隕石が地球ニホンエリア・ネオトウキョウへと落下。死者、行方不明者が多数出る。後に『ジュピター・インパクト』と呼ばれる惨劇である。

 そして現在、時は2377年――
 これからおきる銀河をゆるがす事件を知るものは地球圏にはいなかった。

 ☆☆☆☆☆

 火星近辺――

 鉄の人形。全長5メートルのそれはアーマードワーカーと呼ばれる100年戦争にも用いられた機動兵器である。その機動兵器を操っているのはケイト・クヨウ。銀河開発アカデミアの1年生である。銀河アカデミアは宇宙開発を担う少年少女の憧れともいえる特殊育成校である。
「ああ、めんどくせぇ」
 憧れの…
「かったりー、なんでデブリの掃除をしなきゃいけねぇんだよ」
 エリートの集ま…
「ごちゃごちゃうるせぇ〜潰すぞ」
 すみません。というかナレータに突っ込みをいれないでください。
「あぁぁん?」
ごめんなさい。生まれてスミマセン。
『ケイト、なに一人でぶつくさ言ってるのよ』
 通信画面が開くとそこにはショートカットの女の子が映し出される。顔立ちは幼さがのこるが、胸がさらに大きくなってきている。
「どうでもいいだろ。デカムネ」
 たしかにデカイ。バスケットボールが二つ無重力空間でも存在感を感じさせる。
『う、うるさいわね』
 彼女はケイトとは幼馴染。子供のころは一緒にお風呂にもはいった間柄。最近の悩みは胸の成長が著しいこと。と、もう一つあるがそれは乙女の秘密。
『だいたいアンタが悪いんでしょう。女湯を覗こうとするからこういうことになるのよ』
「バカ野郎! 女湯があり、かわいい女の子のあられもない姿を見れるんだぞ! それを覗ける可能性に挑戦する。当然だろうが!」
 言い切った。完全無欠に言い切った。つまり彼はドがつくスケベである。しかしながら彼はカメラや盗聴器などというものには頼らず身一つで実行する。彼、曰く『カメラ越しなど邪道。それになんの価値がある!真なる美とは己の瞳に焼付け。心のフィルムに焼き付けてこそ男の本懐』とある意味では漢ではあるがすごくバカである。
『あのねぇ…』
「だいたい、先生たちも覗いたことよりも見つかったバツだといってたわけだし」
 銀河アカデミアは宇宙開発を担う人間を育成することが目的であり基本的にいかなる自体も生徒の手で解決するのが基本である。故に、一応の覗き対策をしている学園内施設でそのような行為を行われた場合は犯人がわからなければ女生徒の落ち度とみなされてしまうのである。
 今回の場合はオウカがケイトの覗きポイントに罠を仕掛けていたために発見できたしだいなのだが、学園規則により罰則は班単位に科せられる。罰則の内容としては追加課題、資料の提出などが言い渡されるのが通例であり、そういうわけで今回のペナルティーはデブリの除去作業なのである。
『貴方たち、作業範囲は終了したのですから撤収しますよ』
 二人のやり取りの間に艶やかなブロンドの髪を腰まで伸ばし鋭い眼差しのアイスブルーの瞳が特徴的な美少女が通信回線を開いてきた。彼女はアイリス・ルーダ・アルファルド、ケイトとオウカたちのグループの班長を務めている。学科は学年トップであり、その操縦技術も学年2位である。ちなみにオウカの成績のほうは学科は学年トップ10、操縦技術はトップである。そしてケイトはという学年アンダースリーの一人、学科は全て赤点ギリギリのラインであり操縦技術は模擬戦闘に関してなら学年最下位であり操縦技術のレベルも平均値を下回り落ちこぼれである。
『まったくじゃれ合うのも程ほどにしてくださるかしら?』
『べ、別にじゃれ合ってないわよ!』
 いや、どう見てもじゃれてるようにしか見えない。
「アリスちゃん、あとでお茶でもどう?」
 マイペースな男である。
『結構です。あと、なれなれしく愛称でよばないでください。各員復唱を』
『了解、こちらシリウス2。これより帰艦します。ほらケイトも』
『へいへい、こちらシリウス3.これより帰艦します』
『シリウス1、集合を確認。シリウス9、回収をお願いします』
 二人の復唱を確認するとアイリスは新たに通信画面を開くと赤色の髪をツインテールに結わえ、すこし大き目の丸メガネをかけた少女が映し出された。彼女はケイト達のグループであるチーム・シリウスの最後メンバーで名前はキファ・アウストラリス。チーム・シリウスのオペレーター兼メカニックを担当をしている。体は小柄なためなのかは分からないがいつも2サイズほどは大きく見える制服をきている。なお、コードネームはグループ名+数字であり。オペレーターは通例として9がリーダーは1が与えられることになっている。
『みなさんの座標を確認しました。作業ノルマと作業工程のデータはアークへと転送を完了しています。おつかれさまでした。あと12分ほどで回収船カントにて到着します』
 かわいらしい鈴の音のような声で全員に伝える。カントとは簡易修理装置を搭載し簡易居住システムを搭載している移動式小型基地ともいえる小型船だ。小型といってもアーマードワーカーを同時に四機まで搭載可能な能力があるのだから立派である。

