□ Last page 『ただ1つの愛のために』 □

 

周りを取り囲む非現実の群れ。
謎の金属で囲まれた空間。
あの恐ろしい化け物の巣。
恐怖の支配する世界。

――タッタッタッタッタッタッタッ・・
だが、今の舞子は銃口から射ち出された弾丸そのものだった。
もはや、殺す以外に彼女を止める術はない。
「はぁ・・はぁ・・はぁ・・ッ!」
延々と同じ風景を運んでくる、あの通路。
後ろから1体追っ手がかかっていたが、舞子の頭は捕まることなど微塵も考えていなかった。
そこにあるのは、死をも恐れぬただ1つの想いだけだ。

――タッタッタッタッタッタッタッ・・
やがて視界の奥、風景が変化する。
床に幾つも転がるのは、頭を割られた宇宙人の死骸。
そこは舞子が最後に敦を見た場所だ。
無数の宇宙人たちが出てきたアーチ型の入り口も開いたままだった。
そこに敦の姿がないことを確認すると、舞子は側面の入り口に駆け込もうとして、一瞬立ち止まる。
(・・・んっ?)
そこには1つ予想外の変化があった。
少し奥にもう1つ、幾らか大きい別のアーチが口を空けているのだ。
小さなアーチに入るか。
大きいアーチに入るか。
このまままっすぐ行くか。
(ここだ・・!)
舞子は迷わず大きいアーチを選んでいた。
理由はない、直感だ。
一直線にそこへと駆け込んでゆく。

――タッタッタッタッタッタッタッ・・
大きいアーチを入ると道は一直線だった。
先に見えるのは左右に伸びるT字路と、突き当たりにある小さなアーチ。
(あそこだ・・・間違いない。あの中に、高田がいる!)
それは何故か確信だった。
アーチの中はどうやら狭いトンネル上の通路が続いているようだが、決してその先まで見えるわけではない。
それ以前に、左右の通路がどうなっているのかもわからない。
だが、確信だった。
何か、不思議な力が呼び寄せている感じがするのだ。
(・・そうよ、私にはすごい魔法があるんだから!)
先程、コンビニの帰り、自分を敦と巡り合わせてくれた乙女の魔法。
その力がまだ生きているのを、舞子の肌は確かに感じとっていた。

――タッタッタッタッタッタッタッ・・
――ふぃぃぃぃぃぃぃぃ・・ん
舞子がアーチを潜り抜けた時、後ろで変な音が響いた。
一度足を止め、振り向く。
今入ってきたばかりのアーチが綺麗さっぱりなくなっていた。
(閉じ込められた・・・か。でも・・構わない)
根拠のない確信は、すぐに舞子に機動力を戻す。
アーチと同じ大きさのトンネルを、一気に駆け抜ける。
――ふぃぃぃぃぃぃぃぃ・・ん
そこを抜けた瞬間、また先程の音がしたが、もう舞子の耳にはほとんど入っていなかった。

「・・・・・・」
舞子はしばし言葉を失う。
そこに――無残に変わり果てた敦の姿があった――


        ▽        ▽        ▽


そこはやはり円柱型の小さな部屋だ。
部屋を囲む壁の半分が例のガラスのような透明な物質でできており、その奥にある部屋には10体ほどの宇宙人の姿がある。
中には怪しげな装置や謎の液体が入った巨大な水槽がある。
敦の姿は部屋の中央の床の上だった。
まだ生きているようだったが、絶えず低い呻き声を上げながら、もがき苦しむように体をくねらせている。
だが、舞子でなければ『それ』が敦だと、すぐには判断できなかっただろう。
頭部全体を覆い隠す気味の悪いヘルメットを被らされている敦の肉体は、先程棗たちと繋がっていた男たちと同じ姿をしている。
全裸にされ、全身の体毛を溶かされ、肌は人間とは思えないくらいつるつるになっている。
違う点といえば、肌がちゃんと肌色をしているところくらいだ。

