〜 吊られた天使 〜






◆登場人物





◇小宮 璃亞(こみやりあ)

 女性 15歳(1年生)

小柄で大人しい性格だが、時に大胆な判断に踏み切る。

クラスメートの益美に影響され、学院からの脱走を試みる。



◇志賀 益美(しがますみ)

 女性 15歳(1年生)

我が強く、学院への不満を露にしていた。

璃亞に先立って学院からの脱走を図っている。



◇財前 穂乃香(ざいぜんほのか)

 女性 15歳(1年生)

仲のいい益美と共に学院脱走を画策するが、

参加しなかったのか、現在も学院に残り続けている。



◇石坂 秀光(いしざかひでみつ)

 男性 33歳(教員)

中肉中背の数学教師。

真面目で落ち着いた印象の男。











5月半ば。





世間ではまだまだ春真っ盛りだが、

この聖リトリス女学院において、それはただ『5月』でしかない。



30m先はもう見えないほどの深い霧が年中立ち込めており、

色彩に富んだ四季の風景をも隠してしまうからだ。





四季が失われた地では時間の概念も希薄となり、

それはそこに暮らす少女たちの思考や常識をも薄れさせてゆく。



やがて、霧に浸食された前後不覚な日常が

恐ろしい魔物たちの用意した牢獄だと気付いた時。



もはや、全ては手遅れなのだ。











学院の敷地の周囲に広がる木々の海の一角に、

ギシギシという縄の軋む音と、今にも掻き消えそうな息遣い。





「ああ・・天なるリトリスよ、どうかお救いください・・

 どうか・・お救いください・・!」





膝をつき、銀のロザリオを胸に神への祈りを捧げる少女の顔には、

ありありと恐怖の色が浮かび上がっていた。



その小柄な少女は

1ヶ月半前に入学したばかりの1年生・小宮 璃亞(こみやりあ)。



大人しく臆病な小動物を思わせる彼女が見上げる天に

大昔に磔にされ焼き殺された聖人リトリスの御姿は見えず、

もっと身近な人間が変わり果てた姿で揺れていた。





「う、嘘です・・

 志賀さんが・・志賀さんがこんな・・」





志賀 益美(しがますみ)は璃亞と同じ1年D組に在籍していた女子。



少々品性に欠けるところもあったが我が強く、

それを押し通すだけの行動力も持ち合わせた女子だった。





この霧の牢獄での日常、

次々と突きつけられる理不尽に1人異を唱えていた益美。



彼女とその友人・財前 穂乃香(ざいぜんほのか)の内緒話を

偶然聞いてしまった璃亞は、2人が秘密裏に脱走計画を立てていたこと。



そして、決行日だったであろう5日前、

益美が学院から姿を消していたことを知っていた。





「これ・・自殺なんかではありませんわ・・

 志賀さんは、あの黒衣の女(ひと)たちに殺――」



「こんなところまで散歩か? ・・小宮」



「・・ぇっ?」





そこに存在するはずのない声に璃亞は凍りつく。





密かに憧れていたクラスメートの勇敢な行動に背中を押され、

震える足で踏み出したたった1人での脱走計画。



その全工程は璃亞1人で行うべく想定されており、

そこに第三者が絡むことは決してあってはならない失敗だ。



頭上に軋む縄の音が、何よりも明確な失敗の代償なのだから。





「い・・石坂・・先生・・?」





その声に応じて、霧の中から姿を現したのは中肉中背の男。



璃亞を教える33歳の数学教師・石坂 秀光(いしざかひでみつ)だった。





「どうしたんだ、小宮?

