第六章【 崩壊の波動 】

( 3−2 )

 
 【 崩壊の序曲 サトー サイト 】

 シンルピア帝国全土の、およそ五分の一を占める旧パフリシア領。
 その旧パフリシア領のほぼ中心に位置する、穏やかな湖に覆われた孤島の中央には、かつて魔法大国と呼ばれた王国、パフリシア王家の白亜の居城として名高い、パフリシア城がある。
 先の大戦における魔族の襲撃によって、この荘厳華麗なパフリシア城も一度は落城し、パフリシア王国は事実上、その一千年以上に渡って続いた歴史に終止符が打たれた。
 そのパフリシア城を接収し、完全に復元させる事ができたシンルピア共和国は、パフリシア領の完全併呑を期に、シンルピア帝国と僭称する事になる。だが、同じく魔族によって襲撃されたスレイヤー王国に続き、此度のパフリシア王国も同様、魔族が撤収していった後に、シンルピアが占拠した事から、シンルピア帝国=死霊犬帝国と呼ばれる由縁ともなった。
 そして、その帝国の手によって復元された孤島の白亜の城に、再び、パフリシアの名を冠する王家の末裔が生還を果たす。
 ・・・・およそ、十六年ぶりの事であった。

 《カーンカーンカーンカーンカーン》
 突然、真夏の夜空にけたたましい鐘の音が鳴り響いた。
「ど、どうしたんだ!? 急に・・・・」
 パフリシアの城下町で暮らす民衆が、驚き慌てふためいたのも無理はなかった事かも知れない。現在のアースティア中央大陸は、戦乱の世の真っ只中であり、つい先日においても、北の大国であるロンバルディア王国の王都にも、突然の襲撃を見舞われたばかりである。何時何処で敵襲が起こったとしても、決して不思議な事ではなかったのだ。
 だが・・・・
 そこに彼らを驚喜させる、吉報が舞い込んだ。
「あのパッフィー様が・・・・パフリシアに・・・・」
「パッフィー姫が生還されたぁ!」
 現在のパフリシア城を任させるのは、帝国内において、有力な諸侯として名を連ねたばかりの、サトー・マクスウェルといい、行動力と決断力に富んだ、今年三十九歳になる男である。その領主自らが、パフリシア王家の末裔であるパッフィー・パフリシアを、敵地から救出したというのである。
 民衆の歓喜の声が木霊するように、次々と歓声に伝えていく。
「聖女様が帰還されたぞぉー!!」
 パフリシア王国が滅んで、早、十六年の歳月が過ぎようとしていたが、未だにパフリシア王家の名声は衰えるところを知らなかった。正確には、王国が崩壊した後の名声は、パッフィー・パフシリア個人による名声であった、とも言えるだろう。
 未だ十六歳の身でありながら、【封印の魔女】としての宿命を背負い、また先の大戦においても、アースティアに平和をもたらせた英雄の一人として、彼女は名を馳せているのである。
 旧パフリシア領の民衆が、彼女に好感以上のものを抱かないはずがなかった。それでなくても、このアースティアの至宝として称された、可憐さと清らかさにおいても、彼女の人気は極めて高いのである。
 そのパッフィー・パフリシアが、現在のロンバルディア王国の国王であるパフリシア・カリウス一世(当時はカリウス・ハーミット)に陵辱された報は、彼女を慕う民衆たちを逆撫でにするものでしかなかった。そしてそれは、その後に彼女がロンバルディア王妃の座についた後も、領民たちの思いは変わる事がなかったのである。
 その意味でおいては、彼らも勇者一行のアデューたちと、同様の思いを抱き続けていたのだと、言えるだろう。
「今度の新領主様は違うようだぜ・・・・」
「ああ、なんて言ったって、敵の本拠地から、捕らわれのパッフィー様を救出したんだからな・・・・」
 それによって、それまで帝国の政略に不満を抱いていた、パフリシアの民衆も、この新領主の行動と功績に、最大の敬意を示したものである。
 彼女の名声の高さを利用して、そのようになるよう、最小限の情報操作を行ったものであったが、その効果は絶大であった。今やサトー・マクスウェルの名は、このパフリシア領において、パッフィー・パフリシアに並ぶ一大の英雄として目されるようになっていたのである。
「おおっ、新領主サトー様が城へ帰還されるようだぞ!」
 もっとも・・・・その彼女を救出した当時の出来事が、民衆に露見するような事にでもなれば、彼の人気はたちまち、地に堕ちたものであっただろうが・・・・
 敵地、王都ロンバルディアからの三日間の航海は、救出された立場のはずのパッフィー・パフリシアにとって、地獄図にも等しいものでしかなかった。彼女を救出した事によって、この地の英雄に成り上がったサトーには陵辱され、三日間に及ぶその航海中、船員の全員に輪姦され続けたのであるから、彼女の衝撃は当然のものであっただろう。
 民衆の歓呼する歓声によって迎えられていく一台の馬車が、パフリシア城にまで続く街路を駆け抜けていく間も、その馬車の中では、陰惨な輪姦劇の真っ只中であった。
 (クククッ・・・・愚かなまでに、おめでたい連中だぜ!)
 車内の出来事など知る由もない民衆の声に、彼らが崇める聖女の乳房を掴み、聖女の身体を蹂躙する男は、傷のある頬を愉悦に歪めた。