 ☆☆☆☆☆

 カント艦内――

「みなさん、ご苦労様です」
 機体からおりた全員をキファが出迎える。
「まったくです。これもケイト、あなたがくだらないことをするからですわよ。そもそもあなたは気が多すぎます」
 アイリスはかなり不機嫌である。余談だが、アイリスの胸だけは平均以下なのである。つまり、小さいのである。牛乳を飲んでも身長に栄養がまわるのか。優等生唯一の悩みである。
「あの…そんなに責めないでも…私は見られても別に…」
 キファが小さな声でささやく。その声に二名ほど反応する。視線はキファの胸に集中している。大き目の服をきているキファだがそれは胸が大きく身長とあう服をきると収まらないからである。
「うん?とりあえずこの後の予定は」
 気がついてない一名だけはマイペースである。
「あっ、はい。このあとはアカデミアベース『神篭(かみかご)』へと帰艦の後、ミーティングの後、食事のあとは学科となっています」
 スケージュールを慌ててキファは確認して伝達する。
「そう、なら。ケイトは私と学科の予習ね。こないだも、赤点だったでしょ」
 先制はオウカだった。
「でしたら、私のほうが適任ですわね。成績は私のほうが上なのですから」
 それに返すは、アイリス。
「ああ、がんばれ。俺はとりあえず、キファちゃんと二人で星海のドライブと」
「「なんでそうなるのよ」」
 同時のツッコミである。