 こんなところに1人で来ては危ないぞ?」



「あ・・いえ、あの・・璃亞は・・」





《ギシ・・ギシィィ・・》





「何せこの霧と樹海だ。

 下手に迷い込めば『命 に 関 わ る』と

 ちゃんと教わっているはずだろう?」



「ち、ち、ち、違うんです・・っ

 ・・ただ・・ちょっと・・その・・」





クラスメートの首吊り死体を目の前にしたこの状況下で

普段と何ら変わることのないにこやかな秀光の表情。



それはそれ自体が異様な恐怖であると同時に、

裏に秘めた本性がいつ現れるのかを待たされる恐怖でもある。



向かい合う2人の間に揺れる益美の足が、

定期的に璃亞の視線を遮ることで

2つの恐怖を交互にもたらしていた。





(な、なにか・・いいわけを考えなければ・・

 あぁ・・私も、志賀さんの、ように・・)



「ただちょっと?

 ただちょっと、何だ?」



(は、早く・・早く何か・・

 ・・いいわけを・・理由を・・)



「・・ん?」



(ぁ・・ぁぁ・・

 早く・・早く・・早く、早く、早く・・)



「・・・・小宮?」



(早く!早く!早く!早く!早く!早く!

 早く!早く!早く!早く!早く!早く!早く!!

 早く!早く!早く!早く!早く!早く!早く!早く!!!)





ガクガクと酷く震える璃亞の白い足は、

まだ立つ事すらままならない生まれたての小鹿のよう。



それを見た秀光の口元に小さな笑みが浮かび、消える。



たったそれだけのことが、璃亞を最後まで追い詰めることとなった。





「あ・・あ・・ぁ・・

 せんせぇ・・お、お赦し・・ください・・」



「・・小宮」



「・・ぐすっ・・こ、ころさ、ないでぇ・・」





結局、何の策を弄すこともできないまま、

ただ涙ながらに謝罪の言葉を口にする璃亞。



秀光はそんな彼女を優しく抱き締めると耳元に口を寄せた。





「(いいか、小宮。

  執行部がお前を捜索しに森に入り、

  恐らく、もうすぐ近くまで来ているはずだ)」



「(ひっ・・

  し、執行部・・黒衣の・・)」



「(しっ・・来たようだ)」





そこに、近づいてくる複数の足音が聞こえ始める。



視界を遮る濃霧をものともしない速く無機質な歩調は、

まるで軍隊の行進のようだ。



秀光は手早く璃亞からミニバッグを奪うと、

離れた茂みの下に投げて転がす。





「(もう時間がない。

  いいか小宮、先生に話を合わせるんだぞ)」





殺されるのではないかと思っていた秀光からの助け舟ともとれる言葉。



璃亞がすがる思いでそれに頷いて返すと同時に、

2人を取り囲むように黒衣の修道女たちが姿を現していた。





執行部。



そう呼ばれ恐れられる修道女姿の20代中心の彼女たちは、

学園理事直属の組織だ。



顔の上半分をフードで隠し、個々で名を名乗ることもせず、

ただ理事長の命に従ってのみ動く彼女たちの素性を知る者はいない。





「おや、執行部の皆さん。

 今日はまた、何かのおつとめ――ですか?」





2人を包囲したまま言葉を切り出そうとしない執行部に対し、

秀光は様子見の一言を挟んでいた。



だが、それでも執行部は一向に口を開くことなく、

2人を観察するように冷ややかな視線だけを投げかけ続ける。





「えぇっとぉ・・その、男としましては、

 こんな数の美女たちに見つめられると、困ってしまうのですが・・

 もしかして、私たちに何か用件がおありなんですか?」



「――我々の元に小宮 璃亞さんが

 森に入ったとの情報が寄せられました。

 そのため、こうして保護しに赴いたのです」





1人前に進み出た修道女が、今度はしっかりと言葉を返す。



だが、その抑揚のない声からは、

人間らしい感情がまるで感じられなかった。





「え・・ああ、すみませんね。

 小宮は私が外に誘ったのです」



「何のために、ですか?」



「ああ、いえ、ほら、

 その・・親睦を深めようと、ね」





周囲を取り巻く他の修道女たちの視線に息詰まりながらも、

やり取りの行方を秀光の後ろに隠れるようにして見守る。





(がんばって・・

 どうか、がんばってくださいませ、石坂先生・・)





璃亞は生きた心地がしなかった。



理事長直轄の執行部は大きな権限を与えられており、

教師たちですら一目置かざるを得ない存在。



その彼女たちの判断1つで、

自分も益美のあとを追うことになるかもしれないのだから。





「親睦を深める――?