 民衆が「新領主様、万歳!」と歓喜の声を上げた時、その新領主であるサトーのスペルマがパッフィーの膣奥に放たれ、「パッフィー様、お帰りなさい」との歓声が届いた時には、別の男によって菊座が貫かれていた。意識の途絶えた虚ろな瞳で涙する彼女の口に、更に別の男のスペルマが流し込まれ、ヴァギナを独占し続けたサトーを除いた男たちが、代わる代わる彼女の身体を前後から、出し入れさせていった。
「隊長、そろそろパフリシア城です」
 サトーの一部の部下・・・・近衛師団の幹部に名を連ねる彼らは、今も尚、上官を隊長という敬称で呼んでいた。
「そうか、では、次は三人同時で果てる事で、パッフィー姫のパフリシア凱旋を祝ってやろうじゃないか!」
 パフリシアに到達するまでに、大量にスペルマを放出した事で、萎えるはずのペニスも、あまりの彼女の名器がゆえに、突き入れているサトーには休む時間も、萎縮させている暇も与えられなかった。
 意識の途絶えているはずのパッフィーではあったが、カリウスの技巧によって敏感な性感に開発された身体は、常に埋め込まれているサトーのペニスを、歓迎するかのように程よく締め付け、突き入れる男を一向に飽きさせないのだ。
「それでは、新たに副官の任を受けた私が、こちらの穴の方で愉しませて貰うとしますか」
「んんっ・・・・」
 そして、意識はともかくとして、既に彼女の本能と身体は、アナルの鯵を憶え始めており、後背位からでも他の男を容易に受け入れていく。もっとも、小柄な彼女の身体に、既にサトーの規格外なペニスが埋め込まれていた事もあって、彼女の腸内の締め付けはいつもにも増して激しく、素晴らしく、それだけに突き入れる者に与えられる心地も、いつも以上ではあった。
「では、パッフィー姫の凱旋を祝って、姫に極上のミルクをご馳走して差し上げますかな・・・・」
 ライトグリーンの髪を抑え付けると、ペニスを突きつけ、彼女の形良い唇の中に割って入る。意識がないだけに力なく、その頬張る頬の感触といい、小刻みに揺れる愛らしい唇の感触が、敏感な性器を刺激する。
「んっ・・・・んっ・・・・」
 アナルと口内を貫かれる少女の身体が、交互に揺れ、その度に尖らせる乳首を乗せたたわわな乳房が、寝そべるサトーの眼前に揺れている。
 近衛師団長にして、パフリシア領を治める領主でもあるサトーには、現時点において二つの使い道が、パッフィーの身体にあった。
 一つには、子孫などに興味はないサトーではあったが、パフリシア領を統治する身にとっては、パッフィーを孕ませる事それ自体に、意義がある事を認めざるを得ない。
 まず、そのパッフィーとの間に生まれた子を旗頭に据えて、パフリシア王国を再興するに、絶好の口実になりえる。
 無論、その場合には反旗を翻す事になる、強大なシンルピア帝国に対立する事は避けて通れないだろう。そうなれば、いくらパフリシア領の民衆の心を完全に掴んだ彼とはいえ、滅亡への道は免れられないだろう。
「そうならない為にも、カリウスには生き残ってもらって、ロンバルディア王国が健在であってもらった方が、都合がいい・・・・」
 帝国宰相ミストラルフは老獪にして、抜け目のない冷淡な人格と宰相に相応しい能力の持ち主ではあったが、帝国という温室の中で、とてつもない野心に目覚めた人物に、未だ気付き得ないでいる様子である。
 カリウスが居る王都ロンバルディアに、パフリシア王家の末裔であるパッフィーの存在があり、サトーにカリウスへの射撃を命じた際、彼がこのパフリシア領を求めた。その時に、気付いても不思議ではなかったが、それも無理もなかった事だったかも知れない。
 今、帝国が直面していた敵(パフリシア・カリウス一世)が、余りの魔力の高い魔導師、それこそ一つの要塞を吹き飛ばすような、化け物的な存在なのである。帝国内部に潜む危険性にまで、まだ考えるゆとりがなかったのだろう。
 ロンバルディア王国と友好を結ぶのは、容易である。と、サトーは見ている。一つにはシンルピア帝国と敵対している戦況もさながら、強奪しておいて言うのもなんだが、カリウスはパッフィーに溺愛しており、出産後の彼女の身体を取引に出せば、ロンバルディア王国もパフリシア王国には協力を惜しまないだろう。
 (ただし、それはカリウスが生存し、ロンバルディア王国が尚も健在であり続けた・・・・場合だな)
 王弟のカルロス、国王カリウスが亡きロンバルディア王国には、もはや未来はない。ロンバルディアの内情・・・・特に軍事最高司令官ガンドルフと内政政策を司る宰相マードックの関係は、かつてロンバルディア(当時はモンゴック)において凌ぎを削った彼だけに、それに確固たる自信があった。
 (その時は、レンヌの存在が、俺の帝国での生命線になりえるな)
 このままシンルピア帝国の有力諸侯として、パフリシアを統治するにしても、パッフィーとの間に子供を儲け、その子供を擁立させる事で、民衆の歓心を容易に買う事ができるのだ。
 今一つの使い道は、このまま、サトーの性処理道具として、その名器を遺憾なく発揮してもらう、奴隷としての運命が彼女には待っている。
 もっともこの場合、既に奴隷に貶めてあるレンヌ・カスタネイド皇女との兼ね合いもあり、その辺の上下関係も考慮しなければならないだろう。
 (まぁ、手持ちのカードは多い事に越した事はあるまい)

