【 第九話 】
『俺が美少女な彼女たちを袖にするわけがない』
俺は卒業したばかりの母校、『弁展高校』前にある喫茶店。幸い、ちょうどお昼前という
ことで、俺が二人の美少女に頭を下げている光景は、当事者以外に知られることはなかった。
「・・・俺には、その・・・どちらにも悪い返事ができないっ!!」
それは俺の正直な気持ちであり、現在の心境でもあっただろう。
『黒猫』こと五更瑠璃には、こと桐乃に関して特に世話になってしまった。かつて互いの存在を無視するまでに至っていた兄妹間が、それぞれ向き合うことが
できたのは、紛れもなくこの黒猫のおかげであった。
自らの恋愛を犠牲にすることで、こいつは桐乃の本音を引き出してくれて、俺たちに失われていたはずの兄妹の絆を結び付けてくれたのだ。
それ以外にも俺はこいつの存在には幾度も救われており、惹かれており、助けられてきたのだ。そんな俺たちの恩人でもある黒猫を無下にできるはずがなかっ
た。
いっぽうのあやせにも、俺には色々と借りがある。
俺が大学受験に専念し、無事に合格できたのは、あやせが家事全般を引き受けてくれたおかげであり、また彼女にも、桐乃との関係が復旧するのに一役を担っ
ていた。
そう、あやせもまた・・・彼女の存在をなくして、妹と仲良くなっていたはずもなく、その意味では黒猫と同様、俺たちの恩人であっただろう。
確かに彼女たちには短所がそれぞれにある。それは人間である以上は当然のことだろう。だが、それ以上に彼女たちには長所があり、美点があった。そもそも
俺自身が短所だらけであり、特に誇れるほどの長所もないのだ。それだけに俺には勿体無い存在だろう。
・・・たくっ。桐乃の言うとおりじゃねーか。
俺にはどちらも勿体無いほどの申し出だったのだから。
「そ、それって・・・お兄さん。わ、わたしたちを二股にかけたい、ってことなんですかぁ!!」
最初に動揺していた精神を立て直して反応を示したのは、案の定というか、あやせだった。彼女は激昂して立ち上がり、凄まじいまでの視線で俺の顔を射抜
く。
「ど、どんなに酷いんですかぁ、お兄さんはぁ、そんなにわたしに罵られたいんですかっ! そんなにぶち殺されたいんですか!?」
「・・・・」
俺は頭を振った。
俺の先ほどの回答に、二人を二股にかけたい、なんてやましい気持ちはこれっぽっちもなかった。それだけは断じて誓う。確かにあやせたちには誤解を招きか
ねない台詞だったかもしれないが・・・
「そんなつもりはないし・・・そんなことが考えられるほど、二股をかけられるほど俺は器用じゃない。・・・ただ、どっちかに断りを入れて、どっちかと付き
合うなんて・・・俺には、できない・・・特におまえたち二人には。・・・ただそれだけだ」
「・・・・」
「優柔不断でも、ヘタレでも・・・いくらでも罵ってくれて構わない」
実際、どちらかを選べなかったのは事実だ。
「ふふっ・・・あなたらしい回答だと思うわ」
ここで初めて、黒猫が反応を示した。
先ほどまで凍りついていたような表情で、今もまだ完全には立ち直れていないのだろうが・・・
「二股・・・私はそれでも構わないわ。少なくても私が想定できていた最悪の返事よりも、ずっとマシだもの・・・」
「「黒猫(さん)・・・」」
「で、あやせさん。あなたはまだ二股されることを受け入れられない・・・この場合、先輩と付き合うのは私一人、ってことでよろしい?」
「ふっ、ふざけないでください!!」
途端にあやせは、黒猫独自の提案に噛みついた。
「このまま引き下がるぐらいなら、最初からお兄さんに再告白するわけ、あるわけないじゃありませんかっ!」
「では、どうするの?」
「わ、分かりました。わたしもそれで構いません」
それで落ち着いたのか、あやせは憮然としたまま着席する。
「ということで、先輩・・・いえ、京介は構わなくて?」
「・・・・」
正直、本当にこれでいいのか? と、思う。
確かに俺はどちらも選べないし、このまま考えたところで一向に埒は開かないことだろう。だからといって、こんな美少女の二人を(それもお互い公認で、だ
ぜ・・・)二股にかけていいものだろうか。
これが他の男だったら、俺はマジでそいつをぶち殺すぞっ!