 ブーブーブー

 突然の緊急サイレンが鳴り響く。
「これは…キファ」
「はい」
 今までの雰囲気がウソのように変わる。
「シリウス2とシリウス3は機体に待機」
「分かったわ」
「ああ」
 ここらへんは学生とはいえ流石に訓練を受けているだけに対処は早い。アイリスの意図を理解しすぐにアーマードワーカーの機動準備を始めている。
「シリウス9より、木星方面より異常重力場を感知…えっ、大変です。『神篭』が正体不明の勢力と交戦中の模様」
 現在、地球圏においてこのような戦闘行為が起きることなど予想外もいいところであるが起きていることは事実。
「こ、こちらにも敵機が4機接近中。距離200です」
 視認ができる範囲まで到達してその形状をみたときそれは明らかに地球圏のものとは思えなかった。全長は10メートル程でその形状は鮫に手足が生えたロボットいや機械というよりも生命体とも思えるような生々しさが感じられた。
「あれは…まさか!!」
 ケイトはアーマードワーカーをカントから発進させる。
「ちょっ、ケイト」
 それに続いてオウカも発進させる。
「キファは、緊急信号を発信後なるべく戦闘区域から退避を最悪の事態はカントが撃墜されることです。それから…もし私たちに何かがあって帰艦できない状況の場合は即座に宇宙軍基地へと戦闘データをもって向かいなさい」
 アイリスが強い口調で指示をだす。
「分かりました…けど、皆さん無事に」
「分かってますわ」
 アイリスが最後に発進させた。
 戦いははっきりいって劣勢である。訓練用のアーマードワーカーに本格的な戦闘用の武装はない。いまの装備はあくまでもデブリを回収もしくは破壊するためのもので、ワイヤーと設置型の小型爆弾が数個だけである。
「厳しいわね」
「シリウス2.弱音を吐いてる場合ではありませんわよ」
 背中合わせにして死角をカバーするようにオウカとアイリスは陣形を組む。それでも防戦一方。ケイトは単独で迎撃に向かうがスピードが若干劣り捕らえきれない。そうこうしてるうちに敵の数は徐々に増えて状況は悪くなっていく。
 ケイトの機体に近づく敵機はありえない行動にでた。それは胸が開きまるで鮫が獲物に喰らいつこうとするようであった。
「そいつを待ってたぜ!」
 しかし、ケイトは驚くどころかその口に向かって右腕を突っ込む。
「これでも喰らってろボケ!」
 口の置く深くに設置型の爆薬を付着させると口をワイヤーで縛り爆発させる。さすがにその距離から爆薬を喰らってはたまらず破壊される。しかし、ようやく一機。敵の数はすでに12機を越えており戦力差は数の上だけでも三倍以上になっていた。
「こちらシリウス3。こいつらの弱点は胴体部分のデカ口だ。だが気をつけろ下手をすると食われるぞ」
ケイトは防御陣形を維持する二人に通信を送る。
「なんで、そんなことが分かりますの。さっきも」
「シリウス1今はそれよりも戦いに集中をして」
 ケイトが知っている理由を尋ねようとしたときオウカが通信に割り込む。ただ、画面に写されている表情には重いものが感じられた。
『ほう、数機の捕獲をと思い兵を向けたがこれほどもつとわな』
 通信回線に男の声が入ってくる。それと同時に鮫は戦闘行為を停止し後退する。そのかわりにまるで黒曜石のように磨かれた甲冑をまとった騎士のような17メートルほどの機体が姿を現した。
『そのような原始的なものでよくぞ戦ったことに敬意を表して名乗らせていただこう私は銀河帝国オデューボス軍所属。第5師団団長ジークフリート・レギオン。どうだ、我が軍門に下る気はないか?貴様の戦果は我が軍の末席に加わる資格をもつぞ』
 映像も転送されるとその姿は声のとおり若いながらも端整な顔立ちであると同時に威厳と威圧のある瞳をしたまるで気高い獅子のような雰囲気をまとっていた。
「誰がお前らなんぞに!」
 ケイトからは明らかに怒気が感じられた。ケイトは明るく怒りに燃える姿など誰の前にも見せたことはない。
『ふっ、なかなかの気迫。惜しいな』
 黒騎士は剣を構えるとその巨体には不釣合いともいえる速度で距離をつめると一刀両断とばかりに剣を振り下ろす。その一撃を躱そうとバーニアを一気に噴出するが加速がたりない。
『反応はいいが機体がついてこれなくては意味があるまい』
 その刃がケイトの機体に触れようとする刹那、ケイトのアーマードワーカー右脚部で爆発が起きる。その爆発が加速の足りなかった分を補うどころか、爆発のエネルギーに押し上げられる形とはいえ瞬間的にそのエネルギーが加わったキックを黒騎士の甲冑へと叩き込む。
