〜 繋いだ手 〜
◆登場人物
◇水越 涼(みずこしりょう)
女性 15歳(1年生)
全体的に控えめな体型。
星羅とは中学時代からの親友。
◇桐生 星羅(きりゅうせいら)
女性 15歳(1年生)
全体的に発育のいい体型。
涼とは中学時代からの親友。
◇西ヶ谷 昌志(にしがやまさし)
男性 53歳(用務員)
男相手には雷親父、女相手にはスケベオヤジ。
欲望に忠実な男。
◇馬淵 ケンジ(まぶちけんじ)
男性 27歳(用務員)
若い用務員には珍しいガラの悪い男。
昌志にいつも怒られている。
◆
狩人に狩られた華麗なる獲物たちが、
その身に淫らな罪を刻まれる聖リトリス女学院の放課後。
誰もいないはずの場所に照明がついていれば、
そこからは必ず喘ぎ声が響いてくる。
多くの体育用具が保管されている、体育館内の体育倉庫。
本来、体育の授業で使うはずのマットには、
古いものから新しいものまで多くの染みがこびりついている。
汗、涙、唾液――そして、愛液と精液。
《ッぱん!ッぱん!ッぱん!ッぱん!
ッぱん!ッぱん!ッぱん!ッぱん!》
「「あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」」
ポタポタと止め処なく落ちる涙が作る染みの上で、
震えるか細い手が繋がれていた。
中学時代からの親友であった、1年生の
水越 涼(みずこしりょう)と桐生 星羅(きりゅうせいら)だ。
リボン、ソックス、パンツ以外を綺麗に剥ぎ取られたその姿は、
男たちが目で愉しむための姿に他ならない。
涼も星羅もパンツのかかったままの片足を持ち上げられ、
鏡写しの同じポーズで男たちに貫かれていた。
「ンン〜〜〜♪
2人ともいィ〜い声だ。
もォ〜っと、エッチに聞かせてちょうだいよォ〜♪」
「いやァ〜・・やっぱ、生ってな、全然違うッスね」
「馬ッ鹿モン!」
涼と繋がる若い用務員・馬淵 ケンジ(まぶちけんじ)の頭を、
星羅を犯す年輩の用務員・西ヶ谷 昌志(にしがやまさし)が
ゴツンとやる。
涼と星羅に向けるスケベオヤジの顔から一転、
ケンジ相手では雷親父の顔へと変わる。
「イイのは生だからってだけじゃない。
この子たちがガンバってくれてるからイイんだ!
俺らは女の子たちへの感謝を忘れてはいかん!」
「う、ウッス・・了解ッス!」
行為が始められてから時折起こっている
この用務員コンビの『ゴツン&説教』は、
男たちの苛烈な責めが一時的に止むタイミングでもある。
だが、涼と星羅にとって、それはわずかに一息つけるというだけで、
決して何かの救いがあるわけではない。
「(うぅっ・・涼さん・・)」
「(・・星羅・・)」
力なき女生徒2人にできること。
それはせいぜい運命を共にする親友の存在を確かめ合い、
離れそうな手を再び硬く繋ぎ直すことくらいだ。
しかし、それも『ぱんぱん』音が再開されると、
お互いに力みと脱力を繰り返し、次第に緩んでゆく。
涼も星羅も、牝の悦びを無理矢理開花させられる恐怖に、
15歳の華奢な体をただただ震わせていた。
(どうして・・こんなことに、なっちゃったんだろう・・?)
(たった数ヶ月前までは、あんなに・・愉しかったのに・・)
(いつも傍らには星羅がいて、
他の友達も皆仲良くって、先生だって優しかった・・)
(卒業式の日なんか、皆で泣きながら、
お互いの幸せな高校生活を願いあったっけ・・)
(・・戻りたい・・戻りたいよぅ・・)
《ッぱん!ッぱん!ッぱん!ッぱん!
ッぱん!ッぱん!ッぱん!ッぱん!》
(全寮制の名門女子校・・3年間は家に戻れないと聞いて、
最初はすごく・・戸惑いましたっけ・・)
(でも、涼さんに電話で相談したら・・
彼女も同じ学校だと聞き・・とても嬉しい気持ちになりました)
(一番の親友と一緒に送る高校生活は・・
さぞ、充実したものになるのだろう・・と・・)
(それが・・それが何故、こんな・・っ)
お互いに頭を預けあう涼と星羅、
その視界に映るのは親友が泣き叫ぶ顔だ。
しかし。
だからと言って目を閉じれば、
その分、他の感覚が研ぎ澄まされてしまい、
今度は男たちに強要される快楽の餌食となってしまう。
結局、そのどちらを選ぼうと変わらないのは、
ただ止め処なく零れ落ちる涙だけだ。
「オイ、バックでフィニッシュといこうぜ」
「あ・・嫌っ!」
来るべき瞬間を感じ取り、興奮しきったケンジが、
涼の体を力ずくで引っ繰り返そうとする。
星羅と繋いだ手が離れそうになるや、
涼は足をバタつかせて必死の抵抗を見せていた。
「別にいいだろ? 少しくらいよォ!?」
「・・馬ァ鹿モォォン!!」
そこにまた昌志の『ごつん』が入る。
「お前の頭はピストン3回で物を忘れる鶏か!
