10『 魔軍の暴帝 』

 

 『 魔軍の暴帝 』







 広大な大地である、エクリプス大陸。

 その大陸は大きく二つの世界に分けることができる。

 亜人種族らが支配していた北方大陸と、人間族が支配する南方大陸とに。俯瞰して大陸を見下ろせば、亜人種族の北方大陸がやや扇状に、大陸の中央から南方が人間の支配する勢力図となっている。



 そして南側の人間族が三大国――ヴェンツェル皇国、カルマーン帝国、ファイゼル王国――と分類できるように、亜人種らが支配する大地でも、それぞれの地域でそれぞれの敵対勢力と抗争を続けており、総体的にみれば、もっとも最北端に位置していた魔軍をなし崩し的に巻き込んでいった。



 最初にオークとオーガ、ゴブリン、トロールとの戦端に介入を余儀なくされたのが、およそ二百年前のこと。当時はまだ先代の『魔王』が存命中のことであり、魔軍は消極的ながら勢力圏確保の姿勢だった。

 先代の『魔王』には圧倒的な力量、魔軍に軍事力があっても、常に協和の道を模索していた。実際、どんな他種族であっても、『魔王』の言葉には傾聴し、小さな抗争が起きるたびに、最終的には『魔王』の仲裁を受け入れていく。

 エクリプス大陸の創世記から、数千年の歳月を数えながらも、数多の多種族のほとんどが絶滅しなかった成因には、先代の『魔王』らの存在はどうしても欠かせないものだろう。



 その魔軍の軍事方針が消極的な講和路線から、積極的なまでの勢力拡大に転換したのは、先代の『魔王』が崩御し、『魔帝』マグラートの代になってからのことである。

 先代の『魔王』存命時の当時から、『魔帝』はその消極的な姿勢に歯がゆい思いをしていた。事実、他種族も少なからず『魔王』の存在に依存していた。そればかりか、都合良く利用していた節さえもあった。

 そして決定的となったのが、圧倒的な力を持つ『魔王』が崩御した際、ゴブリンの一団が魔軍勢力の拠点に強襲をしかけてしまったことに端を発する。

 これに激昂した『魔帝』マグラートは、魔軍の沽券にも関わり、軍事的立場では同格となる『魔軍四天将』と共に反抗勢力の一掃、そしてエクリプス大陸に武力による征服に乗り出していった。





 そして、それから百余年の歳月が経過していた。



 ・・・・。



  ――ハイエルフの里――



 大陸の地理的に言えば、ヴェンツェル皇国より西、魔法大国ファイゼル王国との国境に比較的近いと言えよう。



 その静粛なまでの自然だけに囲まれる大森林。

 だが、その神秘なまでの自然なる姿は、燃えさかる紅蓮の炎の傷跡と凄まじいまでの『魔帝』の哄笑だけが蔓延っていた。



 元々、ハイエルフを中心としたエルフ族はドワーフ族とダークエルフ族、二つの敵対勢力を持っていた。その戦況はまさに一進一退。種族の寿命が長いということもあって、長期戦はどの陣営も望むところだったのである。

 だが、その三つの勢力に隣接するまでに勢力を拡大してきた魔軍の存在によって、戦局は大きく傾いていく。

 まず、最初にダークエルフが魔軍に対して恭順的な姿勢を見せた。魔軍の思想や軍事方針に近いということもあっただろう。王族の娘を差し出し、およそ友好的な関係を結ぶことに成功したのである。

 続いてドワーフ族は魔軍と一戦を交えた後、降伏することが許された。こちらも王族に連なる若い王女を『魔帝』に差し出し、芸術的な技巧を施した献上品。そして以降は魔軍の尖兵となって戦うことで、だが。



「ぎぁはははははっ・・・・」



 もっとも陰惨な運命を強いられたのは、エルフ族であっただろう。

 ドワーフ族と同様エルフ族も、精鋭を集結させて魔軍と一戦を交える姿勢を示した。特に若いエルフ騎士たちの誇り高さもあって血気は盛んだった。

 対する魔軍には、『魔軍四天将』の一人、フェンリル。そしてその指揮下にある獣人族を中心としたフェンリル師団と相対する。一人一人の戦闘力では劣るものの相対的な数では圧倒しており、戦いは長期化するものと思われた。

