□ Page.11 『共存者』 □

 

《オカケニナッタデンワバンゴウハ ゲンザイ デンパノトドカナイトコロニオラレルカ デンゲンガオフニナッテイマス》

――ザアアアアアアア・・・
夜の闇が落ちた農道の上、小走りに家路を急ぐ舞子の姿があった。
寿命の尽きかけた街灯の明かりが、真っ黒な空から落ちる無数の雫をぼんやりと映し出している。
舞子が1人教室にいた頃からぱらぱらと降り始めた雨は、しばらくそこで雨宿りを決め込んでいても一向にやむ気配を見せず、家族に迎えに来てもらおうにも両親のケータイには何故かつながらなかった。
だから、舞子は傘もないまま雨の家路を強要されることとなったのだ。
学校を出る時に見たケータイの画面には、11:24という表示があった。
住民たちが夜も朝も早い山神村では、もうこの時間になると外ではほとんど誰にも会うことはない。
止むどころか、次第に勢いを強めつつある雨が、舞子を覆いつくさんかのように降り続けている。

(ああ〜・・・もう、最悪!)
全身、汗と雨にまみれ、更に降り注ぐ雨と吹きつける生暖かい湿気が舞子の不快感を煽る。
いつもは折りたたみ傘を常備しているのだが、先日使った際に、それを机の上に置いたまま、カバンに戻すのを忘れていたのだ。
特に今日に限って傘がないという状況も、また精神的なイライラを呼び起こしている。
そして、この季節にこういった不快感が強まってしまうと、例の症状が現れやすくなるのだ。
(・・・・・うぅ・・)
悔しそうに、苦しそうに、舞子は顔を歪める。
腹部をかばうように前傾姿勢になり、移動速度もがくんと落ちる。
お腹が膨張する感じ、便秘からくる腹痛だ。
内心、舞子は泣きたかった。
まだ家まではずいぶん距離がある。
学校に戻ろうにも、同じく距離がある。
ある意味陸の孤島ともいえるこの状況で、最悪の敵に襲われたのだ。
酷く意地の悪いこの敵は、虐めに全てをかけているような奴で、毎回ここぞという最悪のタイミングで現れる。
そして手を変え品を変え、じっくりと時間をかけて舞子を嬲り尽くすのだ。
コイツの手口を舞子は熟知していた。
膨張感で様子を見、腹痛で攻撃を開始、そして体力と精神力を程よく削ると、お次に来るのは先の見えない便意による虐待だ。

――ギュル・・・
(・・・もぅ・・・・何でこんな時に限って・・・・)
腹痛の痛みのため、もう走る力はほとんど奪われてしまっている。
だが、便意のため、早くそれを処理する場所を探さなくてはならない。
実際、この便意が排泄につながるもなのか、単なるフェイクなのかは『敵のみぞ知る』というやつだったが、舞子が都合のいい方向に考えるようにも、それはデメリットが大きすぎる判断だ。
舞子は悪い方を想定して動かざるをえない。
まさに前後から2重の責め苦を受けているかのような状態だったが、ともかく舞子にはぼーっとしている暇などない。
不快極まりない環境の中、体を引きずるように動かす。

(・・この近くって、どこかにあったっけ・・・)
苦しそうな前傾姿勢で亀の歩みを続け、辺りに視線を走らせつつ、頭をフル回転させる。
今、最優先すべきはトイレの発見だ。
もし最悪、トイレが見つからない時は、その代わりになるような物陰を探すことになる。
更に、それすら見つからなかった時は・・。
それを考えると、舞子の顔は今まで以上に深く青ざめてゆく。

(あ・・・そうだ、この道を3回折れた先に公園がある・・・そこに確かおトイレがあったはず・・・・)
苦しみに圧迫されつつも、舞子の頭は記憶の中から目当てのデータを引き出すことに成功する。
もし、この記憶が間違っていたならば、舞子の抵抗力は一瞬にして全て奪い尽くされるだろう。
しかし、それが本当に確かなものか、それを確認する余裕すらなく、舞子はそちらへと足を向ける。
「(はぁ・・はぁ・・)」
1つ、2つと角を曲がる。
記憶が正しければ行程の2/3近くをクリアしたことになる。
だが、舞子の敵は心底意地の悪い奴だった。

