<<8月18日(水)10:30 葦挽樹海>>
その光景は吹き荒れる暴風雨が、森の木々を犯しているかのよう。
嵐は先程から一気にその勢いを増していた。
そしてそこに、その中をゆく二つの小さな人影がある。
芽衣子とアンジュだ。
「うわあ、すごい風雨!・・とにかく、雨宿りできる場所をさがそ?」
「OK!」
昨晩のお互いをさすりあうような行為のあと、2人は体を預けあうようにして眠った。
つい数十分前、雨風に叩き起こされるまで死んだように眠り続けたのは、2人の体力の消耗を顕著に表していた。
だが、それを2人は結束でカバーする。
自分全てをお互いに任せあった今の2人は、何か見えない力で守られているような、そんな安心感を感じていた。
「・・アンジュ!」
不意に芽衣子がアンジュの腕を掴み、茂みの影へと引きずり込む。
芽衣子は口元に人差し指を立てる『しー』のゼスチャーをすると、茂みを隔てたある一点を指さした。
「・・誰かいるよ」
「・・エ?」
嵐のせいで視界はひどく制限されてはいたが、見れば、2人の位置から20mほど離れた辺りに、たしかに何かの人影を確認できた。
身を丸め、雨から頭を守るように両腕をかざし、ゆっくりと歩を進めている。
その人物が、こちら2人を見出しているのかどうかは不明だ。
だが、その足先は2人のいる方を向いていた。
「だ、誰デショウ・・?」
「雨が気になっているみたいだから、幽霊じゃないとは思うけど・・でも、隠れて様子を見た方が・・」
「・・待って、芽衣子・・あれ、センパイヨ!」
「・・エッ?」
それは、昨晩の逃走中にはぐれたはずの久我原節子の姿だった。
そのTシャツと半ズボンは泥にまみれており、寝不足なのか、足取りも妙にふらついている。
その口が何か小さくぶつぶつと呟いていたが、それは2人の場所からは分からなかった。
「節子先輩〜!」
「センパ〜イ!」
「・・?」
突如かけられた声に振り向く節子の前に、茂みから姿を現した2人が駆け寄る。
だが、その顔を見て2人は一瞬ビクリとした。
それはたしかに節子であったが、いつもの節子とは少し顔つきが違う。
次の瞬間、呆け気味だった芽衣子の頬がいきなり叩かれた。
「・・!?」
「セ・セ・センパイ、なにするノ・・!?」
「・・お前ら・・あたしを囮にしやがっただろ!」
元々節子は、部内で最も荒い気性と素行の悪さの持ち主だ。
部内には特に反発しあう相手がいないため、いつもおとなしくしているのだが、この極限状態のもたらす混乱と恐怖と空腹が、彼女の仮面を削り取っていたのだ。
「そ、そんな事してません!あたしたち、節子先輩の事が心配で・・」
「嘘つけ!いざとなったら掌をひっくり返しやがって!」
「ホントヨ!アンジュたち嘘ついてナイ!信じテ!」
「・・ちっ・・まあ、たしかに、今こんなところで体力使ってられないしな・・けど、あとで覚えてろよ・・!」
合流して3人となった部員たちは、再び移動を開始する。
いつまでたっても太陽の現れない曇天が、すぐ目前まで迫った彼女たちの不吉な未来を暗示しているかのようだった・・
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
合流から30分ほど歩いただろうか、芽衣子、アンジュ、節子の3人はやっと雨宿りの出来そうな場所を、視界の奥に見出していた。
嵐は依然、止む様子を見せてはいない。
3人は小走りにそちらへと近づいていった。
こんな森の奥で誰が使っているのか、それは『小さな小屋』のようだった――
「これでやっと、アマヤドリできマス!」
「もしかしたら、誰か住んでるのかもね・・」
「・・待った!」
不意に節子が足を止め、先を行く2人を引き止める。
節子は、翔乃を襲った相手が幽霊ではなかったのかもしれないという事に、いち早く感づいていたのだ。
だが、多くは口にしない。
「一応、誰か1人が様子を見に行った方がいいわ」
芽衣子とアンジュは、そこで一度顔を見合わせた。
そして、たしかに少々無防備すぎたかもしれないと思い直す。
「・・じゃ、じゃあ誰が行くかジャンケンでもします?」
「そうね。じゃ、あんたたち2人でジャンケン」
「エッ?センパイは・・?」
「何!?もしかしてあんたたち、あたしをまた囮にしようってわけ!?