 というと、生殖行為、ですか?」



「え、えぇ、まあ・・」



「石坂先生。

 たとえ生殖行為目的であろうと、

 生徒の敷地外への連れ出しは禁止事項です」



「ああ、はい・・そうでしたね、申し訳ありません」



「過去にも、

 そうやって連れ立って山に入った教員と女生徒が

 そのまま行方不明となってしまった事例もあるのですから」



「・・(それは貴女たちの仕業では・・)」



「はい? 何か、言いたいことでも?」



「えっ?

 ああ、いえいえ、別に何でもありませんよ」





しかし、璃亞はまたその一方で、

なんとか自分を窮地から救おうとする異性の背に

大きな存在感を感じ始めつつもあった。



その後もしばらく続いた問答は、

最終的に秀光の忍耐力が凌ぎきる形で決着がつく。





「――わかりました。

 では、今回は石坂先生・小宮さん共に厳重注意。

 ・・ということに致しましょう」



「はい。

 本当に重ね重ね申し訳ありませんでした」





秀光の謝罪の言葉に合わせて璃亞も深く頭を下げる。



今も傍らにギシギシと揺れ続ける最悪の結末は、

とりあえず回避することに成功したのだ。





しかし、それで終わり――というわけではなかった。





「では、そろそろ戻りましょうか。

 執行部の皆さんも一緒の方が万が一にも道には迷わないでしょうし」



「――いいえ」





執行部が決定を覆さない内に場を流そうとする秀光を、

先ほどの修道女の一言が制する。



再び、話が怪しい方向に向かうのではと息を飲む秀光と璃亞に、

修道女はこう切り出していた。





「より深く親交を結ぶため、ここまで小宮さんを連れ出した。

 そうでしたよね、石坂先生?」



「あぁ・・はい」



「禁を破ることについては見過ごせませんが、

 愛する生徒と親交を深めたいという想いは尊いものです。

 我々とて、その想いまで無下にしようとは思いません」



「えぇ・・っと?

 要約すると

 『せっかくだからこのまま小宮と親睦を深めていけ』・・と?」





そんな秀光の言葉に、

ここまで無表情だった修道女は小さく舌なめずりをしていた。











夜闇に満ち、深い霧の立ち込める森の一角。



1本の樹の下、

ランプの灯りは生と死の織り成す幻想的な光景を照らし出す。





《っぱん!っぱん!っぱん!っぱん!

