●陥落


 ばけもの・・・?
 僕の顔のしたあたりに、男の顔があった。真っ赤な目の、いやらしい笑いの、顔。
 その顔が、歪んでいた。ううん、表情とかが歪んでるんじゃない。ムンクの絵みたいに、男の頭はぐにゃりと斜めに曲がって、笑っていた。にやああっと笑った口の端から、まるで固いものが割れたみたいに、顎の付け根までヒビがはいって、口が真っ暗い洞窟みたいに大きく広がっている。そこから、僕の首をしつこくいじめていた舌が伸びている。
 その舌の長さが、異常だった。男の口元から伸びた舌は、そのまま僕の首の裏まで届くほどの長さで、蛇みたいに蠢いていた。
 そして、肩。
 僕の目が、男の肩に釘づけになった。
 男の両方の肩に、大きなヒビが入っていて・・・そのヒビから、闇の中でもぬらっと光る肉の鞭が何本も溢れ出して、ぐなぐなと宙を蠢いていた。僕の手を締め上げているものの正体は、それだったのだ。
 そして、そのヒビを中心に、男の身体がいびつに曲がり始めていた。
 外に溢れた触手がうごめくたびに、男の全身が変な風に曲がった。まるで・・・
 まるで、人間の形をした袋の中で、何かが暴れているみたい。
 どこもかしこもへんなふうに曲がっているのに、剥き出しになった僕の胸・・・目を開けてみると、ヨダレみたいなぬらぬらにまみれている僕の胸が、すごく惨めなものに見えた・・・を弄んでいる手だけは、普通の顔して僕の胸を揉んでいた。
 くらっ。
 僕、意識が一瞬遠くなった。僕の胸から広がるしびれも、男の存在も、悲しさも忘れて、一瞬気を失ってしまいそうになる・・・・
「きゃううううっ!!」
 ずるずるずるずるうッ!
 それは許さない、といわんばかりのタイミングで、それまで宙で遊んでいた肉の鞭が、いっせいに僕の身体に襲いかかる!鉛筆ぐらい細いの、竹刀ぐらい太いの、いろんな太さの無数の触手。
「やめっ、やっおねがっ」
 びくん、びくんっ!!
 細い肉鞭が、餌に群がるみたいに僕の胸に群がって、僕の身体は電流を流されたみたいに跳ねあがろうとする。だけど、太い鞭が何本も僕の胴に絡みついて、その動きを許さなかった。大きく息もできないほどの力で締め上げられて、僕の上半身は今度こそちょっとも動けなくなってしまう。そして、男の手の隙間から我先に潜りこんで、ぬるぬると蠢いてる感触!
「ひぁあああぁっ!!」
  突拍子もない声がこぼれて、身体が痙攣する。肉鞭が筆みたいに動いて、僕の胸を間断なく這いまわった。揉むみたいな動き。表面を這いまわる動き。四方からつっつくような動き。舌のように舐め上げる動き。いくつもの感覚が一辺に僕の胸に押し寄せてくる!
 僕の喉から、ワケのわからない言葉が迸った。きゅうっ。きゅぅっ。胸の奥から、切ないような感覚が溢れてくる。それはさっき、必死に違うって追い払おうとした・・・気持良さ。
 快感。クラスの耳年増の子が、雑誌を読んでそんなふうにいってたことを、唐突に思い出した。
 これが?快感?
 ちがう、ちがうっ!
 僕は、僕は・・・
 絶対に、気持良くない。そう、思いたかった。
 でも、僕の胸。
 男の手がどけられて、触手みたいに動く鞭に絡みつかれた僕の胸のてっぺんで、ぼくの乳首はツンと頭をもたげていた。もっとずっとちいさかったはずの僕の乳首、いまはきゅって大きくなって、じんじん痺れていた。触手のぬるぬるがべったりついてるのか、僕の乳首は淡い月光を照り返して、尖ってるのがよくわかった。
 快感を感じると、乳首が立って、それで・・・
 そんなふうに、言っていた。
 信じられない物を見るような目で、僕は自分の乳首を見つめた。
 と、その乳首に、さらに細い触手がいっぱい群がってきた。まるで、僕が見てるのがわかったみたいに。
 「ひ、ひあぅぅぅっ」
 その刺激に、恥ずかしい声が口からあふれた。いっぱいの触手が、僕の乳首を舐め上げる。敏感に尖った乳首が触手たちのオモチャになってる。今までとは比べ物にならない気もちよさ・・・もう、そうじゃないって否定することができなかった・・・が乳首から電流みたいに走って、身体中が無茶苦茶になっちゃうっ。身体中、ううん、頭の中まで、触手にいじめられているみたいっ。
「だめっ、ち、乳首はダ・・・あひいいィィっ!」
自分でも信じられないくらい大きな声が口元からこぼれ出ると、それまで僕の首をオモチャにしていた下が、再び僕の口の中に踊りこんだ。悲鳴みたいな声が出る、僕の喉を塞ぐみたいに。
 だ、だめっ!!いま口を塞がれたら、2度と悲鳴も出せなくなってしまう気がして、僕は思わずその舌に噛みついていた。
 固い!?
 その舌は、まるで皮の鞭みたいに固かった・・・ううん、柔らかい皮の下に、固い固い肉がある感じ。男は・・・もう、男というよりは、化物というのがふさわしい姿だけど・・・は、舌にか見つかれたことなんか感じもしなかったように、平然としている。
 舌は、さっきまでのように僕が窒息するぐらい喉を塞ぐんじゃなくて、声が出せなくなる程度にだけ、口に潜りこんで、再び僕の舌を弄び始めた。2度目の悪寒。だけど、僕はそれに対する嫌悪感なんて、口にはできなかった。
 だって・・・
「んーっ!!んんんんんんんっんん!!!」
だって。足首に絡みついた触手が、いきなり僕の脚を大きく広げてしまったんだもの。
スカートが完全にまくれあがって、僕の太腿が、その付け根が一気に露わになってしまったのがわかる。必死に抵抗して、脚をすぼめようとした途端、