 だが、エルフ精鋭部隊の側面から、ダークエルフ族の痛烈な強襲を受け、エルフ族の精鋭部隊は惨敗を期したのであった。



「すげぇー! すげぇぞぉ!!」



 だが、エルフ族の降伏は許されなかった。

 一つには開戦時における、エルフ族の言葉が『魔帝』マグラートの勘気に触れた、ということもあった。ダークエルフが恭順する条件の一つに、エルフ族の蹂躙という事項があったということもある。だが、それ以上に・・・多種族への見せしめ、という意味合いが多分にあった。



 かくして森深くにあるエルフの里は地獄のような業火に焼かれ、『魔帝』マグラートに蹂躙される運命を辿った。



 そして今も・・・







 先行していたフェンリル師団からマグラートの魔帝師団に主攻が委ねられ、エルフの森への再侵略が開始されていた。主だった騎士や戦士、魔導師といった主戦力は先の会戦で失ってしまっていたエルフ族には、この魔軍の侵攻を妨げるだけの戦力はもはやなく、エルフィン王は捕らえられ・・・

 戦いは次第に局地的な殲滅戦へと移っていった。





「クルフィン!!」



 魔軍に捕らわれたエルフの幼き王女シェルフィールの叫びが木霊する。

 エルフィン王の孫娘であるシェルフィールの美しい外見が幼く見えるのは、種族による寿命などではなく、人間の実年齢にして十一歳だからだろう。王族にして小柄な身体。可憐なまでの容姿など、奇しくも同年に生まれたヴェンツェル皇国第四皇女レティシアと似た境遇ではある。

 だが、それ以上に酷似していたのは、彼女が生まれながらに持ってしまった技能、『極上名器』――確率にして百億人に一人――の所持者であり、彼女にはまた『永久純潔』という、レアスキルを併せ持つ、まさに稀有な存在であった。

 真っ白な豊かな長い髪、小柄な身体に相応しい胸の脹らみは(※こっちは種族の性質によって)慎ましく、種族特有の耳。まるで光沢を放つような美脚であり、その誰もが美少女と断定することであろう。

 その彼女も懸命の逃走も虚しく、この一帯に敷いた魔軍の網に捕まり、今は若き騎士クルフィンのみが彼女の唯一の護り手であったのだが・・・





「すげぇ〜生命力じゃねぇ〜かぁ!

 さすが、至高なるエルブンナイト様だな。

 ゲラゲラゲラ・・・」



 『魔帝』の哄笑が木霊する。

 実際、余りの痛快さに涙が溜まっていたほどだ。



「・・・そぉんじぁ、いくぜぇ〜〜♪」

 マグラートが持つ最強の攻撃魔法。『極限爆炎地獄―インフィルノ―』だ。それもただの『極限爆炎地獄』でない。マグラートの特殊技能、『魔法適正』――攻撃魔法にのみ威力が倍加――によって、従来の『極限爆炎地獄』とは火力も破壊力も桁違い。もはや別次元の魔法と化していた。

 またの別名を、《カイザーフェニックス》

「・・・うっ・・・あ・・・」

 その爆炎地獄の名を冠した鳳凰を前に、一人の騎士が独楽のように上空へと弾かれ、急旋回した灼熱の炎を纏った鳳凰が更に追撃を行う。それが最終段の十二回に及ぶ頃には、遥か上空にまで跳ね飛ばされていた。

 《 どさっ! 》

 今、マグラートの前にいるのは、かつて『ハイエルフの英雄』とも称された騎士であり、王の孫娘シェルフィールの許嫁でもあり、そしてマグラートの勘気に触れる啖呵を放った人物の一人でもある。

 ・・・・。

 ただし、それらを全て過去形で語らなければならないような、憐れな姿ではあったが。



 今、クルフィンの生を存えさせているのは、マグラートの特殊技能、『加減調整』によるものだ。これを発動させている間は、マグラートの魔法攻撃に限りクルフィンが死に絶えることはない。