「コホン。そ、その代わり・・・一つだけ、お願いがあります」
あやせは咳払いをして、自らの主張を押し付けてきた。
「黒猫さん、あなたは以前お兄さんのこ、恋人・・・だったんですから、お兄さんとそのデートした、はずですよね・・・」
「え、ええ・・・数える程度、ですけど・・・」
その黒猫の返答に俺も同意する。
「だから・・・お、お兄さんと最初にデートする、順番は・・・わたしが先でも構わないですよね?」
「そうね、それは構わないわ・・・」
黒猫の返答にあやせは「ふー」と深呼吸する。
とりあえず俺は静観することに決めた。もうなるようになれっ、という気分だったが、ここで俺が主張ないし反論すれば、二人揃って叩かれるのは明白という
ものだった。
「以前にあなたに告げた、と思うのだけど・・・私はき、京介の一番、というものに拘るつもりはないの。京介が妹大好きのシスコンでも、たとえ何人と何股か
ける人物でも、どんな変態であっても、私は京介を愛せるもの」
おいおい。
そりゃ、すげー台詞だな、黒猫。
「わ、わたしだって・・・もう、誰にも・・・たとえ桐乃にだって、この手に入れたお兄さんの恋人、という座を明け渡す気なんてありませんから」
「・・・・」
「だからお兄さん、お兄さんの一生は、もうわたしが束縛させてもらいますんでよろしくお願いします!」
こんな絶世の美少女に、こんな宣言をされてみ?
もう感動を通り越してただ唖然するしかない。
「へいへい・・・」
まして二人の告白に対して選べなかった、という負い目もあり、いつまでもこんな『ヘタレ』を見捨てられないよう、祈るばかりである。
「すまなかったな・・・色々と気を遣わせてしまって・・・」
「急にどうしたの? あなたらしくもない」
黒猫が微笑む。
「二股のことを気にしているのなら、とんだお門違い、ってものよ?」
「・・・そうか?」
「ええ。私たちは、あなたの『彼女』にしてもらった、という立場ですもの」
「・・・・」
あやせは午後から、モデルの仕事があるということで、俺と黒猫を残して退店していった。勿論、『お兄さんと最初にデートするのはわたしなんですから、く
れぐれも二人でデートしないでくださいねっ!』『明日の朝六時に、お兄さんと良く会った公園で待ちあいましょう!』と残していった。
「さてと、あやせとの約束もありますし、そろそろ帰りましょうか。日向や珠希たちのお昼もあるから・・・」
「駅まで送っていこうか?」
黒猫は微笑みながら頭を振った。
「やめとくわ・・・それこそ、あなたとデートした気分になってしまったら、あやせに悪いもの・・・」
相当に律儀なやつではある。
こうして俺は、再び彼女を得ることになった。
・・・しかも美少女の二人の二股である。
「おいおい、こりゃどんなエロゲーだよ?」
と、悪態をつく俺であったが・・・
この俺たちの関係がそれほど長く続くはずがなかったのだ。
そう、長くは・・・
「お兄さん、早く。二分遅刻ですよ!!?」
「い、いや・・・その・・・すまん、あやせ・・・」
俺は荒い息で喘ぐように、『彼女』となったあやせに謝罪した。
さ、さすがに朝六時は、普段から朝起きに慣れていない身にはきついものがあった。
「大丈夫ですよ、お兄さん。時間は少し余分に計算してありますから」
「そ、そうか・・・すまんな」
今日のあやせは白のラインに紺を基調としたシャツにライトグリーンのカーディガン、フリルスカートという衣装で、絶世の美少女に拍車をかけている完璧ぶ
りである。
そして俺の前ではもう馴染みつつある、桐乃と揃いとなるヘアピン。
「では、行きましょうか」
「おう。っと・・・」
途端に俺の腕を取るあやせである。
「それでデートってことなんだが・・・」
