何事にも「なぜ」というものは付き纏う

「なぜ」太陽は明るいのか
「なぜ」星は流れゆくのか
「なぜ」月はその輝きを増減させるのか

そして「なぜ」私達はここに生きているのか


Prease fight! My Knight.
第1部 騎士の帰還編
第1章
『第11混成部隊の夜』


1、
語り カメラアイ

 アカネイア大陸旧マケドニア地方。大陸のやや南西に位置するこの地方は、かつてより飛竜の生誕地として、また北方にマムクート族の故郷・ドルーアを有する地方として恐れられてきた。
 ここに人間が(主たる種族として)暮らすようになったのは約100年前。英雄アンリがメディウスを封印し、英雄アイオテが人間族をマムクート族の奴隷の身分から解放してからだ、と伝えられている。
 だが、皮肉にもというべきか、今この大地はマムクート族が支配していた。戦争終結後、各地で相次いだマムクート族への人間達の報復を憂いたマルスが、罪なきマムクート族を守る為、彼らにこの地を明け渡したのだ。時が両者の溝を埋めてくれるまではと…。
 今は、大賢者ガトーの張った結界によって、ごく一部を除き人間とマムクートの行き来は出来なくされている。そして、人間達に開放された南方のごく一部の地域では…
 この物語の語り部となるべき男に、その生活を垣間見せてもらおう。


2、
語り ピンゾロ

「…それでは、今夜の警邏に入ります」
「ああ、ご苦労」

 ショートミーティングを終え、副隊長のキャブの長身が隊長室から出て行くのを、私は静かに見送った。私の名はピンゾロ、統一アリティア軍第11混成部隊隊長である。職業はフォーレスト(筆者注・原作ゲームではゆうしゃですが、ややこしいので聖戦〜の設定を使います)。ちなみにピンゾロという我ながらふざけた名前は本名ではない。
なぜそうなのか、では本名は…といった疑問はどこか遠くに放っておくとして…まず当部隊について話すとしよう。
 ちなみに、こういった独り語りは嫌いではない。自分を見つめ直すいい機会になるし、何より演技力を付けるのに
…ごほん。
 さて、当部隊は統一アリティア軍第11混成部隊、通称ピンゾロ部隊と言う。隊員は総勢49名。その内まともな戦闘経験のある正規兵はというと…ぶっちゃけ私を含めて1桁台だ。この部隊ができて約半年、自己流ではあるが、隊員達には厳しい訓練を積ませてきたつもりだ。が、まともな戦闘行為ができそうなのは…正直そんな時はまだきて
欲しくない。
 当部隊の活動目的は、旧マケドニア地方の防衛である。そのために我々は旧マケドニア王国南方に位置する国境の森の基地を与えられた。確かにこの地方は大賢者ガトー殿の不可思議且つ強力な魔力結界によって守られている。が、それがいつまで保つかわからない、というのがガトー殿の弁である。
 …正直、結界を通過する術はある。ほぼ月に一度、ガトー殿の魔力を補給する為、結界を一時的に解く必要がある
…その時に通るというのがそうだ。我々もその時に結界を通り、ガトー殿やマムクートとコンタクトを取っている。
しかし…先ほど、一時的に外部から結界の一部が破られたという報告が入ったのだ。本当に一時的に、しかも上空の一部だけだというので、ダイトリォ達の弓兵隊を結界周辺に配置しただけだが…もうすぐガトー殿の魔力補給の時期である。それが影響したのだと判断すべきだろうか。

「まあ、そういう時のために我々はここにいるわけだがな」

 すっかり日の落ちた窓の外を見やり、私は夕食のパンをかじる。うむ、相変わらずファーゴの作るパンはそこそこの味だ。もう一味が残念な味だ。あいつは何かにつけ「いまひとつ」なんだよなぁ…筋は悪くないんだが、器用貧乏というやつか。もしゃもしゃ…。
 私はパンを食べ終わると、水差しの水で一気に流し込んだ。さて、もうすぐ隊員達の給料日だ。と言ってもこんな辺境では、南の港町にある酒場と闘技場、娼館くらいしか金の使い道は無いが。武具はよほど偏屈な物で無い限り、基本的に国が支給してくれるしな。
 …もっとも、その偏屈な武具を好む、はみ出し者も多いのがこの混成部隊の特徴なのだが。なにせ隊長である私からして…

ばーん!!

