【 第十一話 】

 『俺の知る黒猫がこんなに可愛いはずがない』

 

 俺は入学した大学の入学式を終え、この講堂から一時間後にオリエンテーションが行われ る学部のキャンパスに向かうべく歩を進めていた。

「しかし、もうすぐ桜も満開だな・・・」

 ふと、先週に渡欧した妹のことを想像する。あいつは今ごろ何をやっているのだろうか、と。まぁ、何ごとでも全力全開の桐乃のことである。トップモデルに なる、と一つのことに専念し始めた今、それを確実にするべく一つ一つ字歩を固めていることは間違いあるまい。

『お兄さん、浮気ですね?』

 最近、桐乃のことを考えるたびに、このあやせのフレーズを思い出してしまう。特に桐乃の話題だけならともかく、頭の中で想像するだけでもあやせは敏感に それを察知し、俺に追及してくるのだから。

「・・・・」

 あやせは変わった、と思う。

 以前はもっと潔癖症で、性行為なんてもってのほか、といったような感じのイメージだったが、俺との関係が『恋人』というものになったからだろうか、何か の心境の変化だったのか。以前のような頑なに反抗するわけでもなく、むしろ積極的になっている。

 まぁ、あの殺人的なキックが飛んでこないだけでも在り難い。

 そしてあの殺人的なキックが誇る身体だからだろうか、あやせの身体はとてつもなく気持ちがいいのだが・・・

「・・・きょうちゃん、久しぶりだね・・・」

「おう、麻奈実か。そうだな・・・卒業式のあのとき以来か?」

 同じ大学に通うことなる彼女の名前は田村麻奈実。俺の幼馴染であり、高校のクラスメイトでもあり、俺と桐乃の関係を唯一に『気持ち悪い』と断言した唯一 の常識人であろう。そんな麻奈実は『普通』『平凡』『凡庸』の三拍子を揃え、少し天然のかかった腐れ縁だった。

 だが、それだけに(俺への告白も含めて)あの日のこいつには驚かされた。あの公園で繰り広げられた桐乃との喧嘩、まさにリアルファイトを決行した同一人 物とは到底に思えない。

「きょうちゃん、今、すっごくえっちなことを考えていたでしょ?」

「えっ、えっと・・・」

 やばい、顔に出ていたか・・・いや、出ていなくてもこいつは俺の考えていることなど容易に把握する特殊技能(ただ付き合いが長いだけとも言う)がある。 俺が昨日までのあやせとの甘い日々を想像していたことなど誤魔化しきれるものではない。

「はっきり言ってね、きょうちゃん。桐乃ちゃんとそんなことをするなんて正直、変だと・・・気持ち悪いと思うよ」

「・・・・」

 俺はややあって、ようやくに事態を把握する。

 そうか、こいつは知らないのだ。既に桐乃は渡欧しており、そしてあの日に俺と桐乃は普通の兄妹に戻っていた事実を。

「あー、その話は今、しないでくれ・・・」

 そんなこと・・・い、言えるわけ、ねーよな。

 いつまでも誤魔化しきれるものではないが、仮にも麻奈実も俺に告白をしてくれた人物の一人である。そんな彼女に、今では桐乃と別れて、別の女の子と二股 を容認された彼氏になっています、とは知られなくはなかった。

「でも、きょうちゃん・・・」

「デモはなしだ。過激になればテロにもなりかねんぞ?」

「意味わからないことで誤魔化さないで、怒るよ、きょうちゃん。ぷんぷん」

「あ〜ごめんよっ」

 俺も寒いとは思ったよ。これはないわ〜とも思ったよ。



 そうこうしているうちにキャンパスに到着する。

 道中、美女に薔薇の花束でぶっ叩かれ続ける優男もいなかったし、別の男がその薔薇を手当たり次第に配っているような光景もなかった。



 オリエンテーションが終わり、各自自由行動となった。昇降口では既に猛烈ともいうべき、サークルの勧誘合戦が始まっており、この凄まじい光景には毎年、 一年が唖然とする熱狂であった。