 ただし、死ぬことはなくてもオーバーキル分のダメージによる痛みは有効で、現在の彼の姿は生きている瀬戸際の屍。死亡寸前の生者、と言っても過言ではなかった。



 倒れ伏した騎士を魔法の力で掴み上げ、決して倒れることを許さない。

「ほらぁ。まだおねんねするには早いぜぇ・・・」

 マグラートの視線による「やれ!」という合図と共に、クルフィンの身体に『ポーション』や幾つかの信仰系回復魔法がかけられ、ゆっくりと体力と意識が回復していく。

 そのエルブンナイトに、再び『魔帝』は攻撃魔法を放つ。

 頭上で合わせられていた『魔帝』の両手が左右に広がる構え。それに凝縮された光が両手の軌道に糸を引くかのよう。

 今度は極限爆裂系魔法だ。



 《 ちゅどぉ〜〜〜ん!! 》



「ひっ!!」

 たちまち幾人かの回復術者も巻き込んで、盛大な爆発音が炸裂していった。





 ・・・『魔帝』マグラート。



 先代『魔王』が唯一に残せた後継者であり、外見だけで見れば人間の二十代後半でも通用するだろう。戦闘スタイルは基本的に魔導師型であるが、逞しいまでの肉体にも恵まれ、その身体能力に接近戦もこなせなくもない。

 無造作に伸ばされた漆黒の長髪。見れば竦み上がるような鋭く赤い眼光。鋼の様な・・・それこそ長身だが巨漢の重騎士が持つような逞しい体躯。腕一本が丸太のような太さがある。

 性格は残忍にして残酷なほどに狡猾。

 でなければ、魔軍の総帥『魔帝』として存在できない。



「こ、殺せ・・・」

 再び、ポーションと回復剤(回復術者は死去したため)によって、朦朧としていた意識を取り戻したクルフィンが臆することなく『魔帝』を睨む。

「ほぉ・・・」

 折れた剣を支えにして立ち上がろうとする姿勢には、まだ誇りというものが随所に感じられたのだ。『魔帝』とはいえマグラートも武人である。こういう折れない信念、誇りを持った存在は嫌いではない。

 特に・・・



「爆裂!!」

 《 ちゅどぉ〜〜〜ん!! 》

「ぐぅあ!!」





 ・・・特にその存在の前で大切な人物を穢す行為に。が、だが。





「いやぁぁぁぁああああ〜〜〜!!」

 マグラートが捕らえていた幼き王女の身体を掴み上げる。

 し、シェルフィール・・・という呟きが大地にうずくまるクルフィンから漏れた。だが、今のエルフの騎士はまさに虫の息。完全なる無力な存在でしかなかった。

 掴み上げた小柄な身体。その黄緑の衣装はそのままに、股間を覆う下着のみを消滅させる。

 マグラートの眼前に晒された、黄緑の衣装からも覗けるシェルフィールの秘所。まだ陰毛もなく、現在も縦に固く閉ざされている花弁。まだ男を知らない穢れのない存在。



 ふん。これが・・・本当に極上なのかぁ?



 本来、最北端の本拠地ダークキャッスルに居座って、様々な種族からなる寵姫らを侍らせているマグラートであり、今回に限って、わざわざフェンリル師団から主攻の座を譲ってもらったのは、ゾエオルの『生態調査』とヴァーミリオンの指令によるものだからだ。



 そもそも現在のマグラートは『魔帝』であり、魔軍の軍事的立場では『魔軍四天将』と同格である。如何に魔軍総帥のマグラートとはいえ、『魔帝』である限りは、他の『魔軍四天将』はおろか、他の師団にも指令できないのだ。

 マグラートが『魔軍四天将』に命令を与えることができるとすれば、それは魔軍の最高位である『魔王』に(後継者を得ることでランクアップ)なるか、もしくは『魔軍司令』を兼ねる、『魔軍四天将』ヴァーミリオンを動かす他にない。





「・・・・」

 マグラートは『極上名器』の所持者、シェルフィールの身体を一瞥する。ハイエルフ族ということもあって、素材は悪くはない。後数年もすれば、百を越える寵姫の中でも際立つ存在になるかもしれない。

 だが、いかせん小柄な身体・・・未成熟である。

 出産成功率とて、たったの4%しかない。

 マグラートの特殊技能『不妊射精』――絶対に妊娠しない膣内射精。射精回数を重ねることによって、出産成功率が上昇し易くなる――は欠かせないだろう。

 面倒なことではある。

 だが、ゾエオルから説明された・・・百億人に一人の確率という、『極上名器』というものには興味があった。そして何よりも・・・『処女』ということが、マグラートをこの上なく高ぶらせる。