「よーっす!隊長いるかーっ!」
「…ロックロック、もう少し静かに入ってきてくれないか?」

 勢いよく、というかよすぎで隊長室に入ってきたこの男は二代目ロックロック。旧グルニア出身の戦車兵で、この部隊の隊員の偏屈な武具製作を一手に担う武具職人。いつも口に咥えた棒付きフルーツ飴がトレードマークだ。

「悪い悪い。でも隊長の”相棒”、ようやく直ったぜ。感謝感激雨アラレ、してくれよ?」

 そういうとロックロックは革布に包まれた”相棒”をそーっと机の上に置いてくれた。

「頼むぜ?隊長の”相棒”、メンテにも一苦労なんだ。ある意味俺の木馬よかじゃじゃ馬だからよ。あんま酷使しないでやってくれや」
「ああ、わかってるよ。私にとって20年近く共に戦ってきた”相棒”だ。そうそう壊させるものか」

 …”相棒”、か。まあ、確かにこいつには青二才の頃から随分助けられてきた。その点では充分そうなのかもな。
ありがとうよ、”相棒”。私はそっと革布を撫でた。

「ところでロックロック、修理費の方だが…本当にあれでいいのか?」
「オッケオッケ。てかあれでないと困る。あれで俺の”木馬”を…ニヒヒ…フィーバってきたーっ!!」
「…落ち着け」

 ロックロックは若いわりに戦車兵としても職人としても腕は立つのだが、感情の起伏に少々難があり、特に自分の木馬(戦車の事だ)の事に関してはかなり…その…興奮する。木馬の事で下手な事を少しでも口走ろうものなら、一気に機嫌が悪くなる。

こんこん

「失礼します。隊長、今度の…」

 やれやれ、今夜は客が重なる日だ。今入ってきた男はホーシ。旧カダイン出身のマージファイター。槍(これもロックロック謹製。ベク・ド・ビルガー、百舌の嘴という、槍というかハルバードに近い武器だ)と魔法を使う、一応この部隊唯一の魔法使いだ。『ウォーム』という虫を召喚する闇魔法しか使えないが。
 ただ、魔法を「使う」事に関してはこうだが、「いじる」事に関してはかなりの腕をもっている…らしい。よくは知らないが、唯一使えるウォームの魔道書を本状から帯状に書き写したり、呼ぶ虫の種類を選んだり、思い通りに操ったりする芸当は今の所ホーシにしかできない、と聞いた。…いや、この国の魔法技術の研究が進んでいないだけで
はないかと私は思うが。しかし、魔法研究か…思い出してしまう、な。

「…長!隊長!」
「ん、ああ、悪い。何だ?」
「今度の『赤國』の事ですよ。もう話は出来上がってます。いつでもやれますよ」

 赤國とは、私やロックロック、ホーシ達がやっているテーブルトークロールプレイングゲーム『赤國剣士奮戦記』の事だ。先程ちょろっと言った演技力を〜とは、これに必要になってくるという事だ。ちなみに、これはただ趣味でやっている訳でなく、ここでプレイした話を物語の本にし、娯楽に飢えている隊員達やマムクートの人々に読んでも
らっている。興味と機会があれば読んでもらいたい。

「そうか…んー、今夜はメンバー全員いるな。よし、さっそく今夜…」

 と、その時だった。

どんぐぁらがっしゃーーーん!!

 まるでガラクタの山を崩した様な、というかそれそのものの音が鳴り響いた。総員、緊急招集の合図だ!
 私は手早く防具(といっても鉄製の簡素な肩当てと胸当てだが)を身に付けると、革布に包まれた”相棒”を持ち階下の大会議室へと向かった。後ろからロックロックとホーシもついてくる。一体何事だ!?


3、
語り カメラアイ

 さて、時間は少し前に戻る。
 この基地は、基本総勢49名の男達によって守られている。つまり、基本女っ気0である。ただ、ほぼ月に一度、女っ気で満たされる時がある。補給物資と共にやって来る、女医エリスの回診と、シーダ王女の視察である。もう間もなくに近づいたそれを、夜営の兵士達は外壁の上で、望遠鏡片手に指折り数えて待っていた。

「ああ…エリス先生…たとえそれが仕事だからだとしても、あなたに優しくされるだけで、俺は、俺はっっ!」
「だから、俺としてはシーダ様の美脚に踏みにじられたいってわけよ」
「エリス先生には常時眼鏡をかけていてもらいたいと思う奴挙手!」
「はい!」
「シーダ様に髪オナホしてみてぇ…」
「俺はされてみたいな…」
「………ムッフーッ」

 あぁっ!!名もなき兵士達の語らいをキモいと思って退散しないで!お願いもうちょっとだけ相手してやって!!
ウサギは寂しいと死ぬんだよ!都市伝説だけど!あぁもう何言ってるかわからん!!

「……ん?」

 …さて、変態丸出し妄想セクハラエロトークサバトに唯一人参加していなかった筋骨隆々の男が、望遠鏡を覗きながら唸ったとたん、どだだだーっと階段を駆け下りて行った。この男の名はササ、職業はアクスファイター。元は旧ペラティで大工を営んでいたが、暗黒戦争終結後に軍に入隊、この部隊に配属された。ちなみにこの基地を造った、
というか補修したのはこのササである。
 ササはそのまま兵士厩舎側のガラクタ置き場…基地周辺の小砦群から廃材を集めて基地を補修したのでやたらと多い!…までくると、持っていた棒状のものを金のドラム缶に刺し、それを巨大なハンマーに見立てて…

「でええええりゃっ!!」

 ガラクタ山に打ち付けた!当然、ガラクタ山は大きな音を立てて崩れる!

