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「よう。ようやくのお目覚めだね、セーラー・プルートさん」

セーラー戦士の中でも長身の方であるプルートだったが、脚を大きく開いた形で拘束されている為に、前に立つ男たちの顔を見るためには、ぐい、と顔を見上げる必要があった。

「そう恐い顔をするなよ。せっかく撮影するんだから、もっと笑顔を、って、そりゃ、無理か」

怒りに燃え、眼光鋭くこちらを睨みつけるプルートの顔をアップで撮影しながら、茶髪の男は、カメラを通して、改めて、彼女の理知的で、涼やかなその美貌をじっくりと観賞していた。

その間に、黒髪の男が手早く三脚を拡げて、拘束されたプルートの全身が収まるアングルにそれをセットすると、もう一人は、手持ちで撮影していたハンディ・カムをそこに固定した。

あられもない姿の女性と、同じく全裸の屈強な男性が二人、そして、傍らには、据え置きのハンディ・カム。

まるで低予算DVDの撮影現場さながらの状況だが、そこにある緊張感は尋常ではない。やがて……。

「……どういうつもりで、こんな事をするのです?」

プルートが、男たちに質問を、いや、ほとんど非難に近い、静かな怒りを込めた低い声を発した。

「こんな事、ってえのは、あれか? カッコよく変身したものの、あっけなくボロ負けしたセーラー戦士様が、素っ裸にひん剥かれて吊り下げられてる事かい?」

「白目を剥いて伸びてるあんたの顔は、そりゃあ、間抜け面だったよ。ああ、あん時にこのカメラがあればなあ……」

今のプルートに、どう足掻いても反撃する手段がない事を知っている男たちは、彼女の怒りなど全く意にも介さない。

それどころか、むしろ、彼女が怒りと悔しさで身悶えするのを愉しむかのように、次々とからかいの言葉を投げかけてくる。

「バカ面晒して気絶してるあんたから、ご自慢のセーラー服を毟り取っていくのは、ずいぶん愉しかったぜ」

「そうそう、レオタードの股のところが湿気てたけど、ひょっとして、ビビって漏らしちゃったのかな、セーラープルートさん?」

男たちの下品な罵声に、プルートは必死に自分の感情の爆発を抑えようとする。

こんなあからさまな挑発に乗ってどうするの。冷静に。常に冷静に。

そうであればこそ、きっと、逆転の勝機が見えてくる筈なのだから、と、己に言い聞かせて……。

プルートが、どうにも、自分たちの予想したような反応を示さないので、男たちは、やや白けた感じで、口をつぐむ。

「どういうつもりで、こんな事をするのです?」

先程と同じ問いかけを、先程よりずっと冷静な口調で、プルートは繰り返した。

「あくまでも、クール・ビューティーって言う自分のスタイルを崩さないつもりかい、プルートさん」

「つまんねえ、つまんねえ! そんなお利口さんは俺たちの好みじゃないぞ!」

男の一人が、そう喚きながら、プルートの脇を抜け、彼女の後ろに回ろうとする。

パァァァンッ!

「ひいっ!」

さして広くもないその部屋に、二つの音が響き渡る。

男が、プルートの脇をすり抜けざま、彼女の尻に強烈な平手打ちを喰らわせたのだった。


突然の事に、プルートの口から、思わず情けない悲鳴が漏れる。

「そうそう、そんな悲鳴が聞きたいんだよ。あんま格好つけずに、素直に感情を顕わにしてくれないかなあ」

闘いに敗れたとは言え、まるで悪戯をして叱られる子供のように扱われて、プルートは、セーラー戦士としての誇りを甚く傷つけられた。

悔しさ、恥ずかしさと情けなさで、固く閉じられた彼女の目元に涙が滲む。

「ま、そんな態度をとっていられるのも、今のうちだろうがね」

男がぼそっと呟いた言葉に、プルートは、これから己の身に降りかかってくるであろう災厄を予想する。

そもそも、敗北した敵を生かしておくのは、慈悲の心か、強制労働や情報収集などの利用価値を認めているかの、いずれかだ。

この男たちは、わざわざ罠を仕掛けて彼女を捕らえようとしたのだから、当然、その目的は後者という事になってくる。

たとえこの身が滅そうとも、こんな連中を利するような真似はするまいと、改めて己の矜持に賭けて、プルートは心の中でそう誓った。

だが、その一方で、可能性はきわめて低いだろうが、万が一にもこの危機を逃れられたとして、この男たちに関しての情報が皆無のままであれば、これからの策の立て様が無い、とも考える。