「なぁ、高坂はサークルどうする?」

「そうだな・・・まぁ、とりあえず色々と考えてみるわ」

 今日初めて知り合った学友の問いに答えながら、ひときわ人だかりの多い正門の辺りに視線が集中した。

「どうしたんだ・・・あれ?」

「さぁな。その辺の奴に聞いてみようぜ・・・」

 俺の問いに学友が答え、俺たちは人だかりの多い中、同じ一年生であろう一人の男子生徒に問いかけた。

 何でも絶世の美少女である女子高校生と、可憐な黒髪の美少女の女子高生の二人が囲まれている、ということだった。

 おいおい。ものすごーく、嫌な予感しかしないんだがよオイ・・・

 その人混みの中から目敏く俺を見つけた、注目の的であるあやせが俺のもとに駆け寄ってくると即座に腕を組んできた。またそれに負けじと『黒猫』のやつも 俺の片方の腕を取ってくる。

 う、嬉しいけど・・・か、勘弁してくれぇ・・・

 後方からは非難の嵐。「何であんな平凡そうな奴が・・・」「し、しかも二人もだと・・・」の声がちらほらと。



 この瞬間・・・俺はこの大学の全男子生徒全員を敵にまわしてしまったような、そんな瞬間だった。



「で・・・二人は何で、こんなところに?」

 俺は既に全てを達観したつもりで問いかけた。

「こうして公然にお兄さんの彼女だと、周囲に認識させておけば、浮気される心配は軽減されますから、仕方がないんですよ、お兄さん・・・」

「わ、私はただ、あなたがどうしても今の高校の制服姿を見たい、って言うからし、仕方なくよ・・・あんまり詮索しないで頂戴」

 あやせのそんな心配はいらないだろうし、黒猫に至っても、わざわざ大学まで押しかけてくる必要はないだろうに。あやせにしろ、黒猫にしろ、俺には勿体無 いほどの美少女であり、既に二股になっている時点で俺のキャパシティーを越える状況なんだぜ。

 一体、こいつらは俺の何処にいらん心配をしているんかね?



 こうして俺は、初日から既に登校拒否したい気分にさせられるのであった。





「それではお兄さん。わたしはこれで帰りますね」

 あやせは駅に到着すると、それまで密着させていた腕を離した。

「えっ?」

「えと、昨日までお兄さんを独占させてもらっていたんですから、今日は黒猫さんの邪魔をしちゃいけないかな、と思いまして・・・」

「そんなの気にする必要はないわ・・・それに、今日はあなたに手伝ってもらいたい案件もあったし・・・その、できれば一緒にいて頂戴」

 俺はあやせと黒猫を見比べて、どうするべきか迷う。

「本当に一緒にいていいんですか? お兄さん、黒猫さん?」

「俺は別に構わないが・・・」

 俺はちらっと黒猫に視線を向ける。

「私もよ。今日はあやせにもお願いしたいことがあって、一緒にきてくれるととても助かるのだけど・・・」

「ってことだ。黒猫もこう言ってるし、その用事とやらを済ませた後は、折角ここまで来たんだしさ、三人で遊ぼうぜ」

「はい・・・分かりました。それでは言葉に甘えて、お邪魔しますね」

 あやせは初めて見せる高校の制服を翻して、再び俺の腕を取ってきた。まるでそこが自分の定位置だと主張するかのように・・・



「それで黒猫、あやせにお願いしたいことって?」

「服よ・・・あやせも桐乃同様モデルなんですから、私に合う服を彼女に見繕って欲しいの・・・」

「わたしに、ですか?」

 黒猫は表情を俯かせた。

「い、以前にあの女は、私に似あうからという理由で、エロゲーの衣装を着せたのよ・・・ええ、許せないわ・・・」

「でも、凄い似合ってたぞ?」

「そ、そう・・・でも、私、服を余り持ってないから・・・」

 あー、と俺は唸る。高校の制服以外の黒猫は、例の桐乃に見繕ってもらった白のワンピース、俺とデートした際の『神猫』のドレス。コスプレ衣装でもあるゴ スロリドレス、お手製の水着であったり、猫耳メイド服であったり・・・そして、赤いジャージ(←しかも中学時代の)しかない。

