第四章「DeadlyMistake・致命的な失敗」


「お頭、宿屋の亭主夫婦は、ふん縛って猿轡をかましておきました」

「今夜は、あの女の他には、泊り客は居ないそうです」

細い月が中天に懸かる頃、宿屋の一階の食堂には、十人以上もの厳つい男どもが集まっていた。

手に手に物騒な獲物を持った彼らの中で、ただ一人、すらりとした、と言うよりは貧相な体格の男が、手下の報告に鷹揚に頷く。

言わずもがな、件の「七光りお頭」と「地獄のカマドウマ」ご一行様である。

「全く、俺たち山賊からお宝を巻き上げようなんて、何て強欲な奴だ」

自分が大切にしていた『外道の書』を留守中に奪われ、怒り心頭のお頭は、嫌がる手下たちを宥め賺して、リナの泊まる宿に夜襲を仕掛けてきたのだ。

「いいか、お前ら。どんなに強い魔道士でも、寝込みを襲われれば一溜りもない。同じ魔道士の私が言うんだから間違いない」

リナが聞いたら、「お前と一緒にするな」と、瞬殺される事請け合いのセリフで、及び腰の手下どもを鼓舞すると、お頭は、自分は一番後ろに立って、二階へと上がって行った。

階段を上りきると、廊下を挟んで、左右にそれぞれ五つずつドアが並んでいて、その、右の一番奥のドアの隙間から、微かに光が漏れている。

足音を忍ばせ、そのドアの周りに集まる男たち。そして・・・・・・。

嫌がる大男(昨日リナを宝物庫へ案内した男だ)を促して先頭に立てると、お頭の合図と共に、山賊たちは一斉にリナの部屋に雪崩込んだ。

「やい、覚悟しろ、リナ・インバース! 俺たち『地獄のカマドウマ』を舐めていると、どんな恐ろしい目に遭うか、たっぷり教え、て、や・・・る・・・・・・」

手下たちの後ろに隠れるようにして、それでも声だけはひときわ威勢の良いお頭の言葉が、次第に途切れていく。

いや、お頭だけでなく、他の男たちも、自分が、今、目にしている異様な光景に、思わず息を呑み、口をぽかんと開けたまま立ち竦んでいた。



ベッドの上で、全裸の女が、男たちの視線も気にせず、股間を弄り、喘ぎ声を上げている。

だが、それより何より、男たちの度肝を抜いたのは、その女の胸だった。

自分の頭よりも遥かに大きな乳房に、まるでキュウリのように長く太く勃起した乳首、しかもそれが左右二本ずつ!

まさに、雌牛の乳房を持った女が、そこに横たわっていたのだった。

「な、なんだ、こりゃあっ!」

素っ頓狂なお頭の声に、男たちの存在に気づいたリナは、瞳を潤ませ、彼らに涙声で訴える。

「助けて・・・、胸が、魔法が、止まらないの・・・」

だが、そう言いながらも彼女は、その巨大な乳首を自分でしごき、股間の秘裂に指を埋めていく。もはや、自分で自分の性欲を御することが出来ないようだ。

「そ、そうか! 『外道の書』、うしちちの法を試したんだな・・・」

お頭の言葉に、リナは力なく頷く。

「どんどん大きくなっていくし、そのうち、新しい乳首まで生え出してきて・・・。慌てて破棄魔法(マジック・キャンセル)を掛けたのに、全然止まらないの・・・」

「破棄魔法だと! 何て軽率なことを・・・」

リナの言葉に、お頭は、如何にも大物魔道士のように、眉間に皺を寄せ、顔をしかめる。

「『外道の書』に書かれている魔法は、実際には、魔法などではなく、ほとんどが呪術、つまり、呪いのような物なのだ」

ベッドの上の彼女に対して、ビシッ、と指を突きつけ、ポーズを決めるお頭。

「ああ、そう言えば、そんな事が書いてありましたねえ、お頭が昨日買ってきた本に・・・」

「ええっ! 何で、それ、知ってんだよ、お前がっ!」

格好をつけてはいたセリフが、本の受け売りだった事を、しかも、それを、ろくに字も読めないはずの手下に指摘され、お頭は愕然とする。

「お頭・・・。ご自分では気付かれてないみたいですけどね、お頭は、本に熱中してくると、声に出して読んじゃってるんですよ。お陰で、俺は昨日の帰り道、馬車を走らせながら、お頭が買いなすった本の内容を、あらかた聞かされてたんでさぁ」