 民衆の歓声は今も尚、車内に届く中、懸命に頬張り、アナルを犯され、サトーを懸命に受け止めているパッフィーは、三つのペニスによって串刺しのようにされつつ、かくして十六年前に生誕した地へと舞い戻った。


 荘厳華麗なる白亜の城、彼女の生誕の地でもあるパフリシア城に着いたサトーは、バルコニーにおいて鳴り止まぬ歓声に応え、正式にパッフィー姫の救出した宗を、民衆に公表した。
「おおっー、さすがサトー様だぁ・・・・」
「ただ税を搾り取っていくだけの、これまでの帝国諸侯の輩と、新領主様は違う」
 パリフシア城を揺るがすような歓声が鳴り響き、 民衆のその更なる歓声は、新領主の名声の高さを物語るようでもあった。
「サトー様万歳! パッフィー姫万歳!」
 そして民衆の声援に応えた後、身を清め、さすがに疲労困憊の身体を休めた。三日三晩に渡った航海に、城までに到達するまでも続いた彼に課せられた宿命によって、一睡もできていなかったのだ。
 一方のパッフィーは、意識の戻らぬまま、城の一室に運び込まれて、頑丈な鋼鉄製の鉄格子に強固な錠がかけられた。
「姫が目を覚ましたら、連絡しろ」
「はっ・・・・」
 監視を任された二人の衛兵は、近衛師団の幹部に敬礼を施しつつ、上官の立ち去った事を確認して、互いに視線を寄せ合った。目の前の彼らが崇める少女の姿に、唖然とせずにはいられなかった。
 先の王都ロンバルディア攻防戦において、第一師団の目標は、あくまでも敵王カリウスの殺害にあり、それと同時に動員された近衛師団の作戦内容は、第一師団の援護、という側面的な狙いも確かにあったが、あくまでも捕らわれのパッフィー姫の救出を第一に、とあった。
 故にサトー率いる近衛師団が、サトーの居城ともなったこの城に、彼女を連れ込むのは不思議な事ではない。むしろ、王都からの帰路を海路に選定していた以上、至極自然の事ではある。
 だが・・・・
 豪華なドレスが辛うじて原型を留め、曝け出された魅力的な細長い生脚には何も穿かれておらず、その僅かに覗けられた股間からは、生々しいばかりの白濁色が溢れ出してもいた。
 その生々しいそれが、過去のものではない事を如実に物語っている。