 特に『痛覚増大』によって破瓜させる・・・



 その瞬間が・・・





 禍々しいほどの剛直が曝け出される。

 それはマグラートの巨体が持つに相応しい逞しさでありながら、股間から隆起された肉棒には、これまでに数えきれないほどの処女を破瓜してきた不気味さが漂ってもいた。その先端から根元の途中まで、真っ赤にコーティングされているそれがその証左である。

 そう。これまでにも十万を優に越える処女膜を突き破ってきた・・・そして裂けさせもした、歴戦の戦歴の持ち主でもあるのだ。



 それがシェルフィールの股間へ、と宛がわれる。



 辛うじて息をしているクルフィンの方に向けられ、彼女はようやくにして、下の下着が消失していることに気が付く。そして『魔帝』が行おうとしている行為にも・・・



「い、いやあぁぁぁ・・・・」



 それは壮絶な悲鳴だった。

 《 ずぶずぶぅ 》と身体を軋ませ、

 さもそれが当然かのように埋没させられる。



「あがっ・・・ががぁ・・・」



 可憐な美少女のはずの顔が、激痛――痛々しく、虚空を凝視するかのように――に歪む。

 マグラートのペニスとでは・・・太さも長さも、大きさにしてもサイズそのものが違い過ぎるのだ。

 ましてシェルフィールの膣は濡れてもいない。

(ふん。『痛覚増大』は不要だったな・・・)

 この場合、痛覚増大よりも、音声増大の方が良かったかもしれん。今も《 みしぃみしぃ 》と引き裂くような心地良い感触が伝わり、それを目の前の騎士、クルフィンには伝えられないことだけが残念であった。



 そしていよいよ、シェルフィールの処女膜に突き当たる。

 まだマグラートの半分も埋まっていない。だが、それだけに膜の弾力性、そして《 ぷつぅぷつ 》と千切れる感触がマグラートに伝えるのだ。



「・・・では、いくぞぉ?」



 その宣告にも似たマグラートの言葉は、絶え絶えに息をしている王女に向けたものであり、無力なまでに最愛の人物を犯されたクルフィンに告げたものであり、まだまだ幼いとはいえ、シェルフィールがこれまでに護ってきた純潔への、せめてもの手向けの言葉であった。



 ハイエルフの王女の盛大な除膜式が敢行され、うずくまるクルフィンの目の前で、シェルフィールの股間はマグラートの一部を・・・その先端から半分を受け入れている。

 ・・・自らの破瓜の鮮血によって、更に紅くコーティングしたものを。そのたびに心地良いBGMが王女の口から解き放たれ、膣内の射精が終わっても、マグラートの愉快な時間は続いていた。







 その愉快に過ぎる時間にも幕が下ろされたのは、エルフの森を蹂躙する魔帝師団に一人の美少女が現れたからだ。



 彼女の存在に魔帝師団の幹部までもが平伏する。



「あ、アメストリア様!!?」

「何故、かような地に・・・」

「あ、相変わらず、お美しい・・・」

 その幹部らの挨拶も無視して、澄まして問う。

「マグラートは何処?」

 美少女・・・美少女には違いないだろう。外見は人間族と余り変わらない。背中に収納させることによって消えた一対の白い翼。多少・・・(かなり)鋭く吊り上がった眼。華奢なほどにスマートな身体ながら、程良く実らせた胸といい、しなやかな脚線にも他者の目を惹きつけるものがあった。

 見た目の年齢は十代中盤。・・・だが、これは彼女だけに限らずだが、女性に年齢を聞いていけない。一度、その愚を犯してしまった魔帝師団の幹部の一人は、瞬く間に血祭りにされてしまっている。



「ま、マグラート様は現在、森の最深部のほうで・・・

 そ、その・・・交戦中にありまして・・・」



 幹部の背中に冷たい汗が流れ落ちる。

 まさか、エルフの里を襲撃した初期の計画通りに、逃亡させた王女と騎士の後を追って、騎士を無力化させた後に、その騎士の眼前で王女を犯す作戦だった、とは言えない。

 ・・・恐ろしくて。

 うん。今はもう、事が済んでいることを祈るしかない。



「そう・・・」

 やはりアメストリアは澄ませたまま、森の深部へと向かっていく。まだ完全にエルフ部隊を壊滅させたわけではなく、尚も局地的な戦闘は起こっている。だが、誰も彼女を制止させようとは思わなかった。細剣を佩いただけの軽装にも関わらず・・・