!!
 ちゅるるるっ!
 胸の時よりずっとぬねった音を立てて、たくさんの触手が僕の太腿に絡みついて、舐めるみたいに蠢いた。細い太腿は、信じられないぐらい敏感になっていて、身体中に電気が走ったみたいだった。鼻から漏れる声が、僕の制止なんか無視して甘い、濡れた感じの声になっていた。
そんな僕の声を楽しむみたいに、触手は何度も何度も僕の内股を舐め上げる。胸の時とは違った強い刺激が下半身から起こってきちゃう。
 おかしい。
 おかしいよ!僕の身体、どうなってるの?
 脚を触られて、こんなに気持イイなんて。
 ううん、脚だけじゃない。首筋も、胸も・・・乳首も、ちょっと触られるだけでも気持良くて・・・気持良くて。声が出ちゃう。なんで?はじめてなのに。自分でだって触ったことないのに。
 僕はまだ14歳なのに。さわられて気持良くなったりするのは、もっと大きくなってからじゃあないの?
 だけど、現実に、僕の身体は身体の芯から溢れるみたいな快感に、過敏に反応してしまっている。我慢しようと思っても、こらえようとおもっても、触られるたびに身体が熱く火照ってきて、どうしようもなく、むずむずしてきちゃう。
 だめっ。だめ、だめ、だめ。
 だめなのに、どんどん、身体が熱くなってきていた。
 僕は、気持良くなんてなりたくないのに。
 僕は、僕は、こんなの嫌なのに。
 なのに、身体中が気持イイって言ってる。そうだ。気持イイ。胸も、脚も、首筋も、耳たぶも、触られて気持がイイっていってる。それじゃ嫌だって言ってるのは、僕の心だけだった。
 そして、その心も、快感がびりっと走るたびに、思考が寸断されちゃう。
 僕は、いやなのに。僕の、身体なのに、心なのに。
 それなのに、なにひとつ、僕の思ったとおりになってくれない。
 見も知らない男の人に、林の中につれこまれて、乱暴なことされているのに、僕は、僕は、気持いいなんて思ってるんだ。
 それが、一番悲しかった。 
 はっ、はぅっ、はっ、はっ。
 目からは、涙が溢れてるのに。口からは、甘い声が引っ切りなしにこぼれて、止まらなくなってきていた。
 びくんっ。
 触手の一本が、僕の下着・・・最後の下着の中に、潜りこんだ。
 にちゃっ。
 音がした。ぬめる音。でも、触手のぬめりの音じゃない。
 信じられない・・・ううん。
 そうなっていては欲しくなかった、そんな音。僕を絶望の中に突き落とすような音。
 僕のそこは、濡れてしまっていた。
 最後の抵抗がしたかった。無駄でもいいから、必死に手足をじたばたさせて、ほんのすこしでも抵抗したかった。
 でも、できなかった。もう、僕の身体の中で、僕の思い通りになっているのは、流れる涙だけだった。呼吸さえ、声さえ、僕の心を裏切って、いやらしい調子が沁みついてしまっていた。
 そして、僕の身体は、快感に痺れて。
 今この瞬間も、全身から送りこまれる快感におぼれてくねるばかりで、もう、指一本まともに動いてはくれなかった。
二本。三本。僕のそこに、次々と細い触手がまとわりつくのが解った。くちゅくちゅって、恥ずかしい音がそこから溢れるのも、すぐだった。
 男の身体のあちこちに、いつのまにかヒビがいっぱい入って、どのヒビからも触手が溢れはじめていた。全部が、僕の身体を弄びに襲いかかる。ぬるぬるという、ぬめぬめという音が、僕の嫌らしい声と一緒に、林の中に響きわたっていた。
 でも、そのなかで、僕のそこが発する小さな音が、僕の耳には一番大きく響いていた。
 だって、その音は、まるで僕のいやらしさを、回り中に知らせるような、音だったんだもん。
 触手は徐々に僕の奥に向って進んでいた。音が、大きくなる。
 あっ。
 ああっ。
 甘い波が、そこから身体に広がっていく。僕の体の中に、火のような熱さがくすぶりはじめていた。
 そして、気がつくと、僕の腰は自然にくねって、まるで触手の動きをさそうようないやらしい動きを始めていた。
 止めて。
 お願い、その腰の動きを止めて。
 お願い、僕の体、気持ちよくならないで。
 そんな願いは、当然のように届かなくて、僕は触手でがんじがらめになった体が勝手によがるのを、泣きながら感じているしかなかった。
 声が、どんどん切羽詰った甘さを帯びていく。
 触手の一本が、僕のそこの「芯」に触れたときは、もう自分でも何をいってるのか分からなくなっていた。
えも知れない甘い刺激が身体中を支配して、そこが段々と熱を帯びて、熱く、熱く・・・・・。
 ひぃっ!
 突然、頭の先まで突き抜けるような刺激が走った。
 触手が、僕のそこの「芯」にねらいを定めて襲いかかったのだ。
 びくんっ!
 跳ねる。
 飲みこまれる。
 ぼく、飲みこまれてしまう。
 だって、だって・・
 だって、きもちいい。
 どうしようもなく、きもちいいんだもの。いやなのに。
 絶対にいやなのに。いまだって悲しいのに。悔しいのに・・・
 でも、気持良かった。触手の動き一つ一つに、ぼくの身体は敏感に反応して、快感をむさぼっている。
 だめ。
 このままじゃ、僕・・・
 僕、溶けてしまう。
 ダメだけど。
 ダメだけど、溶けてしまうんだもの。抵抗できなくなってしまうんだもの。
 いやらしくくねる体が。僕の意識を無視しちゃうような快感が、そう言っていた。これ以上なにかされたら、僕は、絶対に耐えられないって。