――ギュルル・・・
ここにきて、便意はその勢いを増す。
もう、ちょっとした振動すら危険な状態にきていた。
(・・・ダメ・・・もう、ダメ・・・・)
宙を泳ぐ視線が、近くにちょっとした茂みがあるのを確認する。
(・・・・・・)
茂みといっても、体を隠すほどの高さはない。
足元がいくらか隠れる程度で、決して『適した場所』とはいえない。
だが、もう我慢も限界に来ているのだ。
意を決して、舞子はそちらへと方向転換する。
だが、そこにまたしてもありえない状況。

――ジャリジャリジャリジャリ・・・
向かっていた公園の方角から、ゆっくりと何かの灯りが近づいてくる。
それは1台の稲刈り機だった。
その歩みは遅く、ここを通り過ぎるのはまだもう少し後だ。
となれば、今、ここでショーツを下ろしてしゃがみこむわけには行かなかった。
『何でこんな時期に..』と舞子は唇を噛む。
そして、背に腹は変えられないと、捨て身の方法を取ることを決定した。

(・・走ろう。もう、走るしかない・・)
決めるや否や、ショートしかかった脳から肉体へと悲鳴のような指令が飛ぶ。
上下振動は今の状態では危険極まりないが、最悪下着を汚してしまっても、トイレで便意さえ処理できれば捨てて帰ることもできる。
泣きそうな顔で、稲刈り機の横を駆け抜けてゆく舞子。
声をかけられないかと心配していたが、幸いそれもなかった。
そして、無事公園の入り口を通過――内から淡い光をこぼす衝立の奥への到着に、舞子は成功していた。

――キィィイ・・・・バン!・・ガチャ
薄汚い公衆便所の個室の中、舞子の行動は止まることなく続く。
台の上にカバンを置き、雨と汗でべっとりと肌に張り付いたスカートの下に震える手を滑り込ませると、そこにある純白の薄布を勢いよく引き摺り下ろす。
そして、和風便器を跨ぐように腰を下ろす。

「・・はぁぁぁ・・・はぁぁぁ・・・」
何度も何度も、深い息を吐く。
とりあえず、最悪の事態だけは回避することができた。
だが、ここからはまた先の見えない憂鬱な戦いが始まるのだ。
舞子の内にいる天敵は、容赦なく毒素を吐き出し、体内器官を狂わせる。
操られた腸は、その真偽にかかわらず脳に便意を伝え続ける。
脳は体全体に排泄を促すように命令を返すが、いつまで経ってもその時はこない。
そして、その間にも腸からのSOS信号が送り続けられる。
それはじわじわと体を蝕んでいくような苦しみなのだ。

(んん・・・んんんんん・・・・・!!)
しばしイキんでは呼吸を整える。
それが延々と繰り返す。
舞子はいつもそんな中、誰かに助けを求めたくなるのだ。
もちろん、誰が助けてくれるわけでもないが、そう思いたくもなるのだ。

――ピシャァァン!!
「・・・ひっ」
臭く薄暗い個室の中が、一瞬真っ白に染まる。
――ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・!!
――ジャアアアアアアアアアアアア!!
そして、数秒遅れて龍の唸り声と、雨が大地を叩く音。
とうとう、外で降りしきる雨は雷を帯びた豪雨となった。
雷鳴は1分に2〜3回という高頻度で鳴り続け、雨音はもはや轟音の域。
人気どころか、民家すら近くにほとんどない、深夜の公園の公衆便所。
それを雷と雨が完全なる密室へと変えていった。

「・・んんん〜〜〜・・・ほんとにもう・・助けて欲しいよ・・・・」
思わず口に出る本音。
どうせ今なら、こんな呟きなど誰にも聞かれることはない。
むしろ、大声で叫んでも大自然の轟音の前では意味を成さないだろう。
――だが。
『ある存在』がそれをしっかりと聞き取っていたことに、舞子は気づいていなかった。

