□ Page.1 『ボーイミーツガール』 □

 

燦々と照りつける太陽。
小麦色の肌をした少年少女たちが、農道を抜けて学舎へと向かう朝の風景。
純白のYシャツやブラウスが、眩いばかりに夏を飾っている。

「おはよん、岡本〜」
「舞子ちゃんおはよー」
「おはよう」
岡本舞子は学校では特に目立った存在ではない。
だが、天性の真面目さ・人の良さと、とっつきやすそうな顔つきから、友達は多い方だ。
通りがかる何人かが、舞子に挨拶をして足早に追い越してゆく。

――グイッ
不意に舞子は大きく体勢を崩す。
何者かが彼女の腕を掴み、引きずっているのだ。
連れてこられた先は、フェンスに囲まれた校庭の脇にあるちょっとした林の中だ。
「おい、岡本」
舞子に声をかける者全てが友達かというと、実のところそうでもない。
声の主は赤みがかった天然のウェーブヘアの美少女、長森棗(ながもりなつめ)だ。
その目つきはすさんだ敵意にギラついており、後ろには似たような目つきの女生徒3人を引き連れている。
「お前、花見にチクったろ?」
棗は、舞子の返事も待たずに次の言葉を切り出してくる。
そして彼女の言葉が1つ出るたび、後ろのメンバーも包囲網を縮める。
「だって、何度も注意したじゃない」
「ざけんな!お前のどこにうちらを注意する権限があるってんだよ!」
原因は実によくあることだった。
20歳未満の喫煙である。
トイレや野外でよくタバコを吸っている棗たちに、舞子は親切心から時々注意を促していたのだが、最近になって吸い方のペースが度を越してきたことに見かねて担任に報告したのだ。
『いらぬ節介』という点で舞子に全く非がないわけでもないが、これは棗側の言いがかりである。
そして、棗たちは懲りもせずにタバコをふかし始めた。
「お前何様なんだよ?岡本様かぁ?」
「言葉でいってわからないんじゃ、ちと痛い目見せてやるしかないんじゃねーの?」
「お約束の根性焼きといこうよ」
「・・ん」
棗が顎で合図すると、後ろの3人が舞子を乱暴に取り押さえる。
自分の腕が2人かかりできつく掴まれ、棗の方に差し出されるのを見て、舞子は顔を青くした。
「ちょ、ちょっと、何するの!」
「ふん。いいこちゃんがでしゃばりすぎるとどうなるか、教えてやろうってんだよ」

――ジュジュ・・・
「ああああああああっっ!!!」
棗は容赦なくタバコの先を舞子の腕に押し付ける。
舞子の悲鳴に続き、体毛と肉の焦げる嫌な匂いが広がる。
数秒後には、そこにわかりやすい勝者と敗者の構図が出来上がっていた。
腕を押さえて泣き崩れる舞子と、『らしい』捨て台詞を残し立ち去ろうとする棗たち。
だが、この勝負はそこで終わりではなかった。

「オラアアア!」
次の瞬間、棗の取り巻きの1人が、舞子の横をゴロゴロと転がり木に激突する。
昨晩の舞子以上にはしたない格好で崩れ落ちた彼女は、顔半面が泥にまみれ、歪んでいた。
棗たちがギョッとしてその原因を作った相手を振り向く。
そこに野犬のような目をした少年が立っていた。
彼は名を高田敦(たかたあつし)といい、舞子のクラスメートだ。
男子としてはやや小柄。
ツンツン頭の彼は耳にピアスなどもつけており、舞子と棗でいえばあきらかに棗よりの人間だが、その危険度でいえば棗の比ではない。
相手が自分の棲む世界の人間だとみれば、気分次第で暴力を振るい、男女関わらず完膚なきまでに叩きのめす。
温厚な普通の生徒たちに絡まないことだけは救いだが、『不良』という名の同業者たちからすれば極めて危ない人間だ。
たった今も、女子の顔面に飛び蹴りを食らわせたばかりだった。