『なんて無茶なことしてるのよ!!』
 今の動作を見ていたオウカはたまらずケイトを怒鳴りつける。
ケイトがとった方法。それは、ジークフリートの死角になる自身の機体の脚部にデブリを破壊するための設置爆弾をしかけるという荒業をやってのけたのである。
 しかし、その捨て身の一撃もジークフリートを少し怯ませた程度。もともと質量自体が違うのだから当然といえる。
「ちっ」
『いい一手だ。やはり惜しい』
 体勢を整えた黒騎士は再び剣でなぎ払う。その一撃にたいしてケイトは
「ライトフットパージ」
 アーマードワーカーは各部位が切り離せるようにできている。切り離しのさいの爆発とバーニアの力で避けるとその勢いそのままに浴びせ蹴りを叩き込む。
 ガキーン
 鈍い音と共にこんどはレフトフットが砕ける。
『うそ…あれがケイトの戦いですの』
 その戦う様にアイリスは驚きを隠せない。自分たちはなんとか攻撃を凌ぐのが精一杯なのにたいして落ちこぼれのケイトは敵のリーダー機に果敢に攻めている。それも危険ではあるがもっとも確実にダメージを与えられる可能性があるものである。
「レフトフット、アンダーパーツパージ!」
 左足、腰から下を切り離しさらに加速を加えて左腕部を叩きつける。
『ぐぉっ』
「まだ、まだだ!レフトアームパージ!!」
 切り離したレフトアームに右腕から放ったワイヤーを巻きつけると更に加速を加えて叩きつける。
「どうだ!!」
『ふははははは、なんとも猛々しい戦いよ。このような戦い方を、するものを初めてだ』
 しかし、黒騎士の装甲の一部に僅かにへこみを作る程度だけだった。
『次は、こちらから行かせてもらうぞ!!』
 その言葉どおりジークフリートの一方的な攻撃が始まる。暴力的な加速から生み出される攻撃は推進系と残っていた右腕を破壊する。
「くそが…」
『次で止めだ!』
 最後の一撃が襲おうとしたときケイトは最後の足掻きを見せた。
「ライトアーム、パージ!」
 補助推進で僅かに角度をかえ壊れた右腕をジークフリートへと放つ。騎士の情けと全力で叩きこむべく加速していたため避けきれず飛来した右腕を躱すことができずにぶつかる。
『ぐおっ…まさかこの状況で反撃をするとは最後まで足掻くとは不様ではあるが戦士としては見上げた心意気よ。やはり惜しいな』
「へへへ、ロケットパンチてやつだ…くそっ。まさに手も足もでないとは」
『惜しむべきは逸材ではあるが、今度こそ最期だ。さらば遠き異星の素晴らしき戦士よ!』
 再び加速しての一撃を与えんと距離をとる。自身にこれほどの驚きを与えてくれた戦士への礼儀に相応しい一撃を送る。それがジークフリートのなりの言葉無き賞賛であった。
『はぁぁぁああ、さらばだ!!』
 気合一閃。渾身の突きがケイトを襲う瞬間。
『だめぇぇぇ!』
 二人の間にオウカが割り込む。
『なにぃ!?』
 ジークフリートの渾身の一撃がオウカのアーマードワーカーを貫き吹き飛ばす。
「オウカ!バカ野郎!くそっ動け。このままだとオウカが…ふざけんな!二度と…二度とあんな思いはごめんだ。誰でもいい俺に力を貸してくれ。オウカを!オウカを救う力を!!」
 心からの魂の叫び。悲痛なる心の溝が悲鳴を上げる。命の慟哭。
(汝、力を求めるものなりや?)
 その心に直接語りかける強くも悲しみを秘めた声が響く。
(ああ、アイツをぶちのめす力が欲しい)
(それは破壊のためや?)
(オウカを守る力だ!いや、オウカだけじゃねぇ!アイリスもキファも!あと、気にいられねぇ奴もいるが、アカデミアの連中を守る力をよこせるのならよこしやがれ!)
(汝、猛々しき勇気を持ち、命の悲しみを知り、無限の慈悲を供えし者と認めようぞ。力を欲するならば魂の声で叫べ、転星招来来たれ天星セイザーと我、真名(まな)を呼べ)
『このような愚弄…許せん! 戦士の戦いに割り込むなど恥を知れ!』
 怒りに震えるジークフリートは邪魔に入ったオウカに止めを刺すべきその刃をむける。
「やらせるか! 一か八かだ! 呼んでやる転星招来来たれ天星セイザー!」
『異常重力場感知です!!』
キファが慌てて通信をいれる。重力場の影響で空間に歪みができると同時に赤く輝く巨大な船が現れた。
『あれは、まさか…14年前より行方不明の皇族船『天河』まさか、このような地で発見できるとは陛下にご報告をすれば喜ばれであろう』
 ジークフリートは刃を止める。