さっき言ったばかりだろ、感謝を忘れるなと!
少しは、この子たちの立場になって考えてみろ!」
「〜〜〜〜〜!!」
「好きでもない男に生で好き放題ズコバコされて、
この子たちは身篭るかもしれない恐怖と戦ってるんだ!
こんな健気に耐えてるってのに、おッ前ときたらァ・・!」
「すっ・・すみませ・・ッ」
「いいか!
2年、3年と違い、1年には聖水を使ってない子がまだ多い。
求められる扱い方もまるで違ってくるんだ!」
そんな昌志の言葉は一見、女生徒側を気遣うような発言に見えて
その内容は全くもって身も蓋もない。
結局、その本質はケンジと大差なく、
涼と星羅にとって畏怖の対象であることに変わりなかった。
「ほれ、もう大丈夫だよォ、2人とも。
悪戯に怖がらせちゃって、ごめんねェ」
昌志は危うく引き剥がされそうだった
涼と星羅の手に自らの野太い両手を添え、
優しく『ギュッ、ギュッ』と固め直してやる。
そして、顔を近づけて覗き込む。
「2人とも息が合ってて・・とォ〜ッても、仲がいいんだねェ。
大丈夫、このおてては、しっかり繋いでていいからねェ?」
震える浅い呼吸、怯え切った瞳。
惨めな姿を晒すのは、間もなく止めを刺される2匹の獲物たち。
だが、彼女たちにとっては、ここが最後の交渉のチャンスだ。
たとえ勝算など微塵もないとわかっていても、
すがらずにはいられなかった。
涼と星羅は勇気を出して上半身を起こすと、昌志と向き合う。
「あ・・あの・・おじ・・さん・・」
「ンン? なんだい?」
「ほ・・他のことは、いいんです・・でも・・
どうか・・な、膣内(なか)に出すの・・だけは・・」
「お願いします・・星羅も涼さんも、まだ15歳なんです・・
もし・・妊娠・・なんてことに、なってしまったら・・」
「うん、そっかそっか・・
涼ちゃんに星羅ちゃんって言うんだね」
昌志の優しい手が2人の頭を撫でる。
「この学校ではねェ・・
初めての中出し体験ってのは『はしか』みたいなものなんだ。
ずっと怖がり続けるより、早い内に体験しちゃった方がいい」
「そ・・そんな・・」
「・・わかるね?」
「・・・・」
そして、昌志の優しい言葉が2人にトドメを指す。
決死の覚悟で起こした体を、また力なく横たえてゆく涼と星羅に、
ケンジと昌志が覆い被さってゆく。
体育倉庫は再び、
すすり泣きの声と牡が牝を貪る音に包まれてゆく。
《ッぱん!ッぱん!ッぱん!ッぱん!
ッぱん!ッぱん!ッぱん!ッぱん!》
「やっべぇぇ〜〜♪
なんか、さっきより一段と締まりがよくなってる気がッ」
「ケンジィッ!
これはこの子たちの悲痛な覚悟の味なんだッ!
か、感謝だッ! 感謝を忘れてはいかんッ!」
再びラストスパートに向けて盛り上がってゆく男たちをよそに、
涼と星羅はただひたすらに見つめ合うことしかできなかった。
ただ力なくボロボロと涙を流し続けるお互いの顔は、
中学校の卒業式で見たのとはまるで違う、知らない顔。
お互いの笑顔なら幾らでも知っている親友同士が、
唯一、知りたくなかった顔だ。
「いいかァ、ケンジ!
俺らは精液を『出す』んじゃない、『出させてもらう』んだ!」
「は・・はいッ!」
「気持ちいいだけの俺らとは違うんだぞ、女の子ってのは!
一歩間違えばママになっちまう! まだ15歳の身空ででだ!」
「はいッ! 感謝ッスね・・ッ!」
「そォだ! 俺らは責任を取ってやるわけでもねェ・・
できることは感謝ッ! 感謝だけなんだ・・ッ!!」
《ッぱん!ッぱん!ッぱん!ッぱん!