「ちょっ・・高田、何の用だよ・・っ」
そういった女子が次の標的となった。
強烈なボディブローに鳩尾をえぐられ、体がくの字に曲がったと思えば、そこに肩を掴んで腹部への膝の追い討ち連打、ムエタイでいうゴッ・コー・ティー・カウとくる。
とても男子が女子相手に振るう技ではない。

――ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!
「あっ!がっ!ぐふ・・やめて、ごめん、ごめんなさい・・」
敦はククッと笑うと、泣いて許しを乞う少女の顔面に膝がめりこませ、解放してやる。
派手に飛び散る少女の鼻血に、棗は正気を取り戻す。
今まで、あまりに壮絶な光景にすくみあがってしまっていたのだ。
そしてそれは致命的なミスとなる。
棗は何を置いてでも逃げるべきだった。

「ケケッ・・♪」
結局、棗のグループでその場から生還できたのは、棗を置いて逃げた取り巻き1人だけだった。
あの直後に棗も敦に蹴り倒され、マウントポジションからのパンチ連打を浴びたのだ。
見かねた舞子が止めに入ってなんとか場は沈静を迎えたが、力なく起き上がり、その場をあとにする棗たち3人の少女の姿は無残の一言に尽きた。
それは時間にして2分前後の出来事であったが、その間に舞子はすっかり腕の痛みなど忘れていた。

「・・・」
目の前には、未だ膝と拳を血に染めた敦が立っている。
舞子は何とも複雑な感情の中から、沈黙を破るべき言葉を見つけて口にした。
「・・やりすぎだと思うよ・・」
この期に及んで、敦から逃げるでもなく、機嫌をとるでもない言葉が舞子流だった。
舞子は決して度胸のあるタイプではないが、だからといって間違いなく臆病でもない。
優しく素直すぎるのは、ある意味彼女の弱点かもしれなかった。

「へへ、これがオレたちの世界なんだよ。岡本はいいこちゃんなんだから、あんまりああいうアホどもと関わらない方がいいぜ」
対して、敦も全く悪びれた様子なくそう応える。
その表情は未だどこかニヤついていて、舞子は不気味さを覚えた。
まるで肉食獣に全身嘗め回されているようなイメージすらあるのだ。
「でも・・」
「んなことより、その腕、すぐに水道で冷やしな」
「えっ」
「おら、ぼさっとしてねぇで来いよ」
「あっ・・えっ、ちょっと・・?」

――ジャアアアアアアア・・・
「つぅっ・・・!」
冷たい水の痛みが、舞子に危機を脱したことを告げているかのようだった。
敦が、先程の棗のように舞子の腕を引っ張って連れてきたのは、校庭の端にある水道。
そこで、とりあえずの応急処置となったのだ。
「・・・」
しかし、意外だった。
この狂犬が他人を労わるなど、ここの学生たちなら想像するのは至難の業だろう。
真意は別にあるのかもしれないし、相変わらず不気味な笑みを浮かべてはいるが、舞子は内心驚きを隠せなかった。

――キッキッ!
――ポタッポタッ・・
「んじゃ、行けよ。もうホームルーム始まるぜ」
敦は蛇口を閉めると舞子を解放する。
「あ、うん。って、高田は?」
「あん?俺はクソしてからいく」
「そ、そっか・・」
そういって舞子は下駄箱へと駆け出すが、すぐに立ち止まり振り替えると、もう一言だけ残していった。
「あの・・高田、ありがとう」

「へへっ」
敦はそれに返事を返すでもなく小さく笑うと、走り去ってゆく舞子の後姿を眺め続けた――


        ▽        ▽        ▽


舞子たちの通う大山高校は全校生徒300人超ほどの、田舎らしい小規模な学校だ。
校舎は3階建てが1つしかなく、1年の教室は2階だ。
そして、各階の左右端にはそれぞれ男子用女子用のトイレが配置されている。

「ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・」
男子トイレの1番奥の個室は扉が閉じられており、中からはそんな荒い吐息が漏れていた。
それは排泄をイキんでいるような息遣いではなく、もっと別のもののようだった。
「ハァ・・ハァ・・」
この吐息の主は敦だ。
敦は下半身を完全にはだけ、和風便器の段の上に体重を乗せるように片足を乗せたポーズ。
その右手は露になった自らの分身に添えられ、しきりにそれをこすり上げている。
彼はオナニーをしているのだ。
頭の中には撮り立て最新の映像が再生されていた。