 天河艦内ブリッジ

「姫様、ワープアウト完了ですが…」
「うむ、で状況は?」
「はい、その…皇国の星海図によりますと太陽系と呼ばれる辺境の星系のようなのですが…」
「なのですが? なんじゃ?」
「ジャア一派の機体シャークネスと…それからまさかとは思いますが、機士団長機と思えるものが」
「バカな機士団も奴の軍門に下ったと?」
 姫と呼ばれる少女は焦りを隠せない。
「た、大変です。姫様。星機神が!」
 オペレーターが異常を知らせる。
「まさか、この地に担い手が?」

 真紅の船から一筋の光がケイトのアーマードワーカーへと向かった。

 ☆☆☆☆☆

(我、汝の声に応えん)
 そう、ケイトの心にる光は語りかける。
(さあ、共にいこうぞ守るものために)
 アーマードワーカーと光が今ひとつになり光はやがて人の形となった。それはまるで太陽の化身のように暖かい光を放ちその姿は巨大でありジークフリートの機士と同程度のサイズとなっていた。
「こいつは?!」
(我は星の守りて星機神、汝の力を欲し汝に力を与えるものなり)
「難しいことはわからねえが、とりあえず力を貸すかわりに力を貸せということだな。いいぜ、とりあえず目の前のアイツをぶっ飛ばしてからな!」
 操縦方法を軽く確認してアーマードワーカーと基本は一緒ということは理解できる。あとの基本原理までは、あとで理解すればいいと割り切り思い切り加速する。
「のごぉぉぉぉぉ…!!?? こいつは、なんてパワーとスピードだ。かなりのじゃじゃ馬だぜ」
(すまない)
 心に響く声が侘びを述べるがケイトは、
「いや、こいつはいい」
 にやりと笑い操縦桿を力強く握り、アーマードワーカーとは比べもにならないその速度とパワーにすでに順応しはじめていた。
『まさか星機神の乗り手になりえるものとは、いくぞ!』
 戦いが始まる。一進一退いや、ケイトのほうが押し始めていた。
 それはセイザーの能力を理解し始めたからである。能力の一つはマインドフィルード展開能力。それは乗り手の意思を攻撃力と防御力の力の力場へと変換する力である。
「はぁぁぁ、必殺、乱打爆砕!!」
 気合を込めた乱打がジークフリートの機体を砕いていく。
『ぐぉ…これ程とは…これが星の守り手の力。このままでは…こちらも全力で行かせてもらうとしよう』
「負け惜しみはかっこ悪いぜ!」
『ふっ、凶機士の力を見せてやろう、魔星狂い獅子よ!! いまここに発動せよ!!』
 黒騎士が黒い光を放ちながらその姿を変えていく。その姿はまるで獅子を模った甲冑を身につけ姿を現した。
『この姿になった、我が愛機は凶暴でな!』
 形勢が逆転する。黒い獅子は漆黒の炎を撒き散らしながらその爪が襲い掛かる。
「くそ、やっぱりそう、うまくはいかねぇぜ…」
『連獅子凶炎!!』
 黒い炎をまとった連撃は強大な力でマインドフィールドを破壊する。マインドフィールドで守られていてもそれ以上の力をうければ貫かれるのは当然である。
「負けてたまるか!」
 その思いを込めた拳も黒炎を貫きとうせない。つまり、攻撃をくらう以上に敵の防御力が強く攻撃が通じないことが押されている原因なのである。
「あきらめるか! 通じるまでぶっ飛ばす!」
 ケイトの強さの一つはどんなときでもあきらめない精神なのかもしれない。