「い、いや、違・・」
「次はあんたたちのどちらかがやるのが筋ってもんでしょ!?ほら、さっさとやんな!!」
2人は再び顔を見合わせる。
小さくため息を挟んで、アンジュが口を開いた。
「いいヨ。アンジュが行ってくるヨ」
「・・で、でもアンジュ・・」
「ダイジョブダイジョブ!」
「でも・・」
「ほら!決まったんならとっとと行けよ!こっちは、早く雨宿りしたいんだから!」
2人の問答に、無神経な一言が水を差す。
節子の苛つきは一向に回復の兆しを見せず、もうずっとこんな調子だった。
だが、部内で最も純真で献身的なアンジュは、更に芽衣子にとっては無二の親友だ。
その厚意をさも当然のように踏みにじる節子の今の言葉は、芽衣子には許し難いものだった。
「じゃあ行こ、アンジュ!」
「・・芽衣子?」
「節子先輩、あたしたち2人で行きますから!」
「ちょ・・ちょっと待てよ!」
自分1人を場に残して小屋に向かおうとする2人を、節子は慌てて呼び止める。
その予想外の行動は、節子には都合が悪いのだ。
口ではグタグタと文句ばかりを重ねながらも、節子も1人で行動していた時に比べれば、はるかに安定した精神状態を保てている。
だから、もしここで何かあって、2人とも一度にいなくなってしまう事が恐ろしいのだ。
「行くのは1人だ!どっちか1人で行け!」
「嫌です!」
「・・そうかわかったぞ、お前らまたあたしを1人ここに置き去りにするつもりだろ!?」
「そんな事言うんなら、節子先輩が行けばいいじゃないですか!」
「んだとぉっ!」
「ストップスト〜ップ!ヤメ〜!!」
怒気によりいつもの臆病さを微塵も見せない芽衣子と、恐慌気味に支離滅裂な事を言う節子との間にアンジュが割って入る。
しかし、そんな3人は気付いていなかったのだ。
あれこれと問答をしている間に、小屋から幾つかの人影が出てきていた事に。
そして、それが既にすぐ近くに潜んでいた事に――
「ヒャッヒャッヒャ・・いらっしゃ〜い、可愛い仔兎ちゃんたちィ♪」
「怖〜い狼のお兄さんたちと、小屋で遊んでいかないかい?」
「ひ・・!」
突如、芽衣子の口元を大きな手が覆う。
声の出せない彼女の変わりに、他の2人が小さく悲鳴を上げた。
場に現れたのはガイとスカルの2人。
小屋の中から問答を聞きつけ、迅速に行動を起こしていたのだ。
「オイオイ、スカル。彼女たち怯えてるぜ?やっぱお前のその顔、怪し過ぎるんだよ」
「バァ〜カ言え〜!こんなに優しくエスコートしてんじゃねェ〜かヨ」
「・・・・」
「・・・・」
節子とアンジュは、無意識にあとずさりをしていた。
目の前の男たちは、どちらの目にもあからさまに危険な相手として映っていたのだ。
そして迫られる次の判断、それを2人は同時に開始した。
「イッ・・テェェェェ〜〜ッッ☆」
悲鳴を上げたのはスカル、突如向かってきたアンジュに手を噛まれたのだ。
突然の痛みから意識が回復するまでの一瞬に、捕らえたはずの獲物は姿を消していた。
「芽衣子、ハリアップ!」
スカルはすぐには事態を理解できず、しばし呆けていた。
当然予想済みの事態であったにも関わらず、アンジュのあまりに機敏な動作がそれを凌駕したのだ。
スカルの唯一のミスは、アンジュの勇敢さを見誤った事だった。
「ハハハハハ・・油断大敵だな、スカル♪」
「くぉんのグァキィ〜!」
「もう1人は、仲間見捨ててとっとと逃げちゃうしさ・・よし!追うぞ!」
「あ〜たりめぇよ!逃ぃ〜がすわきゃねぇ〜だろっ!」
芽衣子とアンジュにワンテンポ遅れて、ガイとスカルも追跡を開始する。
だが、先を行く芽衣子とアンジュが、いちいち前方の地形を確認しながら走らなければならないのに比べ、ガイとスカルはただ獲物を追うだけでいい。
嵐という悪条件が、ただでさえ体力的に圧倒的有利な追跡側に更に加勢し、そして勝負はあっけなくついたのだった・・
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
今朝からの嵐は、ここにきて一層その勢いを増していた。
叩くつけるような大粒の雨が絶え間なく降り注ぎ、時折、それにもがれた木の葉がペシャリペシャリと地に落ちてゆく。
それは、そこで獣たちに馬乗りに組み敷かれるブロンド髪の少女に似て、どこか無残な光景だった。
「よぉ〜くもやってくれたじゃねぇか、んのアマ!!」
――パシャッ!
