□ Page.9 『バーチャルセックス』 □

 

一方、ちょうどその頃、校舎の屋上では敦とはじめが密会していた。
2人はその関係を怪しまれないために、普段はお互い素知らぬふりをしている。
人気のない場所や時間を選んで、こうして時々会議を行っていた。

「しっかし、吉田の奴・・記事にする前に足がついてもうたみたいやな」
「まあ、いいんじゃねぇの?これって、別に記事にできなくなったわけじゃなくて、必要なくなったってだけだし、手間が省けたじゃねぇか?」
「まぁ、そうなんやけどな・・書くこと自体、ウチの楽しみなんよ・・・・・トホホ・・」
わかりやすいリアクションをつけてうなだれるはじめに、敦はいつもの呆れ笑いを返す。
この2人のコンビもこの1ヶ月、いろいろ暗躍しているうちに、ずいぶんと自然な関係になっていた。
はじめは次々と色のあるネタを拾ってきては新聞を書き、同級生たちに様々なスキャンダルを提供。
敦は裏からちまちまと舞子にちょっかいを出しては、その反応を楽しむ。
それをお互いギブアンドテイクしつつ続けてきたのだ。
2人の間には一応肉体関係もあったが、それは1ヶ月前から変わらずフェラチオ止まりだった。
変なところで一途な敦は、フェラチオならまだしも、セックスの相手ともなると舞子以外には興味がわかない。
はじめもそこらへんはキチンと汲み取って、うまい関係を維持していた。

「あ、そうだ」
そこで敦は何かを思いついたように、はじめの方を振り向く。
「なんか、ちょっと前から、氷川が様子おかしいみたいじゃねぇか。そこらへんは、調べて記事にならなさそうなのか?前にもアイツの件で、確か何か書いてたよな・・?」
切り出した話題は、ある意味一番ホットだが一番ワケアリな沙弥の件についてだった。
はじめはため息1つと共に、顔の前で手を横にひらひらと振る。
「ああ・・氷川ちゃんのはダメや・・・」
「・・あん?なんだ、もう内容わかってるのか?」
「実は、ずいぶん前からわかっとる。せやけど、これに関してはなあ・・高田にはいわん方がええ思て黙ってたんや・・・」
「んだぁ・・?俺にも関係あることなのか?」
「いや、岡本ちゃんに関係あることや」
「お、おい!」
その瞬間、敦は大きく身を乗り出していた。
こういった話し合いの中で『岡本』という言葉が出ると、過剰に反応してしまうのだ。
『〜何で俺にいわないんだ!?』
敦の言葉の先を容易に察したはじめは、思わせぶりな視線で敦を見返した。

「これ、高田にやったら教えたってもええけど・・・諸刃の剣やで?」
「ど・・どういう意味だよ」
「このネタはな・・めっちゃおもろいねんけど、高田の岡本ちゃんゲット計画を考えると、使いどころがかなり重要なんや。うまく使えば岡本ちゃんのハートを高田に向けさすための武器にもなるし、使いどころを間違えると逆もありうる・・」
「・・・・・・。で、それを俺が知ってるだけでもやばいっていうのか?」
「んん〜、それだけやったら問題はないんやけど、もし高田がそれを知ってることを岡本ちゃんが気づいてもうたら、うちら2人がそれぞれ進めてる計画に支障をきたす可能性が高いねん・・・・正直、危険やと思うで?」
「・・・・・・」
こういわれると、さすがの敦もなかなか返す言葉が見つからなかった。
愛しの舞子に関する情報だ、聞きたいのは山々なのだが、そこには大きなデメリットが存在するとはじめはいう。
敦にとって、はじめは今だ謎の多い存在ではあったが、その機転の回し方には高い信頼を置いていた。
「高田の計画手伝うんは、ウチかてかなり乗り気でやっとるんや。どうやろ・・高田、ここはウチに任して、今は聞かんといてやってくれんかな・・?」
敦はしばしはじめの目を見据える。
それは、いつも自分をうまく丸め込む時に見せる上目遣いではなく、もっとしっかりとしたものだった。
やがて敦は小さく舌打ちをし、顔を小さく縦に振った。

