〜 代償と報酬 〜



◆登場人物





◇元木 悠馬(もときゆうま)

 男性 24歳(用務員)

優秀だが、酷い不細工のために異性関係に異常な憧れを抱き、

大切な家族を捨てて聖リトリス女学院にやってくる。



◇剣崎 靖久(けんざきやすひさ)

 男性 50歳(用務員)

酒好きの用務員。

新人である悠馬の面倒を任されている。



◇井草 琴美(いぐさことみ)

 女性 15歳(1年生)

気弱で大人しい性格。

自分を頼ってくる佳奈美を妹のように気遣っている。



◇瀬戸 佳奈美(せとかなみ)

 女性 15歳(1年生)

気弱で大人しい性格。

甘えん坊で何かと琴美を頼っている。



◇漆原 瞳(うるしばらひとみ)

 女性 16歳(1年生)

お淑やかな風貌と裏腹に判断力や行動力に優れる。

仲間とつるまず、1人で自分の身を守り続けていたが・・











ここ数年、新規雇用がなく、

中年から初老の男たちばかりだった聖リトリス女学院の用務員。



だが、今年度に入ってからは次々と若い新人が増え始めていた。



先日配属されたばかりの

24歳の新人用務員・元木 悠馬(もときゆうま)も、その1人だ。





酒屋の末の三男であった悠馬は、

大学卒業後、兄2人に続いて父を支えるべく家業に就く。



昔、母が他に男を作って家を出るという悲劇に見舞われた一家は

残された男4人で『なにくそ!』と団結して生きてきたのだ。



家業に本格参戦後、自店サイト構築からネット注文・配送サービス等、

悠馬は次々と新戦略を考案・導入して売り上げの大幅増を実現。



真面目に働いて店を大きくし、家を裕福にすることこそ、

自分たちを捨てた母親を見返す唯一の方法だと頑張った。



だが、彼は自分の仕事に充実感を感じる一方で、

言いようのないほど大きな不安を抱えてもいた。



不真面目だが美女で人当たりがよかった母ではなく、

体力と真面目さだけが取り得の父に似たという

遺伝子的な宿命だ。



悠馬は父や兄たちと同じく真面目な性格で力自慢。



更にその上で頭脳も明晰な、いわば『デキる男』。



だが――



肉付き自体はいいにもかかわらず、

顔から体までが下へと広がる見事な三角形。



顔を打たれたボクサーのような瞼に垂れ目、

大きすぎる鼻と分厚いタラコ唇。



『不細工』の一言に尽きるルックスは幼少時から異性を遠ざけ続け、

異性関係における先天的な敗北感を遊馬の中に育てていた。



そう。



彼は絶望的なまでに『モテない男』なのだ。



毎日、多くの同年代の女子たちと過ごした学生時代でさえ、

異性との特別な出会いにはかすりもしなかった。



いや、そのための努力すらさせてもらえないほど、

既に悠馬の精神は打ちひしがれていたのだ。



家業を継ぎ、更に異性とふれあう機会が減った今、

『自分はこのまま異性を知らずに一生を終えるのでは・・』

という不安は、悠馬の心を押し潰さんほどに増大してゆく。



悠馬がネット上で酷く興味をそそられる記事を見つけたのは、

そんな頃だ。





――聖リトリス女学院 用務員 若干名募集――





ネット情報に深く精通する悠馬は、

魔都の怪異の1つとされる聖リトリス女学院もよく知っていた。



謎のベールに包まれた女子校に纏わる恐ろしくも淫靡な噂たち。



そして、長らく一切の人員募集を断っていたことも。



『若干名』



その3文字に胸を鷲掴みにされ、

履歴書を買いに深夜のコンビニへと駆け込んだ悠馬。