 確かに黒猫はおよそ普段着、と呼べる衣服は少ないのかもな。

「分かりました。そういうことでしたら、わたしのセンスで良ければ選ばさせてもらいますよ」

「そうして頂戴・・・」

「そしたら、俺がそれを買ってやるよ」

 こいつには世話になっているし、何より・・・

「な、なんであなたが私に服を買うのよ? そ、そんな義理は・・・」

「なんでって・・・お前、もうすぐ誕生日じゃん。まぁ、その前渡しってことで、どうだ?」

「ど、どうして・・・あなたが、私の誕生日を・・・」

 驚きながら身悶えている黒猫。

 こんなときのこいつは本当に怒っているときか、もしくは物凄く嬉しいときのどちらかであることを俺は知っている。そして今回は後者であることにも。

「ちょっと、お兄さん」俺の肩をトントンと叩き、「わたしを置いて二人だけの世界に行かないでください」と拗ねるあやせ。

「あら、ごめんなさい。既に京介の魂は私の所有物なのですから、彼と世界を共有してしまうのは致し方のないことだわ・・・」

 い、以前にあったようなこの展開。

 正直に思う。この三人でデートするのは考え物ではないか、と。

 ただこの黒猫の様子は、良く見慣れていたものであろう。ただ相手が桐乃ではなく、あやせに変わっただけで・・・すなわち、この馴れ合いも二人が仲良くな るために必要不可欠な手順であるように思えなくはない。



 さすがは現役のモデルであり、桐乃とは違ってオタクとは程遠いあやせの慧眼であっただろう。試着を終えて現れた黒猫の姿は、これまでに見たどんな彼女よ りも可愛くて、そして綺麗であった。

「・・・」

「ど、どう・・・かしら・・・?」

 やっべ・・・こ、これは・・・

 あやせが黒猫に選んだのは、やはり白を基調とした衣服であったが、桐乃のときの可愛らしさを前面にしたワンピースとは異なり、こちらは上品さと優美さも 兼ね備えた衣装であった。特に綺麗な黒髪を引き立てる白いカチューシャ(←しかも猫)がなんとも際立っていただろう。

 巷で騒がれているどんなアイドルよりも、これ、黒猫の方が・・・遥かに上なんじゃね? 渡欧した桐乃なんか・・・目じゃねぇよ!

 俺は正直に、渡欧したのが黒猫でなかったことを感謝した。そんぐらい、あやせに見繕ってもらった黒猫は最高だったのだ。

「だ、黙ってないで・・・き、京介の感想を聞かせて頂戴・・・」

「・・・さ、最高・・・」

 俺は辛うじて、やっとの思いでそれを口にする。

「・・・く、黒猫・・・俺、お前と・・・また付き合えるんだよな?」

「え、ええ、そ、そうね・・・」

「いいんだよな、俺・・・俺なんかで・・・」

 俺は口籠る黒猫を改めて見惚れて涙する。

 そのぐらい今の黒猫はやばかったのだ。



 ・・・そして、それだけに少しして、冷ややかな視線を向けてくるあやせに平謝りする、情けない俺ではあったのだが・・・







 その翌日のことだった。

 自室にいた俺は唐突に鳴った携帯から、『沙織・バジーナ』の名を液晶で確認し、すぐに出ることにした。

『これは京介氏、こんばんはでござる』

「おう。そろそろ電話が来るころだと思ったよ」

『左様でござるか・・・』

 そう。俺は沙織に隠していたことが二つほどある。

「まず・・・桐乃のことだな。正直に、黙ってて悪かった」

『左様。『きりりん』氏から渡欧した、とメールを戴いたとき、またかぁ〜と多少の怒りを感じましたが・・・まぁ、今度は前回のように音信不通はしないとの ことでしたので・・・』

 あ、やはり怒ったのか・・・と、覚悟を決める。

 沙織は特にサークルの消滅を極端に恐れている節があった。同時にそれも仕方のないことだと思わなくもない。かつて初めて沙織が参加(正確には静観)して いた『小さな庭園』は、沙織の姉であり、そのサークルの創設者である槇島香織の脱退を期に、ゆっくりと崩壊していった。