どんぐぁらがっしゃーーーん!!

 ここが辺境でなければご近所迷惑甚だしい大音が基地中に響き渡る!!これには警邏中の兵士達はもちろん、さてもう寝ようかとしていた兵士達も、その前にひとっ風呂ああいい湯だなと洒落込んでいた兵士達も、明日のパンの仕込みに念のなかったファーゴ・職業まだ秘密も、図書室で借りたエロ本でセンズリこいてた兵士達も、一斉に武装を整え、兵士厩舎2階の大会議室へと向かう。


4、
語り ピンゾロ

 あれから数分後、大会議室には総勢49名の隊員の内の殆どが集まっていた。私は合図を鳴らしたササから報告を受けると、ざわつく皆の前に立ち、言った。

「先に言っておく、緊急事態だ!当基地に補給物資を携えて向かわれていたシーダ様一向が敵の襲撃を受けている!
よってこれより救助に向かう!第一陣は私とロックロック!第二陣はキャブと馬に乗れる者達!歩兵はここで待機!
なお、敵の正体は不明確だが、十中八九山賊の類だと思われる。以上だ。何か質問は?!」

 私は隊員達の顔を見やる。…よし、質問も異議もなさそうだ。

「ロックロック、木馬”プラズマ”モードは使えるな?」
「おうよ。”ライトニング””アレキサンダー”と共に絶好調だぜ!」
「よし、回してくれ。超特急でだ!」
「待ってたぜ、その言葉!」

 そう言うとロックロックは意気揚々と自分の部屋…あいつは武器倉庫まるまる一つ作業場にしている…へ向かう。
私はその背中を見送ると、いそいそとボウガンの用意をするダイトリォに声をかけた。

「帰って来て早々すまんな、ダイトリォ。ホースメン(騎馬弓兵)はお前しかいないからな」
「しょうがないっスね。でも、キャブさんと一緒なら心強いっス」

 このダイトリォと副隊長のキャブの二人は仲がいい。同じ村出身の幼馴染だからである。ちなみにダイトリォは先程言った通りホースメン、キャブは馬にも負けない俊足を誇るスナイパーである。実はこの二人と私は部隊編成前からの顔馴染みで…と、話をしている場合ではないな。早く外へ向かわんと。私は窓から庭へと跳び降りた。この方が
早い。2階だしな。
 と、そこにロックロックのノリノリの声が響き渡った。

『おーし、お前らー!たった今よりこの基地名物特っっ急ーー便が発車されるっ!!怪我したくなければ白線の内側まで下がっとけー!!いっきまーすっっっ!!!』

 ドルルン、ドルルン、ブォンッ!!っという音と共に、白線の内側に立っていた私の目の前にロックロックの木馬
が一瞬で現れた。

「おう、今日もブーツ3足スピリン4個の”プラズマ”モードは絶っ好調だぜ、隊長!ささ、早く乗った乗った!」
「あ、ああ…」

 訳わからん自信に気圧される。正直、このモードは苦手なのだが…いち早く戦場に辿り着くためだ、背に腹は変えられん。私はロックロックの隣に座ると、固定ベルトと風防眼鏡を身につけた。

「よし!行ってくれ!」
「おう!」

ドルルン、ドルルン、ブォンッ!!

 木馬が木馬らしくない音を立ててかっ跳んで行く。一番槍、間に合ってくれればいいが…。


5、
語り カチュア

「エリス様、お怪我はありませんか?」
「いいえ、私は大丈夫です。それよりも遠慮しないで敵を振り切って下さい!」
「まだです、まだ、シーダ様とミネルバ様が戦闘区域を抜けるまでは…きゃっ」

 私とエリス様は今、正体不明の敵の騎馬弓兵部隊に囲まれていた。
 補給物資を持ってアリティア城を飛び立った私達一行は、一路南西の旧マケドニアに向かっていた。ちなみに荷物の担当は、
 シーダ様…金貨5万枚と指令書
 ミネルバ様…武具など
 私…金貨5万枚とエリス様、魔法の杖数本となっている。
 しかし、夜という私達の姿が見えにくい時間帯を選んで飛び立ったにも関わらず、こいつらは私達を襲ってきた。
まるで私達を待ち、狙いすませていたかのように…。
 私は咄嗟の判断で囮役を志願すると、奴らをかく乱させるように飛んだ。スピードと旋回性に優れたファルコンが一番この役に相応しいと思ったからだ。
 ミネルバ様は後ろ髪を引かれるようにされていたけれど、最後には行って下さった。「必ず生き残れ」という言葉と共に。

「…今ので、全部誘き寄せられたわね…エリス様、口を閉じて、しっかり掴まってて下さい。飛ばします」

 こくり、とエリス様が頷かれたのを見て、私はアクアに鞭を入れた。一旦高度を下げ、一気に高度を上げつつ上昇…と行きかけた、そこに!

ブンッ!!