もう少し会話を続けることによって、彼らの正体や意図が知れれば、あるいは、この現状を打破する突破口が見つかるかもしれない。

そう考え、男からもう一度きつい一撃を喰らわされるのを覚悟で、プルートは、先の闘いの中で答えの得られなかった問いを、改めて彼らに投げかけた。

「……あなたたち、一体何者です?」




自分の与えたお仕置きに屈する事無く、相変わらず冷静な声で質問を返してくるプルートの態度に、男は逆に、黒い期待感を募らせる。

これはけっこう愉しい仕事になりそうだと、思わず口元をほころばせた男は、ここは敢えて、彼女の問いに乗ってみることに決めた。

「さっきも言ったろう。俺たちには名前なんか無いんだ」

そう答えてから、男はがっしりとした自分の顎をさすりながら話を続ける。

「まあ、さっきと違って、現状、こちらに圧倒的なアドバンテージがあるんで、もう少し丁寧に説明してやるとだな、俺たちにはお前ら人間のように、各個人を識別するための名称が無いんだよ」

「そんなものが無くても、俺たちは互いを識別できるんだ。感じるんだよ、一瞬で。と、言っても、この感覚は人間のあんたには理解できんだろうがなぁ」

もう一人が、先の男の言葉を継いで話し出す。

「俺たちは、お互いの『意識体』という膨大な量の情報を、一瞬のうちに、心で感じて識別する。そういう生き物なんだ。だから、名前なんて必要じゃない。だから、名前が無い」

「そういう事さ。勘違いの無い様に言っておくが、『個』と言う概念が無いわけじゃない。俺とあいつは別のモノだし、それぞれに個性もちゃんと存在している」

二人の男は、互いに相手を指差して、にやり、と笑ったが、そんな言葉とは裏腹に、プルートには、頭髪の色くらいしか、彼らの区別がつかなかった。

「俺らは、双方がその気になれば、ほぼ瞬時に仲間同士での意思交換が出来る」

「だから、そんな俺たちの連携攻撃を、あの機械の影響下で、あれだけの間かわし続けたあんたの実力は、なかなかのもんだと思うよ」

「ああ。あの時、俺の蹴りを利用して、大きくジャンプされた時には、こりゃ、逃げられちまった、と、焦ったぜ。……まあ、結局は、あの機械の能力を読み違えた、あんたの負けだったけどね」

今度は、声を合わせてプルートを嘲笑する二人の男たち……。

「……質問の仕方が悪かったようですね。では、改めて聞きます。あなたたちはどんな集団で、何を目的に、この私たちの世界にやって来たのです?」

こんな圧倒的に不利な状況下にあっても、プルートの物言いは、良く言えばある種の気高さが、悪く言えば超越者然とした尊大さが感じられる。

だが、男たちは、そんな彼女の、不遜と言えなくも無い態度など微塵にも気に留めず、しばらく考え込んでから、こう答えた。

「俺たちは、そうだなあ、言わば一種の傭兵みたいなもんだ」

「傭兵?」

男の、予想外の答えに、プルートは思わず男に聞き返した。

「そうだよ。報酬を貰って、何処かの誰かさんのために、侵略の準備を請け負うのさ。だから、お前らの世界で言う『傭兵』だろう?」

「 ! 一体誰がこの世界への侵略を ………」

プルートの言葉を遮るように、もう一人の男が彼女の顔の前で人差し指を立てて左右に振った。

「依頼主の秘密は守る。これは傭兵のルールだよ」

「そして、依頼された仕事は確実にやり遂げる。これも傭兵のルールだ」

先の男が、もう一度、高らかな音を響かせてプルートの尻を平手打ちして、彼女を黙らせる。

「……!」

またしても屈辱的な仕打ちを受けて、プルートの、男たちを見つめる瞳に殺気がみなぎる。

「まあ、そう恐い顔をするな。依頼主は教えられんが、依頼内容は教えてやるよ。それはな ………」

怒りに震えるプルートの前に仁王立ちになると、男は彼女の険しくも美しい顔を愉しげに眺めながら、こう言い放った。

「お前らセーラー戦士全員を、完全に屈服させること。しかも、たっぷりと辱めた後でな」

「 ! 何を一体!」

男の言葉に、驚き、呆れ、激憤したプルートは、思わず絶句する。




「この世界を侵略するに当たって、俺たちの依頼主は、一番の障害となるのが、お前らセーラー戦士だと判断した」

もう一人が言葉を継いで先を続ける。

「だが、お前たちの正体が、どうにも良く判らない」

自分を睨みつけてくるプルートを嘲笑うかのように、彼女の豊かな乳房を片手で弄びながら、男は更に話を続けていく。

「お前らセーラー戦士というのは、何度も何度も転生を繰り返す。だから、過去の存在データから、その痕跡の糸をたどって正体を明らかにしようとしても、ぷっつりと途切れてしまう」