  っぱん!っぱん!っぱん!っぱん!》



「フーーッ、フーーッ、フーーッ・・」



「は! はぁ! はっ! はンっ!」





場は修道女たちの聖なる歌声に満ち、物言わぬ天使がギシギシと笑む。



その中央で紡がれるのは牡と牝の生命の旋律だった。





《・・石坂先生。

 その、璃亞は・・構いません》





この美しくも異様な光景は、

璃亞の一言により現実のものとなった。



先ほど、修道女たちの求めにより生まれた膠着状態の中、

今度は璃亞が躊躇いを振り切り、秀光に助け舟を入れたのだ。





「(・・よかったのか、小宮?)」





璃亞の小さな肉体を転がすかのように、

上から下から、前から後ろからと目まぐるしく形の変わる性行為。



それは厳かに聖歌を唱えつつも

俗世の欲に囚われた修道女たちの目を愉しませる一方で、

怪しまれることなく璃亞を気遣うためのものでもあった。



秀光は形と形の合間に璃亞の耳元に顔を寄せ、

たとえ少しずつでもと意思疎通を図っているのだ。





「(何をおっしゃいます。

  石坂先生の方こそ、

  璃亞のためにご自分の身を危険に晒してくださいました)」



「(け、けどなあ・・

  それにしても、こんな状況で・・)」



「(たしかに、恥ずかしい・・です。

  でも璃亞は、先生とつとめを果たすこと自体は、

  その・・嫌ではありません・・わ)」



「(・・わかった、続けさせてもらう。

  本当にすまない、小宮)」



「(あっ・・先生、そろそろ周囲の目が・・)」



「(やれやれ、大変な『おつとめ』になりそうだな)」





2000年以上前にこの世に生を受けたという聖者リトリスの教えでは、

人の愛こそ最も尊い救いであると定められる。



人と人が手を取り合い紡いでゆく大きな輪こそ、

世界平和そのものであるという考えだ。





しかし――





ここではその教えも魔都に満ちる負の瘴気に蝕まれ、

『崇高なる愛の救済』は『穢れた性の提供』へと成り果てていた。



『聖リトリスの乙女』たる女生徒たちは、

教職員・用務員ら、学院内に跋扈する『愛に彷徨う者』たちの

救いを求める声に応じることが義務付けられているのだ。





その非情の掟に例外はなく、

希望に胸躍らせて学院の門をくぐった新1年生・璃亞もまた

複数の用務員と幾度かの肉体関係を持たされるに至る。



厳しい教えと向き合う苦悩を和らげる『聖水』を積極的に頼らず、

仲間と身を寄せ合う余裕すらない。



そんな璃亞たち新1年生に安息はなく、

あるのは自分たちを品定めする男たちの視線に怯える日々のみだ。





《っぱん!っぱん!っぱん!っぱん!

  っぱん!っぱん!っぱん!っぱん!》



「はーーっ・・はーーっ・・はーーっ・・」





だが、学院脱走に失敗し一縷の望みすら断たれた璃亞は、

再び瞳に希望の色を取り戻しつつあった。





規律を乱す者をどこまでも追い詰め、

例外なく厳罰に処す執行部との遭遇。



命の危険が見え隠れする状況から身を挺して自分を守る秀光は、

今の璃亞にとって、これ以上ない心の支えとなる。



そこに俗に言われる『吊り橋効果』が生まれ、

秀光に対して璃亞が抱いていた感情に

大きな変化をもたらしていたのだ。





「はぁっ、はふっ、あぁんっ!

 せ、せんせっ・・せん、せぇ・・っ」



「フーーッ・・フーーッ・・

 あぁ、わかっているッ

 大丈夫だからな・・小宮・・ッ」





行為中、幾度となく秀光とのアイコンタクトを求める璃亞は、

それが通うたびに胸中の不安を追い出してゆく悦びを噛み締める。



祈れど祈れど試練ばかりを与え、

決して救いの手を差し伸べない天上の聖者より、

たしかな温もりで包んでくれる地上の聖職者に惹かれる璃亞の心。



それが今まで苦痛でしかなかった行為に意味を持たせ、

まだ幼さを強く残す肉体を未知なる領域へと導いてゆく。





「(しかし、変な気分だな、小宮・・)」



「(・・はい?)」



「(気付いていないのか?

  ちょっとだけ周りを見てみろ。

  いいか、ちょっとだけだぞ?)」



「(・・??)」





慣れない行為に没頭するあまり

極めて狭い視界しか持っていなかった璃亞は、

そこで初めて周囲で起きていた変化に気付く。



愛し合う2人を祝福していた聖歌は途切れ途切れとなり、

大人の女たちの濡れた吐息に乱れ切っていた。



修道女たちは皆一様に震え昂ぶり、

中にはスカートの下に手を忍ばせる者までいる。



また、行為を近くで見ようとしてか、

秀光と璃亞を取り巻く囲いがジワジワと狭まってゆく様は、

『だるまさんがころんだ』を髣髴とさせた。





「(まぁ・・

  璃亞、全然気付きませんでしたわ。

  執行部のお姉さま方も璃亞たちの、その・・おつとめを、見て?)」



「(それ以外に考えられないだろう)」



「(意外・・と申せばよいのでしょうか。

  その・・言葉は悪いですが、

  死神のような方々だとばかり思っておりましたのに)」



「(ま、色々と恐れられてはいるが、

  結局は執行部も人の子だということなんだろうよ)」



「(はぁ・・)」



「(それに彼女たちは業務の妨げとなるとして、

  異性との交わりを禁止されているらしいから

  尚更、羨ましい・・のかもしれないな)」



「(羨ましい・・ですか。

  璃亞・・今なら、それがわかるような気が致します)」



「(フフ・・そうか?

