〜 贖罪 〜



◆登場人物





◇飯塚 美鈴(いいづかみすず)

 女性 16歳(1年生)

大人しく優しいが、自分の理想に嘘がつけない芯の強さを持つ。

仕方ない状況下とはいえ、佳代を見捨てたことを気に病んでいる。

歳不相応な立派の肉体を持つ。



◇内間 梨恵子(うちまりえこ)

 女性 15歳(1年生)

美鈴の親友だが、時に冷徹な判断に踏み切る現実主義者。

仲間全員無事ではいられない状況を理解しつつも、美鈴を気にかける。



◇森川 佳代(もりかわかよ)

 女性 15歳(1年生)

大人しく気が弱いが、誰よりも人がいい美鈴たちの仲間。

つい先日、1人逃げ送れてレイプされてしまう。



◇相田 聖子(あいだせいこ)

 女性 15歳(1年生)

気は強いが芯の弱い美鈴たちの仲間。

彼女の精神的な脆さが仲間に悲劇をもたらしてしまう。











聖リトリス女学院。



そこに暮らす人々の目を閉ざす深い霧は、

また一方で普段見えないものを浮かび上がらせもする。



――人の醜悪な本性だ。





「先生から帰りの連絡事項は特にありません。

 皆さんからも特になければ、号令をお願いします」





本日のカリキュラムを全て終えた新1年生の教室から、

女生徒たちが一斉に廊下へと駆け出してゆく。



それは1日を通して重く沈んでいる教室が騒がしくなる

稀有なひと時と言えた。





1年生の担任教師のほとんどは、

帰りのホームルームをできるだけ早く終わらせようとする。



1年生を用務員たちから遠ざけるためだ。





用務員たちは、最終6時限目終了のチャイムから20分後、

狩り解禁を告げる『獣のチャイム』が鳴るまで

学校区画及び女子寮方面への侵入が赦されない



そのため、教員側はホームルームを早く切り上げ、

20分の猶予をできる限り多く1年生に与えてやることで、

彼女たちを上手く逃がしてやっているのだ。





だが、それは生徒可愛さ故にではない。



学院内に暗黙の内に形成されるカーストピラミッドにおいて、

教員たちは自分たちより下に位置する用務員たちを

下賎の者として見下している。



要は『お前たちにはもったいない』とばかりに、

極上の獲物を取り上げて優越感に浸っているだけなのだ。





また、聖水を拒む1年生を長く生き長らえさせることは、

即ち、彼女たちの怯え、悩み、葛藤する時間を引き延ばすこと。



そ知らぬ顔でその様子を伺い、密かに愉悦に浸るのも

また彼らなりの愉しみだった。





だが、醜悪なのは何も『狩人』たちの側だけではない。











《ガチャッ》





女子寮の玄関の扉が閉まる音。



それは多くの1年生たちに、今日の無事生還を告げるものだ。



何故なら、女子寮だけは原則男子禁制だから。



男性は正統な理由を示して手続きを踏まなくては入れず、

そんな面倒を覚悟で踏み込む狩人たちもいないからだ。



彼女たちが無事に帰るための鉄則は『目立たず、素早く』。



だから、男たちの目のある場所では

あからさまに逃げるような目立つ行動を控え、

目がなくなれば体力の限り走って一気に離脱する。



玄関口でへたり込み、肩で息をする1年生4人も、

ここまでの遊歩道を駆け抜けて、

わずかな体力を使い果たした口だった。





「はーーっ・・はーーっ・・はーーっ・・

 皆・・お疲れ様ぁ・・」



「うん・・お疲れ・・」



「・・はー、はー・・よかったーっ・・」





仲間たちに一声かけるや、

ずり落ちそうな眼鏡もそのままに、

その場にペタンと尻をつくのは飯塚 美鈴(いいづかみすず)。



自らも呼吸を乱しながら美鈴の肩をポンポンと叩くのは、

このグループの中でも特に美鈴と仲のいい

内間 梨恵子(うちまりえこ)だった。





「はぁ・・はぁ・・美鈴も、お疲れ・・」



「・・うん、梨恵子ちゃんも、ね・・」



「きょ・・今日はなんとか、無事に、帰れたね・・

 ・・はぁ・・はぁ・・」



「・・・・。

 ・・う、うん・・」





お互い、今日の無事を悦び合う2人だったが、

そこで不意に美鈴が表情を曇らせる。



梨恵子もハッとして口をつぐんでいた。





――『今日は』なんとか、無事に、帰れたね。





梨恵子が『今日も』ではなく

