<<8月18日(水)2:30 葦挽樹海>>

  


森の中でも、比較的月明かりが差し込む場所。
腰を下ろして木の幹に寄りかかる、2つの人影があった。

「ああ〜ん、アンジュぅぅ・・」
「芽衣子、ダイジョブよ、ダイジョブ!」

同じような景色を何度も何度も通り過ぎ、芽衣子の疲労は体力的にも精神的にも既に限界に来ていた。
そこは翔乃が危険を知らせる声を張り上げた場所から、ずいぶん離れているが、景色的にはやはり何の変哲もない森の中でしかない。
芽衣子には、一向に何も変わらない風景が恐ろしかった。
それを元気付けるアンジュも、本心では泣き出したい気持ちだった。
ロッジを出た時は4人いた仲間も、今は2人しかいなくなっていた――

「やっぱり、節子先輩の言ってた幽霊が出たんだよ・・」
「・・・・」
「節子先輩も・・きっと話しちゃいけない事を話したから、捕まっちゃったんだ・・」
「そーなことないヨ〜。ダイジョブ、帰ってくるヨ、キット・・」

場にいるのは芽衣子とアンジュの2人だけ。
そこに、一緒に逃げたはずの節子の姿はなかった。
混乱・夜闇・密林・逃走・・はぐれる要素はいくらでもあった。
恐怖に駆られ、走って走って走って・・気がつくと、いつの間にか節子は姿を消していたのだ。

「ほら、芽衣子ファイト!ダイジョブ、アンジュがいるヨ!」
「うぅ・・でも、やっぱり怖い、すごく怖いの・・」
「・・じゃあ、アンジュが怖くなくなるマジック、かけてあげるヨ・・」
「・・え?・・あ・ん・・」

一度目は頬に、二度目はビクリとして振り向いたその唇に、アンジュは優しくキスを重ねてゆく。
そして、溶けてゆくような甘い沈黙のあと、続く三度目は芽衣子の方からだった。


「・ア・・アンジュ・・」
「・・芽衣子」

2人とも泣いていた。
怯えきった兎のような本心を、さらけ出しあっていた。
この恐ろしい恐怖の中、大好きな友達と一緒にいられるという心強さを確認しあうかのように、2人は何度も唇を重ねあい、腕を絡ませあう。
そして、アンジュの細やかな手が芽衣子の半ズボンの下、内股に滑り込んでいった・・

「・・あっ。な、何するのアンジュ・・!?」
「芽衣子・・アンジュのコト、スキ?」
「え・・うん、一番好き」
「アンジュもそうだから・・だから、芽衣子にイイコトしてあげるヨ・・」
「あ・・やっ・ふあぁん・・」

2人とも、こういう知識は年不相応に遅れている。
だからこそそれはたどたどしく、そして甘い甘い行為となっていった・・


→進む

→戻る

→狼と兎と黄色い湖のトップへ