「あ、まだお兄さんに説明をしていなかったんですが、わたし、今日一日中モデルの仕事があるんで・・・お兄さん、いつか加奈子のときのように、わたしのマ
ネージャーをやってもらえませんか?」
俺の腕を取りながら、あやせが上目使い(←可愛い)でお願いをする。
まぁ、突然のことだったから、あやせと何処に行くとか、何も決められていなかった(俺ってホント、『ヘタレ』だ)から、まさに救いの声ではあったわけだ
が・・・
「ん、俺はあくまでも偽マネージャーだったはずなんだが・・・自信ねーぞ、マネージャーなんて・・・」
「でも加奈子のときだって、ちゃーんとやってくれたじゃないですか。あのときと同じ感じで構いませんから・・・」
「本当あんな感じで、いいのか?」
「ええ、バッチリです。自信持ってください。わたしが言うんですから、絶対に大丈夫です」
「なら分かった」
以前、あやせの依頼と加奈子の要望ということで、俺は仮のマネージャーまがいのことを請け負ったことがある。それと同じやつでいいのならお安い御用で
あったし、あやせにとってはそれがデートとなるのなら、俺としては全く構わない。
「そしてこれが今日のスケジュールです」
「・・・・」
あやせから渡された紙には今日の予定が書き込まれており、朝八時から夕方八時までビッシリと埋められており、昼食の一時間と午前午後に十五分間の休憩時
間が確保されてあるだけだった。
「・・・この時期に水着とは、恐れ入るな・・・」
夏に発行される季刊誌を印刷する場合、この時期に撮影を終わらせておかなければならない諸事情がある。
まだ春先にして今日の天候は思わしくなく、正直、寒い。だが水着姿のあやせは(いくらエアコンが利いている室内とはいえ)そんな寒さなど微塵も見せずに
笑顔を浮かべている。ここ最近のあやせに比べて、今日の彼女の笑顔は特に輝いているようで、撮影監督やカメラマンなどは彼女をベタ褒めだった。
「次は・・・第二撮影所ですね。お兄さん・・・」
「あいよ」
俺は手にしていたコートをあやせに着せてやり、共に次の撮影所と向かう。
「・・・・」
すげー、ハードだよ。これ・・・
俺はどこか、あやせの仕事に対する情熱を侮っていた。もしくは彼女たち(その中には桐乃も含まれる)を見縊っていたのだろう。煌びやかな業界であるだけ
に、もっと気楽なもんだとばかりに思っていた節もあった。
せめて形だけでも、と、以前のように髪型をオールバックにし、ビジネススーツを借りた自分の姿がなんとも滑稽だった。
午前の撮影を終えて、あやせと共に一旦事務所に戻り、私服に着替えた彼女が慌ただしく俺の方に駆け寄ってくる。
「お待たせしました、お兄さん。それではお昼にしましょうか」
「おう」
「では、行きましょうか」
あやせはすぐに俺の腕を取って食堂へと向かう。
絶世の美少女であるあやせにベタベタされるのは全く構わない。いや、むしろ俺的には大歓迎だったし嬉しい限りでもある。のだが・・・それまでにおける彼
女の格差・・・俺に触れるだけでも汚らわしい、って言っていたような同一人物とは到底に思えない行動だ。
だが、俺たちが食堂に入ったとき、あやせを良く知る人物であり、俺とも少なくない交流のある人物と鉢合わせした。
「加奈子!?」
「おっ、あやせじゃ〜ん・・・って、男と腕組んじゃって、こっちはあやせの彼・・・氏・・・」
俺の顔を一瞥して目を点にする来栖加奈子。
彼女は桐乃とあやせの元クラスメイトであり、ちょっとした成り行きもあって現在はあやせが所属する事務所のコスプレアイドルでもあったりする。
「キョースケェ!?」
「お、おう。久しぶりだな・・・」
加奈子と最後に会ったのは、正月の秋葉原UDXでのライブ以来であり、俺はその場で彼女の告白を断ってもいた。当時は既に彼女(妹)がいたからだ。
