第4章


 たった僅かの侵入……それだけでも鋭い痛みが、エンテの神経を貫いていった。先ほどまで紅潮し、甘い喘ぎを漏らしていただけの表情が、苦痛だけに歪んだ。無理もない。挿入しているネブカでさえ苦痛を感じさせる狭さである。ましてや、初めての彼女には耐え難い激痛であろう。
「えっ、・・・・・なっ」
 激しい苦痛が抑えられていた理性と意識を呼び起こした。水の神殿での対決から、意識を喪失した僅かの時間、ネブカが今、及ぼうとする行為。それは彼女にとって、余りにも恐ろしく、おぞましい限りの現実だった。
だが、例え理性を取り戻し、懸命に抵抗しようとしても、暗黒魔法トュマハーンに侵され、これまでの行為に体力を奪われている彼女には、既にネブカとの結合から逃れる事は不可能だった。
「さぁ、いくぞ」
「なっ、いっ、痛い! なっ」
 柔肌の太股を抱え直し、ネブカは改めて、エンテの膣内にその身を沈めていく。それに伴って、ネブカの一部が次第に姿を次第に晦ましていく……
 確実に、そして間違いなく、猛々しいばかりの剛直は、エンテの膣内へ……その狭い未通の脾肉を掻き分け、メーヴェへの侵入を果たしているのだった。
「いやぁぁぁぁぁ! い、いっ」
 メリィ! メリィ! と、エンテの膣内が軋みような衝撃が、犯す者と犯される者の、双方に伝わった。
 だが、侵入するネブカを……二人の結合を妨げる存在、わずかな抵抗を感じる。

 ――これが……メーヴェの処女膜か!

それはエンテの性格にも似て、気丈にも頑固にネブカの侵入を拒んでいる。これまでは順調にメーヴェの膣内を踏破してきたネブカではあったが、こればかりは容易な力では突破できそうになかった。
 ネブカは侵入を停止させ、機を窺う。

 この膜の向こうには、未だに誰にも許した事がない未通の場所があり、そこにはリーヴェの王家の系譜に関わる器官がある。そこの到達にネブカは許され、彼の血筋がリーヴェ王家に交わる可能性があるのだ。
 唯一に、今日のこの日がメーヴェ、即ちエンテにとって、どういう日になるか、教皇グエンカオスのみが気付いていた。初めての初頂を迎え、女として覚醒した身体の今日こそ、メーヴェの排卵日である事を。

 ネブカは力任せに、一気に突き破るような性急な真似はしなかった。ゆっくりとメーヴェの処女膜を吟味しながら、嬲るように腰をグラインドさせていく。無論、それは一気に突き破るより、メーヴェには苦痛が伴うだろうが、折角の処女膜である。ゆっくりと、ゆっくりと味わい尽くすように突き破ってやらなければ、王女が初めての男としてネブカを選んだ事に申し訳がない。
「せめて、じっくりとお前の処女膜を喰い散らしてやろう。一生に一度の大切な純潔だからな。たっぷりと男の味を、わしの味を味わうがいい」
「いやぁぁぁぁ、いやぁ、痛いッ! 痛イィ!」
 ネブカの一突き、一突きごとに、エンテの神経は激痛に襲われ、大粒の涙を頬に伝えながら、激痛を懸命に訴える。
 大粒の涙が激痛に頭を振る激しさで、左右に四散する。
 静粛だった水の神殿において、メーヴェは懸命に激痛と救援を求めたが、教皇グエンカオスの計らいか、その声を耳にできるものは誰一人いない。
 そして、次第に処女膜が軋みを上げだすと、エンテの悲鳴と絶叫、処女膜の軋みが交互に奏でられる。
汗交じりの肉と肉が弾ける音が続き、それでも彼女の身体は愛液が分泌されている証明、水の弾ける音だけが交互に木霊した。
「光栄に思え、お前の記念すべき最初の男が、このネブカ様である事を」
 それは懸命に膜を張って侵入を妨げ続けてきた、エンテ……メーヴェの処女膜に対する、せめてもの弔いの言葉であった。
「そして誇りに思うがいい、わしによって正真正銘の女に成長を遂げる事が許された己の身体をな!」
 ズズッ、ズズ、ズブズブ……
 次第に猛々しい肉棒が意を決したように、メーヴェの膣内への侵入を強行させていく。尚も侵入を拒み続けた処女膜と対立し、今度も押し戻そうと懸命に悲鳴をあげ、
「痛いッ! 痛い! や、やめてぇぇ!」
 エンテの処女膜もまた、次第に……
――リュ、リュナン様
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァ!」
 ――エンテの悲痛で壮絶な悲鳴が、水の神殿の静粛を切り裂いた。
そしてそれは、彼女が十五年もの歳月を護り続けてきたものが、崩壊していく瞬間でもあった。