――ニュルルルロォォンッ!!
「・・・きゃッッ?!」
不意に得体の知れない接触。
音もなく舞子の真下まで忍び寄っていた存在が、文字通り魔の手を伸ばしたのだ。
勢いよく伸び上がった先端は、中にたまっているものを何とか導き出そうと、精一杯開いていた『門』の中にしたたかに滑り込む。
防衛本能が向けさせた視線の先に『あの生き物』がいた。
1ヶ月前、自宅で同じように便秘に悩まされていた時に遭遇した――謎の軟体生物。
(・・あの時の・・・触手だ・・・・)
舞子がそう認識した時には、また触手は肛門深くへ身を沈め始めていた。
――ニュル・・・ニュルル・・・・
――ピチャピチャピチャピチャ・・・・
そして、そこからも前回と同じ展開だった。
1本伸びた触手はある程度進んだところでその侵入速度を落とし、何やらしきりにうねり始める。
そしてそれと同時に、便器の奥でとぐろを捲く無数の触手たちが、歓喜に打ち震えるがごとく身を跳ねさせるのだ。
「・・・ん・・・・うぅん・・・・」
前回は、得体の知れないこの生き物に対して死の恐怖すら覚えていたため、ほとんど機能を停止していた感覚。
だが、今回は違った。
わずかながらものを考える余裕もあるし、表現するに困る異様な感覚が、臀部から腸内にかけてうずまいている。
(・・そうだ・・・やっぱり、この生き物は・・・・・・)
舞子はしばし、このおぞましい生き物を観察し続ける。
あのあと、舞子なりにこの生き物について考察してみた結果、彼女の中にとある仮説が立っていた。
もしそれが正しければ、この生き物は自分に害を成すどころか、ギブアンドテイクの関係が成り立つ相手かもしれないのだ。
そこで、舞子は前回の経験からもう一度情報を整理する。

トイレの中で排泄中、しかも便秘で苦しんでいる時に現れた。
少なくとも目に見える範囲では、自分に危害を加えることはせず、ひたすら腸内でうねり続けていた。
その次の日、前日に排泄がなかったにもかかわらず便秘はすっかりよくなっていた。
それどころか体調はいつもよりはるかによく、また腕にあった火傷すら大幅に回復していた。

軽い観察・考察を終え、舞子は自分の仮説が恐らく正しいであろうことを認識していた。
(・・この生き物は・・・私の腸内の『あれ』を食べている・・・・・そして、その代わりに何らかの養分を吐き出している・・)
――グニュ・・・ニュルル・・・
「・・・・は・く・・・・・・ふ・・ぅン・・・」
いざ、この生き物に危険がないのではないかと思うと、今度は逆に別の感情が表に顔を出し始める。
それは今の舞子が、一番強い興味を示すもの――背徳の悦楽。
冷静に状況を見れば、舞子は今、謎の生き物にアナルを陵辱されているに等しい状態なのだ。
相手は人間ではないし、牡かどうかもわからない。
いや、性別すらない生き物なのかもしれない。
しかし、どうあれこの状況は、考えようによっては――アナルセックスとも取れるのだ

――ニュルルォォォンッ!!
「ん・・あぁんっ・・・!」
次の瞬間、腸内にいた触手が勢いよくすっぽ抜ける。
うねり狂っていた触手の皮膚に腸壁をこすられ、そこから体中に鈍い震えが走る。
舞子は思わず高い声を上げていた。
(あれ・・・・もう終わりなのかな?)
先程より大分楽になったとはいえ、それでもお腹の膨張感はまだ消え去っていない。
完全にそれを取り去ってくれるのではないかと期待していた分、途中で抜け出られると妙な空虚感を感じるのだ。
いや、それだけではない。
便秘どうこうとは別に、純粋に今の行為の続きを求めている舞子がいた。

(・・・・・・)
恥じらいと要求、それが折り合わさった表情で舞子は触手を見やる。
すると、今伸びていた先端は群れの中に戻ったものの、今度は別の先端がそこから這い出ようとしている。
それは舞子の目に第2ラウンドの準備をしているように映り、また、その読みは正しいようだった。
触手は空中をうねりながら、中にたっぷりと餌の詰まった穴向けて伸びてゆく。
すると、舞子にも少しだけ悪戯心が沸いた。
向かってくる先端から、『おあずけよ』とばかりに尻を逃がす。
一度立ち上がった舞子は、もう1歩だけ前に出ると、ゆっくり後ろを振り向き、そこにやってくるものの姿と位置を確認する。

――ピッシャアアアアアアン!!!