「うわっ! お、俺、そんな事してたのか! うっわ、恥ずかし、って、今はどうでもいいよ、そんな事。それより、うしちちの法だよ!」

今更、格好つけるわけにもいかず、半ばやけくそ気味に、お頭は話を続ける。

「呪いに破棄魔法が掛かると、その呪いは『呪法返し』となって、呪いを掛けた本人に倍返しで戻ってくる。お前は、自分で掛けたうしちちの法を、自分自身に『呪法返し』しちまったんだよ!」

「そ、そんな・・・」

様々な魔法を駆使するリナだったが、「呪い」と言う奴だけは、これまで手を出した事がなかった。

彼女に、呪法に関する知識と経験があれば、あるいは、「うしちちの法」の術式を読み解いていく中で、その事に気付けたのかもしれない。だが、もはや、後の祭り・・・・・・。

「どうやら、俺たちが手を下すまでもなく、お前さんは、自分自身の力で自滅しちまったみたいだな。こいつは、返してもらうぜ」

机の上に広げられたままの『外道の書』を見つけると、お頭はそれを、あの飾り箱に大事そうに仕舞いこんだ。

「そう言えば、昨日はずいぶんとこいつらを可愛がってくれたみたいだな。今晩は、お前がこいつらに可愛がって貰うといい」

いかにも悪党然とした決め台詞を吐き、部下たちに、顎で合図するお頭。

だが、手下たちは、昨日身に染みて判ったリナの強さと、何より今の彼女の異様な姿に、あまり、そんな気分にはならないようだ。

「大丈夫ですか、あのリナ・インバースですよ。後でどんな仕返しをされるか・・・」

「仕返し? 心配いらんよ。『うしちちの法』の効果は不可逆変化だ。この女が、元の姿に戻ることはない」

「でも、なんか、気持ち悪いっすよ、あの乳。・・・伝染ったりしません?」

「するか、バカ野郎! 逆に、『うしちちの法』の効果で、あいつは今、男に抱かれたくて仕方ないのだ。たっぷりとサービスしてくれるぞ」

お頭にそう促され、手下たちは如何にもいやいやと言った感じで、一人で自慰を続けるリナを取り囲む。だが・・・・・・。

「い、いやっ! やめて!」

口では拒絶しながら、しかし、自分で乳首やクリトリスを刺激して痴態を晒す彼女の姿に、次第に、男たちの気持ちが昂ぶり始めた・・・・・・。



「ほらほら、牛なら牛らしく、四つんばいになるんだよ。そうそう、もっとケツを上げろ」

リナをベッドの上から床に引き摺り下ろすと、男たちは、その異様な胸が視界に入らぬように、と、犬のように彼女を後ろから襲った。

「ひっ! あはああっ!」

充分過ぎるくらいに準備の整っているリナの秘部に、男の逞しい物が一気に挿入される。

「ん? この感じ、お前、ひょっとして初めてなのか」

「そ、そうよ。悪い?」

涙目になりながらも、何とか言葉だけでも虚勢を張ろうとするリナの様子は、男の嗜虐心に火をつける。

「に、しちゃあ、ずいぶんと気持ち良さそうな声を上げてくれるじゃないか。普通は、初めての時にゃあ、少しは痛がったりするもんだぜ、この淫乱め」

そう言うと、男はゆっくり腰を動かし、彼女の内の感触を愉しみだした。

「んはぁ! だ、だってさっきから、ああん! さっきから、ここが疼いて疼いて、あふぅ! 何かを突っ込んで、引っ掻き回したくて仕方なくて、ああっ! そこ、気持ちいいっ!」

リナが吐く、淫らなセリフに刺激されたのか、別の男が、部屋の椅子を彼女の顔の前に置くと、それに腰掛け、己のモノを取り出す。

「ほら、しゃぶんな、『盗賊殺し』さんよぉ」

普通の状態なら、「何よ、その粗チン!」などと毒を吐いて、男を萎えさせるであろう、あのリナが、男に言われるがまま、その垢まみれの逸物をくわえ込む。

「んふっ、ふむうっ! ふむっ! ふむっ! ふむっ!」

「はああ、こりゃ、商売女も顔負けですね。いや、さすが『うしちちの法』だ」

男が命じる前に、自分から男のモノを口でしごき始めたリナの有様をみて、先程まで尻込みしていた男が、お頭の方を振り返る。

それに対して、親指を立てて、にやり、と笑い返すお頭。(いや、別に、お前、何もしてないだろう・・・・・・)