『今日は』と言わざるを得なかったのには理由がある。



昨日は、そうではなかったということだ。





《――ガチャッ》





その時、美鈴たち4人の耳に飛び込んできた音は、

当然、他の寮仲間の無事生還を報せるものだ。



だが、そこで荒れた息を整える森川 佳代(もりかわかよ)を前に、

4人は黙り込んでしまう。



何故なら、この佳代こそが昨日犠牲となった仲間だから。



それも見捨てるという形でだ。



しばし、場が硬直する。





「あ、あの・・皆・・」





やがて、気まずい沈黙を破ったのは佳代だった。



だが、誰よりも人がよく、気が弱い佳代の恐る恐るの一声に、

残る女子の1人・相田 聖子(あいだせいこ)は反射的に立ち上がり、

さっと身を翻す。





「――行こっ」





すると、そこにすぐもう1人続き、梨恵子もまた続く。



そして。



困惑の表情で梨恵子たち3人と佳代を交互に見ていた美鈴も、

結局、その場の空気に逆らうだけの気概は示せなかった。





「・・うぅ・・っ

 ・・っ・・ぐすっ・・うぇぇぇ・・」





玄関口のすすり泣きの声から逃げるように、

美鈴たち4人はそれぞれの部屋へと戻っていくのだった――











「で・・えっと、何か、話?」





夜、夕食の後で梨恵子の部屋を美鈴が訪れていた。



美鈴をベッドに座らせ、自分はデスクチェアに腰を下ろす梨恵子。



その視線はどこかフラフラと落ち着きがない。





「うん。

 あの・・さっきの・・

 ・・佳代ちゃんの、ことなんだけど・・」





思った通りの切り出しに、梨恵子は小さくため息をつく。



美鈴の用件は、やはり佳代の一件だった。





「・・やっぱり、その話か・・」





この寮で生活する1年生の中でも、

美鈴を含む先ほどの4人に佳代を加えた5人は、

特にグループとしてまとまって行動することが多い仲間だった。



美鈴と梨恵子、他3人とクラスは2つに分かれていたものの、

危険な帰り道も5人で固まって切り抜けてきたのだ。



そう。



一昨日までは――











昨日は何やら緊急の職員会議があった影響で、

1年生は全クラスで帰りのホームルームが

大幅に遅れるアクシデントが発生。



用務員たちにも、その事情を知られてしまう。



そのため、多くの狩人たちが目を光らせ、涎を滴らせる中、

1年生たちは次々と狩られる仲間を横目に通り過ぎてゆくという

おぞましい状況下での下校となった。



もし男に声をかけられればレイプ確定という恐怖の中、

男たちの大半が集う校門までの道を歩いてゆく美鈴たち。



そして。



満足に呼吸することすら赦されず、

一歩踏み出すごとに精神をガリガリ削られてゆく一本道を、

美鈴たちはついに無傷で通り抜けるに成功する。



そこから先に伸びる霧深い遊歩道は開けた場所であるが故に、

物影こそ多くないものの男たちとの遭遇率は落ちる。



その上、その日は校舎から校門までの道に集中していた分、

遊歩道に男たちの気配はまるでない。



ともすれば、死地を潜り抜けた周囲の1年生たち同様、

美鈴たちがそこで一息ついてしまうのも無理はなかった。



それぞれの1年生用女子寮へと続く道が分かれ、

分散していく他の女生徒が周囲に見えなくなった頃、

すっかり生還した気になっていた美鈴たちに戦慄が走る。



突如、深い霧のどこかで男たちの声が聞こえたのだ。



全員が一斉に声を殺し、男たちの声のする方向と、

こちらに気付いているかを確認する。



それは見つかる前にそっと離脱するためだったが、

激しい動揺が洞察力を鈍らせ、決断は遅れてゆく。



そんな中。



ついに緊張に耐えられなくなった聖子が

寮へと続く道を駆け出してしまう。



男たちの足音が途端に活気付き、

残された4人へ即座の決断を迫る。





『今から聖子と同じ方向に逃げても遅い。

 逆に足音を殺して近くの物影でやりすごそう』





咄嗟に機転を利かせた梨恵子が下したのは、

逃げた聖子の足音を囮に使う『灯台下暗し』作戦。



しかし、即座に実行に移される作戦に、

ただ1人、佳代だけがついてきていなかった。



立て続けに発生した緊急事態に、

気弱な佳代はすっかり腰が抜けていたのだ。





『(待って! お願い、待って!