 ☆☆☆☆☆

 アアァァァァァァァァァァ
 深い闇の中に聞こえるのはそれは悲痛な嘆き。とまらない悲しみ涙。
 ただただ苦しむ少女の歌がオウカの耳に届いていた。
 ――貴方はなぜ泣いているの。
 オウカは心中で思った。
 ――無力だから…大切な人が傷ついているのに何もできないから。
 少女は応えた。
 ――でも泣いてたら何もできないよ。それに泣いてばかりいたら嫌われるわ。
 そういいながらオウカは昔のことを思い出した。
 まだ、幼かったあのころ、よく泣いていた。
 忙しい両親に会えない寂しさから父の仕事でネオトウキョウに引っ越してきたばかりで友達もできずさらなる孤独。
 そんななか、ある事件がいや、事件というかスカートめくりをかましてきた。
 それで泣いた。それがきっかけで人と話さすことができた。先生に怒られていたけど悪びれない態度で飄々としていた。そんな彼が嫌いだった。
 それから少し泣かなくなった。それからずいぶんとたって、人よりも早く胸が大きくなってブラジャーをつけるようになった時、クラスの男子からからかわれて泣いた。あのとき怒ったのはスカートをめくった嫌な奴。クラスの男子5人と取っ組み合いの大喧嘩。勝てるはず無いのにと思ってみてた。そして、なんで怒ったのか分からなかった。
 勝てるはずは無いけど負けなかった。
 引き分け。ぼろぼろで酷い有様だった。嫌な奴なのに見るのが辛かった。
 嫌な奴だけど話てみた。
 なんで怒ったのか――
 理由を聞いて驚かされた。怒った理由――私が泣いたから――自分は私を泣かしたくせにと意地悪ぽく言うとバツが悪そうに言った。
――ごめん―― 
 その一言で私はまた泣いた。よく分からなかったけど泣いた。すごく困ってた。
 彼はいった。泣く女は苦手だ。
 彼はこうも言った。友達がいないとやっぱり寂しいだろと。
 彼はあと、女を泣かせたら、いけないと母親に言われた。
 それから、私は泣かなくなった。なぜかは分からない。そして、強くなろうと思った。後、嫌な奴は嫌な奴じゃなくなった。
――貴方の強さを貸して欲しい。
 少女は告げる。
――私は強くなんかない。
――ううん、強いよ。泣く辛さを知ってる。無力な自分を知ってる。貴方は弱くて強い。だから、貴方こそ相応しい。呼んで魂の声で共鳴転生そして私の真名(まな)破星ザイガーと…
 そこで目の前の光景が変わる。
 太陽の巨人が暗黒に塗りつぶされそうになっていた。
「ケイト!!」
 太陽の巨人の中に嫌だった奴を感じた。
「共鳴転生!! 破星ザイガー!!」
 心よりも深く、内なる魂でその名を叫んだ。

