1 妖精さんの、幻想入り
幻想郷。結界により外界から遮断されし神秘の地。
外界の文明発達により人間達が怪力乱神を語る事も無くなり「迷信・幻想」として忘却されていった存在が、最後に辿り着くという。
数多の妖怪や妖精、八百万の神々、少数ながら人間たちも暮らしている。
結界で遮断されているけれど時々「外の世界で非常識」と認識された存在が、流れ着く事もある。
・・で、ここは、妖怪の山。清流にゆらゆら身をゆだねていた彼女の目に、見慣れぬちっちゃな種族が飛び込んできた。
「あれ、妖精?珍し・・くもない、か」
実際、妖精は幻想郷に沢山棲んでいて人間より遥かに多い。
のだが、いつも見慣れた妖精とは、ちょっと違うようだった。
(三月精よりちっちゃいな。生まれたてかな?)
「おーい、お前たちー、どこ行くのかな?」
と、声を掛けてみる。
「だうーん」「ぼくらごしめいです?」「ひっちはいくかも」「どこからきてどこへゆくのか、えいえんのなぞ?」
口々にまたーりというか、ちょっと不思議なお喋りをしながら、近づいてくる。
(ははっ、やっぱ妖精はバカだなぁ。)
少し呆れて笑うが別に悪意は、ない。妖精が9もといバカなのは幻想郷の常識であるし。
「君たち、名前なんてゆーの?異変でもないのに、これ以上進むと危ないから引き返しな」
と、忠告してみる。ちなみに彼女の口調は気まぐれで頻繁に変わる。
「なまえー?」「にっくねーむ、てきな」「んー、あうーん?」「そういえばぼくら、にんげんさんみたくなまえ、ないです?」「ちるのーとにかかれてもへーきかも」
彼らの話し方は独特というか、なんというか。
(あー、こいつら名無しキャラかあ。大妖精とかと同じやつ。ん?私が人間だと?)
「私、人間じゃあ、ないよ。私は河城にとり。通称、谷カッパのにとり」
不思議な小人たちに名乗る、河城(かわしろ)にとり。彼女は幻想郷に棲む妖怪の河童である。
河童といっても、見た目は人間の女の子とそう変わらない。
清流のように澄んだ水色の髪と瞳。雨カッパに似た、肌にぴったり張り付く青い服。
陽光を浴びる角度によって多様な青緑に輝き、身じろぎすると、キラキラ雫がこぼれる。
緑の帽子とリュックサックがとても可愛らしい、美少女だった。
「ほー、かっぱさんですかー」「しらなかったです?」「にんげんさんそっくりさん」
「あははっ、私ら幻想郷の妖怪は人間と見た目変んないからね。君らは、外から来たんでしょ?」
・・・・〜ようせいさん説明中〜。
「なんか、おちてきたです?」「はろー、きちゃった」「ぼくらじょうしきのはんいがいですから?」
(だめだコイツら・・全然分かんない。まあ、外で忘れられて幻想入りしたんだろうな)
烏天狗に負けないくらい好奇心旺盛なにとりは、是非とも外の話を聞きたかったのだが。
言葉足らずな上、どうも存在自体が非常識っぽかった。ある意味、幻想郷の住人向きな種族であろうか。
けれどにとりは、彼ら「ようせいさん」との会話は結構、楽しいと思った。
一見9・・バカだが、言葉の端々に、意外な知性を覗かせる事もあり、にとりは密かに舌をまいた。
そして、ようせいさんが「にんげんさん」を大好きな事を知り、やがて意気投合してすぐに仲良しとなった。
何故なら幻想郷の河童は人間に友好的であり、にとりもまた人間が大好きだったから。
更に。ようせいさんが驚異のテクノロジーを持っていた事も、にとりのエンジニア魂と同調するものだった。
不意に。
くうぅぅぅ。と、にとりのお腹が鳴った。
「あー、そういえば、朝飯前に泳いでてまだ食べてないや。ようせいさん達も一緒にどう?」
「おさそいかんしゃです?」「ぼくらくわんでもいきていけるのですが」「でもおかしはべつばら、かと」
「あっ、そうか、貴方たち妖精って食事摂る必要、ないんだっけ」
・・・・少女移動中。
にとりの家。
「私、朝飯済ますからそれまで、ゆっくりしていってね」
・・・・少女食事中。
キュウリの漬物ひとカケラ、キュウリの味噌汁(具殆ど無し)、キュウリ炊き込みご飯(殆ど白米)。
「むぐむぐ、もぐもぐ、はあ〜、キュウリおいしー♪けど全っ然足りねぇぇ」
ガックリする、にとり。
「霊夢から貰った(ボッタくった代金としてせしめた)漬物も残り少ないし、新鮮なキュウリも手に入らないし〜」
きゅぅぅ。ひもじさに、またお腹が鳴いた。
今年の幻想郷は、深刻なキュウリ不足であった。
普段は自分で栽培しているのだが、何故か今年は妖怪の山で全くキュウリが育たない。
人間の里も今年は不作で、大金払っても僅かなキュウリしか買えなかったのだ。
「む〜、私の工学テクノロジーをもってしても、どうにもならないわ。
全く、なんでキュウリだけが不作なの!?これって異変なのかしら?
あああキュウリぃぃぃキュウリがたらふく食いたいよぉぉぉ(号泣)」
「ぼくら、できるですよ?」「このきゅうりのかけらがあれば、かのうかと」「たくさんそだつかも」「ばいおてくのろじーですな」
「妖精さんたち、出来るんだ!?外の人間の技術かい?私ら河童は生物工学は専門外だから、頼むよ是非キュウリをッッ」
「ほいさー」「まかせるといいです?」「かっぱさんよりおっきいきゅうり、ざっくざくかも?」
「ひゅい!?わっわっ、私より大きいキュウリざっくざくですとォォォ!!?頼む!是非とも頼むゥゥ!」
・・・・にとり興奮中。ようせいさん説明中。
妖精さんは人間や河童を遥か超える、バイオテクノロジーを持っています。
植物の遺伝子を組み替えて新種を造るのは妖精さんにとっては
朝飯朝飯朝飯朝飯朝飯朝飯食べたら赤子の赤子の赤子の赤子の手を捻る〜♪ようなもん。楽勝なのです。
【妖精さん】
植物の遺伝子を組み替える程度の能力
〜続く。
というか続かないとエロパロになりませんしね。
展開は拙作「妖精さんの〜」と全く同じですねぇ。
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