 1本の手槍がどこからともなく投げつけられ、咄嗟に進路を変える私。しかし、その減速の隙に矢が雨のように降り注ぐ!!その内何本かが私達の体をかすめ、あちこちに鈍い痛みが走る。

「はっはっはっ、残念だったな!山賊風情なら今の動きで抜けられたかもしれんが、我々のような本物の騎士団相手では、そうはいかんぞ!」

 森の奥から現れた馬上の男は、そう高らかに言い放つ。その男を見て、私ははっとした。男の馬に、そして鎧に、飾られた紋章は…!

「グルニア…黒騎士団…!!」
「ご名答。わかってもらえて光栄だよ、同盟軍のエースの一人、カチュア君!私の名はザゲット。新生グルニア黒騎士団6番隊隊長。これから君達を亡き者にする者だ!さあ大人しくしたまえ、苦しみ無く殺してや」
「…いいいいちばん槍いいいいいいいいいいっ!!!」
「ぐべれっ!」

 ザゲットが喋れたのはそこまでだった。なぜなら、物凄い勢いで何かが奴にぶつかったからだ。ドンッ!と、嫌な鈍い音がして、ザゲットは馬から吹っ飛ばされ、頭から大木に突っ込んだ。…たぶん、即死だろう。

キイイッ。

「大丈夫ですかエリス様!シー……え?」

 ぶつかった何かはシューターの木馬だった。そしてそこから降りてきた少々小柄なおじさんは、私をみると固まった。え?何?なに?

「シーダ…王女?いつ、髪をお切りになられたんですか?」

 おじさんは私の事をシーダ様と間違えているみたいだった。っていうか、この人誰?

「ピンゾロ隊長。救援、感謝します」
「エリス様!よくぞご無事で!…で、こちらの天馬騎士の少女は?」
「エリス様、この人は?」

 これが私とピンゾロ隊長との出会いの瞬間だった。


6、
語り ピンゾロ

 愚かな事に、ここは戦場だというのに、私の興味は目の前の少女に向いていた。年はエリス様より下、シーダ様よりやや上、18・9といったあたりか。肩のあたりで切り揃えられた青い髪が可愛らしい。そして意思の強そうな瞳が印象的だ。もし我が部隊の隊長がこのような娘だったら、たちまち部隊の士気は今の5倍以上になっただろう。

「おい隊長!敵さんの群れがやってきたぞ!」
「…はっ!そ、そうか。ではエリス様、後方で支援を頼みます!それと、ロックロックは”ライトニング”モードでエリス様のガードと弾幕!それから…ええと、君は?」
「天馬騎士のカチュアです!」
「天馬騎士…ならカチュア殿は上空で援護と見張りを!私はこの先で敵を迎え撃つ!!散開!!」

 私の指示に二人は従ってくれた。ロックロックはクインクレイン(戦車用巨大弓)の連続射撃、エリス様は負傷したカチュア殿の治療。つまり…

「なんでこちらにきた!?」
「あの数を一人で相手するなんて無茶です!それに、このメンバーなら前衛は一人より二人の方が!」

 傷治療を受けたカチュア殿が私を追ってきたのだ。まったく、無茶なのはそっちだと言いたい。言いたいが…正直言えばありがたい。

「…わかった。お手並み拝見といこう!」

 ロックロックの援護射撃のおかげで敵の進軍は止まり、射撃に専念しはじめた。敵は騎馬弓兵だけらしい。ならば!!私は”相棒”を包んだ革布をめくると、それを頭上から足元へと振り下ろす!

「カバー・テンペスト!!」

ぶォん!!ぼとぼとぼと

 私目掛けて飛んできた矢が、革布に叩き落とされる。この革布は”相棒”の鞘の役割を果たすため、鉄糸が編み込まれている。矢程度なら盾代わりになる。そして、”相棒”というのは…

「デ…デビル…ソード……!?」
「若いのによく知ってるな。その通りだ!頼むぞ”相棒”、跳ね返るなよ!!」

 カチュア殿が驚くのも無理はない。私の”相棒”は破壊力満点、血を吸い肉を喰らう悪魔の剣・デビルソード。運が悪ければ使い手を傷つける呪いの剣だ。普通の人間はまず手にしない。手にするのは余程の狂人か、自殺志願者か…あるいは、類稀なる狂運に恵まれた者!

ズバッ!!ズビャァッ!!

「…私は、どれなんだろうな」


7、
語り カチュア

 凄い…凄い凄い凄い!瞬く間に二人倒してしまった!私でも(エリス様が一緒に乗っていたとはいえ)あれ程苦戦した敵兵を、こんな簡単に!