  それならせっかくだ、このまま気付かぬふりをして

  執行部の皆様に存分に見せ付けて差し上げてもいいかもな)」



「(せ・・先生・・っ??)」



「(悪いが小宮・・

  もう少しだけ、頑張ってくれよ・・)」





秀光は後背位で繋がり直すと、

周囲に見せ付けるように両手を掴み引いて璃亞を弓反りにさせる。



そんな秀光の挑発に乗り更に囲いを狭める修道女たちは、

これがまた最後の体位変更であることも感じ取っていた。





「フーーッ・・フーーッ・・フーーッ!」



《ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!

  ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!

   ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!》



「あはぁぁっ!

 ・・せんせぇ・・こ、こんなっ・・はぁンっ!」





牡としての本懐を遂げる瞬間を見据え、

今までとは別人のように荒ぶる秀光のピストン。



その膨張した先端に奥底を打たれるたび、

璃亞の下半身は硬直し、痺れが走る。



だらしなく開かれた上の口からは唾液を滴らせ、

牡の猛りを一身に受け止める下の口からは愛液の雫が散る。



そして、止め処なく昂ぶってゆく2人の熱気が、

黒衣の描く円の直径をゼロへと近づけてゆく。





「はぁ・・今、こうして激しく求め合う男女の姿・・

 これこそ、聖リトリスの示す愛の姿に他なりません・・」



「ハァ・・ハァ・・

 子宮に愛を注がれる時が近づいているのですね・・」



「まことに尊い・・光景です」



「あぁ・・なんと、美しい・・

 なんと・・妬ましい・・」





もはや聖歌は途絶えていた。



修道女たちは見かけばかりの役目を捨て、

その本性を現してゆく。



1つの愛が佳境を迎える瞬間を前に半仮面の奥の目をギラつかせ、

秀光と璃亞を、正面から、真横から、上から、下から、と

一斉に身を乗り出してあらゆる角度から覗き込んでゆく。



そこに吊られた天使を邪魔だとばかりに払い除け、

仲間をも押しやり我先にと覗き込む修道女たちの姿は、

飢えた牝の肉食獣そのものだ。





《ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!

  ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!

   ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!ぱんッ!》



「フーーッ・・フーーッ・・!

 小宮・・小宮ァ・・・・ッ!!」



「ん! んぐっ・・ふあぁっ!

 ・・せん・・せぇぇ・・っっ!」





理性を失ってゆく33歳と15歳のセックスは、

快楽の奈落へと続く道をゆくチキンレースのよう。



しかし、黒衣の修道女たちの見えざる手は、

そんな2人をグイグイと奈落へと押し込んでゆく。





『さぁ、堕ちておしまいなさい』





やがて、時の止まったかのような一瞬の静寂の中、

誰かがそう囁く――





「・・ッ!?

 ンオオオオォォォォ〜〜〜・・ッ!!」



《ドチュ〜〜〜〜ッ!!

 ブビュッ! ビュクビュクッ! ビュゥゥッ!!》



「あっ、熱ぅ・・っ

 きゃああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜んっ!!」





許容量を大幅に超える快楽が怒涛の如く流し込まれ、

たまらず声を張り上げる璃亞。



璃亞の可憐な痴態を誇らんとばかりに、

更に大きく引いて弓反らせる秀光。



そんな2人に一斉に頬を摺り寄せ、鼻先を押し付け、舌を這わせて、

快楽のお零れを奪い合う修道女たち。





ギシギシと変わらぬ笑みを浮かべる天使だけが、

その汚泥の如き光景を静かに見下ろすのだった――


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