「さて、じゃあ今日はもう帰ろうぜ・・」
すくっと立ち上がる敦が見上げた空は、もうすっかり暗くなっており、それを覆うどんよりとした雲すら隠さんほどだった。


        ▽        ▽        ▽


「(――高田、ちょい待ち!)」
屋上から降りた敦とはじめはそのまま下駄箱に向かう予定だったが、途中、敦が教室に携帯を忘れたことに気づき、急遽寄って帰ることになっていた。
時計は既に8時を回っており、校内も既に電気を落とされていたので、2人はさすがにもう誰もいないだろうと無防備に一緒に行動していたのだが、そこに1つ大きな計算違いがあったのだ。
無造作に教室に入ろうとする敦の袖を掴み、はじめが小声で引き止める。
その声に強い緊張を感じた敦は、すぐに調子を合わせてそれに従った。

「(どうしたんだよ?)」
「(中に人がおる)」
「(まじかよ・・?)」
暗い教室内、敦はじっと目を凝らす。
ゆっくりと視線を左右に振り、だんだんと手前から奥へと散策範囲を伸ばしていく。
「(・・・あっ!?)」
順々に見ていっているのは机と椅子のシルエットの中、敦は1つだけ形の違う影を発見する。
それは、誰かが椅子に座り、机にうつぶせている影。
この薄暗闇の中では、それが誰であるかまでは判断するに難しい。
だが、それが舞子であろうことを、敦はすぐに見破っていた。
他の生徒はほとんど気にしていないが、舞子の席だけはバッチリ記憶しているからだ。
「(岡本だ・・・)」
「(なんや、ぐっすり寝てるようやな・・・)」
かすかに聞こえる寝息。
それを確認すると、2人は一度顔を見合わせる。
「(何か、ちょっかい出せねぇかな・・)」
「(んん〜・・じゃあ、ちょいまち・・・高田はここで音を立てずに待っててや)」
「(あ・・ああ・・・?)」
何やら、カバンをガサゴソとやり何かの小瓶を取り出すと、我に策ありとばかりにはじめは中へ踏み込もうとする。
だが、不意に振り返るともう一言だけ付け加えた。
「(あと、もし途中で岡本ちゃんが起きてしもたら、あきらめて先に帰って欲しいんや。ケータイはウチが確保しとくから)」
「(ああ・・わかった)」
今度こそ、はじめは室内へと侵入してゆく。
もし気づかれても怪しまれない程度の忍び足で近づいていくが、特にそんな様子はない。
十数秒の後には、はじめは舞子の至近距離までの接近に成功していた。
「(・・・・・・)」
そこでもう一度、舞子が寝ていることを確認すると、はじめは先程カバンから取り出した小瓶のコルクを抜き、それを机の上、はじめのすぐ顔の前に置いた。
小瓶からかすかな芳香が漂い始めると、はじめはニタリと微笑み振り向いた。

「(準備万端や、もう入ってきてもええで)」
先程よりはいくらか大きなひそひそ声。
敦ははじめが何をしたのかよくわかっていない。
だから、すぐに従おうとはせず様子を見ていたが、やがて大丈夫そうだと悟ると自らも教室内に滑り込み、静かに扉を閉めた。
「(お、おい・・一体、何したんだ。大丈夫なのか・・?)」
「(岡本ちゃんの顔の前に置いた小瓶な、これ、特別な吸引麻酔なんよ)」
「(え、あのクロロホルム・・・ってやつか?)」
「(ちゃうちゃう、あんなんよりずっと高性能や。クロロホルムはドラマとかでよく出てくるけどな、実際はあんな即効性なんかないんやで)」
そこで敦はある1つの危惧を覚え、突然キッとはじめをにらみつけた。
「(おい・・・それ、やばい薬じゃねえだろうな・・?)」
「(ちゃああ・・使わん使わん。そんな危ないもんを、高田愛しの岡本ちゃんに使うわけあらへんて。大丈夫、副作用も依存性も毒性も全くあらへん)」
「(なら・・いいけどよ。で、どんな効果なんだ?)」
「(一時的に気を失わせとる。確実に効く時間は15分程度や。あと、余り刺激を与えるのもあかん)」
「(刺激って、どのくらいがだめなんだ・・?)」
「(まず、なるべく今のポーズを崩すような動かし方はあかん。後は当然ながら、強く叩いたりつねったりもだめや。ま、触るとか覗くとか、その辺りにしとくのが無難やな・・)」
2人は一通りの事前打ち合わせを済ませる。
さすがの狂犬・敦も、今回に限ってはかなり慎重になっていた。
舞子とのセックスという最終目標こそ今回はお預けだが、それでも今目の前にあるものが、これまでにないほどのご馳走であることに変わりはないのだ。
うるさいくらいの鼓動を肌で感じつつ、敦はゆっくりと舞子の机の前方に回りこみ、静かにしゃがみこむ。
机の下、恐る恐る伸ばした手が、椅子に座る舞子のスカートのすそを持ち上げてゆく。
すると、薄暗闇の中とはいえ、スカートの奥の純白の布はかすかな光を柔らかく照り返し、敦の前にゆらりとその姿を現した。
「(ハァ・・ハァ・・)」
吐息は制御が利かないくらい乱れていたが、それを諌めるほどの余裕すら今の敦にはない。
既に舞子のショーツを1枚持っている敦だったが、自室で拝むそれと目の前にあるこれとは、全く趣を異にしたものだった。
スカートの下から見るショーツは、一層その姿を美しく見せる。
そして何より、そのショーツの下に『中身』があるということが決定的な差なのだ。
となると、次は当然それを覗きたいという欲求が出てくる。
「(ハァ・・ハァ・・・・この中に・・・岡本の・・オマ○コが・・・・)」
今度はスカートを持っていない方の手が、舞子の股間へと伸びてゆく。
ゴクリ・・と喉が鳴った。
だが、そのタイミングで邪魔が入る。
上からはじめが水を差したのだ。
「(あ、それはやめとき。オメ○はえらい敏感なんや、下手に触ると強すぎる刺激になるで・・)」
「・・・・・」
つまらなさそうな顔をして立ち上がる敦だったが、すぐにまた別のことを考え付くと、今度は舞子の後ろへと回る。
はじめの話によると、この娯楽が楽しめる猶予はあと10分強程度。
怒っている暇もすねている暇も惜しいのだ。