昨日のお礼とばかりに、男たちは交代でリナを犯し続ける。

そのうち、次第に目が慣れてきたのか、先ほどはあれだけ気持ち悪がっていたリナの胸に、興味を持ち出す者が出始めた。

「本当に牛みたいだな。搾ったら乳が出るんじゃないか?」

後ろから男にガンガン突かれている彼女の脇にしゃがみこんだ男が、何気なく、その巨大な乳首を握ったとたん、リナの口から色っぽい嬌声が漏れる。

「あ、はあああぁぁぁっ! すごいわっ! ジンジンしちゃうのぉ・・・」

彼女のあまりの反応の良さに、他の男たちも、競うようにして、残りの三本の乳首をしごき始める。

「ああ、なんか、懐かしい感触だなぁ、この感じ・・・」

「そう言えば、お前、子供の頃は農場で働いてたって言ってたもんなあ・・・」

巨大なリナの乳首を握りながら、なぜか郷愁モードに浸りだす二人の男。

一方のリナは、「うしちちの法」で、異常なほどに感度の良くなっている乳首を一斉に責められ、もはや狂乱状態だ。

「あひゃあああぁぁぁっ! ら、らめえっ! 乳首、ビンビン感じちゃうよぉっ! アタマおかしくなっちゃ、うぐっ! ふむっ! ふむうっ!」

自ら腰を振って喚き続ける彼女の口を、別の男が己のモノで強引に塞ぐと、リナは、日頃は強力な呪文を唱えるその口で、男のモノを、いとおしげに扱き始める。

 
まるで初めてとは思えぬほど、舌を巧みに使って自分のモノを責めてくる彼女のテクニックに、男は舌を巻く。

「くーっ、こりゃたまらねえ! 淫売宿の娼婦どものあそこより、この女の口のほうが数倍キモチいいぜ」

「こっちも、初物だけに締まり具合が最高だ。そら、俺様の子種をしっかりと受け止めろよ。うっ、くううっ!」

既に、何度と無く、男の精を注がれているリナの子宮に、またしても大量の精液が吐き出される。

しかし今のリナには、自分の内に熱いものが広がっていく、その感触すら快感に感じられる。

「ようし、俺の方もそろそろ出すぞ。零さずに、全部飲み干すんだ、いいな!」

昨日とは、うって変わって、いや、山賊本来の態度を取り戻して、男がふてぶてしくリナに命じ、そして、彼女の口の中で弾ける。

その量の多さに、彼女の頬が、パンパンに膨らみ、まるで洟垂れ小僧のように、鼻の穴から、収まりきらない精液が溢れてくる。

そして、その大量の精液を、喉を鳴らして全て飲み込むと、リナは男に向かって、口を大きく開いて、精液にまみれた舌を突き出してみせた。

「ほ、ほら、ちゃんと全部飲んだわよ。これでいいんでしょ?」

その、あまりにも淫猥で誘惑的な表情に、果てた男二人を押しのけるようにして、すぐに別の男たちが彼女にむしゃぶりつき、腰を振る・・・・・・。



「しかし、昨日とはえらい変わり様だな、あの女・・・。別に、牛みたいな乳になったからって、攻撃呪文の一つでも唱えりゃ、俺たちを簡単にぶっ飛ばせるって言うのに、されるがままじゃないか」

昨日散々な目に遭わされた大男がそう呟くと、その言葉を待ってましたとばかりに、お頭が口を開こうとする。だが、それより一足早く、先程、お頭に突っ込みを入れた男が話し始めた。

「お前さあ、乳をあれだけでっかくするための栄養、どこから来てると思う? 何とな、自分の脳味噌からなんだとよ」

「ああっ、それ、俺の! 俺のセリフ!」

後ろで地団駄を踏むお頭を無視するように、男は話を続ける。

「何でも、術を掛けられた女が一番得意なこと、例えば、料理上手な女なら、料理に関する知識や記憶を貯めているところから、どんどん脳味噌が縮んでいって、その分だけ乳がでかくなるんだってよ」

「て、事は、あの女、魔法に関する事はもうほとんど何も覚えてない、って事か?」

「そういう事。しかも、あいつはあそこまで乳がでかくなっちまってるから、たぶんもう、眠いだとか、腹が減っただとか、男に抱かれたいとか、そんな欲望を抑えることさえ出来ないくらいに、アタマが空っぽになってるんだよ」