 ☆☆☆☆☆

 ケイトは限界に達していた。どんなものにも限度がある。一人でできることには限界がくる。諦めていなくても効かない攻撃は迷いがうまれ、迷いは気力をそぐ。そして、攻撃を受けるごとに心がまるで引き裂かれるような感覚に襲われる。
 だがそれでも、孤独にただガムシャラで不様に戦い続ける。
『やはり星機神を操るには、まだ未熟だな。武装もできないみたいでは、仕方あるまい』
「武装だと…? こいつに武器が?」
 その迷いが隙をつくる。そして、ジークフリートはその隙を見逃すほど甘くは無い。必殺の一撃がセイザーの胸部へと襲い掛かる。
「しまっ…!」
 その時白い閃光がその一撃を弾き飛ばす。
『やらせない! ケイトは私が助けてみせる!』
 閃光は形をかえ白い虎へと変わる。
『いくわよ!!!』
 高速で体当たりを一度、二度、三度、四度加速とともに威力をあげながら戦う。
「バカ野郎! 下がれ!」
『バカッて何よ!ぼろぼろのくせして!!』
 しかし、ケイトのその判断は正しい。通じていないである。
『少しばかり虚をつかれたが<その程度の攻撃。凶機士の前では児戯!!』
 それでも二人は戦いを仕掛ける互いに罵倒しながら、罵倒というか、バカだアホだと低レベルな争い。なんとか互角とも見える戦いになるがやはり決定打にかける。つまり、防御を敗れないのである。
 その時――
『ええい、じれったい!! この阿呆共が!! そんな戦い方では、凶機士に勝てるわけあるまい!! 星機神が泣いておるぞ!!』
 一人の美少女が通信回線に入ってきた。
『姫様、落ち着いてくだされ』
『爺はだまっておれ!! よいか心を落ち着かせて星機神の心と重ねよ。そうすれば星機神は応えてくれる。分かったら、とっととヤレこの愚図が!』
「あ、ああ」
 ケイトは思わず生返事を返してしまった。
(まさかシャルル姫? しかし、あの姿は当時となんら変わっていないとは、だが、今は目の前に敵に集中するのみ星機神の本来の力を発揮される前に倒す)
 ジークフリートは雑念を払い戦いに集中する。
「よく分からねえが、やってやる。オウカも」
『分かったわ。いくわよ』
 二人は意識を沈める。意識がたどり着いた先にはテーブルが一つそこで一人の男と少女が並んで立っていた。
――ここは意識の集う場所。
 少女が告げる。
――汝らは一人では勝てぬ。
 男が告げる。
――そんなの分かってるんだよ!
――そうよ。でも、やるしかないでしょ!
 二人の意識が重なる。
――それでいい。二人の心を束ねよ。
――そしたら勝てるよ。
 男と少女の声も重なった。
「そういうことか!」
『分かったわ!』
 心で魂で理解したとき星機神は応えた。
「いくぞ。セイザー!」
『応えてザイガー!』
 二人の意識と魂が交わり一つになる。
「全てを照らすは天星!!」
「全てを打ち砕くは破星!!」
「「想い重ねて一つに!!」」
 太陽の光と白い光が重なり新たな力へと形を成していく。
「「爆星合神!! 爆星機神セイザイガー」」
 白く輝く虎の甲冑を纏った巨神がそこには立っていた。
(はぁあん…なにこれ…私の中でケイトのが凄い。こんなの初めてあぁぁ感じるぅ)
(やわらけぇ、これがオウカの感触)
 二人は互いの心を理解し魂が動かすそれが爆星機神セイザイガーである。思いの強さが力を想像し創造へと導く。
『まさか合神するとは…やはり素晴らしい逸材だな。だが、生まれたての機神に遅れをとる凶機士ではない』
 ジークフリートの攻撃の鋭さも威力は変わってはいない。変わっていないはずではあるが、ケイトにはそれは緩やかに見えた。
「いくぜぇぇぇぇ!」
(そんな激しすぎる。私、壊れちゃう…もっと抑えて…凄く乱暴)
 重い拳の一撃が黒騎士の胴体に叩き込まれる。
(これは怒り…悲しみ…無力感…これ全部ケイトが抱え込んでたものなんだ。いつもふざけてるようにしか見えないのにこんなに溜めていたなんて溜め込みすぎ)
「オラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァァァァァァ!!」
 乱打、乱打。拳の弾幕。いや、そんな生易しいものではなく、まるで流星群である。