「負けてられない…!」

 私は鋼の槍を手にし、敵の死角を突くように動き、仕留めていく。地上すれすれは戦車兵さんの援護射撃があるから、私は邪魔にならないように上空からの攻撃に専念だ。こうすることで、敵の狙いを二つ…地上の隊長さん達と、上空の私…に分けることができる。パオラ姉さんに教わった戦法の一つだ。

「やああーーーっ!!」

 一人、また一人と、まるで敵兵の頭の上を飛び跳ねているかのように槍を刺していく。

「くっ…撤退だ!」

 敵兵の一人がそう叫び、生き残った敵兵が散り散りに去っていく。私達は深追いせず、そのまま武器を収めた。

「…もう、敵はいないようだな」
「ええ、もう大丈夫そうです。ありがとうございます、隊長さん」
「いや、こちらこそだ。第11混成部隊隊長ピンゾロ、隊を代表して礼を言わせてもらう。ありがとう」
「ピンゾロ……さん、ですか?」
「変な名前だろう?よく言われるよ」
「いえ、そんな、その、ステキな…いえ、カッコイイ…あの、その、…ごめんなさい」
「ははは…無理に褒めなくてもいいさ。なにせ、名乗っている私自身、変だと思っているからね。それより、君は補給物資を持ってきてくれたのだろう?他に誰かいないのかい?」
「あ、はい。シーダ王女とミネルバ参謀補佐が基地に先行されました。私は囮になって…」

 私は他に金貨を5万枚持ってきたこと、敵が旧グルニア黒騎士団であることなどを告げた。

「黒騎士団が…?妙だな、奴らは旧グルニアに陣を構えているはず。マケドニアまで来る様な大きな動きを見せれば私達や他の部隊が察知するはずだが…」
「わかりません…ですが、彼らは私達が今夜このコースを通る事を知っていたかの様なんです。もしかしたら、その事も関係あるのかもしれません」
「……内通者か……?」
「…いえ、私の口からはこれ以上は…」
「そうか…そうだな、すまなかった。立場を危うくするような事を言わせて。さて、敵は追い払ったし、君達も物資も無事だったし、基地に帰るとするか」
「そうですね、基地に向かいましょう」


8、
語り カメラアイ

 さて、そのころ全力疾走するキャブを先頭にした第二陣はというと、先行したシーダ王女とミネルバ参謀補佐と合流、彼女らを護衛しつつ基地へと向かっていた。副隊長のキャブの判断だった。

「まずは王女達の身の安全の確保が第一だ。それに、敵があれだけとは限らん」

 非情な手だと思われるかもしれない。だが、彼の名誉の為に言わせてもらうなら、彼はキャブがピンゾロとロックロックの腕を信じていたから、そして、未だ戦闘に耐えられないであろう隊員達の身の安全を考えての判断だった。

「しかし王女、どうしてこんな強行軍を?それに、護衛のオグマ殿達は?」
「ごめんなさい、キャブ副隊長…あなた達にどうしても急ぎの用があったから…それに、オグマ達は全速力の私達についてこられないから…」
「それならハーディン殿の狼騎士団や天馬騎士団があったでしょう!」
「ごめんなさい…」

 キャブに責められ、しゅんとなるシーダ。その様子を見たダイトリォ以外の隊員達から、キャブに批難の視線が刺さる。そんな中、口を開いたのはミネルバだった。

「その辺でいいではないか、キャブ副隊長。シーダ王女も反省されている。それに、今回の事は作戦を許可した我々参謀部にも非がある。そういう事で許してやってはくれないか」
「まあ…今の所、損害や犠牲は出ていないから構いませんが…ですが王女、もうこれっきりにして下さいよ」
「ええ…重々承知しています」

 とはいうものの、未だしゅんとしているシーダの姿を見て、やはりたくさんの批難の視線がキャブに突き刺さる。

ドルルルルルルルン!!キキーッ!!

 けたたましい音が響く。ロックロックの木馬が追いついたのだ。その後ろからはカチュアとエリスもファルコンに乗ってついてくる。

「やっと追いついた!ほらよ、隊長!」
「ああ。シーダ王女、ミネルバ参謀補佐、よくぞご無事で」
「ピンゾロ隊長、それにロックロック。エリス様達を守って下さったのね。ありがとう」
「とんでもございません。当然の事をしたまでです」

 隊長達のそんなやりとりもどこ吹く風、他の殆どの隊員達の視線は、エリス王女を天馬に乗せた新たな美少女に注がれていた。つまり「な、なんだあの娘は!?」「可愛い…」「ぽっ」etc…。まあこいつらは放っておこう。

「…それよりキャブ、そちらの状況は?」
「は…今の所、敵の攻撃は受けていません。我々は今、お二人を警護しつつ、基地へと戻る最中です」
「そうか。こちらは敵部隊と交戦した。山賊の類だと思っていたが、正体は旧グルニア黒騎士団だった」
「黒騎士団…!?」

 ピンゾロの報告に、ミネルバが怪訝な表情を浮かべた。すかさずキャブがつっこむ。

「ミネルバ参謀補佐、諜報部で奴らの動きは掴めていなかったのですか?」
「いや、奴らがこのような動きを見せたという報告は入っていない…それに今回の件、色々腑に落ちない事がある…。本国に戻ったら確かめておく必要があるな」