馬乗りになったスカルがアンジュの頬を張ると、そこに付着した雨の雫が爆ぜた。
横に立っていたガイが、慌てて2打目を制する。
「オイ、顔を叩くのはよせスカル!価値がなくなるだろ!」
「あ・・」
「オイオイ、スカル〜・・それに、このパツキンちゃんは、お前が一番楽しみにしてた相手だろ?」
「OKOK・・オレッチが悪かったよォ・・つーわけで、頬をぶったりしちまってゴメンなァ・・えと・・」
「アンジュ・リセニー嬢だ」
「おぉう、そうそう!ゴメンなァ〜、アンジュちゃ〜ん」
「・・・・」
そう、捕まったのはアンジュ1人だった。
先程、さっさと逃げてしまった節子を追うように、芽衣子と一緒に逃げていたアンジュは、体力的にとても逃げ切れないと悟ると、芽衣子に『助けを呼んで来て』と残して自分が足止めとなったのだ。
彼女と年上の男2人との力量差は歴然としており、あっという間に組み敷かれてしまったが、彼らが芽衣子を追わなかった事にアンジュは胸を撫で下ろしていた。
芽衣子に託した言葉は、別に『助け』を期待しての事ではない。
彼女に、自分を置き去りにする理由を与えたに過ぎないのだ。
天使を髣髴させるようなブロンド髪の美少女アンジュ・リセニーは、どこまでも友達思いの純真な娘だった。
「でもよぅ、元はといえばアンジュちゃんがオレッチに暴力振るったんだぜ?悪い事したら叱られるのが普通だろ?」
「・・そっちが先にやったのに!ヒキョーモノ!バカ!バカッ!」
この状況にあっても、スカルたちを恐れないアンジュの精神は立派なものだ。
しかし、それでも昨年までランドセルを背負っていた少女のキャパシティでは、出てくる言葉も所詮たかが知れていた。
「う〜ん、反省の色なしかァ?じゃあ、やっぱり、も〜うちょっと痛い目見てもらうかなァ・・?」
「スカル!」
「なぁ〜に、ちょいとおし〜りぺんぺんするだけヨ!ほぅ〜ら、アンジュちゃ〜ん、うつぶせになってお尻出しましょうねェ〜♪」
「ヤ、ヤダッ!」
「ガイちゃ〜ん、悪い子アンジュちゃんが暴れないように押さえててくれるか〜イ?」
「・・なるほど、そういう事か・・オッケ・・オレはあまりパツキン好みじゃないし、今回はサポートに徹してやるよ」
「センキュ〜♪」
「ヤダ〜ッッ!!」
しかし、所詮アンジュの力では何の抵抗にもならなかった。
すぐに草と泥の地面にうつぶせにされ、尻だけを突き上げたようなポーズをさせられる。
それも両手首と背中をガイに、両足と尻をスカルに押さえられているので身動き一つ取れない。
やがて、半ズボンとパンツがずり下ろされると、そこに綺麗な純白の尻が覗いた。
「ほぉ・・綺麗なヒップだなぁ・・」
「お〜っとォ・・今更羨ましがったってや〜らねぇからなァ?・・よぉ〜っし!じゃあ、お待ちかねのお仕置きタァ〜イムだァ♪」
「ハハ・・やってやれやってやれ、スカル♪」
「ウゥ・・」
「ア〜ンジュちゃんはァ〜悪い子ォ♪」
――パッシャ〜ン!
「・・アゥッ!」
一ついい音がして、また水滴が派手に爆ぜた。
アンジュは、その痛みにビクリと身を強張らせる。
しかし、その仕草はなんとも愛らしく、スカルの興奮に油を注いでしまうだけ。
続く二発目以降も、容赦なく繰り出されていった。
「悪い子ォ♪」
――パッシャ〜ン!