 当然だった。

 現在の魔帝師団の中で、彼女と五分に渡りあえるのは、恐らく『魔帝』マグラートぐらいであろう。それも十分にマグラートを準備(バフ・強化)させての話である。



 実際、エルフの残党が彼女の存在を捉え、弓による攻撃、精霊魔法による攻撃を試みたが、矢は細剣で弾かれ、精霊魔法が発動する早く術者の体を斬り裂き、二射を試みるエルフより早く斬り捨てている。

 近接戦闘だけで見れば魔軍の中でも、『魔軍四天将』のフェンリル、ヴァーミリオン級とされ、その華奢な身体には信じられないほどの膂力があるのだ。さすがは大陸最強の種族とされる『竜人族』の末裔であり、『魔軍四天将』筆頭のデュランダルの娘であろうか。





「くっくっくっ・・・中々に面白い身体だぜぇ」

 シェルフィールの『永久純潔』という特異性。そして曲がりなりにも『極上名器』ということもあって、マグラートは御満悦になり、既に六回も彼女を破瓜し、膣内に己の欲望の滾りを注ぎ込んでいた。

 特に処女に強い拘りを持っていたマグラートにとって、シェルフィールの身体はまさに最高の存在であった。

 一つには破瓜されるごとに、シェルフィールは健気なほどに拒絶する反応を示し、絶叫をあげていた。またクルフィンもその絶叫に呼応して、一度は立ち上がったほどでもある。

 くくくっ・・・

 これこそマグラートにとっては待ち望んでいたシチュエーションであり、そのためにエルフの本営への攻撃には手心を加え、王女が逃げられるように配慮した甲斐があったというものであろう。

 まさに最高の気分だった。

 ・・・・。

 背後から細剣を突きつけられる、それまでは。



「ねぇ、マグラート・・・」

「あ、アメリアぁ!?」(げげっ!!)

 アメストリアの愛称はアメリアであり、それは幼馴染であり、恋人でもあるマグラートにのみ許された特権である。彼女にしてみれば、それ以上に正妃としての前渡し的意味合いも含まれていたが。

「面白そうなことをしているのね?」

「・・・・」



 まずい、と思った。これはまずい、と・・・

 興に乗り過ぎて必要以上にシェルフィールの身体にのめり込んでしまっていたのだ。





 興に乗り過ぎて彼女の接近に気付かなかった、までは決して良くはないが、よしとするしかない。だが、いつから覗かれていた(六回も膣内に出したのがバレたら、さすがにやばい!)のか、極上マンコ最高ぉ! とご満悦に犯してしまっていた光景を見られていたのなら、俺様の生命はない。



「それで、いつまで入れて貰っているのよぉ!!」

 幸い、アメストリアの怒りの矛先は(理不尽にも)犯されているシェルフィールに向けられた。小柄な身体を掴み上げると、マグラートに許していた股間から、それまでに注がれた鮮血交じりの夥しい限りの精液が勢いよく、そして滴り落ちていく。



「マグラート」

「は、はい!」(ビクッ)

 思わず震え上がったのは、もはや悲しい男の習慣ってやつだ。

「ヴァーミリオンからの指令は聞いた?」

「い、いや・・・まだ、だ・・・

 エルフの残党が意外としぶとくて、な・・・」



 実際は加減していたのだが、それは表に出さない。

 いや、出せない。



「それで、まだ続けるの? それ・・・」

「・・・お、怒ってないのか?」

「私が? 何故?」

 ・・・・。

 アメストリアは苛立ちを憶えていても、マグラート本人にはたいして怒ってもいなかった。もっとも六回も連続で膣内に注いでいた、と知れば、三日間は拘束していたかもしれない。無論、ベッドの上で。



 ・・・・。

 アメストリアは理解している。

 マグラートが後継者を得るために、『魔王』にランクアップするためにも、数多くの寵姫と交わり、抱くことは当然のことであると。そしてそれは『魔帝』としてのマグラートに与えられた当然の権利であり、彼に抱かれることはこの世に女として生まれた者の責務だということも。

 幼馴染であり、恋人でもあり、そしてマグラートの正妃としても。

 そして彼女にも『竜人族』の末裔としての誇りがある。

 マグラートが後継者を得るのは自分の胎内からであり、実際に出産成功率も47.2%という、現在魔軍内の寵姫のいずれをも凌駕している、驚異的な数値のそれが彼女の自信の表れでもあった。