 パッフィー救出作戦に、近衛師団長サトーに従事した近衛師団の上層部全てが、《アレックス》の元部下たちによって構成されており、彼らは当時に隊長と呼んだ、男の経歴と思考を良く理解していた、といえよう。
 だが、近衛師団、新たにパフリシア城を護る守備兵の全てが、そうであるはずがなく、さすがに表立って批判するような者こそいなかったが、それでも裏切られたような思いは否めなかった。
 この新領主こそ、英雄の中の英雄、と信じて疑わなかった彼らには。



 その明朝、パッフィーはようやくにして、意識を覚醒させた。
「んっ・・・・??」
 パッフィーは目覚めると同時に、自身の状態に・・・・後ろ手に固く拘束されている状態に、戸惑いつつも自覚する。
「こ、ここは・・・・つっ!」
 全身を襲った激痛が、悪夢のような航海を思い出させた。カリウスとアデューが戦っている最中、その死闘を目前に陵辱され、数多の男たちに輪姦された悪夢のような出来事を・・・・
「あっ・・・・ああっ・・・・」
 それが三日間の航海と、上陸してからに帰城するまでに渡って繰り広げられた、のだという事まで、意識を失っていた彼女には知る由もない。だが、それでもアヌスを貫かれ、他の男にヴァギナを突き込まれ、口からも別の男を咥えさせられた場面が、怒涛のように襲い掛かってきた。
「目が醒めたようだな・・・・俺は上層部に報告してくる」
「解った」
 二人の監視役のうち、一人の姿が彼女の視界から消えた。
 ここに至ってようやく、彼女はここが揺れる船内でもなく、また港でもない事を把握する。もっとも、彼女にとって馴染みのある城とは、思いにも寄らなかった事だろうが・・・・
 だが、周囲を見渡しても、ここには窓が一つとしてなく、またあったとしても、彼女がイズミに護られて城を退去したのは、まだ彼女が乳飲み子の頃であったから、帰国した事を理解しても、感慨に耽るような事はなかっただろう。
 (・・・・この生々しい感触。あれからも、犯され続けていたのですね・・・・私・・・・まだ安定期だったから・・・・まだ良かったけど・・・・)
 ほんの数日前までは、カリウスだけにしか許していなかった身体だっただけに、パッフィーに与える衝撃は計り知れなかったが、だが、それ以上に気になる現実が彼女にはあった。
 (か・・・カリウス・・・・)
 一瞬の刹那に折り重なった、二つの機体が、彼女の意識を捉えては離さない。特に《リューパラディン》に貫かれた格好であった《リューアークメイジ》、カリウスへの心配は、自分の身体の出来事以上であった。
「・・・・ロ、ロンバルディア王国は?・・・・」
「んっ?」
 一人残った衛兵が、後ろ手に拘束されている少女を見下ろした。
「カリウスは・・・・無事なの?」
「うーん・・・・その・・・・」
 衛兵は判断に迷って歯切りが悪い。
 既にこのパフリシア領にも、王都ロンバルディア攻防戦の結果や、帝国の真の狙いであったパフリシア・カリウス一世に関する情報も耳に入ってきているのだが、それを迂闊に漏洩していいのか、判断に迷うところではある。
「教えてやる・・・・代わりに、こいつをしゃぶってくれないか?」
 指差すそこには、制服のズボンの上からでも明らかなほど、怒張しているものがあった。
 その衛兵にも、決して悪気があった訳ではない。ただ数時間にも渡って憧れてもいたパッフィーの恥部を見せ続けられたのである。彼も男である以上、股間の高ぶりを抑えられずにいたのだ。
「・・・・」
 プイ、とパッフィーは顔を背けた。
 それがカリウスのものであるのなら、ともかく・・・・それ以外の男を自ら進んで咥えようとは思わなかった。
「だよ、な・・・・」
 衛兵は苦笑しつつ、彼女の要望に答えてやった。
「まず、ここは・・・・パフリシア城ですよ」
 それから衛兵は、彼の知る限りの情報を彼女に伝えた。
 アデュー・ウォルサムが率いる第一師団によって、相当な打撃は与えられたものの、王都ロンバルディアは健在である事。そして、国王パフリシア・カリウス一世は、アデューとの壮絶な一騎討ちの末、今現在も瀕死の状態である、との噂である。
 (彼女は今、どっちの人間なのだろう?)
 と、衛兵が説明しつつ奇妙な疑問を抱いた時である。突然、扉が開き、頬に傷のある男が入室してきたのは・・・・
「少し、客人に話がある。席を外せ」
「はっ!」
「・・・・それから、二度と余計な事はしゃべるな。このマグナムの引き金は思いの他軽くてな。次にこの警告が順守されなければ、いくら寛大な俺でも・・・・解るよな?」
 サトーは決して、部下を虐待するような人物では(狙撃後は別として)なかったが、必要以上に寛大でもなかった。殺す時は殺す。犯る時にはとことん犯る。元々、闇組織の特務工作隊長であり、その行動力と決断力は際立っていた。
 衛兵の退出後、サトーは鉄格子の錠前を開けて、中に潜り抜ける。
「さて、祖国パフリシアに生還した、お目覚めの気分は如何ですかな?」
 パッフィーは無言を貫いたままであったが、快適であろうはずがない事は、質問した側にも明白であっただろう。