 そして沙織が打ち立てた現在サークル、『オタクっ娘あつまれー』も、俺や桐乃、そして黒猫の一騒動でサークル崩壊の危機に瀕したとき、超美貌の素顔を曝 け出して、激怒しては懇願してもいた沙織である。

「すまないな・・・今回は・・・いや、今回も、だな。あいつを止めることはできなかったよ・・・」

『そうでござるか・・・まぁ、きりりん氏が帰国されるときは盛大にパーとやりたいでござるな』

「あ、それは俺もあやせに言ったわ・・・」

『・・・もう一つ、京介さんにお尋ねしたかったことは、それですの』

 途端に沙織のへんてこな口調が、上品な口調へと変わった。

 お、おい。ここでテンプレ御嬢様の沙織になるのか?

『京介さん。今、あなたの彼女は・・・あやせさんですか? それとも・・・』

「・・・」

 やばい、やばい、やばいよっ、俺・・・

 二人に再告白されたとき、桐乃だけではなく、こいつにも相談しておくべきだったかもしれないが・・・

『あら、放置プレイですの? つれないですわね、京介さん。それとも、ものすごく変態なんですのね・・・』

「・・・怒っているよな・・・」

『別にわたくしが怒るようなことではありません。・・・ただ呆れ果てさせられましたが・・・』

「・・・」

『ええ、存じておりましたもの。京介さんは女垂らしで、スケベで、変態で、シスコンで、ロリコンで、エッチで、大の女好きだということは・・・』

 ひ、酷い言われ様だぜぇ・・・

『今度からスケコマシャー京介陛下と呼ばせてもらってもよろしいですか?』

「余りにも恐ろしい称号と俺の名前をくっ付けないでくれぇぇぇぇ!!」

 頼む。頼むよ。いつもの沙織・バジーナに戻ってくれよ。

『では、京介さんは、黒猫さんとあやせさん、二人を二股にかけている、そのことは認めるのですね?』

「ああ。どちらにも告白されて、どちらにも断りきれず、なし崩し的に二人と付き合うことになってしまった・・・」

 俺は観念して、沙織に全てを説明する。

 桐乃とは期間限定の恋人であったこと。そしてオフ会のあの日に、あやせと黒猫から告白され、二人と付き合うことになったことなど。

『・・・・』

「沙織にもいつか相談しなきゃ、と思っていたんだけど・・・二股の野郎の俺がどんな面で相談できるのか、って・・・余りにカッコ悪くてさ・・・」

『そうやって開き直ったところの京介氏は、それがしも嫌いではないでござるよ。それに京介氏は優しいですからな〜優し過ぎるところが問題でもあるのでござ ろうが・・・』

 再びバジーナさんに戻ってくれたこともあって、俺はスマホを少し離して深い溜息を一つ吐く。

『まぁ、それがしはどちらも大切なメンバーですから、どっちを応援するわけにも参りませぬが・・・』

「そうだな・・・」

『ところで今日、京介氏に電話したのは、黒猫氏についてなのですよ』

 沙織は一旦話題を切って、今回電話してきた趣旨を告げる。

「黒猫?」

『拙者の師匠、ともいうべき方が、是非黒猫氏に会いたい、ということでしてな・・・どうでござろう。黒猫氏とも付き合っている京介氏も一緒に、師匠のお宅 に向かってはござらぬか?』

 ・・・沙織の師匠?