そこからの行動の迅速さは、まさに『デキる男』だった。



『快楽と欲望に満ちた魔都の怪異の一部となれるなら、

 二度と家に戻れなくても構わない』



怪しげな面接官の揺さぶりを一言で切って捨てた彼は、

『他にやりたいことができた』と置手紙を残し、

現世と家族に別れを告げたのだ。











17時半――聖リトリス女学院・校門。



結界となって立ち込める濃霧の中、

そこを駆け足で入ってゆく2つの人影があった。





「うわあぁ〜・・やっぱ、もういねェかなァ」





先を行く年輩の男がフラつく足で立ち止まると、

あとに続く若い男も同じように足を止める。





「ゼェ〜・・ゼェ〜・・

 わ、わりィなァ、元木くんよォ・・

 初日から遅刻につき合わせちまって」



「あ、いや・・僕は別に、大丈夫っスよ」





悠馬は配属初日から、

ちょっとしたアクシデントに見舞われていた。



執行部のメンバーに用務員寮まで連れてこられた後、

先輩・剣崎 靖久(けんざきやすひさ)に預けられる。



あってなきに等しい『表』の用務員仕事は後回しに、

悠馬にさっそく振られるのは『裏』の用務員仕事。



聖リトリスの乙女たちの心に奉仕の精神を、

そして体には新たな息吹を植えつける――性行為だ。



しかし、いざ放課後が近づくと靖久が酷い腹痛に襲われ、

トイレに長時間篭るはめとなってしまったため

巻き添えで学院への到着が遅れたのだ。





「しっかし、ホントすごいですね、この霧・・

 年中、こんななんですか?」



「ハハッ、新鮮な反応だな。

 なかなかいいもんだろ? 雰囲気があってよォ・・」



「えぇ・・正直、嫌いじゃないです。 こういうの」



「そりゃ、よかった。

 なんせ元木くんは、残る余生をここで過ごすんだからな」



「えぇ、そう・・ですね・・」





ここで長らく暮らす先輩にそう言われ、

胸の内に『自分は文字通り世捨て人となった』という実感が

しみじみと沸いてくる。





(親父、兄貴たち・・

 こんな別れ方になっちまって本当にすまない)





仲のよかった家族とも、もう二度と会うことはない。



あまりにも重大な決断をノータイムで下したことへの戸惑いを、

悠馬は未だどうしても拭い切れずにいた。





「ここに来る奴らにしちゃ珍しいな?

 現世に未練があんのかい?」



「いえ、決断したのは自分です。

 未練がある・・なんて、言えませんよ」



「ま、どんな未練かは知らねぇし、聞きもしねぇさ。

 けどな、元木くんが何を期待してここに来たかは明らかだ。

 大変な決断をしただけの見返りは、間違いなく・・あるぜ?」



「あ・・は、はい」



「っと、しかし今は肝心の獲物を探すことが先決だったな。

 さぁ元木くん、校内をさっと見て回ろうか」





未だ下校しておらず、かつ他の男に捕まっていない女生徒を探し、

各校舎の周囲をぐるりと見て回る2人。



何の収穫もないまま一周を終えようとした時、

不意に悠馬が足を止める。





「(お待ちになって。 今、そこに足音が・・)」



「(ひ・・っ)」



「(音を立てないように、一度上へ戻りましょう・・)」





悠馬の鼓膜をかすかに揺らしたのは、

どこかすぐ近くで気配を殺す女生徒たちの会話だ。



ゴクリ、と息を呑む。



それらしい死角がないかと周囲を見回すと、

校舎横の非常階段が目に止まった。





(・・・・いる)