そこでまた閃光。
一瞬、稲光に奪われた風景が再びその姿を現した時、個室内には先程以上に淫靡な光景が広がっていた。
便器の真上になくてはならないはずの舞子の尻は、そこから後方にやや外れた辺り、それもずいぶん高いところにある。
舞子は立ったままトイレの壁に手をつき、腰を反らして尻を突き出しているのだ。
そして、便器の奥から伸びる触手も空中に大胆にその身を晒し、目当ての餌場の中への侵入を果たしていた。
――ニュルォン・・・グニュ・・・ニュルルル・・ッ!
「あっ・・・・は・・・ふぁぁン・・・」
腸内の触手が歓喜の舞を踊るたび、舞子は容赦なく声を上げる。
外では鳴り止まぬ雨音と雷鳴。
となれば、どうせ声が響くのはこの無人のトイレの中だけだ。
『誰にも見られも聞かれもしない』
その認識が舞子を大胆にしていった。
――ブニュルルッ・・・ニュルッ・ニュルルッ・・
「あっ、やだっ・・・・そんな奥までぇ・・・い・・・んっ・・・んん・・・」
喘ぎ声に意味を持った言葉を含ませると、その背徳感は一層深いものとなる。
そして、その背徳感が精神面から強烈な快楽を分泌するのだ。
どぷりどぷりと。
――グニュ・・・グニュ・・・・グニュルルルルゥゥ・・・・
「ん・・ふぅぅぅん・・・食べてぇ・っ・・・・私のお尻の中の・・・全部食べてぇ・・・・・っ」
舞子は自分の中にある留め金が外れる音を、鼓膜の奥で聞いたような気がした。
真偽にかかわらず淫らなことを口走り、自ら怪しく腰を振り興奮を高めていく。
それは人間としてというよりは動物的なセックスアピールであり、この人間でない生き物にもその効果を及ぼし始める。
――ニュルルルルルロロォォォンッッ!
――ニュルルルルォォンッ!
――ピチャピチャピチャピチャ・・!!
便器の奥から1本、また1本と触手が宙に打ち出され、舞子のアナルに襲い掛かる。

「・・・くはっ!・・・やっ・・・2本目が・・・・ううぅ・・・いや・・・・ぁぁぁン!!」
新たに伸びた触手の内1本が、元から入っていた方を圧迫しつつも第2の侵入者となり腸の奥へ滑り込んでゆく。
内側から圧迫された腸壁は、もろにその摩擦を受けることとなり、先程より強烈な震えを伝え始める。
後から伸びてきた触手たちは、もう腸内への侵入は明らかに無理であるにもかかわらず、果敢にトライを続けている。
そして、それがまた何とも甘美な愛撫となり、休みなく舞子の肛門を責め立てるのだ。
肌をあわ立たせ、全身の力を奪い、とろけさせてゆく感触。
それはおぞましくもあるが、また、えもいわれぬ快楽でもある。
全身びしょ濡れの舞子は、更に歓喜の涙とよだれを垂らし、とどまることなく潤ってゆく。
「はんっ・はんっ・はんっ・・・やだ・・・・何かきちゃう・・・何か・・きちゃうよぉ・・・・・っっ!」
何本もの触手たちが、内から外から競い合って舞子の肛門へと快楽の種を植え付けてゆく。
その形を持たない種はすぐに発芽し、絡み合いながら成長してゆく。
そして、それが今――一斉に花開いた。
「だ・だめ、イク・・・・私、お尻でイッちゃう・・・イ・イク・イクよ・イク・・・・う・うぅんんんんんんんっっ・・!!」
瞬間。
排泄のための器官で見えない爆発が起こり、快楽の波動が全身に飛び散った。
意識が吹き飛び、制御を離れた肢体はぎゅっと凝縮し、ビクビクと小刻みに痙攣を起こした。
「うふ・・・・ぅン・・」
今までの真似事程度のオナニーで得られるのとは比較にならない、無重力間すら帯びた快楽。
その中で、舞子はこれこそ本当の絶頂というものに違いないと、生娘の本能にゆっくり刻み付けていった――


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