 (ほぉ〜〜ぅ・・・・)
 サトーは初めて、毅然として立ち振る舞うパッフィーの姿に、その美しさの垣間見たような気がした。もっともカリウスとは異なり、彼にとってその美しさが愛情にとって変わるような事はなかったが。
 (ククッ・・・その身体を俺の色に染め直し、俺だけを求めて哀願させてみたいものだぜぇ・・・・)
 むしろ、その毅然とした態度に、とことん貶めて、奈落の底に着き堕としめたい衝動が抑え切れなかった。

「民衆はこぞって、姫の帰還を祝福していたぞ。俺のオモチャにされているとは、露知らずに・・・・な」
 パッフィーも確かに、一度は生誕の地であるパフリシア領に赴いてみたい、とは思っていた。だが、その時はカリウスの傍らに伴われて・・・・であり、この地で母マーリアとの思い出話をカリウスに聞いてみたい、と思っていたのである。
 (それが、こんな容で実現するなんて・・・・)
 無視された事に気分を害するでもなく、サトーは話題を転じて、核心に迫った。
「お腹の子は、カリウスの胤(たね)か?」
 まだ目立つほどの外見ではなかったが、それでも数日間もの間、身体を繋げていた間柄である。パッフィーが既に妊娠している事を、彼はその繋げた数日間の間で見抜いたのであった。
「・・・・」
「質問に答える気はないか・・・・」
 つい先日まで、サトーに極上の快楽を供与してくれた身体とは裏腹に、その持ち主の小生意気な態度は、僅かな苛立ちを覚えさせた。
「んじぁ、腹の子が流れるまで、そのボテ腹を蹴っ飛ばしてやろうか? ええっ!?」
 (この男なら、やりかねない・・・・)
 途端にパッフィーの顔色が蒼褪めた。
「お腹の子には、手を出さないで・・・・」
 パッフィーは視線を背けて、渋々、サトーの指摘を認めた。
 このお腹の子は、カリウスの待望の希望であり、彼が次世代に繋げる為の、母マーリアが叶える事ができなかった、二代に渡って課せられた重責なのである。
 それを差し引いても、今ではパッフィー自身が、愛するカリウスが求める男児を出産してあげたかったのだ。無事、出産する事ができれば、例え他の男に身体を許してしまった自分でも、カリウスにまだ必要とされる、まだ愛される事が許されるような、絆にもなりえるような気がしてならなかったのである。
「やはり、な・・・・」
 (これは、使える!)
 と、サトーは即座に判断した。
 (その小生意気な心をへし折るのに、これ以上の材料はあるまい!)
「クククッ・・・・解った、解った。俺も胎児に手をかけた非道人とは呼ばれたくはないからな。俺からは一切、お腹の子には干渉しないと、約束してやろう」
「・・・・」
 それが一体何処まで信頼できるのか、約束を反故される恐れも定かではなかったが、とりあえず、パッフィーはその言葉を信用した。信用するしか他に選択がなかったのである。
 (ああ、俺からは、な・・・・)
 まず、パッフィーの懇願する様子から、受胎している子供はアキレス腱になりえる。それも自らの手でカリウスの胤を消し去り、新たにサトーの子を身篭る、となれば・・・・
 また、彼女があらゆる妨害を撥ね退けて、万に一つでも出産まで漕ぎ着けるようであれば、その時はその彼女の健闘を称えて、そのカリウスとの子を養子にしてもいい。元々、血統などというものには興味がない、サトーならでは、の決断であろう。
 彼にとって要なのは、パフリシアの民衆の歓心が買えるパッフィーの子供であって、その父親などの素性までに拘るつもりは、毛頭なかったのである。


 その《パッフィー救出(?)計画》の黒幕である、レンヌ・カスタネイド皇女が、僅かな手勢だけでパフリシア城に到着したのは、パッフィー・パフリシアが生誕の地に生還して、およそ二十日後の事である。