聞き取れた会話の内容はごくわずか。



だが、女生徒たちが陵辱者から逃れようと身を潜めていることが、

悠馬には容易に想像がつく。



そして、同時にひしひしと実感してしまうのは、

自分が彼女たちが恐れる陵辱者側であるということだ。



下半身に血が集まっていく感覚が、

今の悠馬には妙にリアルに感じられた。





「(け・・剣崎さん)」





悠馬に呼び止められ、

靖久も非常階段の小さな気配に気付く。





「(おう、でかしたぞ元木くん。

  ここまでして俺らから隠れようとするのは、

  十中八九、聖水を使っていない1年生ちゃんたちだ)」



「(・・聖水?)」



「(そのあたりは今度詳しく話してやるからよ。

  んじゃま、ついてきな)」





靖久について非常階段を昇る悠馬。



その耳に届く怯えた息遣いが近づくほどに、

霧に閉ざされた視界を背徳感が更に狭めてゆく。





「・・こんばんは、お嬢ちゃんたち」



「・・あっ」



「ひぃ・・っ」





そして間もなく、階段の中腹に獲物の姿が見つかる。



1年生・井草 琴美(いぐさことみ)と瀬戸 佳奈美(せとかなみ)。



身を寄せ合い、息を殺して肉食獣から隠れていた2匹の仔ウサギだ。





「俺たちの用件は・・わかってるよなァ?」





2人はすぐに返答を返さない。



それは問いかけの答えを理解しているからこその反応だ。



涙目の佳奈美は、何やらヒソヒソと琴美に囁きかけるが、

琴美は沈んだ表情で首を横に振る。





「――『おつとめ』、でしょうか?」





男たちには聞こえない問答の末、ついに琴美が口を開く。



『おつとめ』



それが、この学院に敷かれる冷徹な規則の最たるもの、

男たちへの性奉仕であることを悠馬は既に聞かされていた。



この状況下で、恐らくは最も口にしたくない言葉を搾り出す。



その裏に見え隠れする彼女たちの『奪われる覚悟』が、

静かに悠馬を興奮させてゆく。





「そういうことだ。

 ・・お相手して、もらえるんだよな?」





女生徒2人に突きつけられるのは、学院における絶対の力関係。



ギュッと目を閉じて黙り込む琴美がやがて首を縦に振ると、

佳奈美も力なく項垂れて拒絶の意のないことを示していた。





「というわけで無事に交渉成立だァ、元木くん」





靖久は女生徒2人を立たせると、

ガバッと両手に抱き込んでみせる。





「ほれ元木くん、今日は特別に選ばせてやるよ。

 一夜妻にしたい子・・どっちだい?」



「あ・・」



「もう二度と元の世界に戻れない俺らは、

 いわばこの学院と添い遂げることようなもんだ。

 なら、今日は元木くんの記念すべき『初夜』なんだよ」





『だから、遠慮すんな』と続ける靖久に頷いて返すと、

悠馬は2人の女生徒を交互にゆっくりと見比べる。



ついこの間まで中学生だった琴美と佳奈美は、

共に小柄で華奢な体つきの大人しい少女だ。



パッと見の印象に大きな差はない。





「あの・・君たち。

 名前、教えてもらえないかな?」



「(・・ど、どうしよう?)」



「・・井草 琴美ですわ、お兄さま。

 こちらは友達の瀬戸 佳奈美さん」



「琴美ちゃんに佳奈美ちゃんか、ありがとうね」





だが、男と対した際の反応は2人で異なる。



それはまるで守る姉と守られる妹の、幼い姉妹だ。





「――琴美ちゃんが、いいです」



「決まりだな」





悠馬が答えを出すと、

靖久から腕を解かれた琴美は、そっと悠馬の傍らについた。





「んじゃ、元木くん。

 ここでこのまま・・ってのも、ちょいと情緒にかけるし、

 いい場所探しながらちょっくら歩くか、カップルで!」



「はい、剣先さん」





靖久が佳奈美の腰を抱いて一歩先に階段の下へと消えると、

悠馬も恐る恐る琴美の腰に手を回す。



抵抗はなく、悠馬の手に女の体温がじわりと伝わった。