「おめー、マネに復帰して・・・って・・・何で、あ、あやせと腕を・・・」
「・・・ははっ・・・」
俺は苦笑する。
俺の腕を取っているあやせは顔を真っ赤にして俯かせているんだから、これはどうにも誤魔化しようがないわな。
「加奈子が告白したとき、おめーが付き合ってるって言った彼女って・・・あやせのことだったのかっ!?」
「・・・まぁな」
それは完全な誤解ではあったが、ここで正直に答えると、とてつもなくややこしい事態になりかねない。それはあやせも分かってくれていたようで、
「加奈子、お願い。このことはまだ内緒して・・・」
「そりゃー構わねぇ〜ケド・・・京介ぇの彼女があやせだったなんて、全く気が付かなかったぜぇwww」
それはそうだろう。
俺とあやせが付き合いだしたのは・・・正確には、あやせと黒猫と付き合いだしたのは、まだ昨日のことである。
「そーいや、桐乃が渡欧したって、本当かぁ〜?」
「ああ、本当だ。本人からメールでも来たのか?」
「いや、さっき、社長が話してるのをチラっと聞いたんよぉ〜チクショ、また差が開いちまったじゃーねぇかぁ〜」
・・・なるほど。
「お、お兄さん!? 桐乃がまた海外に行ったって、ほ、本当ですか!?」
俺は頷いた。
なんとなく、ではあったが、親友であるあやせには無論、黒猫にも黙って決めたような気がしていた。俺自身、あいつが渡欧すると聞かされたのは、その前日
になってからだったし。
「そんな・・・わ、わたし、何も聞いて・・・ない・・・」
「たぶん、見送られるのが嫌だったんじゃないか?」
前回の陸上留学のときも、桐乃は担任と両親だけに留めて、俺にも内緒で渡米していたのである。
「だから、あいつが帰国するときは・・・今度はみんなで盛大に迎えてやろうぜ?」
「そ、そうですね・・・そ、そうしましょう、お兄さん」
まだ桐乃が渡欧したショックから完全に立ち直れていないようであったが、あやせは俺の意見に同調してくれた。
「んじゃ、キョースケ。またあたしのマネをやってくれよぉな〜〜おめーならいつでも大歓迎だぜぇ〜」
「おう、またな〜」
「お、お兄さん・・・か、加奈子にもこ、告白されて・・・たんですか?」
昼食時のこと。これは絶対に指摘されるな、と覚悟はしていたが、案の定の如くあやせは問い質してきた。
「ああ、正月ときのライブのときにな・・・」
「わたし、そんなこと聞かされていませんでしたけどぉ・・・」
「・・・」
このあやせの少し不満顔が、これまた可愛いんだ。
「こ、これはお兄さんに盗聴器を仕掛けておく必要がありますね・・・」
おいおい。
警官の息子である俺でさえ手錠を持っていないのに、それを所持していたあやせのことである。そんな彼女ゆえに本当にやりかねないだろう。
あやせに二十四時間監視されたら、それこそ気の休まる時間もない。俺は懸命にその提案を却下した。
午後の撮影は、午前中よりもハードなものだった。
マネージャーの真似事である俺でさえこの疲労感だ。モデルであるあやせの疲労はもっとだろう。そんなことは容易に想像つく。だが、そんな彼女は疲労の色
を全く見せず、むしろ活発な笑顔を見せる。
・・・これが若さの差か? とはまだ思いたくはない。
「ではお兄さん、こちらがキーになりますので、先にチェックインしておいてください」
「おう」
あやせの言動があくまでも自然体だっただけに、俺は無造作にキーを受け取って頷いてしまっていた。
「え、えっ? ち、チェックインって・・・?」
「あれ、お兄さんには言ってませんでしたか? 今日は深夜撮影もありますので泊りなんですよ?」
き、聞いていませんが・・・
「あ、本当ですね。お兄さんに渡していたスケジュール表、わたし書き忘れていましたね。ごめんなさい」
あやせは謝罪しつつも、その素敵なまでの笑顔は何なんでしょうか?
