(10)


 この石の牢獄で目覚めてから初めての人間が、アリシエルの前に現れた。中肉中背、筋肉質の男性で、頭部にはすっぽり三角形の頭巾をかぶっている。黒いブーツと黒い手袋をしている他には何も着ていない。乗馬鞭に似た短鞭を手にしている。
 明らかによからぬ目的を持っていると知れる異様な風体ではあったが、ここに繋がれてより初めての言葉が通じそうな相手とあって、囚われの王女は思わずその男に助けを求めていた。
「助けて、お願いです! わたくし、リンベルク王女アリシエルです。わたくしを監禁していたと露見すれば、ただでは済みませんよ。すぐに解放し……ひっ!」
 まくし立てる言葉を無視して、頭巾の男は半起ちのペニスの先端を王女の唇に触れさせた。
「舐めろ」
「なっ……い、嫌です!」
 言うが早いか、男は手にした短鞭を振り下ろした。
 ビシィッ!
「きゃあああああっ!」
 箱入り育ちのアリシエルは苦痛に慣れていない。鞭で打たれたことなど生まれて初めてである。

「舐めろ」
「……う、うう……」
 自発的な奉仕など真っ平だったが、鞭で打たれるのも嫌だった。反応できずにいると、2撃目が少女の柔肌を襲った。
 ビシィッ!
「あああああああっ!」
 絶妙に手加減されているらしく、美少女の肌はミミズ腫れにすらなっていなかったが、炸裂する苦痛は耐え難いほどのものだった。
「舐めろ」
 3度目の命令に、美姫は屈した。
 ぽろぽろと涙の雫を零しながら、肉棒の先端をちろちろと舐める。人狼の獣臭い牡槍に比べれば男のそれはいっそ清らかですらあり、嫌悪感はまったくなかったが、自発的に淫らな振る舞いを強いられていると言う屈辱感は、哀れな囚われの美姫の潔癖な心を苛んで止まなかった。


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