 顎に手を当てて考え込むミネルバ。その姿を見て殆どの隊員達が「萌える…」と思ったが、そんな事はどうでもいいだろう。

「さて!これで全員無事に揃った事だし、早く基地に向かいましょう」

 硬く暗い雰囲気を打ち壊すかのように明るく、ぽんと手を叩いてそう宣言するシーダ。その仕草にこれまた殆どの隊員達が萌…しつこい?まあもうちょっと我慢してくれ。今回は男ばっかりのイントロダクション回でシリアス&むさいからさ…こほん。とにかく、そういうわけで一行は基地へと向かう(戻る)のだった。


9、
語り ピンゾロ

 基地に到着した私達一行は、騎馬隊とロックロックに自分の(木)馬を所定の位置に戻させ、その間に厩舎別館2階の小会議室へと赴いた。ちなみにメンバーは私、キャブ、シーダ王女、エリス様、ミネルバ参謀補佐、カチュア殿である。
 会議室に着き、各々の席(カチュア殿は初めてで戸惑っていたので、キャブの向かいの席を勧めた)に着くと、早速シーダ王女が指令書を懐から取り出した。

「今月の指令を申し渡す前に…まずは一行を代表し、改めてお礼を申させてもらいます。ありがとう、ピンゾロ隊長」
「ありがたきお言葉、恐縮です」
「さて、今月の指令ですが…カチュア」
「は、はい」

 カチュア殿のほうを向くシーダ王女。

「早速ですが、あなたは現時点をもってこの第11混成部隊に配属。以後は副隊長として、この部隊を監督していただきます。よろしいですね」
「え?い、いきなりですか!?」

 慌てふためくカチュア殿。椅子から立ち上がろうとするミネルバ参謀補佐。僅かに動揺するキャブとエリス様。おかしいな…配置換えは、先に何らかの連絡が本人やその隊の隊長になされるはず。こんな風に、現地でいきなり言い渡されるなどという事はまず無い。聞いてみる必要があるな…。

「シーダ王女、ひとついいですか」
「何ですか、ピンゾロ隊長」
「新しい副隊長就任の件、私も初耳です。つまり連絡を頂いて無い、ということです。これはいかなる事なのか、ご説明願いたい」
「ああ、その事ですか」

 まるで想定の範囲内とでも言わんばかりに、しれっとそう返答するシーダ王女。

「まず、この辞令が突然のものとなってしまった事をお詫びします。これには理由があります。それはカチュアさんご本人がいつバレンシアから帰還するのかわからなかった事、そして帰還の日と補給の日が重なったためです。そのため事前通達ができず、今回のようなことになったというわけです。なお、カチュアさんが帰還後この部隊の副隊長に就任することは以前より決定していました。マルス様も承認なされた事です。この辞令書にもマルス様直筆のサインがあります。確認してください」

 差し出された書類を確認する私達。…確かにマルス王子のサインがある。では

「それで、キャブはどうなるのですか?」
「副隊長の任を解きます…でも誤解しないでね、キャブ。あなたは新人兵士であるにも関わらず、これまでよくやってくれました。あなたには何の落ち度もありません。これは、あなたに肩の荷を下ろしてもらいたいという事なの」

 キャブの側に行き、直接手をとってそう話されるシーダ王女。

「……別に、副隊長の肩書きを重荷に思った事はありません。しかしながら、こんな青二才よりかの解放軍の一員たるマケドニア白騎士団のカチュア殿が相応しいと言われるのなら、私に異存はございません」

 マケドニア白騎士団…!?その名は元風来坊の私も耳にしたことがある。解放軍の飛行部隊の中核をなす白騎士団、美少女達で組織された空を舞う騎士団の、その華やか且つ勇猛な武勇伝を。そうか、彼女がその中の一人…いや待て。
シーダ王女達には内緒だが、ここは(主に性に)餓えた狼達の巣窟!この部隊担当医のエリス様とて、月イチペースでしか来られない(ある意味)危険地帯!そんな所にこんなかわいい娘を置いておいたら……


10、
語り カメラアイ(ピンゾロ?)

 …ここは肌寒い空き倉庫の中。今日俺は薄汚い犬を一匹拾ってきた。青い毛が印象的な、かわいい雌犬だ。早速躾けて飼うことにする。

「うーっ!ううーっ!!」

 拾い上げた時、暴れて噛み付いてきたので、今はボールギャグを噛ませて四肢を拘束してある。気の強い奴だ。まあ嫌いではないが。まずは名前を付けないとな…そうだな、カチュアにしよう。おいカチュア、もう暴れないと約束するなら、拘束を解いてやってもいいぞ。俺はボールギャグだけをとってやった。

「けほ、けほっ!!…私は人間よ!誰があなたの飼い犬なんかに…!」

 飼い犬といえば鎖の付いた首輪だ。ん?そういえばこの犬、耳が小さいな。毛の中に隠れている。やはり犬耳といえばピンと立った耳だろう。世の中では猫耳との描き分けができない絵師が多いためか犬耳=垂れ耳、という風潮が溢れている。ピンと立った犬耳派の俺にとっては実に憂うべき事態だ。(筆者注・よ、世の中の絵師サマに喧嘩売ってる訳じゃないですから。垂れた犬耳も大好きですよ私は!ええ!)よし、この特製犬耳カチューシャ・ピンと立った犬耳Ver.をくれてやろう。暴れないように頭を押さえて…。