「・・僕たちも、行こうか」



「はい」











人間から視覚を奪うことで理性を鈍らせる

聖リトリス女学院の霧と夜闇。



先を行く靖久と佳奈美の背を見失わない程度に距離を空け、

悠馬は琴美を伴い校舎の裏を歩いていた。





「・・・・」



「・・・・」





そこに会話はなかった。



これから自分たちの身に降りかかる悲劇を思い押し黙る琴美に、

悠馬は何を切り出せばいいのかがわからないのだ。



それもすぐ眼前に、

嫌がる佳奈美の尻を靖久が撫で回す様があれば尚更だ。





「その、ごめんね? ・・琴美ちゃん」



「はい?」





だが、これは悠馬が

大切な家族を切り捨ててまで決断した道。



そのまま流れに任せるだけのようなことはできなかった。





「今、琴美ちゃんが

 すごく嫌な想いをしてるのはわかってる」



「・・ベ、別に琴美・・は・・」



「けど、ごめん・・

 僕はそれでも、琴美ちゃんとセックスがしたい」





そこでまた琴美が押し黙り、会話が途切れる。



最初は自分の生い立ちやら、トラウマやら、覚悟やら、

悠馬はそういったものを話そうと思っていた。



だが、悠馬と琴美はどうひっくり返ろうと加害者と被害者。



加害者が何を語ろうと被害者の慰めになどならないと、

悠馬は言葉を収めたのだ。





「おい、元木くん」





無意識に俯いていた悠馬は、

靖久の声ではじかれたように前を向く。





「あ、はい・・うわっ」





途端に眩い光が目に突き刺さり、悠馬は体を竦める。



見れば、靖久が懐中電灯を向けていた。





「なッ、なんですか・・剣崎さん」



「ここにしよう。 こっちに琴美ちゃんも連れておいで」



「は、はぁ・・この辺で、ですか?」



「ほれ、いいから! こっちこっち」



「・・わかりました」





先ほど校舎裏に入ってからここまで

大きく代わり映えのしない風景が続いていた中、

どうして靖久はここで足を止めたのか。



その理由は校舎裏に隣接する廊下の窓に向けられた

懐中電灯のライトが照らし出す。





《ガタ、ガタガタ、ガタ・・》





風もないのに、不自然に1枚だけ揺れ続ける奇妙な窓。



そこにギュウッと押し付けられているのは、

曝け出された柔らかな女性のシンボルだ。





「――あっ!」





思わず声をあげる悠馬。



窓に上半身を押し付け、後ろに男を繋げる女生徒の姿が

そこには浮かび上がっていた。





「・・え、ちょっと・・」



「ひ、瞳さん・・」





それとほぼ同時に琴美と佳奈美も反応。



窓の向こうの女生徒もギョッとした顔で目を背けた。





「なんだ、2人の知り合いの子かい?」



「えっと、同じクラスの、子・・

 でも、よりによって・・あの瞳ちゃんが、だなんて・・」





琴美と佳奈美は動揺を隠せなかった。



この漆原 瞳(うるしばらひとみ)という女生徒は、

お淑やかな外見とは裏腹に判断力と行動力に優れ、

クラスの女子の中でも一目置かれる存在。



学院の規則や男たちに強い嫌悪感を示しつつも、

決して目立たず機転を利かせて自身を守り続けていた

一匹狼だったのだ。





《ガタッ、ガタガタッ、ガタッ・・》





だが、制御を失いつつある蕩けた瞳の表情は、

今、ガラス窓の向こう側を伝い落ちる瞳の唾液は、

孤高の一匹狼の威厳を地に落とす烙印に他ならない。





「なら、尚更好都合じゃねえか。

 とりあえずはここで観戦としゃれこもうぜ」



「で・・でも・・」



「『でも』じゃねえだろ、佳奈美ちゃんよォ。

 せっかくのお友達の晴れ舞台なんだ、愉しもうぜ?」



「ほら、琴美ちゃんもちゃんと観るんだよ?」



「・・はい」





悠馬と靖久は、それぞれの相手を窓の前に立たせると、

自らも彼女たちの肩口から覗き込む。



仄かな女性の体臭が悠馬をクラリとさせた。





「しかし、瞳ちゃんだっけか?