 和平もまだ成立していない、この戦乱の時期に、皇女である彼女がわざわざ帝都ムーンパレスからお忍びで赴いてきた理由には、いくつかある。
「作戦は首尾よく旨くいったようですね、サトー・マクスウェル」
「レンヌ皇女こそ、ようこそ、我がパフリシア城に・・・・」
 第三者の目もあって、公的な場では一家臣に過ぎないサトーも、慇懃な姿勢を示さなくてはならず、城主自らが城外にまで出向いて、唐突な皇女の来訪を出迎えたものである。
 公式記録には、間近に迫った結婚式に備えての静養とされていたが、本当の名目は、救出(?)したパッフィー・パフリシアの、その後の経過の確認である事は、皇女を出迎えた人物には明白であった。
 また、その出迎えたサトー・マクスウェルと口約した、彼女の排卵期が迫っていた時期であり、レンヌがこの時期に訪れた事に対し、何の疑いも抱いていないようであった。
 彼女の夫になるべくアデュー・ウォルサムは、現在、もうすぐ間近にまで迫った帝位戴冠式と、レンヌとの結婚式に備えて多忙を極めており、他の男の胤を宿しに行くのだとは知らずに、快く送り出す始末であった。
 (もっとも、それより先に・・・・この男を!!)
 サトーの隙を伺いながら、レンヌは懐に隠した短剣を確認した。



「どうして、何もしていないのよ!」
 パフリシア城に着いて、サトーと対面を果たしたレンヌの開口がそれであった。予想としては、もっと数多の男に犯されて、もっとボロボロにされている光景を想起していたのであろう。
「まぁ、考えあっての事だ・・・・」
 サトーも当初、計画を切り出された時には、レンヌの思い描いていた光景を実行するつもりではあった。自分や旧《アレックス》の部下たちだけでなく、パフリシア城にある男を総動員してでも、パッフィーを休ませる事なく、犯し続ける・・・・その予定だった。
 そのサトーの予定を変更させたのは、一重にパッフィーの身体が、極上なまでの名器であった事が挙げられた。が、それをわざわざ口外してまで皇女の機嫌を損ねるような愚は冒さなかった。
「だが、それ以上に面白い事になる、と約束してやるよ・・・・要は心身ともに、ボロボロにしてやれればいいんだろうが!?」
「具体的に・・・・聞かせて貰えるかしら?」
 かつては自分をボロボロにした、その男の手腕を疑う訳ではなかったのだが、アデューへの嫉妬に激しく滾った心境が尋ねさせた。
「奴隷如きに問い詰められるのは心外だが・・・・まぁ、いいだろう」
 (お前も全く、無関係な話ではないしな・・・・)
「アンミストルウム・・・・という、薬物がある。まぁ、媚薬の一種だ。俺の組織(アレックス)が独自に精製していたもので、それほど数が出回っているはずはないから、知る筈もないな・・・・」
 アンミストルウムの精製方法は、《アレックス》に属した一部の人間のみ伝わるものであり、副官であったコリントが亡き今、サトーを除いて僅かに数名だけに限られた。
 効能は一般的な媚薬に属するものだが、無味無臭にして、その効果は通常のそれより遥かに強力であり、持続時間も長い。そして、アンミストルウムの別名に【理性を切り離す薬物】とある。
 つまり、投与された人物は、制御するべく理性を失い、本能だけを曝け出した身体だけを残すのである。また一度投薬されると、男のスペルマを膣内で受け止めない限り、その疼きが治まる事がない。その意味においても、媚薬の中で遥かに強力な部類のものであろう。
 また、このアンミストルウムには、もう一つ、恐るべき副作用的な効果があるのだが・・・・サトーは敢えて、こちらの説明を省いた。

「まぁ、簡単に言ってしまえば、幽体離脱にも似た現象を起こさせるのさ」
「ゆ、幽体離脱・・・・!?」
 身に覚えがあるのだろう。思わずレンヌが反芻する。
「ほぉ〜〜意外と察しが良いな」
 約二年前の山荘において、レンヌ・カスタネイドがサトーに破瓜される時に用いられたのが、このアンミストルウムであった。これによって彼女は、破瓜の痛みを憶える事もなく犯され、まるで第三者のような視点で、自身がレイプされる光景に見えたのである。
「アンミストルウムを投与され、理性が切り離されている間でも、記憶にはきちんと刻まれていく・・・・そいつを今、パッフィー姫の食事と水に混在させているのさ」
 アンミストルウムは無味無臭であり、パッフィーは生きていく為にも、カリウスの子を出産していく為にも、与えられた食事と水は摂取せねばならない。
 (クククッ・・・・あんな小娘を手に入れる事など、造作もない)
 サトーには、パッフィーを懐柔する為に、一年以上もの歳月を費やしたカリウスたちの気が知れない、と思ったものである。