「痛いっ!!ちょっ、やめてよ!私は犬なんかじゃ」

 何か吠えているが気にしないで装着完了。さて次は尻尾のチェックを…ほほう、けしからんくらい形のいい尻をしているな。しかし尻尾が短くてわからないぞ。俺は長くて毛のフサフサした尻尾が好きだというのに。しかし心配無用。
こういう時のために、すでに尻尾を用意してある。あとはこれを装着する穴探しだが…。

「やっ…お尻、触らないでっ。何?ショーツのクロッチをずらして…ひぐっ!?」

 ちょうどいい感じの窄まりがあったのでそこに犬尻尾をブチ込む。あとは抜けないように奥に奥にと突っ込んで…。

「嫌ぁぁぁ…お尻に、なにか入ってくる…くすぐったいよお…あぁぁ…」

 …っと、調子に乗って挿入れていったら殆ど全部入っちまった。引っこ抜かなきゃ…なっ!!

ズルズルズルズルズルゥッ!!

「ひあぁぁぁぁっ!!お尻が…お尻が捲れて…壊れるゥゥッ!!」


11、
語り ピンゾロ

 とか、


12、
語り カメラアイ(ピンゾロ?)

 俺は今、物凄く腹が減っている。調理担当のメイドがドジをやらかして、俺の分の料理を作らなかったからだ。そのメイド…カチュアという…が言うには、もう材料も残ってないとのこと。

「本当に申し訳ございません…」

 当の本人はさっきからこの調子だ。しかし、いくら謝られたところで俺の腹の虫が治まらん。と、いう事でカチュアを連れて台所に来てみたわけだが…。

「本当に何も無い、ってわけじゃなさそうだな」

 少々台所を漁ってみたところ、今すぐ食べられそうな物として野菜がいくつか見つかった。しょうがない、これでサラダでも作らせるか…いや、まてよ。いい事を思いついた。ドジなメイドにはおしおきが必要だよな…。

「おい、カチュア!こっちに来い」
「は、はい」

 カチュアは命じられた通り俺の側にやってきた。俺はカチュアの脇の下に手をやると、そのまま調理テーブルの上に持ち上げ、腰掛けさせた。そしてメイド服のスカートの中に手を入れると、腿の辺りまでショーツを引き下げた。

「なっ、何を…おやめ下さい!」
「うるさい、黙っていろ」

 俺はカチュアの頬を2,3発平手で叩くと、その場に屈んで露出させた秘部を見た。まだ男を知らないであろうその場所は、固く閉ざされていた。俺は用意していたキュウリ…特別イボイボのデカいやつだ…をそこに擦り付けてやる。

「いっ、痛い!やめてください!」
「なんだ、素股も初めてなのか?よかったな、初めての素股がキュウリでよお!」

 キュウリのイボイボの尖った部分が、カチュアの未だ固く閉ざされた秘部の周りに幾重もの赤い筋をつけていくのを俺は空腹も忘れ見入っていた。



13、
語り ピンゾロ

 とか、


14、
語り カメラアイ(ピンゾロ?)

「ふう…」

 額に汗を浮かべたカチュアは、女性用バスルームに来ると一気に汗まみれの衣服を脱ぎ捨てた。
 ここ最近のカチュアの楽しみは、訓練の後の入浴で新しい入浴剤を試す事である。一昨日は向日葵の香油、昨日はドライラベンダー…。そして今日はゼリー風呂である。カチュアは汗をたくさん吸った下着も脱ぎ捨てると、ゼリー風呂の素を持って浴場へと入っていった。

「ル〜ンルル〜♪ル〜ンルル〜♪」

 鼻歌を歌いながら上機嫌で素を入れ、ジャバジャバとかき混ぜるカチュア。素に混ぜられた匂いの成分が充満し、カチュアの期待を高めていく。やがて風呂の湯はトロリとしたものになっていった。

す…っ、ちゃぷ

 すらりとした美脚を、少しばかり恐る恐る湯?船につけるカチュア。と、その時だった。

ブバッ!!

 半ゼリー状、というかゲル状になったお湯が勝手に動き出し、カチュアの裸体を絡めとったのだ!

「嫌あぁぁっ!な、何なのこれ!?」

 ゲル状になった湯は、カチュアの足首から太股、お尻、ヘソ、乳房、鎖骨、喉元へと上り、全身を絡めとる。そしてもの凄い力で彼女の肢体を湯?船の中へと引きずり込んだ!全身をつつんだゲル状の湯?船は、彼女をゆっくりと揉みしだくように蠢きはじめた…。


15、
語り ピンゾロ

 とか…っ!妄想セクハラエロトークサバトが毎日のように行われているこの部隊だ、たちまちオカズにされてしまうに違いない!そしてもしそんな場面を目撃でもされようものなら…!!
 私はブンブンと頭(かぶり)を振ると、努めて冷静に問い掛けた。