 遂にメーヴェは……

エンテの涙交じりの絶叫が轟き、
 ビシィと突き破れた衝撃、それに伴って再開された、無理矢理に身体を引き裂かれるような激痛。
 その激痛の中で、尚も続く激痛の中で、彼女は理解した。理解できてしまった。そして、理解したときにはすでに手遅れであった。
 その処女膜を無理矢理に喰いちぎり、その存在を過去形にしたネブカの猛々しい剛直は、次第にエンテが無垢であり、純潔であった証拠の色に染め上げ、更なる奥域をエンテの膣内に求めていく。
 水の巫女として、そして、リーヴェ王国で秘蔵された彼女の身体は、その肩書きの所有者に相応しい、まさに聖域を持つ身体の膣内だった。
 そこにある姿に、暗黒魔導師を相手に怯む様子さえ見せなかった慄然とした勇姿は既にない。あるのは、その暗黒魔導師に敗れ、犯される事に、ただ泣き叫び続けるだけの無力な王女様だった。美しく、あどけない可憐な顔立ちだっただけに、その落差は余計に哀れでもあった。
 だが、現実は冷酷であり、そして、残酷であった。
 ネブカはメーヴェの更なる奥域を求めて、彼女の両肩を抑え付けると、激しくグラインドさせて、未通の聖域だった場所を無理矢理に抉り開けていく。
 公然の場で結ばれた二人を繋ぐ連結部から、エンテがまぎれもなく純潔であった証、そしてネブカを初めての男として受け入れ、女として成長を遂げた証明が滴り舞う。
 冷たい大理石に、水色のローブに、激しい二人の抽送は、破瓜の鮮血を所構わず突飛させ、それは初めてのはずのエンテの激痛を十二分に表しているかのようであった。
 ネブカは激しくグラインドさせる事で、エンテの身体を激しく軋ませながらも、剛直は処女特有の強烈な締め付けなどに解する事なく、ただひたすらに……容赦ない挿入跋扈を繰り返す。
 その激しさを物語るように、更にメーヴェの破瓜は飛び散り、尚も二人は激しく絡み合う。

 メーヴェの身体を抑え付け、渾身の一撃を突き出した。
 膣内に挿入されたネブカのそれが、一際膨張したように膨らみ、激しい濁流がメーヴェの膣内で波打つ。
 ――えっ!?
 エンテはネブカの男の欲望というべき、濁流が自分の膣内で注ぎ込まれてしまった事を実感できた。いや、自分の身体だからこそ、実感せざるを得なかった……
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 エンテは懸命に頭を振り、その身に注がれている濁流から逃れようと、懸命に足掻いた。だが、両肩を力強く抑え付けられ、激しく結合している状態からでは、もはや受精(受胎)から逃れる術はなかった。

「メーヴェよ。リーヴェの王女として……ユトナの水の巫女として、決して恥ずかしくない処女肉だったぞ」
 メーヴェはようやく解放されたのにも関わらず、秘唇は無残にもバックリと腫れ上がった状態を曝け出し、膣内出しされた残滓と膣内から溢れ出してきた濃密なエキスが、彼女の破瓜の鮮血と入り混じり、激しく連結していたそこから、滴り落ち続けていく。

 そして、この悪夢は彼女がガーゼル降臨の祭壇に登る、その前日まで繰り広げられていく……
 ……もはや彼女の妊娠は、既に揺るぎないものであった。


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