「な・・・なんて酷いことを・・・」
窓の奥の宇宙人たちをキッと睨み付ける。
それは温厚な舞子にはこれ以上ないくらい似合わない、敵意剥き出しの眼差しだ。
『殺してやる・・!』
胸の奥から浮かび上がってくる、生まれて初めての感情。
だが、今は何より敦優先だった。
すぐさま駆け寄るとヘルメットに手をかける。
その下からどんな顔が現れるのか不安になるが、心を決めてゆっくりと脱がせてゆく。
そこから出てきた敦の頭部はやはり一切の体毛がなくなっていたが、顔つきは若いままだ。
だが、酷く苦しんでいた。
あのニタリ顔が似合うケンカ小僧の威厳はそこになく、涙と唾液を垂れ流しながら苦痛に顔を歪めている。
「・・・高田!しっかりして!」
「・・・あっ」
それまで何もない虚空に見開かれていた敦の眼球が、やっと舞子を捉える。
それは弱々しく助けを求める眼差しだった。
「・・おか・・もと・・か」
「うん!戻ってきたよ。もう私、どこにも行かないからね・・!」
「お・・・岡本・・・うっ・・・うっ・・・・」
敦から伸ばされたガクガクと何かに痙攣する手。
舞子はそれを自らの両手で受け止めようとするが、突如勢いのついた敦の手に逆にがっしりと腕を掴まれていた。
「・・岡本・・・助けて・・くれ・・・頭の中で・・変な光が・・・・点滅・・・して・・・」
「え、何?私は何をすればいいの?」
助けを求める敦の声。
自分を助けたために、この地獄の苦しみを味わっている敦。
一切全てを受容する表情で覗き込む舞子に、敦は呻くように漏らした。
「・・や・・・・犯らせてくれ・・・・・・」
「・・えっ?」
「頼む・・犯らせてくれ・・・そ・そう・・しないと・・気が・狂うぅぅぅ・・・ッ!!」
舞子は少し驚いたような顔を見せるが、すぐに優しい笑みを作る。
お安い御用だった。
そもそも、元々そのつもりだったのだ。
「・・うん、犯ろう!」
そういうと、舞子は力強くうなづいた。

「立てる?」
「・・ああ」
舞子に導かれ、敦が立ち上がる。
体中リキんで痙攣はしているものの、敦はある程度は自由に動けるようだった。
それを確認すると、舞子は宇宙人たちのいる窓の方へと歩いてゆく。
彼らに敵意の笑みを向けると、下肢を覆う全てを脱ぎ捨てる。
窓に手をついて後ろに尻を突き出すポーズをとると、棒読み気味にこういった。

「『1−C岡本舞子をバックからズコバコ犯りてぇ』」

それは以前、敦が男子トイレの壁に書いた落書きだ。
大きな字ではっきりと書かれたその文句。
見た時はまず驚いたが、それと同時にそこに秘められた狂おしいほどの願望も感じていた。
今の2人は、いつ殺されるかわからない身。
これが最初で最後のセックスになる可能性も高い。
舞子は敦の望むことは全て満たさせてやるつもりで、その行為に臨んでいた。
そして、それこそが無力な自分が憎い敵に対してできる、唯一の抵抗である気もしていた。
「ハァ・・ハァ・・」
「高田、一緒に気持ちよくなろう。思いっきりエッチになろう。宇宙人たちに見せ付けてやろうよ!」
「ハァ・・ハァ・・お、岡本ぉ・・・」
「あ・・・そうだ。高田の大好きな『膣出し』も・・モチ、オッケーだからね」
「岡本・・・ああ・・・岡本ぉぉっ!!」
『そこまでやるか』とばかりのサービス満点の誘惑は、高田を抑えていた最後の理性のタガを外す。
自らの意思で差し出された好きな女子の肉体を、高田は全身でむしゃぶりついていく。

――ずちゅ!
「・・・ひぐ・・・っ」
前戯なしでの、いきなりの挿入。
つい先程、敦を誘う過程で幾らか濡れてはいたものの、やはり鈍い痛みからは逃れることができない。
だが、恐怖はなかった。
あれだけ深く負ったはずの心の傷も、今の舞子を苦しめることなどできない。
敦への想いの前では、もはや無力だ。
「アッ・・アァッ・・岡本ぉ・・・」
――ぐちゅっ・・ぐちゅっ・・ぐちゅっ・・
「あんっ・・は・・あぅ・・・・はあぁン」
泉が次第に潤い始め、舞子の中にも長年憧れ続けてきた感覚が宿り始める。
身をとろけさせるような、めくるめく快感。
大好きな男子からの贈り物を逃がすまいと、舞子は自らを抱きしめる。
「うふ・・気持ちいい・・・気持ちいいよぅ・・」
「アッアッアッアッ・・っく・・俺・・も・・・俺も、岡本のオマ○コ、すっげぇ気持ちいい・・・」
「え、本当?・・・・・ふふ、うれしい・・・」
舞子から不意打ち気味のキス。
すると、すぐに敦も反撃。
更に負けじと舞子から。
それは回を重ねるごとに長い口付けとなってゆく。
「岡本・・・本当は・・戻ってきてくれて、すげぇ嬉しかった・・・」
「・・わかってる。それに私も、もう一度高田と会えるなら死んでもいいって思ったもん・・」
そしてもう一度、深く舌を絡めあうキス。
優しい悦びは敦の苦痛をも解き放っていた。
つい先程までは永遠に続く地獄かと思われた乾きを、舞子の潤いが満たし尽くしたのだ。
「んんっ・・」
やがて、離れる2つの舌先に淫靡な透明のつり橋がかかる。
向かい合う敦の顔から何かを読み取ると、舞子はもう一度しっかりと足を踏ん張った。
「さて、そろそろ・・でしょ?」
「おう・・そろそろだ」
「ふふふ・・『膣出し』?」
「おう、『膣出し』♪」
「あはははは・・」
「くっくっく・・」
恐ろしい敵の手の内に入ることも忘れ、無邪気に笑いあう2人。
窓越しの宇宙人たちは、それをどこか興味深げに眺めているように見えた。