 もう、顔がトロットロだなァ。

 こりゃ、もう何発かブチ込まれてるんじゃねえか?」



「や・・やだっ

 そ、そういうコト、いわないで・・」



「いいじゃねえか。

 佳奈美ちゃんだって早くソノ気になってくれんだろ?」



「か、佳奈美は・・そんなコト、ないもん・・」



「よし、何なら直接聞いてみるか?」





靖久は窓をコンコンとやり、

瞳の後ろの男に指で何やらゼスチャーを送る。



すると、しばらくして男に指示を受けた瞳が、

恥ずかしそうに人差し指、中指、薬指の3本を立てて見せた。





「ハハハ、ほ〜れ見ろ。

 瞳ちゃん、3ラウンドめだってよ?」



「や・・やだぁ・・」





カラカラとよく笑い、しゃべる靖久の声の横では

悠馬と琴美が未だ顔を寄せ合っていた。





「琴美ちゃんのほっぺた、熱くなってるね」



「・・仕方、ありませんわ・・」



「琴美ちゃんも、興奮してるの?」



「そ・・それは・・」



「だってほら・・乳首、大きくなってるよ」



「あっ・・いや」





ブラウス越しに柔らかな膨らみを掴む手。



人差し指と中指の間でムクムクと膨らんでゆく

プリプリとした突起の感触。



悠馬は先ほどまでやり場に困っていた自分の手が、

今まで憧れ続けてきた若い少女の乳房に

自然と揉んでいることに驚いていた。





「ハアァァァ・・

 琴美ちゃんのおっぱい、とっても柔らかくて可愛いね」



「あ、だめですっ・・

 ・・ふ、ふぅっ・・ふぁ・・んんっ♪」





乳房を揉み回される琴美から、不意に毛色の違う声。



胸の内にある確かな拒絶に牝の本能が揺さぶりをかけ、

何かに掴まる手が解かれるように、少しずつ流されてゆく。





「ハァ・・ハァ・・琴美ちゃん・・

 ついにエッチな声・・出してくれたね」



「う・・う・・っ

 しっ、知りませんわ・・お兄さまの、馬鹿ぁ・・」





忌むべき男の手に快楽を覚えてしまった羞恥から、

顔を真っ赤にして涙を流す琴美。



そして、それが拒絶の意を示す涙でないという事実が、

衰弱した琴美の精神を更に追い討ちをかける。



混乱が琴美の理性と思考をグチャグチャにかき混ぜ、

何も考えられないまま男の言いなりになってゆく。





「琴美ちゃん、もう我慢できないよ。

 だから、いい・・よね?」



「・・お兄さまの、馬鹿・・」





震える手で悠馬の手を少しだけ乱暴に振りほどく琴美。



その両の手は、そのまま瞳の横の壁にそっと添えられる。



ミニスカートの小さな尻がおずおずと差し出される。





「・・ありがとう、琴美ちゃん。

 僕も初めてだけど・・頑張るからね」





ギュッと目を閉じた琴美が頷いて返すと、

ズボンとトランクスを脱いだ悠馬が後ろにつく。



既にベトベトになった琴美のパンツが下ろされ、

その奥に覗く魔窟に魅入られるかのように、

そそり立つ牡がそこに埋まってゆく。





《ぬぷッ・・ずぬぬぬぬぬぬ・・ッ!!》



「んっ! ん、んんんんっ! んぅぅぅ〜っ!!」



「もッ・・もう少しで、全部ッ、挿入るからね・・ッ!」





耐え難い感覚に体を強張らせながらもコクコクと頷く琴美。



そんな琴美を壁に押し付ける悠馬が、

じっくりと時間をかけ、力強く結合を遂げてゆく。





「・・・・・・・・ぁぁっ!」





琴美が大きく目を見開く。



強烈な異物感に耐え、プルプルと震わせていた琴美の尻肉を、

ついに悠馬の腰がペタンと叩いたのだ。



そのまま更にグイッと尻を押し上げられて、

琴美はイキむように声を漏らしていた。





「ふ・・ふーーーーーーっ・・」





結合完了を悟った琴美の肉体がゆっくりと硬直を解いてゆく。



漸く自由な呼吸を取り戻した琴美が大きく息を吐くと、

頭の中のグチャグチャが口から逃げてゆくようだった。



いっそ二度と戻って欲しくない正気が息を吹き返してゆく。





《ガタガタッ――! ・・・・・・・・》





一際大きく揺れて静かになるライトアップされたガラス窓を、

また1本唾液の雫が伝い落ちてゆく。



先ほどまで隣にいたはずの友人の姿はそこになく、

後方から『パン!パン!』という無情な音だけが聞こえてくる。



そして、自分もこれから彼女たちの後を追うことになるのだ。



『ついに自分も、

 この呪われた学院風景の一部になってしまった』



そう深く実感した琴美の心は、