「痕跡の糸」という言葉に合わせて、背中から脇にかけての敏感な部分をもう一人の男に指でなぞられ、その刺激に思わず身を震わせるプルート。

「しかし、たった一人だけ例外のセーラー戦士がいた。お前だよ、セーラープルート」


掌の中でプルートの乳房を弄んでいた男が、今度は痣のつく位に強く乳房を握り締めたために、彼女の顔に苦悶の表情が浮かぶ。

「お前だけは転生せずに、永遠の時空の中を生き続けてきた。だから俺たちは、この世界の何十億もの人間の中から、冥王せつな、お前という個人を特定できたんだよ」

まるでボールの感触を確かめる投手のように、男の手は、執拗なまでにプルートの乳房を何度もきつく握り締め、その都度、彼女の端正な顔が苦痛に歪む。

「と、まあ、これは、俺たちが依頼主から聞いた説明のの受け売りなんで、実際にどんな方法を使ったのかは、俺たちには皆目解らんし、あの機械もただの借り物だ」

最後にもう一度、力いっぱいプルートの乳房を握り締めてから、男は自嘲気味な笑みを浮かべた。

「だが、ターゲットが特定できたのなら、そこからは俺たちの仕事だ。お前に罠を仕掛け、かくしてセーラープルートの捕獲に成功、と言う訳さ」

その生真面目な性格から、今回の失態が自分自身の油断と驕り、そして何より、戦士としての力量不足によるものだと考えているプルートには、男たちに返す言葉が無かった。

「さて、諸々納得していただいたところで、そろそろ本題に移ろうじゃないか、プルートさん」

「わたしを一体どうしようというのです!」

にやにやと笑う男たちを きっ、と睨みつけ プルートは鋭く言い放つ

「どうする、って、今言ったばかりじゃないかよ。なあ?」

男は、そんな怒気を孕んだ彼女の詰問に臆することも無く、軽い調子でこう応えると、もう一人の男に笑いかける。

「そうだよな。それに、裸に剥かれて拘束された女と、裸の男が二人。これで何をするつもりか判らんような、世間知らずじゃないだろうよ、プルートさんよぉ」

もう一人も、大げさに肩をすくめるようなゼスチャーをしながら笑い返した。

プルートの全身から血の気が引いた……。



「しかし、本当にいい身体つきしてやがるな、この女」

「そうだな。出来る事ならこんなに傷だらけにはしたくなかったぜ」

二人の男は、改めて、プルートの均整の取れた美しい肢体を、これから陵辱する対象として品定めする。

遠慮の無い好奇の視線を全身に浴びせられて、秘所を隠す術すらないプルートの頬が、一段と赤みを増した。

美術館で裸婦の彫像でも眺めるかのように、恥ずかしい姿勢で拘束されたプルートの周りを、輪を描いて巡る男たち。

そして、その股間では、人間のそれを遥かに凌ぐ巨大なモノが、徐々に頭をもたげ始めた。

「 ! 」

並外れた大きさを持つ醜悪な代物を目の当たりにして、プルートは思わず息を呑んでそれを凝視してしまったが、はっ、となって慌てて目を反らせた。

「なんだよ、うぶな小娘じゃあるまいに。大きさはともかく、外見はお前ら人間の男と、そう違わんはずだぜ、俺たちの持ち物は」

男の言葉通り、形そのものは人間の男根とそう大差ないが、その大きさは桁外れだった。


大柄な男たちの二の腕と同じくらいの太さ大きさを持つそれは、いまや、完全に勃起して、ほぼ垂直に近い角度でいきり立っている。

「その『大きさ』に驚いてるのさ。今までこいつが寝た、どんな人間のモノより何倍もでかいからな、俺たちのモノは」

そう話す、もう一人の男の股間にも、先の男と寸分違わぬ大きさ、形、色をした逸物が、天を突くように屹立していた。

「いやいや、分からんぞ。こちらは永遠の時を生きていらっしゃるセーラー戦士様だ。これまで、何万、いや何十万の男と寝ている事やら……。その中には一人くらい……」

「 ! もうお止めなさい、無礼な!」

男の言葉を遮るように、プルートが絶叫した。