「ああ、もう、何でそこまで言っちゃうかな、それ! 俺が言いたかったんだよ、そのセリフ、俺が! ちょっとは残しとけよ、おいっ!」

顔を真っ赤にして身悶えしているお頭を無視して、大男が男の言葉に大きく頷く。

「なるほどね、それを聞いたら、安心して昨日の借りを返してやれる、ってもんだ。ありがとな」

大男の礼に、鷹揚に頷く男の後ろでは、一人、お頭がうつむいて壁を殴り続けていた・・・・・・。



山の稜線が微かに明るみ始める頃には、男たちの精も尽き、皆一様にぐったりと床に腰を下ろして寛ぎ、何人かは、こっくりこっくり、と舟を漕ぎはじめていた。

常日頃から体力満タンのリナの方は、あれだけ犯され続けたにもかかわらず、いっかな憔悴した様子もなく、精液にまみれた顔に満足した表情を浮かべ、巨大な己の乳房をまるでクッションの様にして、うつ伏せになったまま、安らかな寝息を立てている。

そして、だらしなく開かれた彼女の股間からは、男たちの吐き出したものが糸を引いて床に垂れ、敷物にねっとりとした白い染みを作り上げていた。

「ようし、お前ら、もう満足したろう。夜が明ける前にそろそろ引き上げるぞ」

悔し涙に目を真っ赤に腫らしたお頭が、胸にしっかりとあの『外道の書』を抱きしめて、手下たちに命令する。

のそのそと起きだし、脱ぎ散らかした服を身に纏い始める山賊たち。

「で、この女、どうします? 焼きを入れてやるつもりが、こんな事になって、このまま何もせずに放って置いても大丈夫でしょうか」

「ううむ、俺たちに逆らった奴をそのままにしておくのはマズいかとは思うが、金は獲っても命は獲らない、って言うのが、俺たち『地獄のカマドウマ』のモットーだしなあ・・・」

「そりゃ、もちろんそうですとも。もし、調子に乗りすぎて人死にが出た日にゃあ、役人どもや騎士団も黙っちゃいませんからねえ・・・」

額を寄せて話し合う大男とお頭。名前のわりに(?)、こいつら、その実態は、かなりユルい山賊団のようだ・・・・・・。

「あの、お頭、こいつ、俺たちのとこへ、連れて帰っちゃいけませんか」

そう、おずおずと提案したのは、あの「元・牛飼い」の男だった。

「みんなも、この女の具合の良さにはすっかり満足しているみたいだし、仕事の後に、ねぐらでこんなお楽しみが待ってるとなりゃあ、山賊稼業にも精が出るってもんです」

そんな男の言葉に、互いに顔を見合わせ頷きあう男たち。

あれほど「うしちち」を気持ち悪がっていたくせに、女としてリナを愉しんだ後の男たちは、現金な物である。

「放っておく訳にもいかず、かと言って、殺しちまうのも忍びない。ならば、連れて帰って『飼わせて』もらえませんか、こいつ。お願いしますよ、お頭・・・」

「しかしなあ、『飼う』って、お前、ちゃんと面倒見られるのかよ」(捨て犬かよ!)

渋るお頭に、「元・牛飼い」は胸を張って答える。

「大丈夫、牛を飼うのは任せてください。食事や下の世話、お散歩だってちゃんと私が連れて行きますから!」

「・・・まあ、そこまで言うなら、イイだろう。ちゃんと、責任持って『飼う』んだぞ! いいな!」(だ、か、ら、捨て犬かよ、って!)

お頭の許しが出たので、男たちはリナに猿轡をかませると、手際よく、毛布で全身をくるんで、その上から、縄でぐるぐる巻きに縛り上げる。

そして、その、巨大な蓑虫のようになった彼女を担ぎ上げると、意気揚々、件の洞窟へと戻っていった。

このところ、金欠で女を抱くことが出来なかった男たちは、久し振りにその欲望を思う存分吐き出した上に、自分たち専用の性処理奴隷を手に入れられて、腰の痛みもなんのその、足取り軽く坂道を登っていく。

そんな男たちの浮かれた様子を眺めながら、大男はお頭に、そっと耳打ちする。

「・・・あんな事言ってましたがね、あいつら、きっと、すぐにあの女に飽きて、世話もせず、放ったらかしにしちまいますよ、絶対」

「ああ、判ってるさ。だが、あいつらが飽きたら飽きたで、そん時には、俺にも少しばかり当てがあるのを思い出してな・・・。まあ、しばらくは好きにさせてやろうや」

最後の最後になって、やっと、大物っぽいセリフを吐けて、内心、狂喜乱舞のお頭は、如何にも悪役らしく、にやり、と唇の端を吊り上げた・・・・・・。


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