 ――『出産成功率』とは、『魔帝』マグラートが『魔王』にランクアップするためにも、いずれは後継者を得なければならない。だが、『魔王』となる男の胤であり、『魔帝』ともなる胎児である。この出産成功率が低すぎれば、母子に与える負担はより大きく、大抵は母子共に死に絶えることとなろう。

 シェルフィールの4.1%(六回の不妊射精の結果、0.1%増加)という数字は極平均的なもので、今後の身体的な成長と繰り返される『不妊射精』によって、二桁には到達できるものと見込まれる。





「それで、まだ続けるの? それ・・・」

 アメストリアは同じ質問を繰り返しながら、虫の息だったクルフィンにトドメを刺す。マグラートの『加減調整』によって、嬲り生殺しだった騎士は、無造作に突き出された細剣のたった一撃だけで息が途絶えた。

「く、クルフィン!!」

「私はいいわよ? 愛する者の遺体の前で泣き叫ばせるのも好きでしょ、あなたは?」

「あ、そ、それは・・・」



 アメストリアの指摘したそれに間違いはない。

 実際、マグラートが保有する寵姫の大半は、シェルフィールと同じ境遇、もしくは似た境遇を課せられてきていた。そしてそれを静観するようにして見届けたアメストリアであるだけに、『魔帝』には、その適切な指摘を否定することはできなかった。



「いや、いい・・・

 その代り、口直しにアメリアの身体を抱かせてくれ」

「私?」

「ああ・・・」

 マグラートが散々に犯し抜いたシェルフィールの身体を解放し、王女は這うようにして、恋人の許嫁である、息の途絶えた騎士へと這う。それを見下しながら、マグラートにはやはり物足りなかったのも事実だった。



 ・・・・。



 シェルフィールの『極上名器』はその名に違わぬ、中々に絶品ではあっただろう。だが、マグラートを受け入れるのには、膣内は余りにも狭くて小さい。裂けなかったのは賞賛に値するが、半分も埋められず、それが欲求不満ではあった。

 また何より・・・アメストリアの膣内(竜人族の肉質によるものだろうが)とそう大差ない、と思わせるほどのものでしかなかったのだ。

 これならわざわざダークキャッスルから出向いてくるまでもなかった。シェルフィールの虜囚を命じて、居城に送還して貰うだけでも良かった、とさえ思ったものだ。





「私で・・・いいのかしら?」

 傍目でシェルフィールの号泣する姿を一瞥する。



「ああ・・・勿論だ」

 実際、アメリアの身体は『極上名器』の特殊技能がなくても、シェルフィールに勝るとも劣らないほどであり、何よりも気心の知れた仲でもある。

 マグラートの曝け出している剛直には、六度の射精にも関わらず萎えることはない。『精力絶倫』という特殊技能によって、体力が続く限りに逞しい硬度と夥しい限りの精液を放出させることが可能なのである。



 アメストリアは短めのスカートを自らたくし上げる。

 マグラートとの性交・・・いつでも求められてもいいように、彼女にとって下着とは、無駄な無用の長物であった。それでいて短めのスカートの中身は、彼女本人の同意なくして捲れて晒すことは決してない。

 このスカートの中身を覗けることが許され、挿入することができるのは、後にも先にもマグラートだけの特権だとアメストリアは思っている。



「そう・・・いいわよ」

「あ、できたら・・・」

「ええ。あなたの大好きな処女膜は復元してあげるわ」

 『竜人族』の特性であり、マグラートの好みを熟知している彼女は、常に純潔の象徴である処女膜を復元させることができた。また同時に自らに『痛覚増大』も施してある。



 アメストリアは引き裂かれるような激痛とは裏腹に、内心では至福を憶えながら、マグラートを受け入れていく。

 その根元までを、完全に・・・



 ふふふふっ・・・

 破瓜の鮮血に顔を歪めながら、内心で微笑している彼女がいた。



 それはマグラートの求めに応じられるのは・・・

 『魔帝』を完全に満足させることができ、マグラートの後継者を得られるのが、自分だけだと確信している絶対的な自信からに他ならない。



 だから、彼女は知らない。

 そのアメストリアを求めるマグラートも知らなかった。





 およそ一年前に、出産成功率89%を弾きだした存在を。



 ヴェンツェル皇国第四皇女。

 レティシア・ミラルド・ティア・ミステルという・・・



 まだ十一歳でしかない、その存在を・・・


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