 意識すら溶けてしまいそうになったころ、不意に、身体中を弄ぶ触手が止まった。
 全身から無理矢理送りこまれる気持良さの洪水に痺れ切った僕の身体は、寒さに震えるみたいにふるふると震えていた。息が苦しい。試合した後みたいに、すごく息が切れていた。
 そして、快感の火は、まだ、僕の中で燃えていた。ようやく、あの残酷な触手が止まったのに。
 僕の身体は、足りないって言ってた。
 まだ、やめないで。これからなの。もっと、もっとって、言っていた。
 快感をねじ込まれた身体中が、無くなった快感を求めてうずいてるみたいだった。体の奥から、なにかいやらしいカタマリがのぼって来て、我慢できなくなりそうだった。
 やめないで。口にだしてそう言わないのが、僕の精一杯の抵抗だった。
 男・・・化物は、涙をいっぱいに浮かべて切ない息をはく僕を本当に嬉しそうに・・・・男の顔はほとんど原型を留めていなかったけど、何故か喜んでいるのがわかった・・・いやらしい表情を浮かべてから、僕の前に何かをぬうっと突き出した。
 それは、不気味な形をした、太い触手だった。ふしくれだって、なにかの病気にかかったみたいな、いやらしい赤紫色に染まっている。先端から気持のわるい黄色のぬめりを沁み出したそれを、みせつけるみたいに僕の鼻先に持ってきてから、僕のそこに。大事な場所に、ゆっくりとあてがった。
 つんっ。つんっ。
 すでに身体を動かすこともできない僕をじらすみたいに、太い触手はゆっくりと僕のそこ・・・大事なところをゆっくりとつつきまわした。そのたびに、快感が走る。
 快感を奪い去られて浅ましくうずいていた僕の身体が、ほんの少し触れられるだけで、快感を求めてびくりと動くのが感じられた。
 つんっ。
 だめ、がまん。そう、我慢しなくちゃ。
 つんっ。
 逃げられないんなら、せめて、気持イイなんておもったりしないように、がまんしなくちゃいけない
 つんっ。
 だめっ。
 つんっ。
 だめなのっ。そこは
 つんっ。
 そこをさわられたら、僕、いやらしくなっちゃう。
 つんっ。
 おねがい。ゆるして。
 つんっ。
 だめ、きもちいい
 つんっ。
 きもちいい、きもちい
 つんっ。
 だめ。
 つんっ。
 ・・・もうだめ。
 つんっ。
 ぼく、もう、だめだ。
 つんっ。
 がまん、できないの。
 つんっ。
 ぼくは、だめなこだから。
 つんっ。
 こんなにいやなことをがまんできない、なさけないおんなのこだったんだから。
 つんっ。
 だめなこ。ぼくは、だめなおんなのこ。
 つんっ。
 だから・・・・
 つんっ。
 もう、どうでも、いいんだ。
 