「(なあ、叶浦・・・胸とか揉むのは、大丈夫か?)」
「(ああ、しつこく乳首つまんだり、あんまり強く揉みすぎなければOKやで)」
「(・・へへっ♪)」
まるで飼い主からお預けを解かれた犬のように、敦はさっそく実行に移す。
後ろから両手を回し、机の板が終わる辺りギリギリからこぼれた舞子の胸に手をかぶせる。
まだ、手を動かしてはいないが、男子のYシャツとは微妙に違う女子のブラウス、そしてその奥にあるブラジャーの肌触りを味わうだけでも、えもいわれぬ感動を覚えてしまう。

「(ハァ・・ハァ・・)」
敦はとうとうゆっくりと、そして優しく手のひらを動かし始める。
すると、そこに丸々とした弾力が心地よい反発を返す。
その味を知ってしまった敦の手は、1匹の独立した生物と化す。
明かりに集まる蛾、樹液に集まるカブトムシ、例えるならそんな感じだろう。
敦の両手を動かす原動力は、意思に関係なく、本能が呼び起こす命令なのだ。
ありえない速さで昂ぶる興奮。
全く触れていないにもかかわらず、ギチギチに硬くなった敦のイチモツは、もう発射寸前の状態だ。
人のいない暗い教室内で、気づかれないかと内心ドキドキしながら揉みしだく舞子の胸。
それは何とも幻想的かつ甘美な、禁断の果実そのものだった。

「(ハァ・・ハァ・・)」
敦が行為に熱中している間、はじめは他にも何か楽しいことはないかと、いろいろ案をめぐらせていた。
すると、ふと机の横に舞子のカバンが置いてあることに気づき、これを漁り始める。
正直、大して期待はなかったのだが、はじめは中からあるものを取り出すと、口をニタリとさせた。
「(・・なぁなぁ、高田)」
「(・・ん?なんだよ?)」
「(ウチ、ええこと思いついてもた♪)」
『このままではパンツの中に射精してしまいかねない』
その危惧が果てしなく現実に近づいていることに気づいたというのもある。
敦は一度、舞子の体から離れると、はじめの方に視線を戻す。
窓から入るかすかな灯りの中、垣間見えたはじめの顔には魔女の愉悦が張り付いていた。
「(これ見てみい)」
はじめが舞子のカバンから取り出したものを、見えやすいように窓の方に持ち上げる。
それは500mlのペットボトルだった。
中にはなみなみと半透明の液体が入っている。
敦はラベルに『良茶』と書かれているのを何とか読み取った。
だが、はじめの真意が読めず、敦は即座に質問を返す。
「(・・それがなんなんだよ?)」
「(これな、飲みかけなんや。ほれ、ちょっと減っとる)」
「(・・・ああ、なるほどな♪)」
そこにきて、初めて敦ははじめのいわんとしていることを察した。
舞子のカバンに入っていた飲みかけのペットボトル。
となれば、まず十中八九、それを飲んだのは舞子自身であり、ペットボトルの口にはわずかながら舞子の唾液が残っているはず。
間接キスというやつだ。
まあ正直、敦からしてみれば胸を揉むことに比べるとかなりつまらない行為ではある。
だが、それはそれでなかなかできることでもないのだ。
何度か軽くうなづくゼスチャーをすると、敦は『じゃあ貸せよ』とばかりに手を伸ばした。
「(ちょちょちょ・・人の話は最後まで聞き・・)」
だが、はじめは何故か、まだペットボトルを渡そうとはしない。
「(高田、間接キス・・・とか思ったんちゃうか?)」
「(・・違うのか?)」
「(ちゃうちゃう・・・考えてみぃ、これは飲みかけのペットボトルやで?ちゅーことは、この中に残った分を岡本ちゃんが飲む確率が極めて高い・・)」
「(・・・だから、間接キスなんじゃねぇのかよ・・?)」
相手の返してくる答えが間違いだと読めた上で、あえてそれを問いかける魔女の言葉遊び。
敦を手玉に取ることで快楽を感じているのか、はじめの浮かべる笑みは恍惚すら帯びている。