  置いて行かないで・・!!)』





必死に助けを求める佳代だったが、

美鈴たちがそれを省みることはなかった。



音を立てず、気配を殺し、迅速に離脱して身を隠す。



ミス1つで即ゲームオーバーという危険極まりないミッションに、

足手まといを庇う余裕など微塵もなかったのだ。



結果。



佳代1人が男たちに連れて行かれることとなった。











「玄関口でのアレ、やっぱり『ない』と思う。

 ねえ、今からでも、皆で佳代ちゃんに謝りに行こうよ・・」





自室に戻って以降、

美鈴は嫌というほど罪悪感に打ちひしがれていた。



豪華で美味しい寮のディナーも全く喉を通らず、

自分はこうするべきだった、ああするべきだったと、

後悔の念に取り付かれていたのだ。





「美鈴の気持ちは・・よくわかるよ。

 けど・・もう今更、なのよ」



「・・い、今更って、何?」



「もう、どうしようもないってこと。

 佳代があの後どんな目に遭わされたか・・

 考えるまでもなくわかるでしょ?」



「わ・・わかるけど・・

 取り返しがつかないってことも、わかるけど・・

 でも、謝るのもダメなの・・?」



「今更謝られても、佳代が悦ぶと思う?

 もし私が佳代の立場だったら、

 もう皆の顔なんて二度と見たくないんじゃないかな」



「そ・・それは梨恵子ちゃんだからだよ。

 佳代ちゃんはそういう性格じゃない・・!」





普段は大人しい美鈴が、らしくなく声を強める。



それは犯した罪に押し潰されそうな心の悲鳴でもあった。





「だって・・考えてもみてよ。

 あの時、私たち佳代ちゃんのすぐそばに隠れてたけど、

 もしその気なら、佳代ちゃんは私たちのことバラせたんだよ?」



「そ・・それは・・」



「なのに・・死ぬほど怖かっただろうに・・

 私たちのことを話さずに、1人で連れていかれた・・

 佳代ちゃんはそういう子だよ!」



「わ・・わかるわよ、わかるけど・・

 でも、今、佳代を無理に戻したとしても、

 そうなると、今度は聖子が潰れる・・」



「でも、最初に逃げたの、聖子ちゃんじゃない・・!」



「たまたま、聖子だったってだけよ。

 だって、こんな状況下なんだよ?

 私だったかもしれないし、美鈴だったかもしれない」



「で・・でも、それが謝らない理由にはならないよ。

 もしそれで聖子ちゃんが潰れたなら、

 その時はまた皆で聖子ちゃんを助けようよ」





人としてあるべき理想の姿。



道徳の心を貫こうとする美鈴。



だが、梨恵子はまた別の考えだった。





「辛いことをいうようだけど、美鈴・・

 この状況で皆が笑顔でハッピーエンドなんてありえないよ」



「ど・・どういうこと?」



「たとえ仲間でも、切り捨てる時は切り捨てるしかないんだよ。

 もう無傷の佳代は戻らないし、佳代を戻せば聖子が傷つく。

 どこをどうやっても誰かが傷ついていく・・」



「じゃあ、傷は佳代ちゃん1人に背負わせて捨てるっていうの!?」



「・・そうよ。

 可愛そうだけど、皆の受ける傷を少しでも減らそうとすれば、

 それはもう死人に鞭を打つしかない・・」



「酷いよ・・それが友達なの・・!?