『なんと暴力的な爆発。これが星機神の本来の力なのか…押されている。だか!!』
「ぬぉ!?」
 噴出した黒炎に一瞬怯みセイザイガーが下がる。
『我が、奥義にて決めさせてもらう。唸れ黒炎、集え我、左の腕(かいな)に黒炎爆砕ラグナロク・エンド』
 黒炎を左の掌に集中し全エネルギーをこめて突進する。
「こっちもいくぜオウカ!」
「う、うん」
 ケイトも同じように全身全霊の思いを込めた力を右拳に集約する
「爆熱!!」
 ケイトの魂が吼える。
「激星!!」
 オウカは魂で応える。
「これが俺と」
「私の」
「「魂の力!! すべてを吹き飛ばせ魂の拳。いくぞ! 必殺!! ギャラクシー・ジ・エンド!!」」
 二人の強い心がセイザイガーの体を駆け巡り、マインドエネルギーフィルードの力へと変換されていく。その力は、まさに銀河に終焉をもたらすほどの爆発的な力が巨人の拳へと集約される。その力に一個の力でしかない黒炎がかなうはずも無く左腕を砕き本体に届こうとした瞬間、
『おのれ…黒炎爆砕、左腕破断!』
黒炎の力を限界以上に高めは左腕を爆発させ機体を大きく吹き飛ばすことでジークフリートは直撃を避けた。
『まさか、貴様の戦法で救われるとはな…今回は痛みわけのようだ。一旦、引かせてもらおう。色々とこちらにとってもイレギュラーなことがおきたのでな。最後に貴様の名前を聞いておくとしよう』
「ケイト・クヨウだ。次は必ずお前を倒す」
『それはこちらの台詞。ではまた会おうケイト』
 そこで通信は切れジークフリートは配下を引き連れ撤退していたった。
「さてと、オウカ大丈夫か?」
 合体のときには確認できなかったが冷静になってみるとコックピットが一つに纏まっており背後には幼馴染が大粒の汗をかきながらぐったりとしていた。
「もうダメ…こんなのすごすぎる…私、初めてなのにすごくて…こわれちゃうかと思った。それにしてもケイト…なんであんたは平気そうな顔してるのよ」
 じゃっかん恨めしげにつぶやく。
『オウカさん、いつまでそうしてる気かしら?』
 凄く冷めた声でアイリスが通信をいれる。
『二人でいちゃついてる間に神篭もってかれしまいました』
 キファもかなり冷たい声で状況を告げる。
「ふ、二人とも、なんで、そんなに冷たいのかな…ハハハハハ」
 オウカは必死に笑って誤魔化すが、通信越しでも二人の殺気を感じずにはいられなかった。
「ちっ…けど、あのまま続けたら、こっちがやばかったからな。エネルギー残量がゼロに近づいてる」
『先程は申し訳ありません』
 そんなやり取りの中、先程の謎の美少女とともに映った老人が通信を入れてきた。その背後でロープで縛られ猿轡をつけられた先程の美少女が暴れながら何か叫んでいるようであった。
『事情を説明いたしたく、なにより皆様も情報を必要にされていることでしょう…ですのでどうか我、艦へとお越しください』
 老人は低い姿勢で述べる。
「そうだな。いいぜ。それに美少女ちゃんも気になるし」
「ケイト!!」
 ゴン
 オウカのケリがケイトの後頭部にヒットした。


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オウカ「はぁ…すごかった。ケイトたら、あんな乱暴に私のことを、もとめてくるなんて…」
アイリス「寝言は、寝ているときに、いいなさい」
オウカ「ふっ、負け犬の遠吠え?」
???「あぉ〜〜〜ん」
オウカ「今の誰よ!?」
キファ「もしかしたら、イヌ耳のメイドさんが、どこかで遠吠えしたのかもしれませんよ」
オウカ&アイリス「そんなわけ、あるわけないじゃない」
???「……次回……大願成就? 乙女の思いは大暴発に合神……」
オウカ&アイリス「ちょっ、あんただれよ!!」



シャルル「しまった!出遅れたぞ…えぇいいまいましい!!しかし、私がメインヒロインなんだぞ!!いいのかこんな扱いで!!」
???「……いいみたいです……」
シャルル「まて、名前もでてないお前が次回予告で目立つな〜〜!!」
???「……未登場キャラが次回予告で目立つのはお約束だそうです…」

 つづく


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