 確かにカリウスにも洗脳する事は、魔法によって可能ではあったのだ。
 だが、あくまでも可能性と、実際に実行するのとでは、雲泥の開きがある。それは、サトーの感性だけでなく、何処の社会においても、このアースティアの世界においても常識とされてきた。

 カリウスが抱いたパッフィーへの欲望の発芽は、彼女の母であるマーリアの喪失を出発点としており、その本人以外の動機に影響があった事は、レンヌに促されてレイプしたサトーと、そう大きな大差はない。
 だが、カリウスはパッフィーの身体だけでなく、彼女自身の全てを手に入れようとしたのである。そんなカリウスにとっては、人形と同意義の洗脳による統制など、想像外の事であった。
 一方のサトーは、カリウスとは異なり、彼にとってパッフィーの意志など眼中になかった。彼にとって都合のいい身体、快楽を貪る事ができた極上の名器だけを欲したのである。
 カリウスとサトー。互いにパッフィー・パフリシアという、身体の名器を独占しようと、懐柔させることに躍起になった二人ではあるが、この二人の差は・・・・その手段が明白なほど大きく異なったのは、当然の事ではあった。


「まぁ、もはやパッフィー姫は、俺という肉欲の餌を欲するだけの、決して逃れる事ができない運命だった、という事さ・・・・」
「そう・・・・それを聞いたら、安心したわ」
 レンヌは素直に称賛した。その称賛には決して嘘偽りはない。良くここまで悪魔的な考えを遂行できるものである、と。
「ああ、俺だ・・・・いよいよ時が来たようだ」
 サトーは通信で副官を呼び出し、今夜がレンヌにとっても、パッフィーにとっても、栄光の、神に課せられた運命の日である事を告げた。
 この日、レンヌ・カスタネイドとパッフィー・パフリシアは、サトーのペニスに改めて従属する事を誓い、誓約の証として、契りを交わす事によって、その身体に絶対者の胤を身篭れるのである。
「まぁ、俺の子を身篭るかも知れないんだ。今晩は、パッフィー姫にも栄養がつくような、豪勢な食事を食わせてやれ。無論、アンミストルウムたっぷりの、な」
 サトーは豪快な笑みを漏らし、その揺れる背中を静かに見据える。
 レンヌは冷たい微笑みを張り付かせたまま、完璧なまでに素っ気無い動作のままに、短剣を、眼前の背中を向けた男に向けて放り投げた。
 綺麗な直線を描き、確実にサトーの背中に向かって・・・・
 だが・・・・
「クックックッ・・・・そろそろ、そんな事を考えている頃だろう、とは思っていたが、なぁ・・・・」
「そ、そんな・・・・」
 (この男には、背中に・・・・目でもあるというの!?)
 狙いが正確に過ぎた事が、この狙撃手には幸いであった。それは即ち、レンヌの不幸でもあったのだ。レンヌは愕然としながら、最後の短剣を手に取る。が、今度ばかりはサトーの方が早かった。
 予め特殊EP弾を装填してあったマグナムが火を吹き、射撃は正確にレンヌの手にあった短剣だけを弾き飛ばす。
「あっ、痛ッ!・・・・!?」
 弾き飛ばされる短剣を持っていた右手を抑え、次第に違和感を覚える。最初に感じた痛覚がだんだんと途切れていき、次第に視界が霞み、立っている事さえもままならなくなっていくのだ。
 暗殺の抵抗を容易に沈静したサトーは再び、副官が映るモニターに体勢を戻し、いよいよ二人の少女に運命の時が迫っている事を告げる。
「パッフィー姫の最終教育チェック、怠るなよ。それから駄目押しに、今晩その眼前で、皇女との種付けを見せ付けておく。こちらの準備も進めておいてくれ」
 副官への指示を終え、サトーがか弱き暗殺者に振り返る。
「と、いう事だ。喜べ、パッフィー姫よりも前に、まず、お前から抱いて貰える事になったぞ」
「だ、誰が・・・・貴方のような、子供を身篭るものですか・・・・いえ、例え身篭ったとしても・・・・誰が、出産なんてするものですかぁっ!」
「ああ、そうそう・・・・一つ、説明しておくのを忘れていたなぁ」
 敢えて説明を省いておいたのだが、サトーはそんな素振を微塵として見せずに頭を掻いた。
「過去に一度でもアンミストルウムを投薬された女が、効能が沈静してから再び投薬を受けて、最初に同じ男のペニスを受け入れると、な。まぁ、その男なしでは生きていけない身体になっちまうんだとよぉ・・・・」