 次は自分が切り捨てられることが目に見えてるじゃない・・!」



「美鈴の言っていることが綺麗で正しいことはわかってる。

 でも、美鈴のは平和な世界で暮らす者の考え方であって、

 ・・地獄を生き抜く者の考え方じゃないのよ・・」





救いようのない現実を前に、

何に代えてでも生き抜こうとする。



そんな梨恵子の考えも、また間違いとは言えない。



親友の過ちを正そうと訪れた美鈴だったが、

お互いに正解である以上、それが無意味なことを知る。





「うん・・梨恵子ちゃんの考えはわかった。

 正しい考えだとも思う・・」



「美鈴・・」



「でも、私にも正しいと信じる考えがあるから、

 それを曲げることはしない」



「・・行くの? 佳代の部屋に」



「うん。

 私も2回も佳代ちゃんを見捨ててしまったけど、

 もうこれ以上、自分を裏切るのは嫌なの・・」



「そっか、そうだよね。

 うん・・やっぱ、アンタだわ。

 美鈴が私の考えになびかなくて、何故かちょっと安心したよ」



「・・ごめんね」



「・・いっといで」





結局、最後まで交わることのなかった両者の主張。



だが、別れ際に交わしたのは

お互いにお互いが正しいと認め合った者同士の笑みだった。





「・・うん!」





廊下に出て静かに扉を閉める美鈴は、

どこかすがすがしい目をしていた。



ここを訪れる前にはなかった熱いエネルギーが

今、美鈴の内に脈動しているのだ。



踏み出す一歩に迷いがなくなったことを実感しながら

自分の理想を貫くために傷ついた佳代の部屋へと向かう美鈴。





――しかし。





夜をつんざく美鈴の絶叫が寮内に響き渡ったのは、

それから間もなくのことだった。











《――ぐちゃり》



まだ動いている心臓を摘出し、

ゆっくりと体重をかけて押し潰したような生々しい音。



あの夜、美鈴の中に響いたのは、そんな音だった。





佳代は――死んだ。



用務員たちのレイプで心身に深い傷を負い、

守った仲間たちからはそっぽを向かれ、

絶望の末に首を吊ったのだ。





だが、周囲はそれでも冷たかった。



出席簿の名前や教室の机、寮の部屋まで

他にも彼女のいた痕跡はことごとく消され、

佳代の死が発表されることもない。



ひそひそと噂話だけが囁かれる中、

まるで佳代など最初から存在しなかったかのように、

翌日から続けられる普段通りの日常。



それは多くの女生徒の心には畏怖を、

罪悪感を負う者には忘却する赦しと拭えない穢れを与える。



全ての乙女たちを堕としてゆく、

永遠のようなぬるま湯の日々だった。





「ね、ねぇ美鈴、待ってよ!」





そんな、ある日の放課後。



一斉に階段を駆け下りてゆく周囲の1年生たちの流れに逆らい、

1人階段を上ってゆく美鈴を梨恵子が呼び止める。





「・・・・」





周囲の喧騒をひと飲みにする深い静寂が振り向く。



どこかで終焉を覚悟しつつも、

自分の信じる理想を求め続けていた美鈴はもういなかった。





「アンタ・・また屋上に行くの?

 やめなよ、そんなこと。

 どれだけ自分を痛めつけても、佳代はもう・・」



「・・二度と話しかけないでって、言ったでしょう?」



「ねえ、あの夜に言い合った時とは違うよ。

 今の美鈴は間違ってるよ・・!」



「・・間違えていたら何なの?

 正しい考え方とやらで佳代ちゃんが生き返せるの?」



「ヤケになりたいのはわかるよ。

 本当にどうしようもないもん。

 けどさ、美鈴が傷ついても佳代は悦ばないよ」



「佳代ちゃんに全ての傷をなすりつけて切り捨てた人に、

 そんな風に言える権利があるの?」





梨恵子の言葉は手応えなく美鈴をすり抜けてゆく。



深く閉ざされた美鈴の心は取っ手のない扉のようだ。



だが、美鈴は開くべき隙間に爪を立ててでもこじ開けようとする。





「嫌なのよ!

 このままじゃ・・美鈴までいなくなってしまいそうで・・!」



「・・梨恵子ちゃん。

 『切り捨てる時は切り捨てるしかない』んでしょう?」



「そ・・それは・・」



「梨恵子ちゃんは正しいよ。 だから、それを貫いて。

 ――私のようには、ならないで」





梨恵子の体が傾く。



美鈴の硬い拒絶の手が、そっと伸ばされたのだ。



危うくもつれる足が1段、2段と後ずさり、

ついにバランスを崩した梨恵子は踊り場に尻餅をつく。





「・・美鈴ッ!」





上へ上へと駆け足で遠ざかってゆく足音は、

鉄の扉の閉まる音と共に途絶える。



握った手で力いっぱい床を叩く小さな音は、

どこまでも虚しいものだった。











校舎の屋上。



その開放的であり、閉塞的でもある空間は、

放課後になると多くの罪が重ねられるスポットの1つだ。



毎日のように何人もの女生徒が連れ込まれ、

そこで牝としての役目を強要されて切なく果ててゆく。





だが、ここ最近は少々様子が違っていた。



屋上を好んで使っていた男たちの多くが、

毎日、獲物も連れずに訪れるのだ。





《ぱんぱんぱんぱん・・!