まぁ、しかし・・・深夜撮影だってさ。本当に頑張る娘だよな。
俺は指定された部屋に入り、少ない荷物を下ろすと椅子に座り込んだ。
偽マネージャーである俺に用意された部屋だから、てっきりワンルームのビジネスホテルだろう、と思っていたら、室内はとてつもなく広く、内装は煌びやか
である。恐らくはこれがスイートルームってやつではないだろうか?
これ部屋・・・間違えてねぇか?
「ま、いっか・・・ふ〜〜極楽極楽」
正直、ヘトヘトだった。こんな日は今日だけなのだと思いたいが、あのあやせの働きぶりを見ると、これが毎日続けられているようにも思えなくもない。
「あ、そういあ、このあと何時にどーするんか聞いてねぇや」
・・・そもそも晩飯をどうするか?
そんな素朴な疑問を抱いたときだった。『カチャ』と小気味良い音で鍵が開いて、あやせが入室してきたのは・・・
「お兄さん。一息入れたら、晩御飯にしましょうか」
「お、おう・・・って、ど、同室?」
「えっ・・・そうですけど・・・な、何か問題ありましたか?」
いやいや。問題ありすぎでしょう!?
「この部屋も父が良く利用するところで、わたしもモデルの仕事とかで遅くなるときは、たまに泊まるんですよ〜?」
い、いや、あやせさん。俺、俺ですよぉ?
いつもエッチなことを想像するだけで殺人的キックを見舞い、セクハラすると驚異的なキックで吹き飛ばされてきた、変態シスコンにヘタレが追加された高坂
京介ですよ?
「?」
そんな不思議そうな表情で小首を傾げられたら(←しかも可愛く)俺でなくても襲いたくなるもんなんですよ、男って!!
「な、なぁ、あやせ・・・」
「はい。お兄さん。何でしょう?」
「そんなに・・・俺のこと、信用していいの?」
確かに俺は(当時は黒猫と付き合い始めた、ということもあり)あやせに対してセクハラはしない、と誓ったこともある。またセクハラまがいな言動も控えて
はいただろう。会うたびに色々と誤解され、そのたびに弁明もしたものだったが。
だが、絶世の美少女であるあやせと二人きり、深夜撮影が始まるまで一緒ともなると俺の理性とて完璧ではありませんよ、そりゃ・・・も、勿論、あやせに無
理やり迫るのは蛮勇(返り討ちに合うのが関の山で、俺がぶっ殺されちまうっ!!)というものだろうが・・・
「あ〜〜そういうことですか」
あやせも俺の言いたいことを理解したのだろう。
「お兄さんとずっと二人きりなのだと思うと・・・とても気持ち悪いじゃないですかぁ〜」
「おいおい、台詞と言動が一致してねぇぞ〜?」
こういうところは相変わらずである。
あやせは「こほん」と一つ咳払いして微笑む。
「お兄さん、以前、わたしにプロポーズしてくれましたよね?」
「お、おう・・・」
「つまり、今の交際は・・・結婚を前提にしたお付き合い、ですよね?」
「・・・そ、そうなの?」
「そうです」
俺の疑問をあやせはきっぱりと断定してのけた。
じゅ、順序が逆だったような気がしなくもない。
「だから・・・いいんです・・・」
いやいや。顔を真っ赤にして俯かないでください、あやせさん。その考え方は絶対に間違っている。というか、俺の知ってるあやせはそういう性行為には絶対
に妥協なんかしないはずだった。
・・・だが、こうして俺とあやせの長い、長い夜が始まる。
俺やあやせにとって、今後を大きく占う、その一夜が・・・
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