〜 聖リトリス女学院 〜






国内屈指の名門・聖リトリス女学院。



その学び舎は魔都という大都会の片隅にあって、

霧深い山中に聳え立つ全寮制の宗教系女子校だ。



ここで女生徒たちは3年間、街の喧騒を離れ、

豊かな自然と聖リトリス教の慈愛に包まれて学び、

各界から求められる優れた人材となって羽ばたいてゆく。



豊富な実績と人里離れた山中の女子校という神秘性が

国内屈指の名門の名をより輝かしいものとし、

毎年400名以上もの新入生がその門を叩いているのだ。





しかし一方でそこは鬱蒼と茂った緑と

濃霧の結界に包まれた謎多き学び舎でもある。



女生徒たちは入学から卒業までの3年間、

帰省はおろか外部との連絡の一切を禁じられる。



また、各メディアはおろか生徒の親族に至るまで

外部からの目を徹底して寄せ付けないことでも知られ、

各界で大きな成功を納めている卒業生たちですら、

決してその内情を語ろうとはしないのだ。





ただでさえ都市伝説の宝庫である魔都において、

この世間から隔離された女子校もまた

不可思議で淫靡な噂の温床となっていた――











国内屈指の名門・聖リトリス女学院。



陽の光すら遮る深い霧の中、

その学び舎は静かに聳え立っている。



だが、そこは外部での輝かしい評判とは裏腹に

酷く陰鬱とした雰囲気に満たされた場所だ。





《コォ〜ン...コォ〜ン...コォ〜ン...コォ〜ン...》





響き渡るのは聖なる鐘の音。



それは濃霧に視界を奪われた者の精神の奥深く囁きかける。





やがて、心奪われるほどの美しい音色が聞こえなくなると、

学び舎を包む森林にはギシギシと縄の軋む音だけが残される。



制服に身を包んだまま吊るされた少女たちの悲しい亡骸が、

霧を一層深めているようだった。


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