「ハァ・・ハァ・・」
今しがた分かれたばかりのクラスメートの女子が、自分のもとから走り去ってゆく時に見せた後姿。
揺れるスカートの下に覗いた白く柔らかそうな太もも。
ブラウスの奥にかすかに透けてみえたブラジャー。
途中で振り向いた時にチラリと見せた笑顔。
その全てが、彼にとっては最高の食材なのだ。

――シュッシュッシュッ・・
元気のいいイチモツは、脳内の光景の中にいる少女へ向かうように狂おしく反り返る。
そしてまた、そこから脳へ、もっとターゲットを近づけろと逆に催促が飛ぶ。
すると、脳は実際に五感が捉えた映像を都合よく作り変えてゆくのだ。

《高田・・・しても・・いいよ・・》
制服姿の舞子は地面に肘をつき、恥ずかしそうに尻を上げると、スカートの中からショーツをずり降ろす。
かすかに見え隠れする舞子の泉は既にじっとりと濡れており、溢れた愛液がその内股を伝って落ちるほどだ。

敦は突き立つものをそこにあてがい、力任せに沈めてゆく。
《おらおらっ!どうだ、岡本。どうだよ?》
《あんっあんっあんっあんっ・・高田、怖いよ・・私、変になっちゃう・・》
かと思えば、場面はすぐに激しい行為へと変換されていた。
敦の右手は速度を様々に変えながら、その興奮を高めてゆく。
頭の中でも、舞子がそれと全く同じペースで昂ってゆく。
《あんっ、ダメ!ダメぇっ!私、イク・・イッちゃうよぉ・・・》
《へへっ・・いいぜ、望み通りイカせてやるよ。マ○コにたっぷりスペルマ注入してな・・》
敦の右手がラストスパートへと入ると、そこからはもう毎回同じパターンだ。
《うん・・いいよ、私の中にいっぱい出して・・・ひあっ・あぁんっ・・出てる・・出てるよ・・・・・赤ちゃん、できちゃうぅぅ〜〜〜〜!!》

――ビュクビュクッ!!
瞬間、ものすごい量の精液が放たれ、ビチャビチャと便器の上に降り注いだ。
しかし、右手はそれでも止まらず、敦は余韻までしゃぶりつくすのだった。

「ハァ・・ハァ・・」
今日は今までになく激しい絶頂だったと、敦は息を整えながら思い返す。
しかし、それは考えてみれば当然だったかもしれない。
今までは全く接点がなく、やきもきするしかなかった愛しい女と身近で話し、触れることすらできたのだから。
その掌には、今も舞子の肌の感触が鮮明に残されている。
細く柔らかい体毛に包まれ、決め細やかで、柔らかだったその腕の感触。
『女の二の腕の柔らかさは、胸の感触と同じ』
そこで敦は、以前そんな話を聞いたことを思い出していた。
「・・・・ハァ・・ハァ・・」
敦が掴んだのも、ちょうど舞子の二の腕の部分だった。
となれば、感覚だけならば、それは舞子の胸を揉んだに等しい行為だったのだ。

《あ・・や、優しく・・・揉んでね・・・》
1発抜き終わった直後だというのに、頭の中のイメージは覚めることなく再び熱暴走を起こし始める。
敦はもう、今までの行為ではこの暴走は止められない域にまで達していることを、肌で感じ取っていた。
できることなら直接舞子を襲いたいところだが、童貞の敦は変なところで純情だ。
牙を持たない相手に直接暴力を振るうのは流儀ではないし、ましてやそれが好きな女子ともなれば問題外だ。
舞子を虐めたいという欲望はあるが、だからといって絶対に嫌われたくはないのだ。
しかし、だからといって、どうすればこの昂ぶりを抑えられるのか。
そう模索する敦の視界に、彼のバッグの外ポケットから頭を出す『あるもの』が飛び込んでくる。
敦はそれを手に取ると、脳から迸る命令に腕を痺れさせた。


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