バリバリとエグい音を立てて張り裂けてゆく。





「あの・・お兄さま・・

 ちょっとだけ、失礼します・・」



《――シュッ、シュッ》





温もりを失ってゆく細い指がポケットから小瓶を取り出すと

ピストルの引き金を引くようにポンプを押し込んでいた。





「・・・・」





自らに噴霧器の霧を吹きかけたまま、

しばらくボーっとする琴美を悠馬は不思議そうに覗き込む。



彼はまだ聖水についての説明を受けておらず、

この行為の意味するところがわからないのだ。





「・・琴美、ちゃん?」



「すみません・・お待たせしました」





恐るべき聖水の魔力。



精神崩壊の兆しを見せていた琴美のリカバリーは、

驚くほどの効率で終えられていた。



痛みを覚える思考全てを聖水の霧に隠す完璧な麻酔が、

琴美の精神に虚ろなる安寧を取り戻したのだ。





「えと、大丈夫?」



「ええ、もう大丈夫のはずですわ。

 『馴染む』までの時間を、いただいてしまいました」



「あ・・あぁ、そっか。

 いいんだよ、ゆっくりで。

 正直、僕も気持ちよすぎて、すぐ出ちゃいそうだったし・・」



「別に、いいのではないですか?

 『あちら』は、待ったなしのようですし」



「・・えっ?」





琴美につられて振り向く悠馬。



そこに1つの区切りを迎える靖久と佳奈美の姿があった。





「・・ンオオォォッ!」



「おふッ・・あァ〜〜〜〜〜ンッッ!!」





樹に押し付けられた佳奈美を深々と刺し貫いたまま

ブルブルと身を震わせる靖久。



悠馬は2人の凄絶な姿に目を奪われる。





「・・膣出しだ・・すごい、な・・」



「・・それはそうですわ。

 女の子の運命を無理矢理書き換えてしまうかもしれない、

 残酷な銃の引き金が引かれた瞬間なのですから」



「・・そう、だね」



「でも・・お兄さまだって『なさる』のでしょう?」



「ああ、するよ。 する。

 たとえどんなに嫌がられても・・琴美ちゃんに、膣内射精」



「・・・・」



「そのために、大切なものを全部捨ててきたんだから。

 魔都に潜む魔物たちに魂を売り払ったんだから」



「なら、おあいこですわね。

 琴美も悪魔に心を売り渡したところですわ」



「・・?」



「いえ、いいのですわ。

 それより、今はどこまでも堕ちましょう?

 ・・お兄さま」





今までとは別人のような笑みを浮かべる琴美。



心が痛みを忘れてしまえば、あとは体の快楽しか残らない。



何も考えず、快楽だけに従うことは最も簡単な選択肢だった。











《ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!

  ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!

   ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!》





校舎裏の壁に手をつき、後ろに悠馬を繋げる琴美。



そのすぐ横に同じように靖久を繋げているのは瞳だった。



先ほどの男が『もう打ち止め』とばかりに先に引き上げたため、

靖久は失神した佳奈美の代替品として瞳を引き取ったのだ。





「はぁっ・・はぁっ・・はぁっ・・」



「あっ、あんっ・・はぁ〜ン」





ゆっくりと絡み合う2つの喘ぎ声。



琴美も瞳も淫靡な調べを奏でる楽器となって、

奏者たる悠馬と靖久に委ねているのだ。





「・・・・」



「・・・・」





ふと、どちらからともなくお互いを振り向く2人は、

そこに自分自身の姿を見る。



それは自分を守ることをやめた顔と、

快楽の鎖に繋がれることをよしとした牝犬の姿だ。



お互いの眼に映る自分の顔。



その自分の眼に映る相手の顔。



お互いの眼に吸い込まれてゆく琴美と瞳の間に、

音を介さない心の声が通い合ってゆく。





《・・ふふっ、お互い、すごいコトになってるね・・井草》



《えぇ、全く・・ですわ》



《なんで、こんなコトになっちゃってるんだろうね》



《えぇ、全く・・ですわ》





琴美と瞳はそっと微笑み合う。





《いっぱい、射精されちゃった・・

 妊娠しちゃうのかな・・あたし》



《なるようにしか、ならないと思いますわ。

 ここでは琴美たちは受身でいるしかありませんもの》



《井草だって同じだよ?