「悪い子ォ♪」
――パッシャ〜ン!
「悪い子ォ♪」
――パッシャ〜ン!
「・・アゥゥ・・」
意地の悪い掛け声と共に、スパンキングは幾度となく繰り返されている。
突き上げられた白い尻は、まるで捧げられた生贄のよう。
ただ、男たちの邪悪な欲求を受け入れ続けるための道具でしかない。
「それにしても、エッチなヒップだねぇ。アンジュちゃん?」
そこで不意に悪戯心を起こしたガイは、アンジュの手首を押さえたまま身を低くし、その顔を覗き込んだ。
「オシッコするところもウンチするところも丸見えだよ。とってもエッチな形してる」
「ヤダッ!見ちゃヤ・・」
「悪い子ォ♪」
――パッシャ〜ン!
「・・ヤアアゥッ!」
スパンキングは変わらず一定の感覚で続けられている。
ガイはアンジュに一層顔を近づかせ、その耳元で囁きかける。
「ねえ、アンジュちゃんくらいの年代のコならさ、セックスって何だか知ってるよね・・?」
「エ?・・し、知らナイ・・アンジュ、そんなの知らナイッ!」
そこで、また一つ雨の爆ぜる音。
だが、ガイはその直前にカァッと紅潮したアンジュの頬を見逃さない。
それは、明らかにセックスという行為に好奇心を抱く少女の反応だった。
「じゃあ教えてあげるよ。セックスっていうのはね、男の子と女の子が2人でする、すごくイヤらしくて気持ちいい事なんだよ・・?」
「・・アンジュ・・知らないモン・・」
「・・まず、男の子は女の子のおっぱいをモミモミしたりとか、女の子が男の子のオチンチンをナメナメしたりとかするんだ。すると少しずつ気持ちよくなっていく・・」
「悪い子ォ♪」
――パッシャ〜ン!
「・・アゥッ!・・し、知らない・・モン」
「・・で、2人とも気持ちよくなってきたら、とうとう一番気持ちいい事をするんだ。それは男の子のオチンチンをね、女の子のオシッコの穴やウンチの穴の中に・・」
「・・・・」
全身を拘束されたままスパンキングと囁きで責められ続けるアンジュは、次第に奇妙な感覚を覚え始めていた。
叩かれて痺れるというのとも、昨晩芽衣子と触りっこした時のものともまた違う。
男たちに虐められている自分が、すごく魅力的に可愛い女の子に見えてくる。
そんな自分が大好きになる・・そんな感覚。
呼び覚まされたのは、ひどく艶かしく背徳的な欲求だったのだ。
「悪い子ォ♪」
――パッシャ〜ン!
「・・で、気持ちよくなった男の子は女の子のオシッコの穴の中で、ピュッピュッってエッチなミルクを出すんだ・・」
「・・ン・・!・・ンンン・・ッッ!!」
そこで、不意にアンジュの意識が真っ白になる。
体は小刻みに震え、その口からは押し殺した呻き声が漏れる。
この感覚もまた、アンジュは知らなかった。
「・・おんや?もしかして、イったか?」
「ああ・・イってるな、これは・・」
「フゥ・フゥ・・」
ガイとスカルは妙に冷静な口調でアンジュの絶頂を確認すると、ニヤリ顔を見合わせあう。
そこで、ガイはアンジュの頭を抱き込むように、耳の奥に声を注ぎ込むようにして、最後にこう囁いた。
「・・これが『イク』っていう事だよ。アンジュちゃんは今、エッチなお兄さんにお尻を叩かれながらイったんだ・・アンジュちゃんは、イったんだよ」
わざわざ同じ言葉を繰り返し、告げられた宣告。
それが鼓膜から伝わり、13歳の少女の脳内をゆっくりと侵食していった。
「・・ウン」
美しい蒼い瞳から零れ落ちる一筋の純潔が雨嵐にのまれていく様は、まさに今の彼女の姿。
「じゃあ、次はあのお兄ちゃんとセックスして、もっと気持ちよくしてもらおうね」
「・・ウン」
「さあ、僕が背中を支えてあげるから、体操座りをして足を開くんだ。あのお兄ちゃんのオチンチンを、オシッコの穴に迎え入れてあげるんだよ」
「・・ウン」
もう逃れられない。
アンジュという名の純白の花は今、無残にむしられたのだった・・
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