 ぱんぱんぱんぱん・・!!》





ここでの生活が長く食傷気味でさえある年輩の用務員たち。



そんな彼らの興味をそそる稀有な獲物が、

壊れた心と極上の肉体を持つ姫君が、

そこで待っているからだ。





「・・くおおぉぉ〜〜ッ♪」



「・・んっ・・うふ・・ッ」





安産型の大きな尻がブルルッと震え、

穢れにまみれた肉穴は今日何度目かもわからない射精を

ゴキュッゴキュッと豪快に飲み干してゆく。



自分の肉体も、そこに集る男たちも省みることなく、

美鈴は霧に隠された空を見上げていた。



まるで、そこにいる誰かに赦しを乞うような眼差しで。





「・・ぉ・・ぉぉ・・ぉおお・・ッ・・

 ハッ、ハァァーーッ・・ハァァーーッ・・」





満足げそうに呻く男。



密着させた腰を震わせ、最後の一滴まで精を注ぎ込むと、

最高の美食に唸るような顔で美鈴の尻をぴしゃりと叩く。





「ンン〜〜・・今日も素晴らしいぞ、美鈴ゥ・・

 ・・たまらん・・名器だ・・」



「ふーーっ・・ふーーっ・・」



「どっしりとした安産型のケツ、輪姦すのにも適してるときたもんだ。

 美鈴ちゃんは極上の牝だよ。

 さ、どきな・・交代だ」





美鈴の後ろに繋がっていた男をまた別の男がどかし、

深い陶酔を吐き出しながら貫いてゆく。



そして、またすぐに始まる牡が牝を打ち上げる音。



その悲しい響きは、

ほとんど途切れることなくそこに続いている。



今日は6人の男たちが美鈴目当てにここを訪れ、

代わる代わる賛美の白濁を流し込んでいた。





「しっかし、毎日自分からここに来てるんだろ?

 1年生でここまでのスキモノっていねぇんじゃねえか?」



「そんだけじゃねぇぜ?

 美鈴はガキが欲しくてきてンだ」



「オイオイ、本当かよ」



「おう。

 なんでも、自分が殺しちまったお友達を、

 自分の腹の中に生き返らせたいんだとよ」



「ハハッ・・そいつぁ、悲しい友情だねェ」



「オラッ、孕め・・ッ!

 う・・うぅぅぅぅ・・ッッ」



「・・あ・・んっ・・」



「オイオイ・・

 俺らの仲間内でも結構な顔ぶれだってのに回転早ェな・・」



「オイ! 次、誰だ?」





新鮮な精子の弾丸に子宮を撃ち抜かれる感覚だけが、

壊れた美鈴の心を叩く確かな手応えだった。



男たちに激しく突き上げられて

子宮にたまった精液がトプトプと混ぜられるたびに

自らの贖罪にわずかながらも実感を得ることができるのだ。





(・・佳代ちゃん。

 お願い、どうか帰ってきて・・私の中に降りてきて・・

 ・・もう、二度と見捨てたりは・・しないから・・)



(ごめんね・・ごめんね・・ごめんね・・ごめんね・・

  ごめんね・・ごめんね・・ごめんね・・ごめんね・・)





決して解き放たれることのない後悔の鎖。



永遠にリピートし続ける懺悔の言葉。



虚ろな煉獄の中で美鈴は喘ぎ続ける。





《ぱんぱんぱんぱん・・!

 ぱんぱんぱんぱん・・!!》



「アァ〜〜ッ・・出る・・!

 アァ〜〜〜〜〜ッ・・出るぅぅ・・ッ!」





しかし、美鈴を犯す男たちはお構いなしにヒートアップし、

また1人、歪んだ笑みを浮かべてひと時の天上へと昇ってゆく。





「ッホォォォォォ〜〜ッッ!!」



「んッ・・んん・・ッ」





やがて流れ込む数億の命の欠片の1つが、

奪ってしまった命を地上に引き戻すと信じて

男たちに若い子宮を捧げる美鈴。



だが、美鈴はこの学院で産み落とされた命が、

母の手には決して託されないことをまだ知らない。



その悲しい贖罪がやがて

執行部との対立――自らの命を奪う禁忌を招くとも知らず、

美鈴はこの最も天上へ近い場所へと通い続けるのだった。


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