――ぱんっぱんっぱんっぱんっ・・!
「オラァ・・アッアッアッアッアッアッアァッ・・!」
「きゃっ!・・あ・あんっ・あんっ・はぁん・あぁぁっっ・・!」
じっとりと汗のにじむ舞子の尻をしっかりと掴み、豪快なピストンを叩き込む敦。
その荒々しい腰使いに、舞子はうっとりとした顔で何度も身震いする。
舞子の顔の前にある窓が、濡れた吐息で白く濁ってゆく。
「ハァ・ハァ・・よっしゃ、ペース・・上げるぜぇっ!」
――ぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっ・・!!
「うぁっ・・・まっ、まだ上がるのっ・・・・・う・・・はくっ・・・・ン・・・あぁっ!」
天井知らずに伸びてゆく15歳の快楽。
2人の思春期の肉体は、今、初めての偉業に向けて、最後の領域へ踏み込もうとしていた。
「あっ・・だめ、私もう・・・もうそろそろ、イッちゃうかも・・・・・」
「もうっ・・俺も・・限界・近いっ・・」
そこで敦は、あのニタリ顔になると、すっと中指を立てる。
「くくく・・どうだクソ宇宙人ども、羨ましいだろ?・・今から、俺は岡本のオマ○コにドップリと膣出しするぜェ!てめぇらは、せいぜいそこで指咥えて見てるんだなっ!」
「高田・・・一杯・・出していいよ」
「へっへへ、ま・・任せろ・・!」
――ぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっ・・!!
――ぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっ・・!!
――ぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっ・・!!
そして。
何度も意識が飛びそうになるのをこらえながら、2人はとうとうその場所に辿り着く。
「アッ・・ァァ・・岡本ぉ・・っ!」
「・・うんっ・・・うんっ、来て・・」
「アァッ・・・で、出る・・・・ッッ!!」
――ビュクビュクビュクビュクッ!!!!

「あぁんっ・・出てるっ・・中に出てるよ・・・・あ・・赤ちゃん、できちゃうぅぅ〜〜〜〜!!」

舞子は『あの言葉』を叫びながら、激しい絶頂を迎える。
何度にも分けて放たれる敦の精を、恍惚の表情で受け止める。
かと思えば、余韻を楽しむこともせずにすぐさま第2ラウンド。

何物にも代えがたい、最高に幸せな時間。
いつまであるかわからないこの時間。
舞子も敦も、若さに任せてひたすら愛し合うのだった――


        ▽        ▽        ▽


――ごぼ・・・ごぼごぼっ・・・

(・・・ん・・)
何か不思議な浮遊感の中、舞子は目を覚ます。
限りなく浅く遠い目覚め。
酷くぼーっとする頭は、何かを考えようとすると意識が遠ざかる。
何とか半開きを保っている目も、閉じればまたそのまま開かなくなりそうだ。

――ごぼ・・・ごぼごぼっ・・・

肌を撫で上げてゆくのは――気泡。
何かの液体の中にいる。
辺りは暗いが足元に照明があるらしい、視界が緑がかっているのはそのためだろう
息はどうしているのだろうと思う舞子だが、口元には酸素マスクのようなものがはめられている。
よく見れば、学校の理科室にあるホルマリン漬けの瓶を思わせる巨大水槽の中にいるらしかった。

――ごぼ・・・ごぼごぼっ・・・

(あ・・・・れ・・?)
舞子の体には、ある決定的な違和感が2つあった。
――ニュルロォォォン・・
1つは肛門をヌルヌルした何かに押し広げられている感じ。
もう1つは下腹部に感じる妙な張りと重さ。
だが、頭を倒してそこを見ようとするだけの気力はなかった。

――ごぼ・・・ごぼごぼっ・・・

(う・・・・・痛・・い)
舞子の下腹部の違和感は張りと重さだけではない。
ものすごい激痛をも帯びていることがわかる。
だが、別に痛いからどうするというわけでもない。
いざとなれば、目を閉じればすぐに眠ることができるのだから。
深い深い、永久の静寂へと逃げられるのだから。

――ごぼ・・・ごぼごぼっ・・・

(あ・・・ダメだ・・・これは私・・死ぬな)
下腹部の激痛はズルリズルリと下りて行く。
するとそれに従い、下から上がる気泡と共に赤黒い煙幕が上がり始める。
舞子にはそれが大量の自分の血液だと、なんとなくわかっていた。
股間辺りから、内臓を抜き取られているような感じ。

――ごぼ・・・ごぼごぼごぼごぼ・・

(うわぁ・・すごい血・・・・ダメだ、こんなの見てるの嫌だし、寝よう・・・高田、おやすみ・・・)

そして、舞子の意識はまた深い闇へと落ちていった――


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