 めりめりめりぃっ!!!
 
 諦めて、身体の力が一瞬緩んだその隙に、触手は僕の中に一気にねじ込まれた。激痛が走る。
 だけど、その激痛さえ、一瞬で快感に変わってしまった。僕はそれを、熱い物凄い快感と絶望の中で感じていた・・・・。



 火箸が身体の芯にねじ込まれていくるみしっ。みしっ。僕のそこが軋む。奥にまで、熱いものが埋め込まれていく感覚。
 あううぅ・・・!僕のちっちゃい体は、その一本の触手に支配されてしまう。触手が前へ、後ろへ、ゆっくりと動くたびに、圧迫感と一緒に身体中が解けてしまいそうな快感が溢れ出す。あっ、あっ・・・って、触手が動くたびに白痴みたいな情けない声が溢れた。口が大きく開いてた。
涎が口元から溢れ出して、首まで溢れてる。
あ、あ、あ、ぁ・・・・っ。
触手が動くたびに、僕の身体、追い詰められていっているのわかった。自分の声が、どんどん甲高くなっていくのが分かる。だんだんものが考えられなくなってゆく。
 ひ、ひ、ひぃっ・・・ひきつったみたいな声は、何かに似ていた。
 ・・・そうだ。犬だ。サカリがついて、朝、交尾してる犬。
 そのときに雌犬がこんな声をあげていた。
 ひ、ひ、ひ、ひっ。僕の喉から声が出る。いやらしい声。
 犬みたいな声。
 ひ、ひ、ひ、
 僕にだって、憧れはあった。
 ひ、ひ、ひ、
 男女の僕がそんなこと言ったら、きっとクラスの皆は笑っただろうけど。
 ひ、ひ、ひ、
 いつか、とってもステキな人と恋におちて。コイビトになって。
 ひ、ひ、ひ、
 その大事な人に。大事なものをささげる。そんな日が、来たらいいなあって。
 ひ、ひ、ひ、
 でも、ダメなんだ。僕の大事なものは、なくなっちゃった。
 ひ、ひ、ひ、
 僕は、ダメな女の子だったんだもの。処女を奪われて、いやらしい声を上げてるような。犬みたいな声を上げてるような、ダメな女の子だったんだもん。
 ひ、ひ、ひ、
 きっと、きっと・・・そんな日は、待ってても、来なかったんだよね・・・・
 喘ぎ声を上げ続ける。
 もう、なにも考えられなくなっていた。ただ、涙を流して。
 自分の奥の方からじわじわと上がってくる感覚だけが感じられた。
 そして。
「あ!」
 その感覚が弾けて。
「あああああああああああああああああああ・・・・・・・・・・・っ」
 僕の意識は、真っ白に消え果てしまったの・・・・・。


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