「…しかしシーダ王女、このような重大な事が以前から決まっていたのなら、なぜ私にだけでも話しておいて下さら
なかったのですか?」
「それは…」

 言葉に詰まられるシーダ王女。無礼だったかもしれないが、これは(エロス抜きにしても)部隊の指揮や士気その他に関わる事。隊長として引く訳にはいかない。

「シーダ王女、私もピンゾロ殿と同意見です。参謀部代表としても、カチュアの元上官としても、ぜひ理由をお聞かせ願いたい」

 ミネルバ参謀補佐も(一番の動機はともかく)私と同じ疑問を抱かれたらしい。つまり、いきなりすぎると。

「……わかりました。お話しましょう。…”あの事”をお話してもいいですね、カチュアさん?」
「あの事…ですって?まさか!シーダ王女、それでは話が!」
「………わかりました」

 シーダ王女の問い掛けに狼狽するミネルバ参謀補佐、そして力なく頷くカチュア殿。一体、何の話なのだ?

「あれは…暗黒戦争が終結して少ししてからのことです」


16、
語り シーダ

 皆さんもご存知の通り、あの頃統一アリティアは今以上に混沌としていました。本来ならば解放軍の”事実上の”中心人物であったアカネイア聖王国のニーナ女王陛下によってこの大陸は平定されるはずでした。…ですが、ニーナ様はそれを良しとせず、アカネイアの全権をマルス様に捧げられ、失踪なされたからです。
 アカネイアの貴族達はそれを認めませんでした。そして彼らは声を上げたのです。『大陸の平定は勝者アカネイアの手によって』と。
 やがて、彼らの運動は勢いを増し『ドルーアに加担した逆賊国グルニア・マケドニア・カダイン・ペラティ・グラを許すな』という風に変わっていきました。そして、これらの地域の民に粛清が行われたのです。
 そんな中、罪の無い民を守るために、彼らに対して切っ先を向けた一人の騎士がいました。名前はパオラ…この、カチュアさんの姉君です。
 パオラさんは偶然出会った幼い兄妹を守るために、あるアカネイア貴族を手にかけました。ですが、その行為が彼らの怒りに火を付けてしまいました…。パオラさんが手にかけた貴族は、彼らのリーダーであり、戦争裁判官の一人だったのです。
 すぐにパオラさんは軍事法廷に引きずり出されました。そして彼らアカネイア貴族の一方的な裁判が始まり…極刑が言い渡されました。
 ですが、ここでカチュアさんと末妹のエストさんが嘆願なされたのです。自分達がお姉さんの罰の幾らかを背負うから、極刑だけは許して欲しいと。
 …そして、パオラさんの減刑と引き換えに、エストさんは大陸追放、カチュアさんはミネルバ参謀補佐の提示したとある作戦への参加を命じられました。その作戦が、かつてより旧マケドニア王家と親交のあったバレンシア大陸のソフィア王家との接触でした。
 作戦の概要は詳しくは話せませんが、その作戦は成功を収め、昨日カチュアさんは生還なされました。ですけど、旧アカネイア貴族達は『それでは足りない、刑が軽すぎる』と言ってきたのです。
 そこでマルス様は、比較的安全且つ貴族達の目が届きにくいこの基地へカチュアさんを配属することに決められました。それだけではない、副隊長の地位をお与えになることで、その職務を全うしたとすることで、パオラさんやエストさんが大手を振ってこの統一アリティアの地を行けるようになる日が近付くと…。


17、
語り ピンゾロ

 …私は言葉を失っていた。なるほど、そういう事情があったのかと…彼女はこの若さにして、大変大きな使命を果たさんとしているのだと。

「…隊長、キャブ、ここで聞いた話は他言無用に願いたい」

 ミネルバ参謀補佐の言葉に頷く我々。確かに、こんな話おいそれとできるものではない。それに、した所でカチュア殿が傷つくだけだ。

「……事情はわかりました。ですが、辞令をお受けする前に、彼女本人の意思を確認させてもらっても…」
「えぇ、構いません」
「ありがとうございます。では…カチュア殿、当部隊の副隊長の任、受けて頂けるだろうか?」

 私はカチュア殿の目を見る。その目には戸惑いがあった。しかし、それ以上の強い意志も感じられた。そして彼女はゆっくりと、しかし力強く頷き

「はい。謹んで受けさせていただきます」

 そう答えた彼女の目に、戸惑いはもう無かった。

「…ありがとう、副隊長」


18、
語り ミネルバ

「ピンゾロ隊長、ちょっとこちらへ」

 私はある憂いを払拭するため、隊長を側に呼び寄せた。

「参謀補佐、何か…」

 何かを言いかけた隊長の首をがっと掴み寄せ、私はその耳元に囁いた。

「…もしカチュアの身に何かあったら、私は貴殿を許さないからな…」

 …返事は震えたものだった。



第1章
『第11混成部隊の夜』 終わり

次回 Prease fight! My Knight.
第2章
『地獄の奴ら』 に続く

炎の御旗。悪魔の剣はその明(あか)を受けて煌くか?


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