 怖く・・ないの?》



《ええ・・別に、もう》



《あぁ、なるほど・・

 井草は結局、聖水使っちゃったんだね。

 どう? ・・効き目のほどは》



《・・悪く、ない・・。

 そう・・とても、悪くない・・ですわ》



《・・そっか。

 もう、あたしも・・使っちゃおう、かな》



《それがいいですわ。

 いつか、この学院での3年間を

 悪い夢だった・・と、忘れられるように――》





壁についた琴美と瞳の手が、

どちらからともなく重ねられる。



それはこの残酷な運命を受け入れるという、

悲しい2人の意思表明のようでもあった。





「どうやら覚悟をキメてくれたようだ。

 さぁ、俺たちもイこうか・・元木くんッ」



「・・はいッ・・!」



《ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!

  ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!

   ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!》



「ほれッ・・射精すぞォッ!」



「・・こと、み・・ちゃッ・・ウゥッ!!」





瞳を撃ち抜く靖久に続くように、

悠馬もたまりにたまった想いを琴美の膣へ遂げる。



猛烈に精を吸い上げられるかのような快感。



どこまでも気持ちのいい琴美の肉穴の奥底に、

悠馬は精液のみならず、何もかもを吐き出していた。











深夜3時半。



色々な意味で大きな区切りを超えた悠馬が、

琴美と女子寮へと続く遊歩道を歩いている。



先ほど、佳奈美と瞳を送る靖久と別れた後、

悠馬と琴美の間にほとんど会話はない。





《・・くちゃ・・くちっ・・》





夜の静寂の中にかすかな水音が聞こえていた。



琴美の尻に添えられた大きな手。



その指先がパンツ越しに弄っているのは、

先ほど大役を果たしたばかりの女の器官だ。





「・・・・っ」





1人の男の半生を丸ごと受け止めるような衝撃的な射精を受け、

制御が失われた穴から滴る白濁。



それは薄布越しの野太い指先に潰され、かき混ぜられ、

いやらしく泡立っていた。





(ハァ・・すごいことになったな・・)



(・・井草 琴美ちゃん、高校1年生。

 本来なら僕なんかの人生に登場するはずもなかった彼女・・)



(今、こんな可愛い女の子のおまんこの中に、

 僕の精液がたっぷりと詰まっているんだ・・)





琴美の内股に張り付く人差し指でパンツをずらし、

中指を穴へと押し込んでゆく。



粘液がかき混ぜられるグチャリという音と乱れた小さな吐息。



今までは悠馬の妄想の中にしかなかった現実が、

たしかにそこにあった。





(妊娠、するかな・・妊娠して、欲しいな・・)



(けど、何故だろう・・?

 そうは思うのに、彼女への愛しさはもう感じられない)



(明らかに、今までの自分じゃなくなっている。

 僕もおかしくなったんだろうか・・彼女みたいに・・)





悠馬が琴美を見やると、

琴美も虚ろな眼差しで見上げ返す。





(そうなんだろうな・・

 これからばかりが気になって、過去を省みたくなくなっている)



(親父や兄貴たちが、もうずいぶん遠いところにいる。

 恐らく、このまま僕の中から消えていくんだろうな・・)



(うん・・それでいい。

 もう、それでいいんだ・・そっちの方が、いい・・)





「・・ここですわ」





不意に琴美が足を止める。



霧の中に浮かび上がる女子寮玄関口の明かりに、

悠馬は目を細めた。





「・・ああ、もうついたんだね」



「では、お兄さま。 琴美はこれで・・」



「うん。 今日はお疲れ様、琴美ちゃん」



「はい、では・・」





玄関の中に消えてゆく琴美の姿を見送ると、

悠馬は空を見上げる。



そこに輝く星々はなく、

見えるのはただ人の理性を覆い隠す深い霧だけだった――


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