 アンミストルウムを投薬された女性には、その呪縛が一生に渡って残っていく事になる。確かに媚薬効果の効能期間(個人差はあれ、約一ヶ月)が過ぎると、その被験者の身体は正常な(理性が戻り、それまでの記憶が一気に蘇る)状態に戻るのだが、体内に残っていく抗体が、身体の子宮の中に最初に受け止めた遺伝子情報を記憶させておくのである。
 そして再び、アンミストルウムを投薬される事によって、過去の抗体が覚醒し、最初に受精を受けたそれが、過去に記憶された遺伝子と同様のものであった場合、その遺伝子を持つ男によって、その女性の子宮は完全に支配されていく事になる。
 支配された子宮を持つその女性は、その後、他の男のペニスでは決して満足する事ができなくなり、最悪の場合には、身体が拒絶反応まで示してしまうケースさえありえた。
 その子宮を支配された女性が、満足できる・・・・性交だけに限らず、絶頂を極められるのが、その子宮を支配した男の持つペニスだけ、という身体に書き換えられてしまうのである。
 そして、それだけに子宮を支配した男を思うだけで、書き換えられた子宮が《ジンジン》と疼き出し、その男の言葉一つだけで、股を濡らしていく。その唯一に自分を満足させてくれる、子宮を支配した男の存在に、本能的に順応な身体になってしまうのであった。
 アンミストルウムの別名である【理性を切り離す薬物】の由来は、むしろ、こちらの副作用的な恐ろしさを含ませたものであるのだった。

 そして、レンヌ・カスタネイドは二年前、サトーによって破瓜される時に、このアンミストルウムを投薬されているのである。
 その資格は十分にあった。
「ま、まさか・・・・」
「またもや察しが良かったじゃないか・・・・」
 サトーは装填してあった銃創を机の上に落とし、レンヌの違和感の原因がこれである事を見せ付ける。
 (ア・・・・アデュー・・・・わ、私は・・・・)
 レンヌは暗殺の失敗したそれ以上に、自身の未来に愕然としつつ・・・・その場に崩れ落ちていった。
「妊娠して出産後だけに、SEXは久しぶりだろう? たっぷりと膣内に注いでやぁから、お前も運命の男による性交の味とやらを感じるんだな」
 サトーの言葉は、もはや彼女に届く事はなかった。そして、その後日にその必要さえもなくなる。アンミストルウムによって、サトーの言葉は理性ではなく、身体に記憶されるのであり、またこの先に目覚めるだろう彼女には、サトーの完全なる傀儡という、運命だけしか許されていなかったのだから・・・・
 (今夜は極上の名器を相手に、ダブルヘッダーか・・・・凄い一夜になりそうだ)

 《レンヌ・カスタネイド》
 シンルピア帝国の皇女にして、広大なアースティアの世界に住む女性の中でも際立って輝いていた、美しき少女。その外見に勝るとも劣らない、極上の名器を兼ね備え、俺と結ばれる事が許されたこの日に、サトーの胤を宿すその瞬間の為だけに、レンヌは存在を許されてきたのだ。
 《パッフィー・パフリシア》
 先の大戦の英雄にして、魔王ウォームガルデスを封印し続けた身体は、この日の為だけにあった。レンヌよりも素晴らしい肉体のそれは、これまでの彼女の苦難と戦いの激しさを物語ってもいよう。それだけにカリウスによって開発され、媚薬(アンミストルウム)によって開花し、完成するまでに至った身体は、この課せられた運命の日、俺に味合わせる事だけが全てだったのである。

 この広大なアースティアの世界に、極上の名器を持って生を受けた二人は、この日、後にサトーが曰く、神に定められし運命の配剤を迎える。
 この同世代による少女たちは、共に王族として生を受け、奇遇にも数万数十万人に一人、いるかいないかの極上の名器と、可憐な美しさを併せ持っていた。その真価をサトーに問われるべく彼女たちには、義務付けられた宿命でもあったのだ。

 少なくてもサトーには、そう思えてはならなかった。


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