ッぱん!ッぱん!ッぱん!ッぱん!》
15歳の肉体の防衛本能は男たちの声はシャットアウトできても、
下肢にバンバンと撃ちこまれる快楽だけは防げない。
望まない悦びが涼と星羅を飲み込み、ゆっくりと溺れさせてゆく。
お互いの瞳に映る親友の泣き顔が、次第に快楽の色に蕩けてゆく。
それが無性に惨めで悲しく、2人はまた涙を流した。
そして――タイムリミットは無慈悲に訪れる。
「涼ちゃんッ、イックぜェ〜〜〜〜・・・・んあッ!!」
「こっちもだッ、星羅ちゃん・・ありがとぉぉオオッッ!!」
《ドプゥッ! ビュク! ビュルルルルルル――ッ!!》
「あ、あぁっ・・」
「いや・・ぁ・・」
「「イクゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!」」
自分たちの最奥にある天使の小部屋が
危険な液体で満たされてゆくのを感じながら、
涼と星羅は張り上げた声でハーモニーを作り出す。
力の限り握り合った2つの手には、
痕がつくほどに強くお互いの爪が立てられていた。
◆
学院内ほとんどの女子寮に設けられた別館の共同浴場。
特に1年生の女子寮においては、
夜には明日の我が身の無事を憂う女生徒たちを、
深夜には穢され、傷ついた女生徒たちを癒してくれる場所だ。
《・・ちゃぽん》
星羅の細く美しい足が沈み、湯船の水面に広がる波紋。
その一部を、一足先に浸かっていた涼の小ぶりな胸が遮る。
2人とも、しばらくまともに言葉を交わしていなかった。
「・・・・」
「・・・・」
あの後、涼と星羅は体育倉庫で更にもう1回戦を強要されたが、
それが最後ではなかった。
帰り道、涼と星羅をエスコートして女子寮へ向かう男2人は、
散々自分色に染めた1年生2人の姿にムラムラ来たのか、
また木陰へと連れ込んだのだ。
グッタリとする涼と星羅の子宮には、
今も3回戦分の精子たちが元気よく泳ぎまわっていた。
《――バシャッ》
どっちが先に動くかわからない沈黙の中、
ついに耐え切れず星羅が涼に抱きついていた。
涼もそんな星羅の肩口に顎を乗せて、
その背中にそっと手を回す。
「・・ついに、されちゃったんだね。 私たち・・」
「・・はい。
こんな環境下で、いつまでも無事でいられるなどと、
思ってはいませんでした・・けれども・・」
「私さ、されてる最中・・
中学校時代の皆のこと思い出してた」
「・・星羅もです。
美奈さん、京子さん、有菜さん、室伏先生に他の皆さんたちも。
とても・・とても愉しい、中学時代でした・・」
「・・うん」
互いの肩口に交差させた2つの顔。
そっと目を閉じる涼と星羅の目蓋の裏に蘇るイメージは、
全く同じものばかりだった。
女子仲間で机をくっつけて食べた給食の味。
男子の反対を押し切って通した文化祭の喫茶店、
その制服を夜遅くまで残って女子だけで自作したこと。
同じ中学校の男の先生に想いを寄せていた担任教師のために、
女子たちが一丸となってしでかしたおせっかいのこと。
そして、皆で切なくも微笑ましい涙を見せ合った卒業式。
胸の中にいつまでも輝き続ける日々の思い出たちが、
涼と星羅には、もうずいぶん遠くにあるように感じられた。
「けど・・少なくとも私は・・もうあの中には戻れない。
また皆と会いたいって、何故かもう・・思えないの」
「涼さん・・」
「どうしちゃったんだろ・・私・・」
「大丈夫ですよ、涼さん。
・・星羅は、どこまでも一緒です」
「星羅・・それは、よした方がいいかもしれないよ」
「いいえ。
星羅は、これからも涼さんと一緒にいます」
「・・本当にいいの?」
「・・はい。
涼さんが何を考えているかは、わかっているつもりです」
「そっか」
耳元を撫でる小さな囁きで交わされた約束。
それは大切な何かを自ら手放す、悲しい決断だった。
◆
霧の牢獄たる聖リトリス女学院には、
その後も変わらぬ日々だけが続いている。
放課後になれば多くの狩人たちが解き放たれ、
麗しの獲物たちをつけ狙う。
「おい! あれあれ、あの子!」
「おっ、赤いリボンじゃん!
ねぇ君! 1年生だよね、可愛いなあ」
「どうも、お兄さんたち」
「さっそくだけど、俺たちの用件はわかるよね?」
「はいはい、エッチしたいんですよね?
でも、ダメです」
「えっ?」
「もうすぐここに友達が来るんで、
その子とセットでよければ・・」
「おお、待つ待つ! 待ちますとも!」
「あ・・ほら、来たみたいですよ。
今日は私たちをじっくりと、食べ比べてくださいね?」
あの夜、涼と星羅は心を手放した。
聖水を使ってしまったのだ。
それまで培ってきた価値観を捨てて白紙となった2人は、
ゆっくりと学院の闇に染まってゆく。
だが、男たちとの夜を渡り歩く妖精と成り果てた今も、
固く繋いだ手を離すことだけはなかった。
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→魔
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