 以前、沙織が語ってくれた『小さな庭園』の、最後のメンバー。その一人に免許皆伝の証として、ぐるぐる眼鏡が沙織に継承されたらしい。沙織の師匠とはそ の人物のことであろう。

 俺も沙織が住む(一棟丸ごと住居とする)マンションで会ったことがあり、全く見知らないわけでもない。

「分かった・・・」

『では、住所を申し上げるでござる』





「べ、別にあなたが付いてこなくても・・・いいのよ?」

 俺と合流した黒猫は、あやせに見繕ってもらった衣服をさっそく着用して、即座に俺を悩殺した後、赤面しつつ俺の腕を取りながら口にした。

 やばい。やばすぎるわっ。この黒猫の姿にこの台詞と言動は。

「沙織の師匠が会いたいのは私であって、あなたではなくてよ?」

 と、言いながらも決して離さない、俺の腕・・・可愛い、可愛い過ぎますよ。そんな今日の黒猫さん。



 だが、沙織に教えられた目的地に到着する間際のことだった。

「キョースケぇ!!」

 俺の名前が突然呼ばれ、振り返ったそこには・・・来栖加奈子の姿があり、当然、俺の腕と組んでいる黒猫の姿に唖然としていた。

「か、加奈子?」

「出ましたね、メルルもどき・・・」

「お、おめー、あやせと付き合っているんじゃなかったのかよぉー、浮気なんてしてバレたら、ぜってぇー殺されるんぞぉー」

 加奈子のやつが俺と腕を組んでいる黒猫の姿を見たら、そう思われても仕方のないことだろう。また共にあやせが持つ深淵の恐怖を知る人物であっただけに、 彼女が懸念することも分からないわけではない。

「問題ないわ。だって、私が先輩と付き合っていることは、あやせも承知の上のことですもの・・・」

「・・・・」

 黒猫の返答に言葉を失って俺たちを凝視する加奈子。

「お、おめー。そーとーデンジャラスな日々を送っているんだなぁ〜」

 あやせの性格をよく知り、俺と同様、もしくはそれ以上の被害者であろう者の言葉であろう。そう、怖いのだ・・・特に何か問い詰めよう、とするときの彼女 の迫力はっ!



「そんで〜、京介は何処に向かってんだぁ〜?」

「おまえ、こっちの方に詳しいのか?」

 俺は沙織から貰ったメールの液晶を加奈子に見せて、もし暇なら道案内を頼もうとした。言葉使いこそ悪いこいつではあるが、それとは裏腹に意外と性格はい いやつなのである。

 だが、加奈子の発した言葉は予想外のものだった。

「これって、うちのマンションの・・・うちの部屋じゃんかぁ〜!!」

「へっ? おまえんとこ?」

「あー、以前に言ったと思うけどー、あたしさー、親とすげー仲悪くって、家出したって言ったじゃん? そんで今は姉貴んとこにさー、世話んなってんの よ〜」

 俺は恐る恐る聞いてみる。

「この、来栖彼方って・・・」

「うちの姉貴だぜぇ〜ちとオタ入ってるけどー」

 それはそうだろう。沙織が最初にいた『小さな庭園』のメンバーであり、その『小さな庭園は』後に沙織が創設した『オタクっ娘あつまれー』の前身なのであ る。またその沙織にオタクの何たるかを指導したのが、師匠こと来栖彼方なのだから、

「なんてこった・・・」

 これまで加奈子との関係は、桐乃かあやせ、麻奈実繋がりだけだと思っていたが、実は沙織経由でも縁があったことになる。世間は狭いと言うが、特にオタク の知り合いとは、驚異的にエンカウント率が高いのかもしれない。

「私も・・・少し驚いたわ・・・」





「やぁやぁ〜ナイトメアちゃん、来てくれてありがとうなのだよぉ〜そっちのボーイフレンドくんも、さおりん氏の御宅以来だねぇ〜」

 盛大な声量で迎えてくれたのは、加奈子の姉である来栖彼方だった。確かに若干瞳の色が違うが、同じ髪色でリボンの色こそ違うが同じ髪型のツインテール、 ほぼ変わらない小柄な体格と、加奈子にそっくりな容姿だった。

「ささっ、入ってぇ入ってぇ〜」

「ナ、ナイトメアちゃん・・・あ、あなたはあのときの・・・」

「・・・これが、加奈子の姉ちゃん!?」

 これまで気付けなかったのは、この姉妹が持つ雰囲気が全く異なるからだったかもしれん。



 こうして今日、新たに黒猫経由からでも、加奈子との縁が結ばれるわけであったが・・・


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