「私たちセーラー戦士は皆、純潔を守り通しているのです! 下衆な憶測でものを言うのは許しませんよ!」

怒りで全身を震わせ、男たちを睨み付ける彼女を、彼らは呆然とした表情で見返した。





「……嘘だろ、おい……」

「そんな、すこぶるつきの身体をしているのに、男を知らない、だと?」

たわわな乳房とその中央を飾る乳首、柔らかな曲線を描く肉付きの良いヒップ、手入れされた陰毛と、その下のぷっくりとふくらんだ恥丘……。

そのいずれもが、プルートが性的に十分に成熟している事を、言い換えれば、生理的、生物学的に、性欲を感じないはずが無い事を示している。

これまで自らの欲望の命じるままに生きてきた男たちには、そんな女盛りの彼女が、戦士であるという理由だけで性欲を自制し、未だに処女である事が到底信じられなかった。

「いやいやいや、あり得ねえよ、そんな事」

「それは、あれだろ、建前として、そういう事になってるってだけで、実際には……」

プルートの言葉を一笑に付そうとする男たちを、彼女は、燃えるようなその赤い瞳で見据えて一喝する。

「私たち月の王国の戦士は、戦士であり続ける限り、異性との交わりを持たないのです!」

そう高らかに告げる彼女の、誇りと自信に満ちた力強い口調に、思わず言葉を失う男たち。そして……。

「な、何を、あっ! イヤッ、そ、そんな所をっ!」

プルートの前に立った男が、いきなり彼女の下腹部、煙るような茂みに覆われた裂溝に指を突き立てる。

「やっ、止め、痛っ! ダメっ!」

プルートの抗議など無視して、更にもう一本の指を彼女の内に潜り込ませた男は、そのまま膣の中を掻き廻すように、2本の指を上下左右に動かし続けた。

「ひいっ! 何をするの! や、止めなさいっ!」

あまりにも強引な男のペッティングに、プルートは身体をよじらせて、必死に痛みをこらえる。

「どうだ?」

「いや、驚いた。どうやらほんとに男を知らんようだぜ、こいつ」

指先に感じる、プルートの肉の蕾の固さに、男は、彼女が未だに処女である事を確信した。

「だ、だから言ったでしょう。セーラー戦士は皆、その純潔を守っているのです!」

男の乱暴な確認に、プルートは声を荒げる。

だがしかし、そんな彼女の怒りに満ちた叫びは、男たちの耳に入らない。

「そうか、処女かぁ。こいつは楽しみだなあ」

「俺は、痛みにヒイヒイ悲鳴を上げて泣きじゃくる生娘を、強引に貫くあの瞬間が大好きなんだよ」

男たちの無慈悲な言葉に、プルートは戦慄した。

「あ、あなたたちはそれでも人間ですか!」

「……ちげーよ、って、さっきから言ってんじゃかよぉ、プルートさん」

「いい加減、その物言いも鬱陶しくなってきたな。ちょっと、己の立場ってもんを判らせてやるか」

そう、ぶっきら棒に言い放つと、男は二人して、身動きの取れないプルートの後ろに回り込んだ。

次の瞬間。

パアン!

「ひいいっ!」

またしても尻に強烈な平手打ちを喰らわされ、プルートはたまらず悲鳴を上げる。

パアン! パアン! パアン! パアァァンッ! ……。

力一杯に尻肉を打つその非情な響きは、間断なく二十数回にも達し、男たちがようやく手を休めたその頃には、プルートは、全身汗にまみれ、悲鳴を上げ続けた喉はすっかり嗄れてしまった。

がっちりと拘束されているので、直接その目で確認することは出来ないが、それでも彼女は、自分の臀部が、熱を持って真っ赤に腫れ上がっているであろう事を確信していた。

「うっ、くっ、くうっ!」

痛さと悔しさと恥ずかしさに、プルート自身は意識していないが、微かに震えるその口元から、力無い嗚咽が漏れていく。

そんな、すっかり打ちのめされた彼女の様子に満足すると、男たちはいよいよ、彼らの言う「本題」に取り掛かることにした。


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