〜 聖リトリス女学院 〜
国内屈指の名門・聖リトリス女学院。
その学び舎は魔都という大都会の片隅にあって、
霧深い山中に聳え立つ全寮制の宗教系女子校だ。
ここで女生徒たちは3年間、街の喧騒を離れ、
豊かな自然と聖リトリス教の慈愛に包まれて学び、
各界から求められる優れた人材となって羽ばたいてゆく。
豊富な実績と人里離れた山中の女子校という神秘性が
国内屈指の名門の名をより輝かしいものとし、
毎年400名以上もの新入生がその門を叩いているのだ。
しかし一方でそこは鬱蒼と茂った緑と
濃霧の結界に包まれた謎多き学び舎でもある。
女生徒たちは入学から卒業までの3年間、
帰省はおろか外部との連絡の一切を禁じられる。
また、各メディアはおろか生徒の親族に至るまで
外部からの目を徹底して寄せ付けないことでも知られ、
各界で大きな成功を納めている卒業生たちですら、
決してその内情を語ろうとはしないのだ。
ただでさえ都市伝説の宝庫である魔都において、
この世間から隔離された女子校もまた
不可思議で淫靡な噂の温床となっていた――
◆
国内屈指の名門・聖リトリス女学院。
陽の光すら遮る深い霧の中、
その学び舎は静かに聳え立っている。
だが、そこは外部での輝かしい評判とは裏腹に
酷く陰鬱とした雰囲気に満たされた場所だ。
《コォ〜ン...コォ〜ン...コォ〜ン...コォ〜ン...》
響き渡るのは聖なる鐘の音。
それは濃霧に視界を奪われた者の精神の奥深く囁きかける。
やがて、心奪われるほどの美しい音色が聞こえなくなると、
学び舎を包む森林にはギシギシと縄の軋む音だけが残される。
制服に身を包んだまま吊るされた少女たちの悲しい亡骸が、
霧を一層深めているようだった。
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