「(高田がこの中に、濃い〜のを『ドピュッ』ってやったら・・はてさて、どうなるんやろなぁ?)」
「(・・・・・・)」
はじめの企みがわかった瞬間、敦の顔にも歪んだ悦びが浮かび上がる。
しかも、変にもったいぶらされた分、その感動は格別なものだった。
「(・・よ、よし、貸せよっ!)」
「(ほい。一杯出したりィ♪)」
時間自体もうなくなってきているが、それ以上に興奮が敦を突き動かしていた。
まずズボンのチャックを下ろすと、中で暴れ狂っていた暴根を取り出す。
若々しくそそり立ったそれは『いつでも準備はできてるぜ』とばかりに、ピクピクと時折武者震いを起こしている。
次に、はじめが手早くふたを開けたペットボトルを受け取ると、それを床に置く。
そして、自らも四つん這いになるとペットボトルの口に角度と距離をぴったり合わせ、最終作戦を開始する。

――シュッシュッシュッシュッ・・・
「(ハァ・・ハァ・・)」
――シュッシュッシュッシュッ・・・
「(ハァ・・ハァ・・)」
その瞬間は、あっけないほど早くやってきた。
愛しい舞子のスカートの下を覗き、その胸を揉みしだいた興奮は、全くといっていいほど覚めやらず、また今していることの結果を想像するだけで強烈な快楽となる。
たったの数回こすっただけで、敦の野性は爆発した。
「・・・・くぁぁッ・・!」

――ビュッ!ビュビュッ!!

「・・おか・・もとォッ・・・・・・くぅぅぅ・・・!」
強烈な快感で頭が真っ白になる。
それは意識を立て直そうとする脳の働きすらなかなか受け付けず、長い余韻を持って敦を支配していた。

「(ハァァ・・・ハァァ・・・)」
やっと脳の制御が聞くようになってくると、すぐ近くまではじめが移動してきていることがわかった。
自分の腰の辺りで何かを観察している。
「(・・あ)」
敦の意識が一瞬で回復する。
よく考えればこの作戦、まだ成功したか失敗したかはわかっていなかったのだ。
敦は鬼気迫る表情で、がばっとはじめの顔を覗き込む。
「(・・うまくいったか??)」
すると、またおあずけ。
はじめはすぐに答えようとせずに、無言でボトルのキャップを閉めなおしている。
そしてそれが終わると、今度はポケットティッシュで周りを綺麗に拭き取り始めた。
「(・・・・・・)」
普段なら、はじめの胸倉を掴んででも答えを促したかもしれない敦だが、今は何故かそれができなかった。
ただ、はじめの返事を待つ。

――シャポッシャポッシャポッ・・・
はじめは最後にペットボトルを何度かシェイクすると、元あったように、舞子のカバンの中に戻す。
そして、徐に敦を振り向くと散々お預けを食わせたサムアップ。
「(バッチリやで、ほとんどこぼれてへん。高田のザーメン茶、一丁上がりや!)」
「(おっしゃぁ!)」
思わず、敦は子供のように無邪気なガッツポーズをとる。
だが、もう時間はギリギリだ。
はじめは慌てて麻酔のビンを片付けつつ敦に撤収の準備を促すと、2人で足早に教室を出て行った。


→進む

→戻る

Pubertyのトップへ