◎幼かった少女
○平穏だった日常


「奈々(ナナ)聞いた?」
 クラスメイトの女子がそう聞いてくる。
「何の事?」
 お約束でそう言ったが、相手の表情からして何の話かは、予測がつく。
「またあのエロブタがやったみたいよ。ほら、クラスでも胸が大きい、あの子が手伝いだって言われて資料室に連れ込まれて、胸を触られたって」
 あたしの想像通りの話だった。
「本気で最低。エロブタ、早く捕まらないかな」
 あたしは、俯いている被害者の子を哀れみながら、入ってきたデブで豚のような顔をして、常に汗をかいた不潔で、下品、生徒相手にもいやらしい顔をしてくる、あたし達のクラスの担任、土屋(ツチヤ)、通称エロブタを睨む。
 クラスの女子の全員が嫌悪していて、何度も他の先生に抗議をしているが何故かクビにならない。
 この間もPTA会長をやっているお母さんに言って、糾弾してもらったが、詳しく調査すると学校側が返答してまだ何もされていない。
「あんな奴、死ねば良いんだ」
 そんな女子の願いを口にするあたしは、日野(ヒノ)奈々、五年生になったばかりの女子小学生です。
 背は、少し小柄で、胸も触られたって子に比べればまだまだ膨らんだばかり。
 でもお母さんは、大きいので将来性は、十分にあるつもり。
 顔は、可愛いほうだと思う。
 授業で小テストしていると、監視と称してエロブタがクラスの女子をいやらしい目で見て回っている。
 嫌がっているのが解らないんだろう。
 あたしの傍に来た時、エロブタが呟く。
「お前も早く母親みたいに胸が大きく成れよ」
 キッと睨んだあたし。
 その時、お腹に違和感を覚えた時、チャイムが鳴った。
「テストは、自己採点しておけよ」
 適当な授業しかしないエロブタがさっさとホームルームも終わらせる。
 本気で、最低だが、今は、その適当さが助かった。
 あたしは、慌ててトイレに向った。
 そして、あたしは、見てしまう、あそこから血が滴っている事に。
「うそ……」


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